左)赤坂公三郎、右)川西遼平

Kaijiro Masuda

【対談】「コウザブロウ」×「ランドロード」2人のデザイナーが語る東京とファッションの今

増田海治郎

ファッションジャーナリスト

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左)赤坂公三郎、右)川西遼平

 メインスポンサー決定が会期の2ヶ月前だったこともあり、やや盛り上がりに欠けた感のあった初めての楽天ファッション・ウィーク東京。そんな中で存在感を放ったのが、ニューヨークを拠点に活動する2人の日本人、コウザブロウ(KOZABURO)の赤坂公三郎と、ランドロードニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)の川西遼平だ。ショーを終えたばかりの2人に、ファッションジャーナリストの増田海治郎が迫った。

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ーー海外に住んでいる日本人デザイナーならではの視点が新鮮で、いい意味で東京では異質感のあるショーでした。今回の合同ショーはどういう経緯で実現したのでしょうか?

川西遼平(以下、川西):JFW推進機構の国際ディレクターの今城(薫)さんから「次の東京で何かやりませんか?」と話をもらったのが最初です。ただ、2020年春夏コレクションはニューヨークで6月に発表してオーダーも閉めていたので......。

赤坂公三郎(以下、赤坂):タイミング的に今じゃないのかな、というのが最初の感想です。

川西:そうしたらわざわざNYにまで来てくれて。

ーー具体的にいつ決まったんですか?

川西:8月中旬に日本に帰ってきた時に最初の話をもらって、正式に決まったのは9月中旬。1ヶ月間で準備した感じです。

ーーかなり急な話だったんですね。2人はロンドンのセントラル・セントマーチンの同級生ですが、その頃から交流はあったんですか?

川西:全然。下手したら嫌いというか、絡むタイミングがなかった。

赤坂:ジャンルが違いすぎたからね(笑)。

川西:セントマの卒業コレクションで、僕がゴミを固めたような服を作って、コウピー君(赤坂)が僕の後だったんですよ。同じ会場で順番に40人のショーを見せるので、前の人がやらかすと次に響く(笑)。ショーの後、コウピー君が僕のところにきて「僕のショーにもゴミが落ちてんだよね......」って嫌味ったらしく言われました。

赤坂:そんなこともあったね。

川西:そうしたら今回のショーの翌日、VOGUE RUNWAYにコウザブロウだけがアップされていて、フィナーレの写真も2人で挨拶しているのに僕だけ切られていて(笑)。でも、後ろに僕のモデルが写り込んでいて、あの時の卒業コレクションを思い出して、ごめんねって思いました。同じことしちゃったなって(爆笑)。

赤坂:(苦笑)。フィナーレも分けておけばよかったのかな。

KOZABURO/LANDLORD NEW YORK 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSANP.COM
KOZABURO/LANDLORD NEW YORK 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSANP.COM

ーーでも、翌日にはコウザブロウの写真も消えてるんですよね。たぶん2020年春夏のルックは既に2人ともアップされているから、「あっ、重複している!」って中の人が気づいたんじゃないかな。古典的な和のムードに満ちた会場の演出はどうやって決めたんですか?

川西:僕の服はうるさくて、モデルのキャスティングも濃いから、会場の演出は全てコウピー君に任せました。彼の世界観でソリッドなものを見せてもらって、それをうちのアホな服達がぶち壊せばエンターテインメントとして成り立つのかなと。絶対いい仕事をしてくれるのは分かっていたし、僕がカッコつけてもコウピー君のカッコ良さには敵わないから。

ーーテーマは「グレート・シティ・トーキョー」。ストレートですね。

赤坂:ニューヨークをベースに活動する日本人が日本で初めてショーをやるということで、外から見た日本らしさみたいなのを表現したかったんです。僕は静謐でトラディショナルな日本で、遼平は90年代の原宿、ストリートカルチャー。その両極な服を、海外の人が考えるような分かりやすい日本風の同じセットで見せたら面白いんじゃないかと思いました。

川西:お互いの東京と日本の解釈をぶつけ合ったらどうなるかみたいな。

赤坂:遼平にセットを任せたとしたら、どういう風にした?

川西:うーん、全力でクマちゃんを飾るかな(笑)。

赤坂:それだと僕はやりづらいな。任せないで良かった。

川西:ランウェイに配置した枯山水も、服と同じようにペイントしたら面白いと思ったけど、コウピー君のテイストを崩さないように口を噤んでいました。でも、あらためてコウピー君のコレクションを写真で見ると、だいぶロックだよね。ミッシェル・ガン・エレファントとかブランキー・ジェット・シティを思い出すというか。

赤坂:確かにそういったもので育ってきたから,自然と出てしまうのかな。

KOZABURO/LANDLORD NEW YORK 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSANP.COM

ーー最初の太鼓の演出は、かなり本格的でしたね。

赤坂:1971年に佐渡で結成された「鬼太鼓座」というグループの人たちです。

川西:ふんどし、カッコよかったですねー。

ーーほとばしる汗がすごくて、男塾って感じ。

川西:あれはね、オイルなんですよ(笑)。

ーー(苦笑)。

赤坂:海外のゲストも喜んでくれたみたいですね。

ーー2人のコレクションから、日本のヤクザ、ヤンキー文化への憧憬みたいなのを感じました。

川西:憧れというよりは、自分が似合うのがそっち系っていう。

赤坂:僕はロッカーとかヤンキーの「システムにとらわれない姿勢」、みたいなのに憧れがあるのかもしれませんね。

川西:今の日本だと"反社"って一括りに言われちゃうけどね。

赤坂:それはネガティブなの?

川西:今は臭いものに蓋をする感じだよね。

ーー去年、ネットフリックスで60-70年代の東映ヤクザ映画を見直したんですが、当時はほとんどヒーローみたいな描かれ方ですよね。80年代のビーバップハイスクールくらいまでは、そういう空気が残っていた。その手のカルチャーを肯定するわけではないけれど、今のアレルギーは少し異常な気がします。

赤坂:僕は東京を転々として育って、中学の時は"ワル"ぶったりしていた時期もあるけれども、僕は根がどうしても悪くなかった。実は小心者なんで......。外見は"ワル"そうだけど実は中身は繊細、そういった感覚が好きで、その表現方法としてファッションと音楽に行ったんだと思います。

ーーなるほど。ファッションに興味を持ったきっかけを教えていただけますか?

赤坂:小さい頃は悪い友達を見て、「いかつい=カッコいい」みたいなイメージがありました。中学に入るとMTVとか海外のオルタネイティブロックにハマって、そのあとに裏原とかパンクを通りました。私の場合は、常に音楽が根底にあるんです。その中でもオルタネイティブの自由さ、ぶっきらぼうな感じがベースになっていると思います。

川西:僕は今回のテーマそのまんま。様々な原宿のストリート・スタイルがベースにあります。雑誌の「フルーツ」と「TUNE」が大好きで、こんな世界があるんだって思った。さらにそこから振り返ると、中川正博さんとLicaさんの「20471120」、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクの「ウォルト(W.&.L.T.)」、「クリストファー・ネメス」に「ミルクボーイ」......。鳥取の田舎だったんで、とにかく原宿に憧れていました。ロンドンにいた時も、自分が住んだことがなかったから、ずっと東京への憧れを持ち続けていた。今回、東京のど真ん中でショーをやって、ようやく東京に着地できた手応えがあります。

ーー僕も埼玉なので、その感じは分かります。

川西:雑誌で入ってくる情報が僕の東京です。住んだら違うと思うけど、僕の東京のイメージはフィッシュマンズだったりグッドイナフだったりヒョーマ君だったりが渾然一体になってる。

ーーリトゥンアフターワーズの山縣(良和)さんも鳥取ですよね。彼も藤原ヒロシさんになりたかったって言っていました。

川西:思考形態は似ているんですよ。でも、あの人はファンタジーに逃げているから(笑)。

ーーそうかもね(笑)。でも、あの人の場合、そのファンタジーがちゃんと形になってきている。ほとんど洋服を売らずに12年も生きてきているわけで、ある意味で新しいファッションデザイナーの生き方を作ったとも言えます。

川西:教育という名の宗教システム(笑)。

ーーでも、ここのがっこうの卒業生たちが、ちゃんと結果を出し始めている。

川西:文句が言えなくなりつつあるのが、ムカつきます(笑)。あの人は全力なのよ。常に全力だから。ファッション談義がしたいがために学生と話して、土日もなしでずっとファッションと向き合ってる。意味わかんないでしょ?

赤坂:本当にファッションが好きなんでしょうね。そこらへんは遼平に似てるかもね。

川西:うーん、熱いパッションという意味では似ているのかもね。

KOZABURO/LANDLORD NEW YORK Image by: FASHIONSANP.COM
KOZABURO/LANDLORD NEW YORK Image by: FASHIONSANP.COM

ーーちょっと照れてますね(笑)。話をコレクションに戻しましょう。今回のショーで表現したかったこと、伝えたかったことを教えてください。

赤坂:まず、こういうブランドがあるんだというのを見てもらいたいと思いました。インディビジュアリティーとか自由な自分らしさを表現して、どう評価されるかを見てみたかった。ニューヨークでデザインして日本で作るという形態は前例がほとんどないと思うので、そういう意味でも若い子たちをインスパイアできたら、という気持ちもありました。

川西:VOGUEの写真を見て"和風ナンバーナイン"ってジャンルを確立したな、と思ったね(笑)。ぞわぞわするようなカッコよさがあって、すごくいいと思った。和風なのにナンバーナインのいい男の汗の匂いがする感じ。もうブランドイメージを確立してきているな、と。

赤坂:遼平はそうやって分析できるけど、僕はそういうのは何も考えていない。ナンバーナインはずっと見てきたけれど、意識はしていないかな。

川西:最初に階段を降りる演出が良かったね。暗い階段だから、みんな下を向いていて、余計にナンバーナイン感が強調されてる(笑)。

赤坂:だから演出じゃないって。

川西:でも結果的にすごく美しいものになってた。セリーヌじゃなくて、コウピー君ならではのモードが描けていたと思う。

ーー映画「凶気の桜」(2002年、薗田賢次監督)のイメージもあったんですよね?

川西:2人でイメージを擦り合わせている時に、出てきたキーワードです。国粋思想に傾倒していく青年を描いているのに、聞くのはヒップホップ。2000年代の矛盾ですよね。僕らがもう一つ深いところまでやっちゃうと、若い子たちに伝わらないので、自分らが若い頃に見てきたものならちょうどいいかと。僕はヒップホップ聴かないんですけどね。

ーーえっ? ランドロードって今、アメリカのラッパーの間でブレイクしてますよね?

川西:たまたまそっち系のお客さんが増えただけです。かなりの有名どころにも着てもらってますけど、誰の曲も聞いたことないです(笑)。

ーーすごく意外です。

川西:全く興味なくて、僕はノイズの方が好きなんです。

赤坂:コマーシャル、ポテンシャルの面で、そっち寄りにしていくというのはないの?

川西:ファーストシーズンがミリタリーとカジュアルで、2シーズン目がワークウェア。でも、いまいち反応が悪くて、3回目がヒップホップをテーマにしたら、ブワッと広がったんです。あの時の反応がすごくて、ヤベーこれ逃げられないやつだなって。唯一、ヒップホップで好きなのはシルエットですね。意味もなく腰パンしたりとか、アウターの袖の太さとか、そういうのは大好き。でも、今では真似の上に真似を重ねて希薄化されましたよね。パンクみたく。僕はそういう軽いのが好きなんで、ランドロードでは軽いものをどうやって極めるかということに挑戦しています。

ーーなるほど。凶気の桜って、当時の若い世代に少なくないインパクトを与えたんですね。藤原ヒロシさんが反応していたのは覚えていますが。

川西:僕は窪塚(洋介)が好きだったんで、そっちから入りました。

赤坂:見せ方としてヒップホップを混ぜたりしていて、単純に見ていてカッコ良かった。

川西:キングギドラとかね。

赤坂:そういえば、今城くんがニューヨークに来たときに、「このタイミングじゃないのかもね」ってタバコ吸いながら話していて。

川西:で、コウピー君が「俺たち桜にされてんじゃねーよな?」って映画のセリフを冗談で言って(笑)。なら「凶気の桜でいいんじゃねー」となって、それが決まってからは早かった。

赤坂:あれが今回の決め手だよね。

川西:うん。映画の出だしが太鼓なんですよ。コウピー君が太鼓でスタートして、キングギドラのパートを俺がやればいいじゃんって。大人社会に巻き込まれて動けない桜を演じてやろうと思いました。

赤坂:むしろ桜を存分に楽しみましたよ。

KOZABURO/LANDLORD NEW YORK 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSANP.COM

ーーそれは良かった。赤坂さんのシグネーチャーになりつつある漢字のモチーフって、逆に日本人の方が使いづらいですよね。他に漢字をやっているのは、ソウシオオツキ(SOSHI OTSUKI)くらいかな?

赤坂:最初にやったのが"グローバル神風シャツ"です。

川西:こんなんバカすぎますよね(爆笑)。僕は買いましたけど。

赤坂:第二次世界大戦の時の神風特攻隊の寄せ書きを、80年代にロンドンのパンクブランドの「ラロッカ」や「セディショナリーズ」がデザインとして取り入れたり、ビリー・アイドルが政治的思想とは関係なくスタイルとして着たりしていて、その感じが嫌いじゃなくて......。

川西:あれはね、外国人がやっているから何も言われないんだよ。俺らは外にいるから外国人枠でもあるんだけど、ルーツが日本だからやっぱ揉めるでしょ。

赤坂:最近は色々センシティブすぎるじゃないですか。それが嫌なんです。日本の国旗があるけれど、赤の日の丸もネイビーの日の丸もあって、そこに僕がロンドンとアメリカで出会った友人たちに、出身国を漢字で書いてもらいました。インテンションとしては、僕の出身国のカルチャーで寄せ書きを作って、友好を表現したかったんです。コウザブロウのウィー・アー・ザ・ワールドを作りたかっただけなんですよ。一部でネガティブな反応もありましたが、個人的にはしっくりきたので、それから漢字を毎シーズン入れるようになりました。僕は中高で仏教の学校に行っていて、一緒にバンドやっていた友人の土持悠孝さんが、今は京都の妙満寺で住職をやっているんです。漢字のモチーフは、彼に手書きで書いてもらっています。アルファベットで筆さばきでつなぐというのはないから、それは漢字の素敵なところだと思います。

川西:あとコウピー君は、フレア(パンツ)を流行らせたよね。キコ・コスタディノフが最初なのか、コウピー君なのかわからないけど。ダサいと思われていたフレアをモードの最前線に引き戻したのは、コウピー君の功績だと思います。

ーー僕もそう思っています。デムナ・ヴァザリアも2年くらい前からバレンシアガでやっていたけど、クロップドのフレアは一番ハヤかった。

赤坂:フレアは個人的に好きなスタイルで、当時はダサいとみんなに言われてました。ダサいと言われているところからどうカッコよくするかは、最初によく考えました。

ーーセリーヌのエディも続いてきたし、フレアは本格的にきそうです。

川西:エディのセリーヌは、日本人が着物を作っているみたいでしたね。

ーーというと?

川西:フランス人が作るフランス。エディのジャン=リュック・ゴダールですよ。セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンのパロディも面白かった。

赤坂:エディ視点のフランスってこうなるんだっていう。

川西:日本人がコム デ ギャルソンをやるみたいなものだね。すごく上手いと思う。意外とフランス人やらないですもんね。

ーー「オフィシン・ジェネラル」とか「エディション・MR」とかは、そのテイストをやり続けていますが、メジャーどころがやるのは珍しいかもしれませんね。

川西:今までのエディで一番好きですね。ゴダールの映画に出てくるフランス人ってカッコいいじゃないですか。北野映画に出てくるヨウジヤマモトのカッコ良さ、あれと一緒。

ーー話をコレクションに戻します。ここ数年のヴァージル・アブローに代表されるラグジュアリー・ストリートの旋風は凄まじかったわけですが、ここにきて急速に潮が引き始めてますよね。そんな状況下で、川西さんはド・ストリートを放ってきた。勇気あるな、って思いました。

川西:そうですか? いわゆる"ラグスト"とか裏原に見られたら嫌ですね。初期のノーウェアくらいならいいけど。ここ数年の世界的なストリートカルチャーではなく、今回は90'sの原宿カルチャーに焦点を当てたかったんです。あれはひとつのカルチャーで、もはや舞子さんみたいなものですから。

ーー伝統文化になりつつある?

川西:20年経って、そうなりつつある時代感なのかなと。海外でも「トライベンティ」とか「ファイナル・ホーム」を探している人が、確実に増えています。僕はシーズンが始まる前に、図書館でコレクション写真の年鑑を30年分くらい見直すんです。今の気分は90年代中盤〜2000年代初頭で、90年代は東京が一番フレッシュです。少し前だと「マツダ」とかもいい。

ーー「ムッシュ・ニコル」ですね。

川西:80年代の松田光弘さんやヨウジさん、「トキオクマガイ」「ゴム」「マサキマツシマ」とか、すごくいいですよ。影響が絶対に伝わらないようにしてますけど、かなり感化されている。

ーー80年代のDCって、なんか意味の分からないパワーみたいなものがありますよね。

川西:あの年代の日本がフレッシュなんですよ。90年代のロンドンを席巻したジル・ロズィエの「GR816」とかより、日本のDCのほうが遥かにいい。山本寛斎さんのニットも最高です。

ーーペイントのデニムやレザーは、ニューヨークのストリートアートを感じました。

川西:あれはメグルヤマグチ(山口歴)というNY在住のアーティストとのコラボレーションで、全て1点物です。かなり注目されている人で、物によっては300〜400万円の値がつく作品もあります。その人の1点物なので、着られるアートですね。今回ショーで見せたものは、既に発表した2020年春夏のものではなく、全て新しく作ったものなんです。

ーーそうだったんですね。あと、モデルのキャスティングが面白かったです。あのひょっとこおじさんみたいな人は誰ですか? すごくいい表情していて印象的でした。

川西:僕が帰国するたびに行く経堂のラーメン居酒屋「はるばるてい」の常連のジョニーさんです。レモン麺っていうジョニーさんが開発したメニューがあって、さっぱりしていてめっちゃ美味しいんですよ。本当にいい顔してましたよね。以前からどこかで使いたいと思っていて、東京ならジョニーさんがいるじゃんって(笑)。

ーー極悪商会みたいな人もいましたよね。

川西:パンダは神戸のお客さんで、見た目が鳥肌実みたいだったので合格! 有名どころだとラッパーのThoji君に出てもらいました。あと、Thojiの追っかけのクート(笑)。Tohjiを揶揄した「TohjiでSoji」っていう動画をツイッターにアップしたら、めっちゃバズったんです。で、今は気まずい関係なんですが、本来は追っかけなんだから後ろのはずなんだけど、今回はThojiくんに追いかけてもらいました。タツキ君は、キャスティングだから見栄はろうとして、友達にルイ・ヴィトンのバッグを借りてきて、5000円取られたらしいです。合格(笑)。デヴィッド・ボウイみたいなミナミちゃんは青学の学生で、将来は弁護士になって刑務所にいる子を更生させたいんだとか。本当に面白い面子が集まりました。コウピー君のキャスティングはお洒落だったね。

赤坂:そりゃ真剣に選んだからね。

川西:なんで落としたんだっていう子もいたなー。ここで出てくるコウピーのドS(笑)。

KOZABURO/LANDLORD NEW YORK 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSANP.COM

ーー話はガラッと変わりますが、欧米を中心にサステナブルを謳うブランドが増えてきています。この動きをどう捉えていますか?

赤坂:つまるところ、物を作っていく限り資源もエネルギーも使うし、自然のことを考えたら物を作らないで、ひとつのものを長く着るとか古着を着るというのがストレートな話。でも、それだとインダストリーもエコノミーも収縮してしまうから、サステナビリティを謳って物を売るということなのだと思います。自分は裂織に以前から取り組んでいて、江戸時代からある"使い切る文化"に魅了されています。最新の素材も見ますが、そういう昔ながらの文化の中に未来の鍵があると思っています。余った生地を戻して作り直すみたいな、裂織の工業版みたいなイメージが理想かな。コストは高くなるけれど、マニュファクチャーとかロジスティックがついてこれば不可能ではないと思います。

ーー物を作るかぎり、極論をいえば生きているかぎり、何をしても矛盾してしまいますよね。ステラ・マッカートニーは飛行機に乗るのも躊躇うみたいだし。

川西:アレルギーになる必要はないと思います。今のサステナブルは、根本の思想云々というよりマーケティングの材料になっているイメージ。アメリカよりはヨーロッパの方が本質的に取り組んでいる印象です。この前、編集者の松岡正剛さんと対談した時に、60年代の人はどうやって矛盾に対して戦っていくかという姿勢が見えた、と仰っていました。川久保さんにしてもヨウジさんにしても、矛盾と戦ってきたんだと。前衛いけばな作家の中川幸夫の作品は、キレイに花を活けるのではなく、潰して汁が垂れているのが美しいというもの。そういう美学が2人の服には宿っていると。で、そんな矛盾を飲み込んだのが、90年代の裏原やヒップホップだと思います。アメリカの資本とか西洋の思想に対する矛盾がグローバリゼーションとぶつかって、アメリカってカッコいいじゃん、ヒップホップいいじゃんってなった。今のサステナビリティは、新しい矛盾との戦い方のひとつの方法なのかな。

赤坂:本当のクリエイターは、マーケットに合わせるのではなくて、領域を広げることにあると思います。その中で矛盾と戦いながら、立ち位置を見つけていくのが理想です。

川西:僕は新しいものを作る必要ないと思っちゃうわけ。自分の思いとして、新しいものを生み出したいという欲求はあるんだけどね。

赤坂:プロダクトの話ではなくて、ビジネスの形態だったり、日本人なのにベースを日本に置かないとか、そういう面での新しさの話ね。

川西:プロダクトで新しいものを作ろうというのが古いと思う。

赤坂:それは僕もできていないから。

川西:僕らの時代の新しいは「フレッシュ」に近い。「サムシング・ニュー」じゃないんですよ。ひとつ前の世代と違って。

ーー様々なものが出尽くした時代の作り手ならでは考え方ですね。

川西:そこをネガティブに捉える世代と、当たり前に飲み込んでいる世代の違いは大きい。見たことないものを作りたいと思うけど、そこにエネルギーは使うことはしない。

ーーヴィヴィアンは80年代の時点で「ファッションは歴史からしか生まれない」って言い切っていますしね。ゼロから物は作れないと。

川西:西洋の歴史はコンテクストの上に成り立っていますからね。僕はそういう教育を受けてきたから、全く見たことないものを作ろうと思わない。コレはあれもあれも感じられるから新しいよね、でいい。

赤坂:遼平が今それを感じるブランドは?

川西:気持ち的にはセリーヌが新しいって思います。

赤坂:なるほどね。僕はテクノロジーの分野では、まだまだ新しさが残されていると思っているんです。

川西:思想が新しいんじゃなくて、手元にあるデバイスとか感覚の方が新しくなっているから、そっちに引き寄せられている部分が大きいんじゃないかな。僕らはポストモダンではなく、モダンの中で生きているので。「あれが新しかったよね」っていうのは、10年、20年後に振り返って初めて分かるものだと思います。

ーーそういう意味で、だれもが頷く正解を出すのが難しい時代なのかもしれないですね。

川西:ブルーノ・ピータースの「オネスト バイ(HONEST BY.)」って革新的でしたよね。世界初の100%透明なファッション企業を謳って、すべてのコストや工程を公開した。どこで仕入れて、だれが作ってというのが、分かるわけです。でも、上手くいかなかった。前に酔った勢いで、「僕は新しい物を作ってそれが売れて数字が上がるのが正しいかどうか分かりません。オネスト バイが失敗したらなら、なぜダメだったのか僕とお話してくれませんか?」ってメッセージを送ったんです。

ーーアツいねー。

川西:全力で無視されました(笑)。

赤坂:行動力あるね(笑)。

川西:そういうのは食の方が進んでいるし、消費者も付いてきていますよね。日本のコーヒー屋さんで、一杯800円のコーヒーの全てのトレーサビリティを明かしていて、それを理解する顧客がちゃんといる。それをファッションに置き換えるのは難しくて、スタイル変えずに同じものを作り続けるならできないこともないけれど、今の自分みたいなスタンスでは不可能に近い。

ーー海外に住む日本人として、今の東京をどう思いますか?

川西:どこを切り取るかによって見方が変わってきますよね。こないだX JAPANのヒデみたいなサングラスが欲しいと思って、竹下通りに行ったら超楽しかった。ゴールデン街とかもいいけれど、最近の東京では一番楽しかったな。竹下通りは、全てが嘘っぽい日本なんですよ。ガリアーノ的な海外の人がイメージする日本。中国人が日本人を演じている映画みたいな違和感のある日本。映画「ティファニーで朝食を」出てくる出っ歯のユニオシさんね(笑)。あの感じがテイストフルじゃん?

赤坂:僕もあの部屋は好きだな。

川西:提灯があって浴衣を着て鉢巻巻いて......みたいな感覚に近いものがある。ゴスロリとビジュアル系とパンクがいっしょくたになった店に行ったら、おばあちゃんが「なに探しに来たの?」って。ヒデのサングラスって言ったら、「そんなの売れねーからねーよ」て(笑)。有名なビジュアル系の店。

赤坂:あの地下の店だよね。僕が10〜20代の頃に行った時は、パンクとか色々あって。最近そこのお店に厚底で鉄のニューロックの靴を探しに行ったけど、その時はなかった。

川西:ニューロックいいよね。自分も探していて、モデルの子がたまたま私物として履いてきたから、ショーでも履いてもらったよ。

ーー赤坂さんは、東京どうですか?

赤坂:僕はもともと昔から海外への憧れが強かったんです。親父は一代でジュエリー関係の会社を興したアーティスト肌の人で、分かりやすくピカソの絵画展に連れて行ってくれたり。上を目指すインスピレーションをくれた。

川西:うちもそうだよ。似てるんだね。

赤坂:世界で一番良いファッションの学校なら学費を払うけど、日本の専門学校に行くなら自分で払いなさいよって。ストイックさに反抗する反面、共感を覚える部分もあります。今では下町の庶民的な感じも好きだし、綺麗な大都会の東京も好き。

KOZABURO/LANDLORD NEW YORK 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSANP.COM
KOZABURO/LANDLORD NEW YORK 20年春夏コレクション Image by: FASHIONSANP.COM

ーー最後に今後のビジョンを聞かせてください。

赤坂:作りたいものを作って、それで食べていけたら満足です。ひとまず。ブランドを大きくしたい気持ちはありますが、ビジネスをキープするのがメインになって作りたいものを作れなくなったら元も子もないので、作りたいものを作りつつ好きな人たちと物作りをしながら少しづつ大きくするのが理想です。

川西:ちなみに大きなメゾンから話が来たらやる?

赤坂:良い条件があれば、考えます。

川西:話は来てないの?

赤坂:特にないです。 遼平みたいに器用じゃないし。

川西:そこがいいんだよ。俺は逆に無理だもん。和風ナンバーナイン無理だし。

赤坂:だから作ろうと思ってやってんじゃないから(笑)。さっきと同じ話になるけど、なんで服を作っているのかと言われれば、自由になりたいから。その中で着る人に希望を与えたり、助けになれたらいいな、と。

川西:でも、意外とショーいけるよね。地味に見えちゃうのかと思っていたら、思った以上にショー映えする。ショー続けて行けば、きっと作るものが変わってきて幅が出ると思うよ。

赤坂:LVMHプライズもそうでしたけど、当日はいいけど、僕はその前日までがパンパンになっちゃうんです。周りが見えなくなっちゃう。その時は自分の中で辛いですね。遼平は真逆で、盛り上げて楽しんで作り上げる姿に刺激を受けた。

川西:隣でうるさくしてごめんね、ってずっと思っていた(笑)。

赤坂:もう少し生み出す過程を楽しめるようになりたいと思います。

ーー川西さんはビジョン、どうでしょう?

川西:ちなみに今回のショーって東コレぽかったですか?

ーー全然。

川西:それなら良かった。モデルの前歯くんとか「自信なかったのに前進していこうと思いました」とか言ってくれて、ちょっと嬉しかったな。成功点でも反省点でもあるけど、今回は自分の世界観をちょっと出しすぎました。ランドロードも最近自分のテイストになりつつあるので。出すと本当に売れなくなっちゃうんですよ。あくまでミリタリーの縫製工場と組んでやっているブランドなので、そこはきっちり仕事をして結果を出していきたいと思います。どうせ桜なんで(笑)。

赤坂:僕は自分らしい桜を咲かせます。

というわけで、初めて日本で桜の花を咲かせたランドロードとコウザブロウ。この2つの"新種"が今後どのような花を咲かせていくのか、楽しみでならない。

川西遼平 ランドロード クリエイティブ・ディレクター
1987年、鳥取県生まれ。2011年にロンドンのセントラル・セント・マーチンのニット科で学士号を修了。その後、ニューヨークのパーソンズ スクール オブ デザインに入学し、2015年に修士号を修了。2015年に「ランドロードニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」を設立し、クリエイティブ・ディレクターに就任。2018年からニューヨークコレクションに参加している。

赤坂公三郎 コウザブロウ デザイナー
1984年、東京都生まれ。2011年にロンドンのセントラル・セント・マーチンを首席で卒業。その後、ニューヨークにわたり、トム ブラウンのメンズデザイナーとして経験を積む。2016年にコウザブロウをスタート。2017年にはLVMHプライズで特別賞を受賞した。趣味は時間が空いた時に、アメリカをクルマでロードトリップすること。

■KOZABURO/LANDLORD NEW YORK:2020年春夏コレクション
■ファッションウィークの最新情報:特設サイト

増田海治郎

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