プライベートブランドは節約品から指名買いへ ウォルマートの“賢い買物”革命

ウォルマートの冷凍売場に並ぶ食品PB「ベターグッズ」のピザ。PBは安価な代替品から、味や素材、パッケージで高所得者にも選ばれる独自ブランドへ進化している。

ウォルマートの冷凍売場に並ぶ食品PB「ベターグッズ」のピザ。PBは安価な代替品から、味や素材、パッケージで高所得者にも選ばれる独自ブランドへ進化している。

ウォルマートの冷凍売場に並ぶ食品PB「ベターグッズ」のピザ。PBは安価な代替品から、味や素材、パッケージで高所得者にも選ばれる独自ブランドへ進化している。

【PBは節約品から指名買いへ】ウォルマートが約1,000品!高所得者もハマる“賢い買物”革命
PBに残る古いイメージ
米国でプライベートブランド、いわゆるPBの位置づけが変わっている。かつてはナショナルブランドを買えない人が選ぶ廉価な代替品と見られがちだった。
ところが現在は、所得にかかわらず、品質に納得できれば店のブランドを選ぶ消費者が増えている。PBは「仕方なく買う商品」から「合理的に選ぶ商品」へ進化したのである。
所得ではなく買物の思想
ニールセンIQ(NielsenIQ)によると、2026年1~5月にバリュー系小売業の売上は前年同期比11.6%増えた。従来型小売業の2.3%増を大きく上回る。
物価高で低所得層が安い店へ移っただけではない。中所得者も高所得者も、日常品に余計なお金を払わず、価値を感じる商品だけに支出するようになったのだ。
高所得者も日用品では節約
年収の高い家庭でも、牛乳、卵、パスタ、冷凍野菜、ペーパータオルまで有名ブランドでそろえる必要はない。
味や品質に差がなければPBを選び、浮いたお金をオーガニック食品や週末の外食に回す。
これは生活水準を下げる行為ではなく、商品ごとにお金をかける場所と省く場所を決める「選択的な節約」である。
ウォルマートの2階建てPB
ウォルマートには価格を前面に出すグレートバリュー(Great Value)がある。
さらに2024年には、味、素材、トレンド性を重視した食品PBのベターグッズ(bettergoods)を約300品で投入した。
多くを5ドル(800円)未満に抑えながら、植物由来食品や少しぜいたくな冷凍食品などをそろえた。
安いだけでは高所得客を呼べない
ベターグッズの役割は、グレートバリューを高級化することではない。節約を担うPBと、手の届くぜいたくを担うPBを分けることにある。
ウォルマートはベターグッズが新規客、とりわけ高所得層の獲得に貢献したとしている。
高所得者を呼んでいるのは安さそのものではなく、価格に対して品質が上回るという納得感なのである。
約1,000品は予測値
ベターグッズは約1,000品まで拡大すると報じられている。ただし、これはウォルマートが正式に確定した商品数ではなく、RBCキャピタル・マーケッツ(RBC Capital Markets)のアナリストによる予測である。
それでも発売時の約300品から売場で存在感を増していることは、ウォルマートが同ブランドを一時的な物価高対策ではなく、食品戦略の柱として育てていることを示す。
クローガーが価格で逆転
PB競争では、ウォルマートやアルディが常に最安とは限らない。
レストラン・ファニチャー・プラス(Restaurant Furniture Plus)が牛乳、パン、卵、鶏胸肉などPB15品を比較したところ、クローガーは30ドル(4,800円)、ウォルマートは30.95ドル(4,952円)、アルディは33.15ドル(5,304円)、アルバートソンズは35.58ドル(5,693円)だった。
小さな比較が示す大きな変化
この調査は15品を特定時点のネット価格で比べたものであり、チェーン全体の安さを決めるものではない。
それでもクローガーが15品中10品で最安だったことは、PBがウォルマートやアルディに対抗する価格兵器になったことを示している。
消費者は店の看板ではなく、アプリ上の買物カゴで安さを判断するようになった。
アルバートソンズは2兆円事業
アルバートソンズのPB売上は年間169億ドル(2兆7,040億円)に達し、22の店舗ブランドを通じて1万4,000品以上を展開する。
冷凍食品や飲料を強化しているのも、購入頻度が高く、味や機能で差別化しやすいからだ。
PBは棚の空白を埋める廉価品ではなく、仕入れ、商品開発、価格、販促を束ねた巨大事業になっている。
店にしかない商品が武器
ナショナルブランドは価格を比較されやすく、別の店でも購入できる。
PBなら味、容量、パッケージ、売価を小売企業自身が設計し、その店でしか買えない理由をつくれる。
利益率を確保しながら客を囲い込み、購入データを次の商品開発へ戻せることも強みである。
PB革命の本質
これから苦しくなるのは、最安でもなく、特別な品質もなく、どこでも買える中間の商品である。
消費者は日常品をPBで抑え、こだわる商品には高いお金を払う。
PBを買うことは所得の低さを示す印ではなく、自分にとって不要なブランド代を見分ける買物能力になった。
ウォルマートが売ろうとしているのは廉価品だけではない。「この価格なら、こちらを選ぶ」という判断そのものなのである。
本日のレート1ドル=160円。

ウォルマートのデリ売場のホットコーナーに並ぶPB「フレッシュネス・ギャランティー」の温かいチキンスライダーとBBQプルドポーク・サンドイッチ。小腹を満たす食べ切りサイズと手頃な価格で、PBが「安い代替品」ではなく、筆者からも”指名買い”を生み出している。
ウォルマートのデリ売場のホットコーナーに並ぶPB「フレッシュネス・ギャランティー」の温かいチキンスライダーとBBQプルドポーク・サンドイッチ。小腹を満たす食べ切りサイズと手頃な価格で、PBが「安い代替品」ではなく、筆者からも”指名買い”を生み出している。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
テキサスを地盤とするHEBを視察すると、PBコーヒーのカフェ・オレ(CAFE Ole)「テキサス・ピーカン」を購入します。
ピーカンの甘い香りが特徴で、アメリカ人もお土産に選ぶほどの人気商品です。
ウォルマートでは、コンシューマー・レポート誌で高く評価されたことをきっかけに、グレートバリューのコーヒーを定期的に買っています。
視察中に小腹が減れば、デリ部門のPB「フレッシュネス・ギャランティー(Freshness Guaranteed)」です。
熱々で小ぶりなスイート・クリスピー・チキンスライダー(1.72ドル!)か、2.50ドルのBBQプルドポーク・サンドイッチを買います。
片手で食べられ、価格も財布にやさしく、売場調査を続ける燃料になります。
PBは有名ブランドの安い影武者ではありません。コーヒーは旅の記憶を持ち帰らせ、ホットサンドは「いま食べたい」を満たし、店でしか買えない体験をつくります。
ウォルマートがPBを刷新する狙いも、安さだけでなく来店理由を増やすことです。もっとも店内でこの香りが漂えば、PBの調査員より先に、胃袋が購買決定権を握りますね。
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