厚底シューズ革命から9年 マラソン2時間切り達成が示すアディダスとナイキの現在地

3月の東京マラソンエキスポで展示されていた「アディゼロ アディオス プロ エヴォ 3」
Image by: FASHIONSNAP

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3月の東京マラソンエキスポで展示されていた「アディゼロ アディオス プロ エヴォ 3」
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2026年4月26日に開催されたロンドンマラソンは、公認記録として人類初のマラソン2時間切り(サブ2)を達成し、大きな注目を集めた。ケニアのセバスティアン・サウェ選手が、従来の世界記録を1分以上更新する1時間59分30秒で優勝。2位のヨミフ・ケジャルチャ選手(エチオピア)もサブ2を達成した。女子でも、ケニアのティギスト・アセファ選手が2時間15分41秒で優勝し、女子単独レースの世界新記録を更新。3選手がそろって着用していたアディダスの最新シューズにも注目が集まっている。
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2017年以降、厚底シューズが標準に
サウェ選手のサブ2達成に合わせ、アディダスが公開した動画「Chasing SUB-2」
長らく達成困難とされてきたサブ2を、「不可能ではないのかもしれない」と最初に思わせたのは、アディダスではなくナイキだった。2017年5月、ナイキは「Breaking2」と名付けたプロジェクトを実施。ケニアのエリウド・キプチョゲ選手と組み、新開発のシューズやペースメイク、環境設計といった科学的アプローチを組み合わせてサブ2に挑戦した。結果は2時間00分25秒で未達に終わったものの、2019年10月の挑戦では1時間59分40秒を達成。非公認記録ながら、サブ2が到達可能な領域だと示したことは大きい。
Breaking2をきっかけに登場した厚底カーボンプレートシューズは、それまで薄底が主流だったランニングシューズ市場を一変させた。ナイキのシューズは主要大会を席巻し、2021年の箱根駅伝でナイキ着用率が95%を超えたことは今も語り草だ。その後、アディダスやアシックスをはじめ各社がフォーム素材の開発や構造設計でナイキを猛追。開発競争が製品の選択肢を押し広げ、今やトップアスリートだけではなく、市民ランナーにとっても厚底シューズは“標準装備”となっている。
今回のロンドンマラソンでサウェ選手らが着用した「アディゼロ アディオス プロ エヴォ 3(ADIZERO ADIOS PRO EVO 3)」は、前作から約41グラム軽量化し、片足約97グラムを実現。ランニングエコノミーも約1.6%改善したとされる。もちろん、サブ2達成の背景には選手自身の進化に加え、トレーニング理論や栄養管理などの高度化があるが、メーカー各社によるシューズ開発競争が大きく寄与したことは間違いない。
サブ2はゴールではなくスタート
ナイキがBreaking2に合わせ、2017年7月に公開していた動画
9年前にナイキが可能性を示したサブ2という目標は、ライバルであるアディダスが成果をもぎとった。こうした状況は、両社の近年の業績動向にも重なる。
ナイキは2010年代後半から2020年代初頭にかけて、コロナ禍による一時的な落ち込みを挟みつつも、ランニング領域を成長ドライバーの一つとして毎年1ケタ台後半から2ケタの成長を記録してきた。しかしその後は、直営(DTC)戦略の強化に伴う卸売りの縮小や、製品の鮮度低下、イノベーションの見えにくさなどを背景に成長が鈍化。2025年6月~2026年2月期の売上高は前年並み、2026年末にかけての見通しでは1ケタ台前半の減収になると発表している。「Win Now」と呼ぶ再成長戦略のもと、卸パートナーとの関係再構築、パフォーマンス領域への回帰、在庫圧縮などを進めているが、回復には想定よりも時間がかかっており、直近では全世界の従業員の2%にあたる1400人の人員削減も発表した。
一方のアディダスは、2010年代にYe(カニエ・ウェスト)と組んだ「イージー(Yeezy)」でファッション領域での存在感を高めたが、2022年以降は同事業の終了により業績が急減速。2023年12月期は30年ぶりの赤字に転落した。ただしその裏で、ランニングを中心としたパフォーマンス領域への再投資を進めてきた。日本で生まれたランニングシューズ「アディゼロ(Adizero)」シリーズを軸とした強化戦略が奏功し、2025年12月期にはランニングカテゴリーの成長率が30%超に達した。
スポーツの記録更新には、よく「心理的な壁」の話が登場する。1954年に英国のロジャー・バニスター選手が人類で初めて1マイル(約1.6キロメートル)走4分切りを達成すると、他の選手たちも短期間で続々と記録を更新した。限界だと思われていた記録も、一度誰かに破られると到達可能な目標だと認識されるようになる。マラソンのサブ2も同様で、おそらくここから記録更新がいっそう進む。サブ2達成は選手にとってもスポーツメーカーにとっても競争の終わりではなく、新たな競争の始まりと言える。
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