ジーンズの生みの親であるLEVI'S(以下、リーバイス)の日本・中国・アメリカ支社で勤務、その後日本人として初めてサンフランシスコ本社にてデザイナーとして従事した前村拓実さんが22年1月に株式会社ラフォエムを設立し、デニムブランド・AUTHENをローンチした。
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AUTHENは「より良い未来をデザインの力で」をコンセプトに、服を通して社会と未来に貢献するブランドだ。環境に配慮した素材と製法で作る定番商品や古着を活用したアップサイクル商品とサービスで、あらゆる人に寄り添う服作りを手がけている。
今回は同社の代表である前村さんに、AUTHEN設立の経緯や環境に配慮した商品作りについて話をお聞きした。
環境に配慮した商品作り
AUTHENでは現在、リサイクルを大きなテーマとして物作りをしている。そのきっかけには、アパレル業界が抱えている大量廃棄の問題を解決したいという想いがあった。
日本だけでも、年間100万トンもの衣服が捨てられているとされる。そのなかで同社は、本来ならば処分される製品在庫や廃材を様々なアプローチで活用し、シンプルな定番商品から個性あるアップサイクル商品まで幅広く取り扱っている。
「デニムは頑強な作り、経年変化を楽しめるという利点から、アパレル製品の中で最も製品寿命の長いと言われるアイテムです。その利点を生かしながら、環境に配慮した継続可能な素材と日本の卓越した技術で、品質の高い商品をより長く楽しんでいただけるシンプルなデザインを心がけています。」
実際に基幹商品であるESSENTIALSは環境に配慮した素材、製造過程で作られている。デニム素材には様々な再生糸を活用。2次流通のデニムを活用し、分解、反毛して作った再生糸で作ったデニム、工場の廃材を利用した再生ポリウレタン糸を使ったストレッチデニム、トップスの生地に関しても再生糸を積極的に採用している。
また、染色や加工過程においても水の汚れないエコ染料を、デニムの生産背景においてもレーザーマシンやオゾン加工などを積極的に使い、なるべく水を使わない手法で生産背景での物作りに取り組んでいるそう。
「他にも古着や工場にある在庫商品を用いたアップサイクル商品を販売しています。アパレル生産工場や生地屋では生産総量の0.5%程度がB品(糸のほつれやシミのある不良品)として在庫商品となり焼却処分されます。工場によっては数万点、また数十万点規模になることもございます。小さな生地欠点や製品不良を除けば充分に使える素材なので、その素材を有効活用して商品展開しているのです。また、アパレルの2次流通は10年で2倍、20年で5倍以上になると予測されております。なので日本のみならず海外の古着を活用し、再構築可能な素材を集め、アップサイクル商品として生産しております。」
欧米と比べて日本やアジアの環境問題に対する意識は低く、サステナビリティを単なるトレンドとして捉えている人が多いと感じていた前村さん。そうした考え方で現状のままの生活を続けると、地球温暖化の進行は明白だと話す。
「デザイナーとしてもこのような問題解決をデザインの核と考えております。環境問題は最も大きな社会課題であり、これからの物作りに切り離せない部分です。まずは自分たちでできることを少しづつ行い、『より良い未来をデザインの力で』をコンセプトに様々なことに挑戦したいと思っています。」
リーバイスを経て自社ブランドを設立
前村さんは前職、リーバイスのアメリカ本社で17年間に渡り日本人初のデザイナーとして従事していた。そこではメンズを中心にデニムからトップス、高価格帯から低価格帯の商品まで幅広く経験したという。特に近年ではデザインチームの中心を担い、2018年度は過去30年での最高業績を達成、2019年リーバイスとしては2度目のIPOに大きく貢献した。
「海外留学経験もなかったので、コミュニケーションに関してはもちろん苦労しました。また、語学だけでなく自己主張することが正のアメリカ文化なので、常に自分の意思やチームの意思、会社の意思をまとめながら世界中のニーズに応えられる商品を作ることが命題だったので、容易ではありませんでしたが、とても貴重な経験でした。印象的だったのは週に1度開催されるデザインチームのみの雑談会です。最近気になることや週末に印象に残ったこと、本で読んだこと、おもしろかった映画などをシェアするんです。シンプルですが、この意見交換から思いがけない発想が生まれるのです。チームメンバーは世界中から集まっており、それぞれの生活背景や興味が違えば違うほどいい刺激になり、おもしろい発想が生まれました。このような多様性あるアメリカ社会だからこそ、その機会はとても貴重な経験でしたし、デザインだけでなくブランドやチームの活性化に大きく寄与していたのではと思います。」
ブランドメーカーに長く勤務していたこともあり、次は自身のブランドの立ち上げに挑戦したいと前々から考えていた前村さん。海外で働いていた経験から、日本の良いものを海外へ、また海外の良いものを日本へという想いは強く、その視点で他のブランドと違う、自分にしかできないないアプローチができるのではと思い立ち上げたのがAUTHENだった。
新たな体験の提供
AUTHENは現在、ECを中心に展開している。実際に手に触れる機会がないと購買に繋がらないケースも多々あるため、今後はポップアップストアや卸売販売も検討しているといい、実際の商品に触れる機会も増やしていくそうだ。
「AUTHEN公式サイトにはバーチャルストアも設置しております。個人的に初めてこのサービスを体験したとき、とても感動したのです。想像よりかなり鮮明な画像ですし、実店舗を持たないブランドとして世界観を伝えやすく、実際の商品に触れずともお店や商品の雰囲気を楽しめる、世界中どこにいても携帯さえあればバーチャルショッピングを楽しんでいただけるのではと思い、バーチャルストアを導入しました。お客様に新しい体験を一緒に届けることでバーチャルショッピングをより楽しんでいただき、ブランドの認知に繋がることを願っております。」
今後については大量生産せずに済む、長く大切に着たいと思ってもらえる定番商品をどう作るか、大量廃棄された商品を再利用し、どれだけ魅力的な商品やサービスを届けられるか、この2点を常に考えて商品開発していくとのこと。
「お客様に共感していただけるような商品とサービスをより多くの方に届けられるよう日々精進したいと思っております。海外では日本製の商品はとても信頼されており、日本の良いものを海外のお客様に届けられるような試みを考えて行きたいと思っております。また、デジタル分野の進化はとても早いので新しい技術やコンテンツを活用しながら、商品だけでなく新しい体験とともにご提案できればと思っております。」
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