Fashion

「なぜジュエリーからアパレル?」アンブッシュ®YOONが世界に示した説得力

 YOONとVERBALの2人がスタートした「アンブッシュ®(AMBUSH®️)」が、2018年で10周年を迎える。「サカイ(sacai)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」といったブランドのコラボレーターとして引く手数多だったジュエリーブランドが、ここ3年でファッションブランドへと転換。YOONが打ち出す"ジュエリーに似合う服"はLVMHプライズでファイナリストに選出されるなど、国内外から高い評価を得ている。3月20日に「Amazon Fashion "AT TOKYO"」で初のショーを開催するYOONに、ファッションブランド転換の舞台裏について聞いた。

アパレル本格スタート直後にLVMHプライズでファイナリスト入り

ーここ数年でジュエリーだけではなくアパレルもプレゼンスを高めています。強化しようと思ったタイミングは?

 アパレルは2012年から始めていたのですが、2015年にパリで展示会をスタートさせたのが一つのタイミングでした。まず、ブランドとしてステップアップさせるためにジュエリーの素材を真鍮からシルバーに変えたんです。シルバーに合う素材と言えばデニムが思い浮かんだので、いくつかピースを作ってパリに持っていったところ、反応が良くて。その時はトップスがほとんどだったんですが、徐々に増えてフルルックを出したのが、2017年秋冬のコレクションでした。始めたばかりということもあって30型ほどしか作っていなかったんですが、それがLVMHプライズの審査に通ったんです。

ーLVMHプライズに参加したきっかけは?

 スカウトですね。パリで展示会している時に通りかかったLVMHの推薦人に声をかけられて、応募を勧められました。アパレルも本格的に始めたばかりのタイミングだったのですが、せっかく声をかけてもらったのだからと応募したらセミファイナルに選ばれて。正直びっくりしました(笑)。

ーセミファイナルからファイナルとなるTOP8まで進みました。どの点が評価されたのでしょう。

 あまり深く捉え過ぎずに臨めたのがよかったんだと思います。周りが緊張している中でも、私は割と楽しくプレゼンテーションができた気がします。ジュエリーには自信があったので、そこはやはりブランドを伝えるための強みになりました。

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1月にパリで発表した2018年秋冬コレクション

コンセプトは「ルイ・ヴィトン」と同じ

ープレゼンテーションでは何をどうアピールしたんですか?

 「何故、ジュエリーからアパレルを手がけるようになったのか?」と聞かれることが多いのですが、審査員には「コンセプトとしては『ルイ・ヴィトン』と一緒」と説明しました。ルイ・ヴィトンも、もともとはトランクメーカーとして創業し、ブランドのストーリーを伝えるために服や小物を作っています。私たちもジュエリーのストーリーを伝えるために服を作り、ブランドの世界観を発信しているので、スケールは及びませんがコンセプトとしては同じだと伝えました。

ージュエリーと服作りのアプローチは違うもののように感じます。

 全く違うので慣れるまでに多少時間はかかりました。ジュエリーの場合は型を取った時点である程度完成が見えてきますが、服の場合は、生地とフィット感が一度で合わないことが多いので、何回も試行錯誤する。そこが全く違いますね。

ー当時のコレクションを振り返って点数をつけると?

 10点満点で8くらいでしょうか。

ー審査員も錚々たるメンバーですよね。やりとりで印象に残っていることはありますか?

 当時「セリーヌ(CÉLINE)」だったフィービー・ファイロにはずっと憧れていたので、初めて挨拶できてすごく興奮しました。

 審査員からはアドバイスをもらうというより、私が質問される側で「これを作る時に何を考えてたの?」といったことを聞かれました。その中で唯一、カール・ラガーフェルドがずっと褒めてくれたんです。嬉しかったのがセミファイナルで見たものをファイナルでも覚えていてくれて。彼もジュエリーが好きだから、印象に残ったのかもしれません。

ー他の候補者のようにデザイン学校を卒業しているわけではないですが、デメリットに感じたことはありますか?

 以前は引け目を感じていましたが、今はそこまで気にしていないですね。学校で学んだ子達は先生やクラスメートとの関わりがあって羨ましいなと思いましたけど、私もたくさんの友達に恵まれていますから。LVMHプライズに参加してみて、自分のビジョンを形にできていれば、学校とかバッググラウンドはあまり関係ないと思いましたね。

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海外からの反応にも変化

ーファイナリストに残ったことで外からの見方が変わったなど変化はありましたか?

 アパレルをやっているということを知ってもらえたし、ブランドの認知も広まってPR的な面でアピールできたのは良かったです。バイヤーさんにもさらに興味を持ってもらえるようになりましたし。会社のやり方やブランディングなどのマネージメントについてLVMHの方にアドバイスをもらったり新しい繋がりも増えました。

ー今のブランドの体制は?

 今はショップスタッフを含めて12人くらいです。LVMHプライズに参加する前は半分ほどだったので、人が増えたことも変化ですね。2年前に店舗がオープンしたり、アパレルをもっとやるようになって仕事がどんどん増えてきています。

ー日本市場と海外市場でのブランド展開は?

 海外では100件近くの卸先がありますが、日本はブランディングに注力したいので、売り先は店舗とECに集中させています。店舗がオープンして2年ほど経ちますが、全体的な売り上げは400%アップしました。店舗に集中させることでブランドのメッセージをクリアにできたことがうまくいったのかな、と思っています。

ーどういった顧客層から支持がありますか?

 男女比は6:4くらい。海外と日本でだと半分ずつくらいです。最近では海外の雑誌での露出が多くなったこともあって、お店にも中国や韓国からのお客さんが増えた気がします。

アンブッシュ®は「子供のよう」

ーYOONさんとVERBALさんの仕事の分担は?

 ジュエリーと同じで、クリエーティブの部分は全部私がやっていて、VERBALはビジネスの面を全体的に担当しています。彼は現実的なので、私がクリエーティブに走り過ぎると「もう少しこうした方がいいんじゃない?」といったアドバイスをくれたり。彼と会話することでバランスを取ることができるのでありがたいですね。

ーVERBALさんも音楽の分野で海外での活動も精力的に取り組んでいるタイミング。お互いに高め合っている印象があります。夫婦円満の秘訣は?

 それぞれがやりたいことを思い切りやれる環境が整っていることは大事ですね。お互いをリスペクトすることが秘訣だと思います。

ーあまりイメージがないですが、喧嘩もするんですか?

 もちろん、喧嘩はありますよ。言いたいこと言い合ってスッキリさせたほうが人間関係としてヘルシーですよね。

ーアンブッシュ®というブランドが2人の共通言語というイメージがある。ブランドの存在とは?

 自分の子供のような存在です。アイデアが生まれて、大事に育てていったら歩いたり走り始めたりして、会社ができて社員も増えて、といったようにどんどん成長しているので。

ー今回のアマゾンファッションウィークに参加することは2人で決めたのですか?

 そうですね。昨年の秋くらいに「AT TOKYO」枠で参加してみないか、と声をかけてもらい話が進みました。パリに行ってからここ3年は東京でアンブッシュとしてはイベントなどはやってこなかったのと、服の型数も増えてきて、ショーをやってみてもいいかなというタイミングでもありました。今回のコレクションは私が育った「シアトル」をコンセプトにしていて、Amazonもシアトルの企業ということもあり、色々な要素が合わさり参加することを決めました。

ー初めてのショーになります。どういった気持ちで臨み、何を期待しますか?

 この前、初めてモデルに着せて展示会で小規模なプレゼンテーションを行ったんです。人が着ることで動きが出るので、ショーでどう見えるかは自分でも楽しみにしています。今回単なるランウェイショーだけではなくて会場に来ないと経験できないことをやりたいと思って、知り合いのシェフと組んでディナーとセットで開催します。BGMも友人が手掛けてくれるので、食や音楽などを通じてアンブッシュ®を感じてもらえるような特別な時間になればと思っています。

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(聞き手:高村美緒、今井 祐衣)