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クリエイティブディレクター

コレット閉店の意味

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先日、ファッション業界に驚きのニュースが駆け巡った。パリのセレクトショップ「コレット」が12月20日をもって閉店すると、発表したのである。

コレットと言えば、セレクトショップが脚光を浴びるようになった90年代後半、火付け役となった店舗だ。知り合いのバイヤーさんが口々に「コレット」の名前を出していたので、そんなに素晴らしいのかと思っていた。

実際、2002年に訪れてみると、世界の有名ブランドをセレクティングして編集し、コーディネート提案するセレクトの王道との印象を受けた。それまでパリの高級店と言えば、エレガンス&クラシカルな品揃えが少なくなかったが、ここは著名なラグジュアリーブランドに加えて気鋭のクリエーター系も抵抗無く取り入れ、見事に編集したところが若手バイヤーが惹かれた理由だと思った。

ディスプレイでお客を魅了する手法にも長けていた。立地はパリ1区、ヴァンドーム広場の南を貫くRue Saint HonoréとRue du 29 Juilletが交差する南東の一角。世界をリードするにふさわしいウィンドウで、買い物客はもとよりVMDの担当者まで魅了するのではないかと感じた。それだけメディアが取り上げるのも納得がいく。

MDは日本では直営店でしかお目にかかれないシャネルやグッチ、クリスチャン・ディオールを筆頭に、ヘルムート・ラングやジル・サンダー、ヴェロニク・ブランキーノ、マーク・ジェイコブス、ジミー・チューなどをミックス。それらを外し崩しのテクニックでコーディネートするという、単なるバイイング力だけでなく、ディレクションの上手さを見せつける。

お客はアウターからインナー、そして靴まで購入すれば、自分であれこれ考えて組み合わせる必要もない。ブランドオンリーショップでは体感できない提案力がお金はあるが、センスがないと揶揄されるセレブの御用達となり、一気に業界の話題をさらっていったのだと思う。

ファッションだけでなく、地下のカフェはウォーターバーとして硬軟取り混ぜた水を何十種類も揃えている。1階のCDコーナーにもオリジナルのコンピレーションアルバムを置くなど、ウエア以外でも「編集」というコンセプトを踏襲する。この辺の統一感が特徴なのかとも感じた。

ショップの話では、オーナーのコレットはもちろん、在籍するスタッフがショップディレクターとして店舗のイメージ作りからバイイング、VMDまでの全般に携わっているということだった。それがブランド側に「エクスクルーシブ」なんて野暮なことを言わせず、単品、単発でも卸の許諾を取り付けさせたとすれば、凄いの一言に尽きる。

もっとも、提案型セレクトショップという点では、日本の店舗も負けていない。また、バイイングや編集能力もコレットより優れた店はあると思う。しかし、扱う商品のすべてが世界的に著名なブランドという点は、日本のショップがどう足掻いてもできないこと。パリという情報発信の拠点、セレブはもちろん世界中から観光客が集まること、そして街並が醸し出す独特な佇まいがあるからこそ、実現できるのかと思ったりもした。

ただ、一等地にあるだけに家賃などのコストは半端ではないはずだ。セレクトされた商品は高級品ばかりなので確かに販売すれば客単価は高い。しかし、一般のパリ市民や観光客が頻繁に買えるような価格ではないから、決して回転率が良いとは言えない。フランスのメーカーさんによると、実態は取り扱うブランドからプロモーションの手数料を得ていたというから、それがランニングコストの原資になっていたようだ。

ブランド側も「パリのコレットなら、宣伝販促費としては安いもんだ」と考えたと思う。店として売上げ的にペイしなくても、手数料で運営費を賄っていく。その意味で、セレクトショップにおけるビジネスモデルの一つを作った点は、画期的なことである。

それでも、消費環境の厳しさから世界中の小売業が低迷する中、コレットも例外ではなかった。ここからはあくまで私見だが、コレット終焉のワケは、この20年間で完全に消費者の感覚が変わってしまったこともあるだろう。

そもそもセレクトショップとは、国内外のブランド(世界の著名ブランド、ファクトリー系、小物など含む)を仕入れて編集し、お客に提案する業態だ。そこではバイヤーやディレクターの優れた感性、高い能力が評価される一方、品揃えに統一感が出しにくく、ショップのストーリーが見えづらい。

また、仕入れ予算やスペースに限りがあり、 品揃えの根幹を成す型、色、サイズは制約を受けてしまう。しかも、展示会段階で買い付けた商品がVOIDになったり、納期が遅れたりして、期中のMDがグチャグチャになるリスクさえある。

ブランド直営店のように全型、全色、全サイズを揃えることはできないから、サイズが1つしかないとか、型が絞り込まれているとか、あるいは単色しかないことで、買う気を削がれるお客もいる。それが販売ロスを生むというケースだってないことはない。

一方、この20年の間にザラやH&MといったグローバルSPAが台頭し、ユニクロのようなベーシックで機能的ウエアも勢力を拡大した。これらはセレブやお金持ちのファッション消費に対する考えさえ変えさせた。「シンプルなTシャツに200ユーロも出す必要はなく、ザラで十分だ」という意識変化だ。

しかも、SPAはMDをしっかり組み、自社企画を型、色、サイズに満遍なく落とし込むので、お客とっては商品が非常に選びやすい。価格が手頃なことで、単品買いにもコーディネート買いにも向くのである。

言い方は悪いかもしれないが、グローバルSPAとファストファッションに末端までの消費者はもちろん、お金持ちまでもが「飼いならされた」ということである。その点、日本の大手ショップはセレクト爛熟期に入ると、マーケット変化にいち早く対応した。インポートやデザイナーの商品は残しながらもセーブし、自社のオリジナルやプライベートブランドを加えて、SPA&バイング型セレクトショップへと進化していった。

見せる商品はインポートやデザイナーズだが、稼ぐアイテムはオリジナルという戦略である。ただ、店頭では両者のギャップも出てきたため、修正を加えてながら、今ではオリジナルが半数以上を占めるセレクト型SPAに変貌している。もはやこれがセレクトショップと言えるのか。それでもお客をしっかりつなぎ止め、売上げを伸長させているのだから、スパイシーでエッジの利いた商品をセーブすることが、結果的に「吉」となったということだ。

ただ、最近では日本のセレクト型SPAが、どこも似たような商品ばかりを置く紋切り型になってしまった。SPAだから商品企画は万人向けで、品揃えのバリエーションを広げるために型や色、サイズで展開する構成になる。確かに着やすさ、買いやすさは感じられるが、コレと言った個性的な商品にはほとんど巡り会えない。だから、個人的には中々購入までにいたらない。

コレットの閉店は時代の流れかもしれないが、それが新たな業態の出現を暗示する。ECがますます浸透する中で、お客が国境を越えて商品を手に入れる利便性を得た今、次に求められるショップとは何か。その辺に加え、一等地に出店する意義を併せ、新業態を考えていく必要があると思う。

釼 英雄