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Kaijiro Masuda

"メタボセクシャル"の衣食日記(8-2)――モードと機能とソーシャルディスタンス

増田海治郎

ファッションジャーナリスト

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 副都心線の明治神宮前駅を降りて、徒歩で表参道ヒルズに向かう。途中で細身のスーツ姿のハタチ前後の若者2人組とすれ違った。続けざまにもう1人。長らくオーバーサイズ、カジュアルの流れが続いていたが、ようやく若者たちがドレスアップの楽しさに目覚め始めたのかもしれない……。コロナ禍でファッション消費は相変わらず鈍いままだけど、そんな少しの希望を感じながら「YUKI HASHIMOTO(ユウキハシモト)」のショー会場に足を踏み入れた。

【コレクションレポート】ユウキ ハシモト、初のショーで"宇宙での活動服"を披露 DHLとのコラボアイテムも

 橋本祐樹は京都造形京都造形芸術大学を卒業後、アントワープ王立アカデミーに進学。学士課程を修了後、「Raf Simons(ラフ・シモンズ)」と「Maison Margiela(メゾン マルジェラ)」でデザインアシスタントを経験する。その後に、ブランド作りの基礎を学ぶため修士課程へ進学し、2019年春夏に満を持してデビューを飾った。経歴はパワーワードのオンパレードで、間違いなくサラブレッドと言える。

 会場はシルバーの箔で覆われた未来的な空間。通常なら7〜8人が座れそうな長椅子に、3人が間隔を空けて座る。今のところ、ソーシャルディスタンスの解釈はブランドによって大きな開きがあり、通常のショーとさして変わらないショーもあれば、極端に気を使ったショーもある。後述するミーンズワイルは、立ち見でソーシャルディスタンスを確保しつつも、観客は通常のショーの2/3ほど。ユウキハシモトは後者だが、客席が埋まらないように見えたのは少し勿体ないと思った。

 ショーが始まった。セットと同じように未来的な印象を与えるルックが多い。テーラードとコートのイメージが強いブランドだが、そこにスポーツ、ワーク、アートの要素を複合的に加えてフューチャリスティックなイメージを紡いでいる。感心したのは、ルック全体のフォルムを作るのが上手いこと。全体的には細身に振っているけれど、オーバーサイズとバッグを上手く織り交ぜて、バランス良くまとめている。初めてのショーとは思えない完成度の高さを感じた。

 今シーズンのテーマは“スペースリアリティ”で、インスピレーション源は芸術家のオラファー・エリアソンのサステナブルな作品。「彼の作品は物質的には無機質な雰囲気である一方で、精神的には強いメッセージを孕んでいる。その2面的な要素に着目し、洋服が2つの役割を担えるような構造的な仕掛けを施した」と橋本はプレスリリースで説明している。

 いくつかのルックは、ラフ・シモンズのショーをパリで見ているかのような錯覚に陥ることがあった。それは褒め言葉であると同時に課題でもある。昨年、ジャン・ポール・ゴルチエ氏にインタビューした時に「もっとも優秀だったアシスタントはマルタン・マルジェラで、彼は私と同じものを作らず全く逆のものを作った」と話していたのが強く印象に残っている。「ラフっぽい」ではなく「ユウキっぽい」を早く確立してほしい。

【全ルック】YUKI HASHIMOTO 2021年春夏コレクション

 お次は藤崎尚大が手がける「meanswhile(ミーンズワイル)」。日本には機能とモードの両面からアプローチする“機能モード系”のブランドが多く存在する。「White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)」「and wander(アンドワンダー)」「F/CE.®(エフシーイー)」「MINOTAUR INST.(ミノトール)」が代表的な存在で、2016年にスタートしたミーンズワイルはこのジャンルの新星的存在だ。

【コレクションレポート】「ミーンズワイル」初のファッションショーは櫓を設置、シーズンレスに組み立てたコレクション発表

 このブランドの一番の持ち味は“機能に裏付けられた重ね着”にあると思う。それはファーストショーでも遺憾なく発揮されていて、袖を取り外すことができるスタジャンやダウンジャケット、前立てに取り外し可能なパーツを付けたMA-1などは、ランウェイでも新鮮に見える。コートやジャケットの普通の形から領域が拡大している(はみ出している?)ように見える重ね着、ドッキングは、このブランドのシグネーチャーになりつつあると思う。

 寝袋に包まったまま歩いているように見えるルックは、ステイホーム時代との連動性も感じる。以前から得意にしていたとはいえ、ガスマスクのようなマスクなどの顔を覆う表現も、今の時代をストレートに反映している。また、スタイリングのポイントとして、アウトドア用途のゲイターを90年代のギャルのルーズソックスのように使ったのも面白い。ショートパンツとゲイターを組み合わせて膝小僧を覗かせるスタイリングは、ミーンズワイルの“絶対領域”だ! 

 惜しむらくはベージュとブラックを基調としたカラーパレットが、ランウェイでは単調に見えたこと。本来はショーで見せることを予定していた2020-21年秋冬のルックが出色の出来だっただけに、少し惜しい気もした。でも、思った以上にランウェイとの相性は悪くない。1度限りにするのも選択のひとつだが、継続参加を熱望します!

【全ルック】meanswhile 2021年春夏コレクション

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【"メタボセクシャル"の衣食日記】
(8-1)ーーコースではなくビュッフェを選んだ小塚シェフ

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