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復活した米老舗書店チェーン アマゾンに対抗する「脱チェーンストア」という生き残り策

地域コミュニティの好みを反映したバーンズ&ノーブルの店内。地元ドジャースの関連書籍が大々的に展開されるなど、画一的なチェーンストアからの脱却が売り場にも鮮明に表れている。

地域コミュニティの好みを反映したバーンズ&ノーブルの店内。地元ドジャースの関連書籍が大々的に展開されるなど、画一的なチェーンストアからの脱却が売り場にも鮮明に表れている。

地域コミュニティの好みを反映したバーンズ&ノーブルの店内。地元ドジャースの関連書籍が大々的に展開されるなど、画一的なチェーンストアからの脱却が売り場にも鮮明に表れている。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

アマゾンの猛攻から蘇った老舗書店チェーン

かつて、アマゾンの台頭により絶滅の危機に瀕していたアメリカの老舗書店チェーン、バーンズ&ノーブルが奇跡的な復活を遂げている。

2019年にエリオット・マネジメント(Elliott Management)が6億8300万ドル(約1024億円)で同社を買収した当時、売上は減少し、巨額の損失を抱え、まさに瀕死の状態であった。

しかし、イギリスの書店チェーンであるウォーターストーンズ(Waterstones)を再建した実績を持つジェームズ・ダント(James Daunt)氏がCEOに就任して以来、事態は劇的に好転した。

彼の指揮下で、バーンズ&ノーブルはデジタル時代の脅威に適応するだけでなく、収益性の高いビジネスモデルへと変貌を遂げたのである

現在では、ウォーターストーンズと合わせた売上高は30億ドル(約4500億円)を超え、4億ドル(約600億円)以上の利益を生み出すまでに成長している。

「退屈な本」を追放した脱チェーンストア戦略

復活の最大の要因は、画一的な品揃えを押し付ける従来のチェーンストア手法を完全に放棄したことである。

ダント氏は、各店舗の店長に大幅な権限を移譲し、地域コミュニティの好みに合わせた独自の売り場作りを任せた。

大手出版社から宣伝費を受け取って目立つ場所に「退屈な本」を平積みする悪習を絶ち、代わりに書店員が本当に売りたい本、読者が本当に読みたい本を並べる独立系書店のような運営方式へと切り替えたのだ。

出版社が押し付けてくる本に対し、ダント氏が「その赤ん坊は不細工だ(That baby's ugly)」と冷酷に突き返したエピソードは、彼の妥協なき姿勢を如実に表している

店舗ごとにレイアウトも異なり、フロリダの高齢者コミュニティの店舗ではミステリーやノンフィクションを充実させ、ワシントンD.C.の流行の最先端を行く地域では韓国や日本の翻訳本を多く取り揃えるといった具合に、徹底したローカライズが行われている。

さらに、スターバックスのカフェを併設し、読書コミュニティであるBookTokで話題の本を特設コーナーで展開するなど、アルゴリズムには決して真似できない「実店舗ならではの発見の喜び」を顧客に提供している。

徹底したコスト削減と驚異的な出店ラッシュ

魅力的な売り場作りの裏で、ダントは冷徹なまでのコスト削減も断行している。

パンデミックによる店舗閉鎖時には5000人の従業員を解雇し、本社スタッフにも再雇用試験を課して人員を大幅に削減した。

また、新刊の初回発注量を絞り込むことで、かつて20%から25%もあった返品率を約8%にまで劇的に低下させた。

返品コストや輸送費の削減によって出版社の利益構造も改善されたことを盾に、バーンズ&ノーブルは50%を超える強気な仕入れ割引率を勝ち取っている

こうして筋肉質な財務体質を手に入れた同社は、現在猛烈な勢いで新規出店を進めている。

2025年に60店舗以上をオープンし、2026年にもさらに60店舗の出店を計画しており、年末までにはアメリカ国内の店舗数が2019年の627店舗から740店舗へと拡大する見込みだ。

新たに出店する店舗の多くは従来よりも面積が小さく、効率的で投資回収率が高いフォーマットを採用している。

IPOへ向けた動きと実店舗の逆襲

この目覚ましい業績回復を受け、親会社のエリオット・マネジメントは、バーンズ&ノーブル、ウォーターストーンズ、そして文具チェーンのペーパーソース(Paper Source)を統合したグループの新規株式公開(IPO)に向けた準備を本格化させている

複数の大手投資銀行を起用し、早ければ今年の第2四半期にもロンドン証券取引所での上場を視野に入れているという。

アマゾンのような電子商取引の巨人が支配する現代において、実店舗の書店チェーンがここまで息を吹き返し、株式上場を果たす目前まで来ている事実は驚異的である。

バーンズ&ノーブルの成功は、効率性やアルゴリズムによる推薦機能だけが小売業の正解ではなく、人間の感性によるキュレーションと地域に根ざしたコミュニティの形成こそが、デジタル時代における実店舗の生き残る道であることを強く証明している。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

先日、ブログ記事でも触れましたが、最近読んだジェイソン・デル・レイ氏の著作「勝者総取り(ウィナー・セルズ・オール):アマゾン、ウォルマート、そして財布をめぐる戦い――企業決断とEC競争が小売・商業をどう変貌させるか(Winner Sells All: Amazon, Walmart, and the Battle for Our Wallets – How Corporate Decisions and E-Commerce Rivalry Reshape Retail and Commerce)」(未邦訳)は、ネット通販の覇権をめぐる熾烈な戦いを描いた非常に示唆に富む一冊です。

本書が浮き彫りにするのは、過去の輝かしい成功体験が、時に経営陣の両目を完全に塞ぐ分厚いアイマスクになってしまうという恐ろしい現実です。

ウォルマートはネット通販黎明期、既存の実店舗網という巨大な収益源を守るあまり、目先の黒字化を優先して「イノベーターのジレンマ」に深く苦しめられました。

迫り来るアマゾンという氷山を前にしても、圧倒的な成功を収めた巨大な船ほど急には舵を切れなかったのです。

このアマゾンの猛威によって、かつて絶滅の危機に瀕したのが老舗書店チェーンのバーンズ&ノーブルでした。

しかし、彼らはウォルマートとはまた異なる見事なアプローチで、実店舗の逆襲劇を演じています。

ウォルマートがジェット・ドットコムなどの新興企業を買収してテック企業のDNAを取り込み、実店舗を巨大な配送拠点としてデジタルと融合させる「正面突破」でアマゾンを猛追したのに対し、バーンズ&ノーブルはアマゾンと同じ土俵から降りるという決断を下しました。

ジェームズ・ダントCEOは、チェーンストア特有の画一的な品揃えという名の重い鎖を引きちぎりました。

アルゴリズムが弾き出す無機質な「おすすめ」や、出版社が多額の協賛金を積んで目立つ場所に押し付けてくる「退屈な本」を売り場から完全に追放し、現場の書店員に権限を委譲したのです。

フロリダの高齢者コミュニティの店舗ではミステリー本を充実させ、ワシントンD.C.の流行に敏感な地域では翻訳本を並べるといった徹底した地域密着のキュレーションは、デジタル空間には決して再現できない「偶然の出会い」というスパイスを顧客に提供しています。

すべてを安く早く売る「エブリシング・ストア」であるアマゾンに対し、バーンズ&ノーブルは「人間味」と「コミュニティのハブ」というアナログな武器で反撃に出ました。

効率性という冷たい土俵で勝負するのではなく、人間の感性という温かみのある土俵へと戦場を移したからこそ、再び息を吹き返したのです。

デジタルという黒船の襲来に対し、一方はデジタルとリアルの融合で、もう一方はリアルの極地を追求することで、かつての巨大チェーンたちが逞しく生き残る道を見出しているのは非常に興味深いですね。

さて、ダントCEOは出版社が押し付けてくる本を「その赤ん坊は不細工だ」と冷酷に突き返したそうです。

独身ミニマリストの私も、ネット通販が押し付けてくるおすすめ商品を「すべて不細工だ!(Everything's ugly)」と突き返し続けています(笑)。

おかげで自室から一切の無駄が排除されたのですが……ハッと気づけば、私の部屋は温かみのある書店の真逆、極限まで無駄を省いた"単なる殺風景"になっていました!

最終更新日:

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