シンヤコヅカ 2022年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP
「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」は、初めてのランウェイショーによる発表だったのに、ショーに行き損なってしまった。しかし、オンラインでランウェイの様子を繰り返して観るうちに、これはやっぱり取り上げようと思うに至った。
ひとつは、独特なオーバーサイズ、それから音楽。これをマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)とつなげて考えたからだけど、マルジェラというバイアスがなくても、とりあげたい要素はたくさんあった。
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今回のコレクションテーマ「SWEET ROUGH DRAFT」(素敵な下書き、とプレス資料に訳されている)自体、マルジェラ的だ。ランウェイの細長い廊下の壁には、クラインブルーとつい呼んでしまう鮮やかなロイヤルブルーのパネルが並んでいて、その“インク漏れ“が着想源の青い染みが広がる印象的な服が、流れる音楽のサーカスを思わせるリズムの中、登場した。男女混じったモデルたちは、性を意識させずに、みんなワーカーのような雰囲気でサーカスの音楽に乗って淡々と行進した。
「オーバーサイズを作りたいのではなく、オーバーサイズによる身体と布の空間を作りたいということ。」
とシンヤコヅカのプレス資料には書かれている。近頃目にしないパーソナルな、いいリリースだ。
「優れたデザインは隠れているということ。すべての物事が明瞭では面白くないこと。」
そう思う。明瞭でないメッセージにあるときふと気がつくのが、ファッションと着る人間との交信の始まりだ。
で、オーバーサイズに戻ると、シンヤコヅカのデザイナーは、別にマルタン・マルジェラが2000-2001AWに発表して久々に物議を醸したXXXL(74号、次のシーズンは、さらに大きくした78号で制作)や明らかにそれを継承したデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の「ヴェトモン(VETEMENTS)」を意識したわけではないだろう。でも、オーバーサイズに関しての「身体と布の空間を作る」という発想は、紛れもなくマルタンに通じている。「メゾン・マルタン・マルジェラ(Maison Martin Margiela)」の場合、ウィメンズコレクションでそれをやったので(男物を借用するというそれまでにあった女性がビッグサイズを着ることの言いわけではなく)、なかなか反発は少なくなかったようだ。
2022年の東京では、サイズへの違和感はすでになく、この極大のボンタンをどうカッコよく着こなすかが街で見られるに違いない。よく見ると、極大なのは、シルエットだけでなく、下書きのインクの線を極大にしたことの方が、重要なのかもしれない。
【ファッションエディター西谷真理子の東コレポスト】
・受け継がれるマルタン・マルジェラ vol.1 古着をリメイクするスリュー 22SS
・受け継がれるマルタン・マルジェラ vol.2 伏見・久山染工を舞台にした「9M」22SS
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