ベストバイ新CEOの第一手は「店を小さく」 空白の町に入る小型店戦略

30年前に「コンセプトⅢ」というフォーマット名(当時は最大1600坪も)で出店した大型店と、それを支えるだけの駐車場。この規模が置ける町にしかベストバイは出店できなかった。11月就任の新CEOは、その前提を1万2,000平方フィート(約340坪)まで削りにいく。

30年前に「コンセプトⅢ」というフォーマット名(当時は最大1600坪も)で出店した大型店と、それを支えるだけの駐車場。この規模が置ける町にしかベストバイは出店できなかった。11月就任の新CEOは、その前提を1万2,000平方フィート(約340坪)まで削りにいく。

30年前に「コンセプトⅢ」というフォーマット名(当時は最大1600坪も)で出店した大型店と、それを支えるだけの駐車場。この規模が置ける町にしかベストバイは出店できなかった。11月就任の新CEOは、その前提を1万2,000平方フィート(約340坪)まで削りにいく。

ベストバイのジェイソン・ボンフィグ(Jason Bonfig)氏が11月1日、コリー・バリー(Corie Barry)氏の後を継いで同社6代目のCEOに就く。
就任を3か月後に控えた同氏が最初に打ち出した成長策は、新業態でも値下げでもなく、店舗を小型化して今まで出られなかった町に入るという地味な一手である。
7月末、アーカンソー州ジョーンズボロ(Jonesboro)とマサチューセッツ州ケープコッド(Cape Cod)で新店を開け、それを自らの戦略の実例だと説明した。
1,100坪から420坪へ、3つのサイズを使い分ける
従来のベストバイは大きい。ニューヨークの旗艦店をはじめ大型店は4万平方フィート(約1,100坪)を超える。中型店は2万~2万5,000平方フィート(約560~700坪)。
今回投入する小型店はこれを1万2,000~1万5,000平方フィート(約340~420坪)まで絞る。
「従来サイズの店では入れないが、リーチという観点では確実に意味のある市場がある」とボンフィグ氏は語った。
カナダ法人はすでに7,000平方フィート(約200坪)の店で成果を出しており、米国はその後追いになる。
竜巻で消えた店が6年ぶりに帰ってきた
ジョーンズボロ店は象徴的だ。6年前、巨大な竜巻で従来店が損壊して以来、この町には家電量販店がなかった。
新店は旧店から約1マイル(約1.6キロメートル)のハイランド・スクエア(Highland Square)に構え、7月30日朝のテープカットにはボンフィグ氏と市長が並び、開店前から行列ができた。
「3万~3万5,000平方フィート(約840~980坪)の店は支えられないが、活気のある市場だ」——1万8,000平方フィート(約500坪)という中間サイズが答えだった。
ケープコッド店は2万8,000平方フィート(約790坪)で中型よりやや大きい。判断は町ごとである。
近くに店ができると、客のデジタル行動まで変わる
小型店の狙いは売場面積あたりの効率ではない。ボンフィグ氏は「客の近くに店を置くと、来店頻度が変わるだけでなく、デジタル上の行動まで変わる」と述べている。
新しい町に店を出すと、初めて実店舗に来る客が増えるだけでなく、同じ客のアプリ利用も増える。
ネットとリアルを別勘定にしない発想であり、小型店は在庫を並べる箱ではなく、その地域に客とデータを発生させる装置として置かれている。
直近決算は既存店2%増、それでも市場には負けている
足元の数字は悪くない。2027年度第1四半期の売上高は89億4,000万ドル(約1兆4,304億円)で2%増、既存店売上高も2%増、純利益は37%近く増えて2億7,600万ドル(約442億円)。
ゲーム、パソコン、携帯電話が伸び、白物家電は弱いままだった。ただし同期の米国家電市場は3.6%成長しており、ベストバイはシェアを落とし続けている。
接客と発見型の売場という同社の差別化は、動画とAIと他社の接客改善によってすでに侵食されたとの分析もある。
「我々はもう小売業者ではない」
ボンフィグ氏はこの言葉を決算説明の場で使った。掲げる4本柱は、小売・メディア・広告・テクノロジー企業への転換、リーチの拡大、店舗体験の向上、人が主役の会社であり続けること。
取締役会が選んだのは売場の運営者ではなく、広告事業とマーケットプレイスという社内で最も粗利の高い2つを立ち上げた人物である。人事そのものが方向転換の宣言になっている。
粗利を支えているのは家電ではなく広告である
2026年度の売上高は417億ドル(約6兆6,720億円)、粗利率22%、営業利益率は3%をわずかに超える程度、純利益率は2.5%前後。
仮にテレビを1ドル売っても2~3セントしか残らない商売だ。
対して広告に原価はない。ベストバイ・アド(Best Buy Ads)は広告主約750社から年間9億ドル(約1,440億円)超を集める。
同社は直近2四半期とも、広告とマーケットプレイスの伸びが商品粗利の低下を相殺したと明言している。粗利を支えているのは家電ではない。
広告主の77%が大手数社という弱点
ただしこの広告事業には構造的な穴がある。調査によれば、ベストバイの広告表示の77%が少数の大手ブランドに集中し、中小広告主の比率はわずか3%。
アマゾンの58%、ウォルマートの46%と比べて極端に細い。大手2~3社が予算を絞れば事業の相当部分が消える。
処方箋がマーケットプレイスだ。サードパーティー出品者は自分の商品を守るために広告を買うため、出品者の裾野がそのまま広告主の裾野になる。
米国版の再構築が急がれているのはそのためで、カナダではすでに出荷点数の4分の1が第三者出品である。
空きスペースを実演の場に変える70店の改装
既存の大型店にも手をつける。
同社は70店で店内の空きスペースを集約し、うち50店にメタ(Meta)のVR・AI機器を試せる売場を、20店に子会社ヤードバード(Yardbird)が主導するアウトドア用品の売場を入れる。
ボンフィグ氏は「空間をもっと戦略的に使える店が数百ある」と述べており、この改装は序章にすぎない。
小型店で新しい町に入り、大型店では持て余した面積を体験に振り替える。方向は逆でも、狙いは同じ「来る理由」の再設計である。
CFO不在のまま8月27日の決算を迎える
株価は7月31日終値で86.26ドル。2021年末につけた138ドルからはなお2割ほど低いが、直近1か月で1割上げ、第1四半期決算を発表した日には15%跳ねた。
四半期配当96セント、利回りは4.4%超と厚い。
一方で7年務めたCFOが7月末に退任し、後任は未定である。
関税と急騰するメモリー価格が原価を押し上げる中、通期の既存店見通しはマイナス1%からプラス1%という実質横ばいのままだ。
8月27日の第2四半期決算で見るべきは店舗数ではなく、広告収入の伸びと、中小広告主の比率が3%から動くかどうかである。
本日のレート1ドル=160円
ベストバイの新CEOが打ち出した一手は「店を小さくする」でした。
従来の1,100坪という広さは、家電をひと通り並べるには気持ちがいいのですが、その面積を支えられるだけの人口がある町にしか出せません。
裏を返せば、アメリカの地方の相当数がベストバイの空白地帯だったわけです。
そこで340坪から420坪へ絞り込むと。
売場が狭くなれば商品は選び抜かれますが、その町にとっては「今までゼロだった店が1になる」。
竜巻で店を失って6年間、家電量販店のなかったジョーンズボロに500坪の店が戻ったのは、まさにその発想です。
しかも面白いのは、狙いが目先の売上ではないところ。
近くに店ができると来店が増えるだけでなく、同じ客のアプリ利用まで増えるのです。
小型店は商品を売る箱というより、その地域に客とデータを生む種まき機ですね。そして芽が出た先に待っているのが、年間1,440億円を稼ぐ広告事業。
テレビを1ドル売って残るのは2~3セントですが、広告に原価はありません。売場を小さくして、儲けの通り道を太くする。そういう設計です。
大型テレビを買いに行ったら、店ごとコンパクトになっていた。驚くのは客のほうかもしれません。
最終更新日:
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