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互いをリスペクトし、同じ想いで新たな日本の発信を―BEAMS JAPAN 佐野明政インタビュー

BEAMS JAPAN プロジェクトリーダー 佐野明政
BEAMS JAPAN プロジェクトリーダー 佐野明政

互いをリスペクトし、同じ想いで新たな日本の発信を―BEAMS JAPAN 佐野明政インタビュー

BEAMS JAPAN プロジェクトリーダー 佐野明政
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2020年に誰もが感じた、つながることの大切さ。匠からポップカルチャーまで日本の魅力を発信するBEAMS JAPANと企業や自治体のつながりによって生まれたプロダクトの数々も、私たちにたくさんの笑顔をもたらしてきた。今回は、多くのコラボレーションによって幅広い客層を虜にするBEAMS JAPANのプロジェクトリーダー佐野明政氏にインタビュー。BEAMS JAPANの活動や取り組みについてお話を伺った。

佐野 明政さん
2000年ビームス入社。ショップスタッフを経て、アウトレット事業やB:MING LIFE STOREなどの立ち上げに従事し、2015年よりBEAMS JAPANプロジェクトリーダー。立ち上げから現在まで、日本の魅力的なモノ・コト・ヒトを国内外に発信する数々の企画を主導する。運動会、ギネス世界記録チャレンジなど社内企画では実行委員長として、インナーブランディング活動にも情熱を注ぎ、5度にわたって社長賞を受賞。プライベートではサッカー日本代表のサポーターで、1998年以降のワールドカップ大会は全て現地で観戦している。

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―佐野さんのキャリアとBEAMS JAPANの成り立ちについて教えてください。

2000年にビームスに入社して、4年間店舗スタッフとして働いていました。その後、アウトレット事業部の立ち上げでオフィス勤務になり、事業を切り盛りしました。その後、幅広い世代に向けたライフスタイルストアの必要性を感じ、企画書を会社に通してB:MING LIFE STOREを立ち上げました。当時は、会社の運動会の実行委員長もやっていて、その一環でギネス世界記録に挑戦したりもしました。東日本大震災が起きて、ビジネスで被災地を応援したいと考えていた上司と一緒に、ギネス世界記録にチャレンジしようと話して、けん玉の”とめけん”という技でギネス世界記録を取ることができました。そんな動きをみていた、社長の設楽からBEAMS JAPANをやってみないかと声をかけてもらい、そこからBEAMS JAPANがスタートしました。

―立ち上げからギネス世界記録まで、常にチャレンジする方なんですね。BEAMS JAPANとは?

ビームスの目で、日本の面白いモノやコト、ヒトを編集し、世界へと発信するプロジェクトがBEAMS JAPANです。もともとビームスは世界中のモノやコト、ヒトの魅力を伝えていく業態でした。そのビームスが、創業から40年をかけて培ってきた目利き力やコネクションなどを使い、今度は日本の魅力を紹介していこうと始まりました。

―BEAMS JAPANではさまざまなコラボレーションを行っていますが、当時からあったのでしょうか?

以前から、ビームスは異業種とのコラボレーションを得意としてきましたが、BEAMS JAPANが始まるときに、代表の設楽から「小売だけじゃないビジネスを始めてほしい」と言われていました。なので、新宿の店舗「ビームス ジャパン」の店内には“ハレ舞台”というコラボレーションスペースをつくり、そこで企業や地方自治体との様々な取り組みを紹介できるようにしました。

―BEAMS JAPANの活動とは?

日本をキーワードに、工芸品やカルチャー、衣料品など幅広いカテゴリーの魅力を、「ビームス ジャパン」(新宿)、「ビームス ジャパン 渋谷」、「ビームス ジャパン 京都」の3店舗から発信しています。得意とするコラボレーションでは、企業以外にも、さまざまな地方自治体の方々とお仕事をさせていただいているのですが、面白い事例としては、兵庫県洲本市などの、ふるさと納税の返礼品の監修をBEAMS JAPANのバイヤーが行っています。こうした新しい取り組みを知ってもらうためにも「ビームス ジャパン」の一角を使って訴求をするなどの情報発信もしています。

―BEAMS JAPANがスタートしてから、どのくらいのコラボレーションをしたのでしょうか。

2016年にBEAMS JAPANがスタートして、大きな案件で約50件(企業25:地方自治体25)ほどです。そのなかで個人的にもっとも印象に残ったコラボレーションは、2019年に行った“銭湯のススメ。”という企画です。きっかけは、牛乳石鹸共進社㈱(以下、牛乳石鹸)さんからの「既存ターゲット以外の新たな顧客層にアプローチしたい」という相談でした。ただBEAMS JAPANが商品のプロモーションをやるだけでは意味がないですし、お互いに大切にしていることって何だろうと話し合うと、牛乳石鹸さんは会社としてお風呂文化の伝承を大切にしているということを知りました。BEAMS JAPANとしても日本の文化を伝えたいという同じ想いを持っているので、「では銭湯の魅力を伝えましょう」とブレストしていき、東京都浴場組合に行ってお話を伺ったりしていくうちに、銭湯の魅力を伝える冊子をつくろう、となって。そこから、ただ冊子をつくるだけじゃなくて、スタンプラリーをつくって銭湯に行ってもらおう、と最終的には、銭湯に行ってスタンプが溜まったら「ビームス ジャパン」の店頭で抽選ができるという企画になりました。実際にやってみると、すごくたくさんの方が抽選に来てくださって、こんなにたくさんのファンがいるんだ、と銭湯のポテンシャルを感じました。牛乳石鹸さんにも満足いただくことができて、今年2回目の実施が決まりました。

―デザインなどもBEAMS JAPANが手掛けているのですか?

“赤箱”と“青箱”が牛乳石鹸さんのシンボルとして有名ですが、コラボレーションにともない“橙(だいだい)箱”をつくらせていただきました。実際に石けんをつくっている大阪の工場に行ってみると、牛乳石鹸さんが大切にしてきたことや歴史を知ることができたんですよね。それでバイヤーが、今回の企画にも象徴となるものが必要だと考えて、ビームスのコーポレートカラーで、日本では古来、「代々栄える」の意味をもつ橙色(オレンジ色)を採用し、“橙箱”にさせてもらいました。初めての試みだったのでかなり時間はかかりましたが、牛乳石鹸さんに対するリスペクトと想いが伝わり実現するまでに至ったと思っています。結果、このプロジェクトで2020年度グッドデザイン賞を受賞することができました。銭湯とそこへ通う動機づけをデザインでつなぎ、衰退しつつある銭湯に社会が目を向けるきっかけをつくったことが評価されました。このコロナ禍で、手洗いの重要性が再確認されたことと、手指洗浄剤のアルコールなどの品不足もおこり、現在固形石けんの売上も非常に伸びているそうです。

―2回目の実施について教えてください。

スポーツが注目される年なので、スポーツと銭湯を掛け合わせる企画として、『テルマエ・ロマエ』や『オリンピア・キュクロス』などを書かれているヤマザキマリさんに声をかけたところ、快く受けてくださって、古代スポーツのやり投げや車椅子バスケの選手など、たくさんの絵を描いていただきました。今回も、東上野にある寿湯の壁画をヤマザキマリさんのデザインでジャックして、今まで銭湯に興味のなかった方たちの興味も得たいと思っています。僕自身、ヤマザキマリさんの漫画が大好きなのですが、『オリンピア・キュクロス』を読むなかで、オリンピックもただ楽しむだけじゃない、歴史的背景や時代的背景を踏まえて文化を発信する機会なのだと考えさせられました。2019年に“銭湯のススメ。”を実施したときは都内の銭湯は550店舗だったのが、今は約490店舗まで減少してしまいました。コロナの影響ももちろんありますが、後継ぎがいないため潰れてしまう銭湯もたくさんあります。30代、40代の若き銭湯オーナーの方々が今すごく頑張っているので、新たなニーズに向けて面白い企画を打ち出し、銭湯文化を盛り上げていきたいです。

―クラブ活動やYouTubeでの発信など、社内のスタッフの活躍の幅も広いですよね。

2019年の”大名古屋展”という企画のきっかけも一人のスタッフからでした。名古屋グランパスが大好きな「ビームス 名古屋」のスタッフが「グランパスがビームスとなにかやりたいと言っている」と教えてくれて。名古屋グランパスには「地域を元気にしたい、もっとたくさんのお客さんにリーチしたい」という想いがあって、僕らがユニフォームをつくるのはどうかと話したら、名古屋・愛知を盛り上げるイベントをやるからそのときのユニフォームをつくってほしいと声がかかったのです。一人のスタッフの声からそのような企画が実現する組織風土が当社にはあります。

―これからはどんなチャレンジをしたいですか?

BEAMS JAPANは日本の魅力を発信するプロジェクトで、今はどちらかというと東京からの発信が多いので、今後は地方から地元の魅力を発信することをもっとやっていきたいと考えています。以前、“焼酎のススメ。”という企画で、本格焼酎三社(大分・熊本・鹿児島)と共に焼酎の魅力を発信したのですが、やはり地元の方たちがすごく喜んでくださるんですよね。あとは、ビームスはアパレルとしての認知が高いので、BEAMS JAPANの取り組みについてお話しすると「なんでアパレルがそんなことやっているの?」という話からスタートすることが多い。僕たちがやろうとしていることを日本全体に広げていき、まだまだ地域にはいろんな宝がありますから、それを発信していきたいです。昔から僕がビームスで働いていて変わらないところは、皆とチームになり楽しむということ。だからこそ地域の方々とも楽しみながらやっていきたいと思っています。

―最後に、今後一緒に取り組みたいというコラボ先について教えてください。

この仕事をやっていて楽しいのは、まだ世の中には知らないことや魅力がたくさんあるということです。やはりストーリーがすごくある、大事にしているものがある、日本文化がある企業様とご一緒できたらいいですよね。皆さん、自分のことは知りすぎているから魅力に感じないといいます。けど、実際にお話を聞くと、すごく魅力的なことをやっていたりする。「うちなんか」と思わなくていいので、日本が明るくなるようなことをやりたいと思ってくだされば、どんな企業でもお声がけしてほしいです。僕らは最初にやりたいことや課題を聞かせていただくので、まずは気軽に声をかけていただけるとうれしいですね。

さまざまな想いが重なり、素晴らしいコラボレーションを生んできたBEAMS JAPAN。その積み重ねから、今はビジネスプロデュース部として専門のチームも立ち上がった。問い合わせも増えているが、変わらないのはリスペクトの気持ちと話を聞くビームスの姿勢。BEAMS JAPANが手掛ける新たなコラボレーションが、きっと日本を明るくさせてくれるだろう。

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