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シンヤコヅカのランウェイショー

SHINYAKOZUKA 2022年秋冬コレクション

Image by: FASHIONSNAP

モードノオト2022.03.17

MUGITA SHUNICHI

SHINYAKOZUKA 2022年秋冬コレクション

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モードノオト2022.03.17

MUGITA SHUNICHI

SHINYAKOZUKA 2022年秋冬コレクション

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ファッションジャーナリスト
麥田俊一

 我々が知りたいと思っていることは、存外に簡単なことかも知れない。なにもそれほど多くのものが現実から隠されてあるわけでもない。見ようとする者はそれを見るし、見ようとしない者はそれを見ずにすます。ただそれだけの話なのだ。それではそんな明確な事態を曇らせているのは何かと云えば、知りたいと思う対象に責任があるわけではなく、大概の場合はそれを知ろうとする我々の側に瑕疵があり、知ろうと云う初動を億劫がるためである。少しく心の眼を余計に見開けば済むことなのだけれど、利便性と引き替えに我々は煩わしさを厭う癖を身に着けてしまった。なんとか一直線に対象に至る道はないかと先走る気持ちも現代社会の良くない習性ではないか。

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 小塚信哉は、私にとって神秘的な存在である。一昨日(3月15日)の「シンヤコヅカ」のショー後に、それもほんの一瞬間言葉を交わして、初めて本人の声を聞いたが、私が勝手に想像していた声とは違っていた。実際、声などどうでもいい。有り体に云えば、至って普通な感じがしたのだ(初対面の私がそんなことを云うのは失礼極まりない話である)。普通が悪いのではない。寧ろこちらに過失がある。これまでの幾つかのコレクションは気になっていた。とりわけ前回(2022年春夏)のスカッと抜けた感覚は、一目置かざるを得ないと思った。そうした彼の過去の創作の印象をもとに、私が勝手に厚いベールに包み込んだ人物像を作り上げていたのである。実際、小一時間でも話してみれば印象はガラリと変わるのだろうが、服を見る限りに於いて、時代の右へ倣え的な空虚な時代風潮とは一線を画する質のデザイナーだと云うポイントは、遠からず当たっていると思う。

 冒頭に、知る、と云うことについて書いた。「知る」を「考える」に置き換えても筋は通るのではないか。小塚の創作哲学に論及せんがための前置きなのだが、我流を正当化するための遁辞でもある。報道する身であれば、ショー終了後のデザイナー諸氏の説明を雁首揃えて神妙に拝聴するのが筋なのだろうが、私はどうもこのシステムに馴染めない。凡てを知らなくてもいいと云う気持ちが実はある。凡てを知る必要などない場合もある。寧ろ、ハッキリ白黒つける早急さを、私は厭う質だし、物事の是非を額面通りに押し付けられるのも嫌だ。他に取り柄はないが、仕事柄、想像力だけは抜け目ない。威勢のいい啖呵を切ったが、以下、私的な寸感であることの断りを入れておく。

SHINYAKOZUKA ランウェイショー

SHINYAKOZUKA 2022年秋冬コレクション

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SHINYAKOZUKA ランウェイショー

SHINYAKOZUKA 2022年秋冬コレクション

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全 2 点

 軍服のディテールと、渡英して自らが接した文化の多様性が小塚の創作を組み上げている。と云うと、またぞろ特筆すべき形容ではないかも知れないが、ファッションの馬鹿馬鹿しさを解体批評しようとする前衛気質の代わりに、得体の知れないモヤモヤ感を自らの懐に仕舞い込み、彼は現実と空想の境界ギリギリの線を行き来している。彼は力任せでアンチを唱えるのではない。夢と現実を気儘にぶらぶら歩きながら、統一規格的で標準規格的なるもの(換言すれば、否応なしに押し付けられるイメージ)を、やんわりと穏やかに否定する。私はと云えば、ショーとか展示会の評のようなもの(その体裁になっているか心許ないけれど)を書くことで、自分の心の中のモヤモヤしていたカタチのないものに、形を与えることが自分の救済になっているのだと信じている。私の場合は救済なのだが、小塚にとってのそれは自らのファッションを前へ進めることに他ならない。

 此度の彼の着想の一つは、英国の挿話作家ヒース・ロビンソンだと云う。コレクションノートを頼りに稿を進めるのは罰符(バッドプレー)だが、私より数段的を射ているので彼の言葉を引用しておく。「(ロビンソンは)単純なことを大袈裟且つ難解且つシニカルにしている諷刺画のような絵を描いています」。そのポンチ絵が上衣の総柄に使われているから、そのあたりについても引用しておくと,,,「釣り堀で釣りをしている人たちがいて、実はその釣り堀の地下で人が釣り人の竿(垂れた糸の先)に魚をつけている絵があります。彼の描く世界と、『優れたデザインや豊かさは隠されたところにある』と云う私自身の考えが重なりました」...というのだ。

 「何かの後ろ」「何かの裏」「ピントが合っていない背景」「含みを持した言葉」と云うキーワードも、我々人間の眼がいかに節穴であるかを嘲笑うかのように、誰もがわかる言葉を用いながら、小塚はそこに深み(余白)を残すことを忘れてはいない。こちらの眼の態勢が、一旦彼の仕掛けに照準が合った時に、そこに見えてくる微妙さと的確さは凄いものである。「人はツーウエー以上で提案されたとき、気に入ったワンウエーでしか使用しない、と云う勝手な持論があります」と云う彼の説もそうだ。言葉は極めて普通なのだけれど、その言葉に包まれた内容の普通が、やはり稀有の普通である。こちらに見ようと云う気持ちの芽生えがないと、見えてこない。何でもそうだと云えばそうだが、小塚の創作は、たとい大袈裟に拵えてあっても、斜めに覗いてみたり、裏を見返してみたり、そこにポンと置かれた至極普通の様子(例えば、白でも黒でもないグレーなゾーンがそこには用意されている)がひっそりと主張しているので、余計にそのことを強く感じる。「イメージを膨らませながらニッチや不明瞭なものを全力で肯定したい」と小塚は云う。常に彼の眼は、捉えどころのない、カタチを持たないものを眼で見ている。この湿った感覚(いい意味で)は、人間臭さの入り込む余地のない乾いた世界の対極にあり、それこそ普通であれば得体の知れないものなのだろうか、彼は自らその領域に身を任せようとしている。(文責/麥田俊一)

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