百貨店初となる常設のロボット専門ショップとなった新宿髙島屋のロボット売り場「ロボティクス スタジオ」が、2017年10月のオープンからまもなく5年を迎える。3月30日のリニューアルでは売り場を9階から6階に移設し、面積は従来から約1.7倍、オープン当初からは約7倍に拡大した。「ロボットのある生活」は広く浸透し始めているのか。バイヤーの田所博利氏に聞いた。
ロボティクス スタジオの誕生は、日本科学未来館の協力を得て2016年にロボットのイベントを同店で開催したことがきっかけとなった。2014年に人型ロボット「ペッパー(Pepper)」が登場したことや、2016年にディープラーニングによってグーグルが猫画像認識に成功するなどの出来事から、田所氏が「ロボットのある生活」に可能性を感じて企画を持ち寄ったという。当初はコアユーザーを想定していたが、イベントの来場者の多くは子連れやシニア層といったライトユーザーで、売り上げも上々だったことから常設化に至った。
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オープン当時は売場面積約10平方メートルというスモールスタートだったが、「百貨店初となる常設のロボット専門ショップ」という謳い文句に注目が集まり、事業としても順調に推移していったという。2018年には関西初導入として大阪店にも売り場を設けた。一方で、同時期にグーグルの「グーグルホーム(Google Home)」やアマゾンの「アレクサ(Alexa)」が続々と上陸し、スマートスピーカーに注目が集まっていた。ロボット業界では新作が生まれず、参入したメーカーの撤退が相次ぐなど苦難の時期が続いた。
転機は、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の誕生だった。もともとロボティクス スタジオでは客層の特徴の一つとして、利便性ではなく、孫や相棒のように可愛がることができるロボットを求めるシニアの来店客が多かったという。その中で、ロボットベンチャー GROOVE Xの林要社長からLOVOTのコンセプトを聞いたという田所氏は「ドラえもんのような癒やしやコミュニケーションが生まれることがロボットの役割のひとつ」として、利便性だけではないロボットの楽しみ方を提案するために、2019年9月に国内1号店「LOVOT ストア」を売り場内にオープン。2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響による巣ごもり消費が追い風となり、2021年度(2021年3月〜2022年2月)のロボティクス スタジオの売上はコロナ前の2019年度比(2020年3月〜2021年2月)で4倍を超え、30〜40代の女性の来店が増えるなど客層にも変化が現れた。GROOVE Xとしてはオフラインでの販売は当初想定していなかったというが、同社広報担当者は「若年層を含む幅広い客層が来店する百貨店にタッチポイントを設けることでメリットを享受できた」と相乗効果を語る。
今回の売り場リニューアルでは、既存ユーザーがLOVOTのアクセサリー購入の目的やコミュニケーションの場を求めて来店するケースが増えたことを背景に、LOVOTのウェアやアクセサリーの着せ替えが楽しめるスペース「okigae room」やフォトスポットを新設した。
LOVOT以外にも「ロボホン(RoBoHoN)」や手のひらサイズの「ロミィ(Romi)」、テーブルトップサイズの「ソータ(Sota)」といった対話型ロボットや、英会話やプログラミングを学ぶロボット、クッション型セラピーロボット「クーボ(Qoobo)」などをラインナップ。オープン当初から取扱商品数は減っているが、購入後のソフトウェアのアップデートやメンテナンスに継続対応できるメーカーに厳選しているためとしている。ロボティクス スタジオが求めるレベルをクリアした商材が少ないことが課題としてあるが、将来的にはIoT家電といった利便性の高い商品を含め、トータルで「ロボットのある豊かな生活」を提案していきたいという。
Image by FASHIONSNAP
髙島屋グループでロボティクス スタジオを導入しているのは新宿店、大阪店、名古屋店の3店舗。新宿店以外の2店舗でも売上は右肩上がりに推移しているが、田所氏は「ニーズを見極めたい」として店舗数の拡大には慎重な姿勢を示した。
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