Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】「ミリ単位で服が変わる」ヨシオ クボが新境地で挑む本物の服作り

久保嘉男
久保嘉男
Image by: Fashionsnap.com

 ステッチ幅が5ミリか7ミリか、ミリ単位の選択に込めた"こだわり"の集積がいい服を作り出す。緻密に計算されたデザインを武器に、長く東京のファッションウィークを牽引している久保嘉男が手がける「ヨシオクボ(yoshiokubo)」が初めてジェンダーレスなコレクション「yoshio kubo | OPENING CEREMONY」を発表した。メンズでは男らしさ、ウィメンズでは女らしさを追求する同氏が、「嫌いなジャンル」と語るジェンダーレスなコレクションで体現した服作りの極意とは?

■パターンに重きを置くデザイナー久保嘉男

―パターンに力を入れていますね。

 僕が一番やらなければいけないことだと思っています。というのも、パターンを引いていると面白いギミックを見つけ易いんですよね。袖ひとつとっても、ラグランスリーブとセットインスリーブの間のような形を思いついたり。特にジャケットなどが独特で、アームホールの下をえぐった形のパターンにしているんです。そうすると流線型の綺麗なシルエットに仕上がるんですが、これは僕のデザインの特徴の1つですね。

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―パタンナーとデザイナーの関係性が大事ということでしょうか。

 個人的にパタンナーに依存するのはデザイナーとして良くないとは思っていて。例えば優秀なパタンナーに仕事をお願いすると、"売れる服"の形に寄ってしまうことがあるんです。デザイナーとして、やはり自分が考えたデザインに対してはこだわりを持つべきでしょう。これはスタッフにも良く言っているんですが、デザイン画をさっと描くだけじゃなくて、どうしてこういった形の襟や袖ぐりにしたのか。しっかり考えてデザインしているかが、服の表情に違いを生み出しますから。

―ブランドを継続できている理由は?

 ブランド立ち上げから約5年間、商品を一度もドロップさせなかったんですが、その経験がブランドを継続できている理由のひとつかもしれません。初期は1型2枚だけしか買い付けてもらえなかったことがあって、普通だったら原価が高くなるので生産を諦めるんですが、僕は採算を無視して意地でも作って卸していました。立ち上げ当初は資金もないですから、パターンはもちろんサンプル縫製やグレーディングも自分でやるしかない。大変でしたが、そういったことが慣習化されたからこそ、今があると考えています。

■らしくない? ジェンダーレスなコレクションに挑戦した訳

―オープニングセレモニーとコラボレーションラインを発表することになった経緯について教えてください。

 オープニングセレモニーのバイヤーに声をかけて頂いたのがきっかけです。ただ、自分のブランド(yoshio kubo、undecorated MAN、muller of yoshiokubo)もありますから、コラボレーションだからって片手ハンドル状態でプロジェクトを進めるのは嫌で。今年は社外の人たちと仕事を進めていこうと考えていたこともあって、新ラインとしてしっかりとした形で協業することになりました。

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―コンセプトは?

 ここ数年取り組んでいるスポーツテイストの切り口で何ができるかと考えた時に、それこそ今盛り上がっているオリンピックを起点に何かできたらいいなと。ただ、素直にオリンピックを表現するのは嫌で。普段のコレクション制作と同様に、キャッチフレーズを考えてからデザインしていくというプロセスで作ることにしました。

 そもそも「五輪」という呼び名は何なのか。そこから掘り下げていくと、どうやら東京オリンピックの時に或る新聞記者が書いてそう呼ばれるようになったらしいということが分かりました。さらに調べていくと、宮本武蔵の「五輪書」というものに行き着いて。風の切り方や水の切り方などについて書かれているんですが、こういうストーリーで展開していくと面白いなと思って、英語に置き換えた「FIVE RINGS TRAVEL」をコンセプトにしました。過去のオリンピック開催地にフォーカスしたコレクションで、今回はカナダのカルガリーにフィーチャーしています。

―なぜジェンダーレスなコレクションに?

 僕は、実は「ユニセックス」というジャンルが一番嫌いで(笑)。男は男っぽく、女は女っぽくという志向で、「ヨシオ クボ」や「ミュラーオブヨシオクボ(muller of yoshiokubo)」を展開してきたんですが、最近は一度やってみても面白いかなと考えるようになってきて、今回初めてジェンダーレスなコレクションに挑戦することにしました。

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―継続的に展開される?

 今回のコンセプトを考えるのにかなりの時間を費やしていて、さすがにこれを1回で終わらせることはできないですね。デザイナーの方には同意頂けると思うんですが、コンセプトやキャッチコピー、誰も考えつかないようなアイディアなんて簡単には浮かんでこないんですよ。でも、しっかり作っておけば何年かはそのコンセプトを元にデザインを出しやすい。今回もうまく応用しやすいコンセプトにまとめることができたと思っています。

―それではオリンピックの開催地の数だけコレクションを発表できるということになりますね。

 そうですね。この先ネタに困ることはないでしょう(笑)。

■"こだわり"を集積させて一着の服に

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―今回のコレクションは、ジャージのセットアップが象徴的。リバーシブルアイテムも展開されます。

 ジェンダーレスということで、女性が着ても男性が着ても良い感じの丈感にするため、ジャージはかなり股上を落としています。リバーシブルのダウンジャケットは、とても良い出来に仕上がりました。その理由は、オープニングセレモニージャパンさんのデザイナーチームと協力できたこと。これまで自分のチームとしか服を作ってきませんでしたが、リバーシブルのファスナーの調達面などで情報共有できたことは良かったですね。

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―ロングシャツとブルゾンを合わせるというスタイリング(上記写真)が独特です。

 シャツはボックス型シルエットで、元々ショート丈のブルゾンと合わるというイメージで作りました。全体的にパターンはヨシオ クボのものが多いんですが、袖のアームホールを細くしてすっきりさせています。ビッグサイズのものをゆるっと着るよりも、自分がゼロからデザインしたブルゾンに関してはすっきり体のラインに沿わせたものにしたいという哲学があって。細かいところで言うと、前立てを垂直にするのも僕のデザインでは絶対にありえないんです。

―ステッチにもこだわっていますね。

 5ミリのステッチを7ミリに変えるだけで全く違う服になります。だからインチを使うインポートブランドの服と、ドメスティックブランドの服が全く違って見えてくるんだと思うんですよ。ディテールの集積がそのシャツになるわけですから、ステッチの幅を変えることでも服のオリジナリティは確立されてくると思っていて、例えばスタンダードに仕上げたい時は、ステッチの幅を5ミリや1センチにするとデザインが落ち着いたり。今回のコレクションでも、服のデザインに合わせてステッチ幅を調整しました。

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―グラフィックについて教えてください。

 イメージを直接的に使うのは嫌だったので、小さくカナダのマークが入っていたり、ストーリー性を持たせてありますが、結局柄というのは色の配分だと思っていて。オレンジ色がポンポンポンとこれぐらい入ったらいいなという考えが先にあって、じゃあオレンジを何で表したらいいかという流れでグラフィックを作っています。

■「一大ムーブメントが起きるくらいのインパクトを」

―コレクション継続には定番アイテムを作ることが重要だと思いますが、その辺はどのようにお考えですか?

 そうですね。ただ、定番を作るって本当に大変。今、全てのブランドを合わせて年間600弱のアイテムを作っているのですが、色々なアプローチで服を展開して、運良く定番アイテムが生まれてくれればというくらい。なので、継続が重要ですね。

―小物の展開は?

 スポーツというジャンルなので、例えばサッカーのキーパーグローブとかいいですね。以前、スポーツブランドの展示会で見た時に気付いたのが、指の部分に補強パーツが入っているんですよね。恐らく指を骨折しないためだと思うんですが、もしもっと伸びていたらそれこそ凶器みたいでしょう(笑)。そういったアイテムを組み合わせたコーディネートも面白いので、色々挑戦してみたいと考えています。

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―yoshio kubo | OPENING CEREMONYが今後、目指すところを教えてください。

 やるからには、いろんな人に着てもらえるラインにしなければと思っています。オープニングセレモニージャパンさんのデザイナーチームに協力頂いているので、クオリティもいいですし。調子に乗ったようなことは言えませんが、一大ムーブメントが起きるくらいのインパクトを残せるような仕事をしていきたいとは考えています。

関連記事:ヨシオ クボとオープニングセレモニーがコラボ、ジェンダーレスな新ライン発売

(聞き手:芳之内史也)

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