小田急百貨店新宿店が、新宿西口ハルクでリニューアルオープンした。同店は本館と新宿西口ハルクの2つの館で構成していたが、新宿駅西口地区開発計画の進捗に伴い、55年にわたる本館営業を10月2日に終了したばかり。新宿西口ハルクで改装オープンした“新生”小田急百貨店新宿店では取り扱う商品カテゴリーを絞り、「食品」「化粧品」「ラグジュアリーブランド」を中心に展開。アパレルの売り場はほぼゼロとなっている。
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本館の営業終了に伴い、同店は今春ごろから新宿西口ハルクで売場再編工事を進めてきた。今までの売場面積は本館と新宿西口ハルクと合わせて約3万平方メートルだったが、改装オープンで2割に縮小した。新宿西口ハルクの2〜6階にはビックカメラ、8階にはハルクレストランが入居しており、小田急百貨店新宿店としての売り場は地下2階〜地上2階(M2階を含む)に7階の一部を加えた計6フロア構成となる。
◆ハルクの象徴はゴルフからラグジュアリーに
地上1階の売り場は、新宿西口ハルクの顔にもなっていた「ハルクスポーツ」のゴルフ関連から、インターナショナルブティックとウォッチ&アクセサリーに変更。コロナ禍で日本人客によるラグジュアリー消費が勢いを増しているが、同店も同様で、コロナ前の2019年度比の売上を超えているという。地上1階における取り扱いブランド数は、本館が9ブランドだったのに対し、新宿西口ハルクでは14ブランドに増加。ブランドの入れ替えも行い、「モンブラン(MONTBLANC)」「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「フランク ミュラー(FRANCK MULLER)」の3ブランドが新規出店した。モンブランでは高級万年筆に加えてレザーグッズをラインナップ。ジョルジオ アルマーニはブランド初のレザーグッズオンリーショップとして展開し、フランク ミュラーは時計だけではなくショップ内のインテリアや調度品も販売するなど差異化を図っている。
フランク ミュラー
また、「銀座・和光」の新業態として「WAKO SITE」がオープン。時計塔の外壁をイメージした什器を3Dプリンターで再現した空間でバッグやハンカチを取り扱う。フロア中央に構える「グッチ(GUCCI)」の常設店舗は11月下旬のオープンを予定。オープンまでの期間、地上2階のイベントスペースにポップアップショップを出店している。
(左)WAKO SITE、(右)2階のグッチのポップアップ
ゴルフウェア売り場はM2階に移設した。売場面積縮小に伴い、取り扱いブランド数は半減したが、小田急百貨店の広報担当者によると人気ブランドを集積しているため大きなマイナス影響はなく、リピーター以外の利用者の来店促進が課題としている。なお、ハルクスポーツで扱っていたフィットネスやアウトドアといったその他のカテゴリーの売り場は設けていない。
ゴルフウェア売り場の様子
◆化粧品とスイーツをワンフロアに集約
地下1階は百貨店では珍しい、化粧品と和洋菓子の2カテゴリーで構成。いずれのカテゴリーも仕事帰りなどに同館に立ち寄る客層の類似傾向があり、買い回りが期待できるとした。
化粧品は本館の9割の広さを確保し、ほぼ同じブランド数を確保。51ブランドで46ショップを展開する。新規で「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」「アヴェダ(AVEDA)」のほか、韓国コスメ「ビリーフ(belif)」「シーエヌピーラボラトリー(CNP Laboratory)」の国内初の常設店を開設した。また、川辺が展開するフレグランスのセレクト売り場をリニューアルしたほか、ヘアケアにも注力しジェンダーレスな提案を強める。サービス面では非接触肌診断をはじめとしたウィズコロナに対応するサービスを導入。このほか、一部のショップには卵の殻から生まれた壁紙やリサイクル材の化粧板など環境に配慮した素材を使用している。
化粧品売り場の様子
和洋菓子では、百貨店初の店舗として「銀座甘楽」と「深川伊勢屋」に加え、「Made in ピエール・エルメ(Made in PIERRE HERMÉ)」をオープンし、開店直後から賑わいを見せた。
和洋菓子の売り場の様子
地下2階では食料品を販売。地上1階の外周路面店舗にはベーカリー「ゴントラン シェリエ(GONTRAN CHERRIER)」の日本国内2号店が出店し、若い女性を中心に行列ができた。
オープン後行列ができたゴントラン・シェリエ
◆アパレル売り場ゼロは「苦渋の決断」
地上2階の売り場では「コーチ(COACH)」や「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」などのブランドのハンドバッグや婦人靴、婦人服飾雑貨をラインナップ。7階にはギフトサロンや宝飾品売り場などを設け、宝飾品売り場奥に外商顧客向けの「お得意様サロン」を配置した。
2階の売り場の様子
アパレルはラグジュアリーブランドのショップ内で扱う商品とゴルフウェアのみで、デイリーで使えるアパレル専用の売り場はゼロとなる。小田急百貨店取締役で新宿店長を務める林幸一氏は「苦渋の決断だった。限られた面積の中で満足できる展開にならない」と判断したという。
売場面積および取り扱いカテゴリーは大幅に縮小したが、その代わりにデジタルコミュニケーションを強化。リモート注文サービスを拡充したほか、ギフトサロンではECサイト「小田急百貨店オンラインショッピング」と連動するなどして顧客接点の拡大を図る。
主なターゲットは新宿駅の利用者や来街者、新宿エリアで働く女性。新宿駅直結の本館に比べてやや離れた立地となるが、インスタグラムを中心としたSNSを活用し集客につなげる考えだ。改装オープン後の売上目標は非公表としている。
◆建て替え後の再出店は未定
新宿駅西口地区開発計画は、小田急電鉄が東京地下鉄と共同して推進する国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトと位置付け、モダニズム建築の坂倉準三氏がデザインを手掛けた本館建物は解体される予定となっている。
跡地には地上48階、地下5階、高さ約260メートルの高層ビルを建設する。高層部にオフィス機能、中低層部に商業機能を備え、オフィス機能と商業機能の中間フロアには、来街者と企業の交流を促すビジネス創生機能の導入する計画だ。竣工は2029年の予定。
林店長はオープニングセレモニーで「リニューアルへのご期待の声、建て替え後のご期待の声も数多く頂戴している。営業を通してお客様のご期待に添えますよう精進していく」とスピーチしたが、建て替え後の新ビルでの営業については現状未定となっているという。
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