MISTERGENTLEMAN 20年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP.COM

Kaijiro Masuda

"メタボセクシャル"の衣食日記(7-3)ーースポンサーの元でのデザイナービジネス

増田海治郎

ファッションジャーナリスト

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MISTERGENTLEMAN 20年春夏コレクション
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日本のファッションブランドは、欧米勢と比較すると"自力"が多い。少ない自己資本でブランドを始め、少しずつゆっくり大きくしていくのが常で、デザイナーと社長を兼ねているケースがほとんどだ。「OFF-WHITE(オフ-ホワイト)」のヴァージル・アブローを筆頭に、近年のラグジュアリー・ストリート勢の成り上がりのスピード感はすさまじく、あっという間にスターダムにのし上がる様をこの目で見てきた。その成功の背景には、経営的な数字を見るひとはもちろん、綿密に組み立てられたMD、営業、生産管理、デザイン、プレスのチームのサポートがあるからで、かれらを見ているとスポンサーの元でブランドを運営するのも悪くないと思ったりする。

「MISTERGENTLEMAN(ミスター・ジェントルマン)」と「DIET BUTCHER SLIM SKIN(ダイエットブッチャースリムスキン)」は、珍しくバッカーが背景にあるブランドだ。ともに独立系でスタートしているが、前者は2017年にマッシュホールディングスの傘下に、後者は2018年に飲食業などの幅広く手がけるインスタイルグループの傘下に入っている。オフ-ホワイトやパーム・エンジェルスを羽ばたかせた伊のニューガーズグループのような潤沢な投資を受けているわけではないにせよ、とくに後者は青山店(DBSS青山)のオープン、そして今回の10数年ぶりのショーと、これまでとは違ったダイナミックな動きを見せている。

MISTERGENTLEMAN 20年春夏コレクション
MISTERGENTLEMAN 20年春夏コレクション

ミスター・ジェントルマンから言及しよう。まず感じたのは、トラッドの匂いがいい意味で薄くなり、ジェンダーレスな雰囲気が強くなっていること。袖にスリットが入っていて腕を見せることができるジャケットやジージャン、ノースリーブのブレザー、多彩なショートパンツなど、肌を積極的に見せることに重きを置いている。ここ数シーズンのパリでは、「PALPMO SPAIN(パロモ スペイン)」や「LUDOVIC DE SAINT SERNIN(ルドヴィック デ サン サーナン)」などのジェンダーレス色の強いブランドが台頭してきているが、そのニュアンスをリアルクローズの中で違和感なく表現していることに2人の力量を感じた。

フィナーレの10色展開のタイダイプリントのルックは、先週末の台風19号の被害を踏まえて、急遽変更したもの。「ファッションを通してポジティブなパワーを伝えたい」という思いを込めたという。ヒッピーの多色使いのイメージが強いタイダイを、2色のみにするとここまでエレガントに変化することに驚いた。

来月には渋谷パルコに、都内2店舗目のショップ「WAVE(ウェイヴ)」がオープンする。当初の想定よりはゆっくりした動きに思えるが、PARIYAのお惣菜とともにPARISにお店ができるのも、そう遠くない未来に実現するのではないだろうか。パリでデリ食べ放題したいな。

DIET BUTCHER SLIM SKIN 20年春夏コレクション
DIET BUTCHER SLIM SKIN 20年春夏コレクション

タミさんのダイエットブッチャースリムスキンは、個人的に思い入れの強いブランドだ。タミさんとプレスの成田さんの人柄も含めて。12年前に代々木上原のモスク(東京ジャーミイ)で行われたショーは、とくに深く心に刻まれていて、個人的にイスラム文化に興味を抱くキッカケにもなった。ショーはそれっきりだけど、その後も展示会で拝見する度に、タミさんの灰汁というかパンク魂が存分に反映されたショーをまた見たいと思っていた。

12年ぶりのブッチャーは、ずいぶん垢抜けていた。20代の線の細いエリート・ビジネスマンが似合いそうなツルッとした服。グレーやネイビーの機能素材のセットアップは、今もっとも市場から求めらているもので、ビジネスとカジュアルの中間を上手く提案できている。3つのミニバッグの持ち方も、おじいちゃんモデルの使い方も、アーティストとのコラボレーションも悪くない。でも、タミさんの"匂い"みたいなものが、僕には感じ取れなかった。「ブッチャーと骨董通り」「8万5500円のサブスクリプション」を初めて聞いた時と同じような違和感を感じた。

上手にマーケティングされた買いやすくカッコいい服は、「HARE(ハレ)」あたりに任せておけばいい。もはやダサいなんて口が裂けても言えないくらい洗練されているし、価格の面ではハナから勝負にならない。ならば、タミさんが作るべきは、タミさんの思いがもっともっと込められた"臭い"のある服ではないだろうか。タミさんにしか作れない服を次は見てみたい。

【増田海治郎 "メタボセクシャル"の衣食日記】
"メタボセクシャル"の衣食日記(7-1)ーー20代と40代
"メタボセクシャル"の衣食日記(7-2)ーーHYKEの現在地とこれから
"メタボセクシャル"の衣食日記(7-4)ーー東京ファッションアワード組もろもろ

増田海治郎

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