【連載:30歳の景色】編集者 軍地彩弓

提供: SK-Ⅱ

 女性にとって年齢は大きな意味を持つ。SK-Ⅱが実施した意識調査によれば、30歳は最も迎えることが不安な年齢であり、20代女性の過半数が30歳を迎えることに不安を抱いているという。女性にとっての年齢とは、どういう意味を持つのか。そして、人生の先輩たちはどのように年齢、そして30歳と向き合ったのか。短期連載「30歳の景色」、第一回は編集者 軍地彩弓。

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-30歳の頃、何をしていましたか?

 ちょうど「ViVi」時代ですね。22歳で編集部に入り、中堅と呼ばれるようになった年齢。当時はトップランナーの「JJ」に「CanCam」が追随していて、ViViは三番手だったんです。巻頭ページは担当していたけど、やってもやっても超えられない壁があると感じていてとにかく必死で。編集部では月の半分以上朝までコースでしたね。

- 仕事に夢中だったんですね。

 40歳で「GLAMOROUS」を作っているのでそれまではViViで編集道を邁進していました。よく、人生ってゼロのつく年に大きな区切りを迎える人は神様から与えられた道を進んでいると言われているそうですが、私の場合、父親が亡くなって上京したのが20歳、一番大きな転機だったGLAMOROUSを創刊したのが40歳。30歳は仕事に関しては脂が乗り始めた時期ですが、ちょうど結婚をした歳なんです。

- 30歳での結婚は当時は遅い方だったのでしょうか?

 私の実家は茨城なんですが、田舎の常識で言えば遅かったと思います。ただ母親は私が結婚するとは思ってなかったみたいで、報告した時はとても驚いていましたね。親としては地元の高校から大学に進み、地元で就職し、結婚してほしいという願望があったようですが、私は真逆を進んでいて全く親の常識にはまっていない子だったので(笑)。

- 周りの女性たちはどうでしたか?

 ちょうど私が上京した1年前に男女雇用機会均等法が施行されたこともあってか、同じ大学の同級生の女子は結婚している子の方が少なくて。だから東京では早かった方で、田舎と東京でギャップはあったかもしれません。結婚が決まったのは29歳で世間的にはいいタイミングだったので「よかったね、ギリ30で」「かけこみ!?」などと言われましたね。

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- 実際はどうしてこのタイミングで結婚を決めたんでしょうか?

 結婚を前提に付き合っていたわけではなかったので、「結婚しよう」と言われて正直、驚いたくらい。振り返っても本当に地を這うような20代でしたし、「私に求婚するとは!結構な勇気があるなあ」と思ったんです(笑)。当時の編集長が結婚式のスピーチで「軍地は本当に仕事ができるんです。それゆえに、会社に三泊四日で泊まっている。そんな女ですがどうぞよろしくお願いします」と言って、彼の親戚は全員ドン引きしてしまったことがあって(笑)。良くも悪くもそういう状況でしたし、これ以上の人が現れるとも思えなかったですしね。

- そうだったんですね。プライベートも仕事も充実しているように思えるのですが、年齢的な焦りのようなものはあったのでしょうか?

 焦りとは違うかもしれませんが、私はフリーライターとしてキャリアをスタートさせました。時代的にも社会的地位は決して高くありませんでしたから、発注がきた仕事に対してはとにかくまっすぐに取り組むようにしていました。そうしてるうちに、徐々に「企画を出してみない?」と言われるようになって、少しずつできることが広がっていきました。今でも一番の親友と思っている4歳年下の鴉田さん(現・With編集長)がViVi編集部に入ってきて二人三脚で頑張ってJJを抜くことができたんです。ただ仕事の成果が上がって褒められ、収入も少しずつ増えていっても、終身雇用の正社員ではないですから。なんとなく編集者という仕事は35、36歳がピークで、それを超えれば仕事は減っていくんだとぼんやりと思い込んでいたんです。いつまでも続けられないものという認識だったから常に全力だったんだと思います。

- 実際は、現在も全く仕事が減っていませんね。

 そうですね。私はおそらく振り返ると大器晩成型だったんだと思います。ViViに捧げていた30代の頃は、体力の衰えを気にしている暇もないほどに仕事量があったので、引き続きとにかくがむしゃらでした。その当時は1人で50ページくらい抱えていましたから。でも、40代になるともっと増えて、100ページほど見ていて。結婚した当初は「いつか仕事は減る。そうなったら専業主婦になるかもね」と言っていたのに、どんどん嘘つきになってしまって。だから今でもパートナーからは「騙された」って言われます(笑)。これには本当に申し訳ない気持ちです。

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- 仕事の原動力は何だったのでしょうか?

 ただただ、ファッションの仕事が本当に楽しすぎて。30歳を超えると仕事の幅も広がるし、出会える人も増える。プロフェッショナルな仕事ができる機会が増えるようになって。だからもう悩む時間も、立ち止まる時間も許されなかったです。

- 「結婚」は軍地さん自身にどのような影響を与えましたか?

 正直フリーランスだった私の生活が安定しました。それまでは足の付かないプールをずっと泳いでいるイメージで、立ち止まると多分沈んでしまうから、病気をしても休めないし、骨折をしても病室で仕事をしていました。パートナーができたからと言ってそのスタイルを崩したというわけではないですが、強いて言うとしたら足のつくプールに移ったというイメージで、疲れてしまってどうしようもない時にぽんと足がつけるというような安心感をもらえたようで、感謝しております。


- 仕事に対してはどうでしょうか?

 以前は「仕事がなくなったらどうしよう」という不安が根底にあって言われた通りにしなきゃ、と思うこともありました。安定したことで、言いたいことを言えるようになったのかもしれません。ダメなものはダメ、いいことはいいと割り切れたことが、結果いいものを作ることに繋がったと思っています。

- 結婚したことが編集者としての仕事の飛躍に繋がった。

 そうですね。ふと、結婚しなかったらどうなってたのかなと思うんです。一緒にいる時間を大事にしようと思ったり、ご飯作ろうと思ったり、相手がいることでリセットできる時間を持てたことは私にとって本当に幸せなことで、結婚が全てだとは思いませんが結婚していなかったら今の自分にはなれていないんじゃないかな。彼は勤め人なので、周囲から「"家に帰ってこない奥さん"が信じられない」と言われるとよく話していましたけど(笑)。彼の望んだ奥さん像とは少し違ったかもしれませんが、私は彼がいたから仕事が思い切りできたと思っております。

- 現代の20代女性は30歳という年齢にリミットを感じている人の方が多いそうです。

 プレッシャーを感じる気持ちはわかりますが、結婚や仕事にはタイムリミットがあるわけではないと思います。私の話で言えばリミットを感じたのは30歳を超えて、子どもを産むかどうかを考えていた時です。今は子どもを産んでも第一線で活躍し続けるという道もありますが、当時フリーランスで子どもを産むということは一線を退くということでしたから、私はその決意ができないままに日々のタスクをこなしていたらそれで終始してしまいました。パートナーが応援してくれたおかげで仕事に100%の力を注ぐこともできたんだと思います。

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- 30歳という年齢だけにこだわる必要はないということですね。

 「Numéro TOKYO」に「21世紀少女」というミレニアルズにフィーチャーした連載があるのですが、意外と彼女たちの方が30歳に壁を感じているように思います。私はもう親の世代ではありますが、親世代が思う30歳と現代の30歳にギャップがあると思っていて。100歳まで生きられる時代になって、女性の働き方や社会的地位が相当変化しているので、私は30歳が成人式でもいいと思っているくらい。既成概念の年齢に囚われないで、海外に行ってもいいし、学び直してもいいだろうし、仕事や趣味に打ち込むでもいい、もっともっと遊学するといいと思うんです。不安な人は、もしかしたら今を生きてないんじゃないかな。個人的には今後、女性にはより「自立」が求められると思うんです。若い女性を中心に主婦になりたいという女性が増えていると聞くのですが、結婚するしないの選択肢の前に自分が自分を養う能力をつけておくべきじゃないでしょうか。自分の食い扶持となる仕事や技術を身につけることが年齢のリミットよりも大事だと思います。

- ではそういった20代にメッセージを送るとしたら?

 今の20代はSNSをはじめとした便利なツールがそろっていて羨ましい反面、他人からの見え方や評価にとらわれすぎていないかな、と思うんです。良いもの悪いものの評価が一方通行で、自分そのものの価値に意識を向けられていない人が多くてもったいない。人からの評価ではなく、自分の評価基準が持てれば自分らしい生き方=自立する道が自然と見えてくるんじゃないでしょうか。30歳は自分の人生がどんどん広がっていくタイミングだと思うのですが、そうするには自分自身が動かなければ。同じ場所で同じようなコミュニティの中だけでいるだけでは何も変わらない。動いた人には動いただけの未来が待っていると思うのです。20代では色々なことを吸収して、自分の可能性を広げることに時間をかける。30代ではそれを摘み取っていくことに注力していけばいいのではないでしょうか。

軍地彩弓:
 大学在学中からリクルートで制作の勉強をする傍ら、講談社の「Checkmate」でライターのキャリアをスタート。卒業と同時に講談社の「ViVi」編集部で、フリーライターとして活動。その後、雑誌「GLAMOROUS」の立ち上げに尽力する。2008年には現コンデナスト・ジャパンに入社し、クリエイティブ・ディレクターとして「VOGUE GIRL」を創刊。2014年には、自身の会社である株式会社gumi-gumiを設立した。現在は雑誌「Numéro TOKYO」のエディトリアルディレクターから、ドラマ「ファーストクラス」(フジテレビ系)のファッション監修、情報番組「直撃LIVEグッディ!」のコメンテーターまで、幅広く活躍している。

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