SHINYAKOZUKA 21年春夏コレクション
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Image by: ⒸSHINYAKOZUKA

Kaijiro Masuda

"メタボセクシャル"の衣食日記(8-1)ーーコースではなくビュッフェを選んだ小塚シェフ

増田海治郎

ファッションジャーナリスト

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SHINYAKOZUKA 21年春夏コレクション Image by ⒸSHINYAKOZUKA
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「ヘッドフォンをして椅子に座ってください」

 映像の冒頭で英語の注意書きが流れる。鑑賞している場所は渋谷のDJバー「Bridge」で、残念ながらヘッドフォンは持ち合わせていなかった。4年モノのiPhone7 Plusの画面上では、井戸の底のような暗い闇の中で「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」の2021年春夏コレクションを着た男が脱出しようとしてもがいている。

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 画面は9分割の画面に切り替わり、もがく井戸の男の画面は1/9の存在になる。カメラの望遠ズームレンズを広角にゆっくり切り替えるようなかんじ、と言えば分かりやすいだろうか。9つの画面は暗めのものが多いが、なかには青空の写真もある。やがて、9分割の画面が5つ出現し、天井から明るい光が降り注ぐ広大な白い空間が出現する。そこにiPhone上では豆粒のような大きさの15体のモデルたちが登場し、映像はフィナーレを迎える。服の詳細はほとんど見えなかったけれど、このブランドの世界観のようなものは十分に伝わってくる映像だった。ホテルでヘッドフォンをして見直したら、イープ(iiP)の黒瀧節也が手掛けた音も素晴らしかった。

【全ルック】SHINYAKOZUKA 2021年春夏コレクション

 今シーズンのテーマは「カラーチャート」。最終的に45分割された画面のように様々な“色”を選べるコレクション、というわけだ。リーバイスの1stや501などの誰もが知る永遠の定番をリサーチせずに具現化する「AS IT WAS」シリーズをはじめ、70年代にサーファーの間で流行したアメリカの「ファーラー(FARAH)」、アロハシャツで有名な「レインスプーナー(Reyn Spooner)」、ワークウェアの「ディッキーズ(Dickies)」といったブランドとのコラボレーションを豊富に揃える。映像の公開に先駆けて取材した展示会では、コラージュアーティストのヤビクエンリケ ユウジ(Yabiku Henrique Yudi)と協業した1点物の作品や、ブランドを象徴するバギーパンツのディッキーズ版に惹かれた。上質な幕の内弁当のような、選ぶのが楽しいコレクションだと思った。

SHINYAKOZUKA 21年春夏コレクション Image by ⒸSHINYAKOZUKA
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 「COVID-19の影響により、ファッションがアプローチすべきもの、ファッションが必要とされる要素、何よりファッションであるべきものが2010年代と比べて大きく変化したと感じる。そういう状況では、ひとつの煮詰めたコンセプトに基づいて作るコース料理のようなコレクションよりも、あらゆる人に楽しんでもらえるようなビュッフェのようなコレクションを作りたいと思った」と小塚は説明する。

 この説明を聞くと、45分割の映像とテーマのカラーチャートが結びつく。冒頭の井戸の男は、COVID-19の目に見えぬ姿に怯えてもがいているのかもしれない。でもそれは、人類が共通して抱えている問題で、個々人が思い悩むようなことではないのだ。そんなポジティブなメッセージを映像から感じた。

 小塚信哉は2013年にセントラル・セント・マーチンズのメンズウェア学科を卒業し、帰国後の2015年にブランドをスタート。30代が手がける日本のメンズブランドでは有数の売れているブランドで、コロナ禍前はパリでの展示会も継続して行なっていた。今回の映像を見て改めて思ったが、このブランドはクリエーションとビジネスのバランス感覚に非常に優れている。器用すぎて突き抜けた部分が少ないとも感じるが、その課題が解消できたら、将来的にはパリのランウェイも見えてくるのではないだろうか。

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