大手百貨店各社は今夏の中元商戦で売り上げ増とEC化率の拡大を目指しているようだ。10兆円超と見られる国内のギフト市場はカジュアルギフトの好調が目立つ。一方で中元・歳暮といった儀礼ギフトは利用者の高齢化や、企業の儀礼廃止などもあって縮小傾向が続いている。それでも、コロナ禍における「厳選消費」の流れや昨今のソーシャルギフト市場の拡大などもあり、百貨店各社は中元商戦でも新しいギフトの形を模索している。
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大丸松坂屋百貨店の中元商戦は”厳選消費”の動きが活発化することを想定し、「行列必至スイーツ」や「極上グルメ」などをキーワードにお取り寄せ品の取り扱いを昨年に比べ3%増やして臨む。
矢野経済研究所によると、中元・歳暮市場は縮小傾向にあるものの、国内のギフト市場はカジュアルギフトがけん引。コロナ禍直後の2020年に一旦下落したが復調し、10兆円超に戻している。大丸松坂屋百貨店の22年度のギフト売上高はほぼ横ばいで、中元・歳暮は微減だった。
また、同社による「贈り物・プレゼント」に関する調査では、顧客の66・2%が「自分が買って良かったものを誰かに贈ったことがある」と回答したほか、77・9%が「頑張った自分にご褒美を買ったことがある」と回答したという。
ギフト市場が拡大する中、中元・歳暮は減少傾向にある現状を踏まえ、同社ではカジュアルに楽しく、自分も体験してみたいモノ・コトを、期間・販売チャネルにとらわれず贈れるサービス提供を実現することが大事としている。
加えて、昨年の歳暮商戦では売り上げ1位のカテゴリーが洋菓子、7位が和菓子となり、和・洋菓子で売り上げの25・3%を占めた。また、歳暮のEC化率が35・8%なのに対し、洋菓子のEC化率は49・8%、和菓子が42・9%と高いことから、パワーカテゴリーの”菓子”を基軸にECを主戦場とし、厳選消費の傾向を考慮してとくに「話題性」「希少性」「地域性」を重視した品ぞろえで勝負する。
主力媒体の「大丸 夏の贈り物」では、行列必至スイーツとして巻頭で「サブレミシェル」のヴォヤージュサブレ缶・ケーキサブレ缶詰合せ(税込4860円)や、「カフェタナカ」のレガル・ド・チヒロシュクレ缶(同5211円)、D2Cのチーズケーキブランド「ミスターチーズケーキ」の化粧箱入り(同5736円)などを提案する。
また、自家需要の開拓を狙って昨年の歳暮時に立ち上げた、EC受注が中心となるお取り寄せグルメのカタログ「GOHOUBI(ごほうび)」の2号目を中元商戦で発刊。前回の16ページから24ページに増やすなど本格展開を開始し、従来よりも若いユーザーの獲得を目指す。
当該媒体の巻頭でも行列必至スイーツである「アトリエうかい」のフールセック缶・大缶(5550円=画像㊤)などを紹介する。
「大丸松坂屋オンラインストア」では先行して5月9日から、店頭では6月1日から中元ギフトの受注を開始。今中元商戦の売上高は前年比3%増を目標とし、EC化率も高めたい意向だ。
ネット限定のお得セットも
そごう・西武は、中元商戦で「夏のごちそう」を提案する。中でも今夏は”暑さ”をキーワードに、暑い夏にぴったりなクールギフト、メリハリ消費にうれしい夏のグルメを特集する。
近年の中元の傾向として定番のギフト商品にとらわれず、有名店や産地、素材にこだわった「ごちそうメニュー」の人気が伸長している中、同社では新たな中元ニーズに応える。加えて、価格高騰が続く中、初めて「EC限定ご自宅用お買得品」特集を開催する。
EC限定企画は全17SKUを展開。バイヤーが自信を持ってセレクトした日本各地の特産品や有名店の味を楽しめるお得なセット商品で、「タトゥフォ アイスバーセット」(税込4536円)や「北海道産 ほたて貝柱」(同5184円)、「聘珍樓肉まんセット」(同3024円)などを提案する。
中元の注文は、通販サイト「eデパート」が5月11日~8月4日まで、中元ギフトセンターは店舗によって会期が異なるが、西武池袋本店は6月6日~7月18日、そごう横浜店は6月9日~7月23日まで受け付ける。
中元カタログの掲載点数は前年比23アイテム増の1576アイテム、売り上げ目標は同5%増で、EC売上高は同10%増を目標とする。
高島屋は、今夏は例年以上の暑さが予想されることから「冷感」「サッパリ」グルメを強化するほか、猛暑でも元気になる「発汗」「ガッツリ」グルメ、および節電マインドの高まりを受けて電力不使用な「常温」で長期保存可能なグルメを提案する。
具体的には、「アフタヌーンティー・ティールーム」のアイス&シャーベット(5400円)や「奥芝商店」の竜宮の賄い海鮮スープカレー(5234円)、「友桝飲料」の湯あがり堂サイダー詰合せ(3240円)などを紹介する。
中元カタログの掲載点数は約2000点。通販サイト「高島屋オンラインストア」では期間中最大約4500点を展開し、約1500点が全国送料無料となる。
家族や親族、友人など親しい人と人気店のグルメを贈りあったり、テーブルを囲む機会が増えたりするのを予想して、オンラインストアでは「この夏も暑さに負けずご自愛ください」と相手の健康を祈る心を表現する、お取り寄せグルメやスイーツを提案する。
また、省資源化に向けた取り組みとして、店頭ギフトセンターの来場者を対象に、次回の歳暮期より紙のカタログからデジタルカタログに切り替えたユーザー先着1万人に食料品フロアで使える200円分のクーポンを配布する。
仮想モールでも中元商戦開始
一方、ネット販売事業者も中元商戦を本格化させている。
楽天グループは6月1日、仮想モール「楽天市場」内に、中元・夏ギフトの特集ページを公開した。国内の中元市場の規模は年々減少している一方、ネットにおいてはコロナ禍を経て、ギフト商品の購入先としてECが定着し、購入者が増加している。楽天市場における中元関連商品の流通額は2019年から22年で約2・6倍(19年6月3日~8月1日と22年6月1日~8月18日の「楽天市場 お中元特集」開催期間中の流通総額を比較)となった。
また、近年の中元・夏ギフトは、同僚や取引先へ贈る儀礼的なものから、家族や親戚、友人など身近な人に贈るものへとカジュアル化が進んでいるという。楽天市場においては、中元・夏ギフト購入時に「熨斗なし」を選択するユーザーが増えており、その流通額は19年から22年で約2・3倍(同)に拡大している。さらに「熨斗なし&自宅送付」の22年流通額は、前年比20%増となっている。同社では、手土産としてギフトを直接渡す機会が拡大傾向にあるとみている。
同社によれば、楽天市場には、約220万点が中元・夏ギフト向け商品として販売されており、食品やスイーツ、ジュースや酒類などが定番商品として人気となっている。特集ページでは、定番のグルメやスイーツ、贈る相手やその家族構成別、予算別の商品紹介のほか、ユーザーの「失敗したくない」という需要に対応した「老舗ブランドギフト」など、多様なテーマで商品を紹介する。
最近の傾向としては、貰い手のニーズの多様化に合わせる形で、複数のアイテムから好きなものを選べるカタログギフトの流通額が伸長。19年から22年で約3倍(19年と22年の楽天市場における商品名に「お中元 カタログギフト」を含む商品の年間流通額を比較)となっている。同社では、カタログギフトの紹介に特化したコンテンツも7月下旬に公開する予定。
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