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ヨウジヤマモト 2026年秋冬コレクション

ヨウジヤマモト 2026年秋冬コレクション

Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

北斎と娘、日本と世界、戦争──山本耀司の心をえぐり、揺さぶり、突き動かすもの

「ヨウジヤマモト」2026年秋冬コレクション

ヨウジヤマモト 2026年秋冬コレクション

ヨウジヤマモト 2026年秋冬コレクション

Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

 「私だけではなく、私たちは作り続ける必要がある。情熱を持って」──山本耀司が、パリで開催したランウェイショーのバックステージで語った。「私たち」とは、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」のチーム、ファッション界、あるいは社会と対峙するアーティストたちを指しているのかもしれない。2026年秋冬コレクションでは、山本が敬愛するアーティストのひとりだという葛飾北斎の作品を取り入れている。90歳に至るまで絵に情熱を注ぎ続けた北斎と、山本の姿が重なった。

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"黒の衝撃"から45年

 山本耀司が、1981年にパリで初めてプレタポルテコレクションを発表してから今年で45年。デビュー当時、パリの主流だった「身体を美しく見せるための西洋服の定型」に対して異なる美意識と構造を突きつけたことで、賛否両論を巻き起こした。黒を中心とした色使い、身体の線を強調しないシルエット、破れやほつれ、余白を残した表現──その"黒の衝撃"は、今日に至るまでファッション界に影響を与えている。

 ドレスを仕立てながらも、どこか和の余韻を感じさせるのは、根本的な構造と手仕事の違いよるものが大きい。それらが色濃く投影されたのが、今シーズンのコレクションだ。着物のように奥ゆかしく前立てを重ね、直線パターンの袖の袂が揺れる。身頃は身体の線を拾わず、生地を重ね、あるいは帯のように巻いてゆるやかに結ぶ。シャンデリアが下がるパリ市庁舎の荘厳なホールで、静かに美意識が立ち上がった。「日本の文化はすごいでしょう」と、バックステージで山本は言う。

葛飾北斎と、その娘

 ショーの終盤、ブラックドレスに施されたアートワークに目が留まった。葛飾北斎、そしてその娘・葛飾応為の作品だ。今回のショーの招待状が、版画のばれん(馬楝)だったことにも通じる。山本は北斎について「(作品を見ると)本当に驚かされる。ゴッホ、マネ、モネにも影響を与えて、90歳まで描き続けたんです」と話し、こう続けた。「北斎の絵は、娘が手助けしていたと言われている」。ジャーナリストの一人が「あなたの娘のように?」と水を向けると、「I hope so.(そうなるといいね)」と笑って返した。

「なぜ、こんなにも戦争が多いのか」

 バックステージでのインタビューは続き、今、そして未来の話へ。「未来のことを考えると思います。なぜ、こんなにも戦争が多いのか」。パリのファッションウィークは例年通り、何事もないかのように進んでいく。しかし同じ空の下では、いまも争いが続いているという事実を突きつけられた。2年半前、同じ会場のバックステージで「世界は危ない」と語っていた山本の言葉がよみがえり、何ひとつ変わっていない現実に愕然とする。山本は言った。「戦争をやめてください。人々を殺さないでください」。

 北斎と応為が世界に影響を与えたように、日本のデザイナーもまた西洋の定型を更新してきた。日本と世界、創作の継承、そして戦争──すべてに向き合いながら、山本耀司は確かな覚悟でクリエイションを続ける。真の美を追い求めるヨウジヤマモトの営み自体が、いまこの時代への応答になっている。

山本耀司

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Yohji Yamamoto 2026年秋冬コレクション

2026 AUTUMN WINTERファッションショー

最終更新日:

FASHIONSNAP ファッションディレクター

小湊千恵美

Chiemi Kominato

山梨県出身。文化服装学院卒業後、アパレルデザイン会社で企画、生産、デザイナーのアシスタントを経験。出産を経て、育児中にウェブデザインを学びFASHIONSNAPに参加。レコオーランドの社員1人目となる。編集記者、編集長を経て、2018年よりラグジュアリー領域/海外コレクションを統括するファッションディレクターに就任。年間60日以上が出張で海外を飛び回る日々だが、気力と体力には自信あり。

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