「meanswhile」2021年秋冬コレクション
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Kaijiro Masuda

「メタボセクシャル」の衣食日記(9-3)――機能系モードはクールジャパンの筆頭

増田海治郎

ファッションジャーナリスト

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 人々のファッションへの優先順位が低下するなかで、中〜高価格帯のジャンルで唯一絶好調と言えるジャンルが「機能性とモード感を両立させたプロダクト寄りの日常着」です。日本にはこうしたアウトドアブランド顔負けの機能性を備えた洗練された服を提案しているブランドがたくさんあります。そのトップに位置するのが「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」で、「ノンネイティブ(nonnative)」「ミノトール(MINOTAUR INST.)」「アンドワンダー(and wander)」「エフシーイー(F/CE.®️)」「ミーンズワイル(meanswhile)」らがしのぎを削っています。どのブランドも海外売上比率が高く、欧米では日本以上に知名度が高かったりします。アンドワンダーに至っては海外の取り扱い店舗が80件を超えていて、このまま順調に成長すれば10年後に日本の「パタゴニア(Patagonia)」的な存在になってもおかしくないとさえ思っています。今回取り上げるのは、昨日フィルム形式で最新コレクションを発表した「エフシーイー」と「ミーンズワイル」です。

F/CE.® 2021年秋冬

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「F/CE.®」2021年秋冬コレクション

 「エフシーイー」を手掛ける山根悟史さんは、現代日本におけるスーパーマンです。①エフシーイーのデザインと運営②北欧のアウトドアブランド「ノルディスク」の東京店と京都店の運営③外部ブランドのデザイナー④日本を代表するインストゥルメントバンド「toe」のベーシスト⑤お父さんーーの5つの役割を完璧にこなしています。こうしたいくつもの肩書きを持っている人って、なんとなく常にせわしなくギラギラしているイメージがありますが、山根さんはいつも自然体でギラついていません。コロナ禍前は、ピッティとパリで「エフシーイー」の展示会を終えた翌日に、南米に飛んでtoeのライブをやっていたりする。こういう自由で柔軟な生き方は、もはや経済大国ではないコロナ後の日本人が目指すべき方向だと思うのです。

 文化度が全方位的に高い人なので、やや青みがかったフィルムのクオリティもえげつないです。服は機能性を前面に押し出すというよりは、デザインが気に入って買ったら機能性も付いてくるという類のもの。そこが初めてショーをやった3年前の2018AWシーズンとは大きく異なるところで、いい意味でぱっと見は普通の服になっています。街にも自然にも調和し、流行に左右されず長く着られる服。最初は自然の中を歩き、中盤で画面が無機質なコンクリートに切り替わるのも、ブランドコンセプトを表現する上で完璧な演出でした。

 個人的にもっとも印象的だったのが、中盤に登場したクルマの使い方です。英国王室御用達の初代レンジローバー。今シーズンのコレクションは前シーズンに続き英国をテーマにしているので、表面的にはその象徴とも取れますが、私はその裏側にメッセージが隠されていると感じました。環境ポリスはこういうかもしれません。そんな燃費の悪く環境負荷の高いクルマを推すとは何事かと。でも、彼はこう答えると思うのです。「1台のクルマを乗り続けることは、視点を変えれば間違いなく地球に優しい」と。「エフシーイー」のコレクションも当然サステナブル寄りの素材の提案が増えていて、旧き良き時代の化石のようなクルマを登場させることはリスクでもあります。それを分かった上であえて使ったことに、デザイナーとしての矜持と信念を感じたのです。

 「ミーンズワイル」は機能系モード服の中では新星的存在で、デザイナーの藤崎尚大さんは頑固です。昭和の時代なら確実にちゃぶ台をひっくり返すタイプ(笑)。洋服作りにおいて確固たる信念があって、それ以外を認めないような節があります。本人も服も骨太なのです。

 東京ファッションアワード受賞組は今シーズン、ロンドンファッションウィークの公式枠で映像を披露できるまたとない機会を得ました。あくまで個人的な採点ですが、6組のブランドの中でぶっちぎりで最下位だったのが藤崎さんでした。映像はわずか20秒ほどのティーザーで、服は1型がすこし映るだけ。ある意味では贅沢な使い方ですが、本編の東京への誘導が皆無なので、チャンスを自ら潰しているようにしか見えなかったのです。年々影響力が衰えてきているのは否めませんが、腐ってもロンドンです。同じ条件で参加して素晴らしい映像を披露した「リコール(RequaL=)」は、同じ業界の人から「あれってどういうブランドなの?」と聞かれる機会が増えました。コロナ明けには、きっとロンドンから招待の声がかかるのではないかと思っています。

 東京での1分35秒のフィルムは、とてもよくできていました。最初に長い年月をかけて自然に形成された地層と鉱物が登場し、英語のナレーションと英語と日本語の字幕が流れます。日本語の字幕を引用します。

Aはある目的のために人為的に製造または建造されたもの

Bは人手を加えていない、ありのままの形で存在するもの

AとBは、この世に同時に存在する

その中から生まれる可能性を探る

元々そこにあったものに新しい価値を見出す、生み出す

Aの中から生まれるもの、Bの中から生まれるもの

私たちはその狭間に立つ

形は機能に従う/機能は形に従う

二つの狭間を行き来すること

そこから生まれる可能性を探ること

 ね、頑固でしょ(笑)。でも、こうして改めてコンセプトを聞くと、彼の服が確固たる信念に基づいて作られているかが分かります。でも、フィルムに登場した服は数体のみで、展示会で見て着てチェックするしかありません。んっ? これはひょっとして高度に捻くれた誘導策なのかな? はいはい、明日見に行きまよー。

meanswhile 2021年秋冬

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