Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

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堅牢な蛹からは蝶が生まれ、柔らかな繭からは蛾が生まれることに、子どもの頃から“神聖さ”を感じていた。テレビで流される羽化の様子を観て、畏れと恍惚が共存し得ることを知ったのだ。「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」の2024年秋冬コレクションには、その類の感動があった。
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ショーを終えてデザイナーの青木明子が話した「女性が自分の部屋に戻って“服を脱ぐ”という行為は、自分が生きている社会の中からひとつの身ぐるみを剥ぐようなもの。そういった『服を脱ぎ着している瞬間』は、着替えのプロセスかも知れない。でも、脱げかけていたり、着ている途中の様子って本当に『途中の姿』なのかな、というところからインスピレーションを得た」という考え。センシュアルなものが昇華されていくことをイメージしたというショーの音楽で「女性が持つ優しさや、何かを受け入れたり諦めたりする哀愁みたいなものを表現したかった」とも青木は話す。同氏が提案する、諦念と静けさを持ち、ある種前時代的とも捉えられるしとやかな女性像の正体は何なのだろう。
15年間女子校生活を送った青木には及ばないが、筆者も6年間女子校に通っていた経験があり、アキコアオキのクリエイションや価値観に勝手に親しみを感じている。女子校で過ごす思春期は、同世代の同性たちと暮らす中で、ジェンダーロールなんてものとは無縁に、大人の声など耳に入らず、ただ人間としての自己存在を思い悩む日々だった。のびのびと育んだ自尊心と自己愛は、卒業後に放り出された現実の男性優位社会の中で大きな壁にぶつかる。社会の中でサヴァイヴするために覚えた愛嬌や賢さは静かに己を傷つけ続けている一方で、そうして塗り固めた自分像を解くことへの恐怖もある。そういった回想の中で思い浮かべた「自室で服を脱ぎかけ(着かけ)ている女性の姿」は、裸以上に脆く、完璧に服を着た姿よりも真正な、生々しい「人間」だった。
よく言われる「ファッションは武装」という言葉を筆者も信じている。しかし今回アキコアオキが提案するのはその「武装」を解く過程を過程として捉えず、「脱ぎかけている過程に見る美意識」としてそこに一つの価値を見出す。

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アキコアオキの2024年秋冬のテーマは「完成しきる前のプロセスの中にある美意識」で、「過程は本当に過程でしかないのか?」という着想のもと、先に考えたデザインを目指して服を作るのではなく「布の動きと対話するように、布の“性格”に合う“哀愁”を追求することで、プロセスの中でゴールを見つけた」という。

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脱ぎかけのジャケットをそのまま巻きつけたようなドレスやスカート、たくしあげ腕を通している時のシワが入ったようなランジェリーキャミソール、ウエストが脱げかけたようなのパンツなど、コレクションには脱衣または着衣の動作を連想させるディテールのアイテムが多く登場した。そこには、過剰な貞操観念の押し付けで、生まれ持った本能を透明化されてきた女性たちの衝動を肯定するようなピュアなセンシュアリティが存在するように思う。タイトスカートやジャケット、シャツなど、社会的な記号は、青木の手により、女性の身体の上でセクシャリティを持って崩される。

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2024年春夏シーズンに登場したレースレギンスは、今シーズンも目を引いた。現在一部取扱店では販売が開始され、早速注目を集めているのだが、個人的には今春のトレンドとして黒レースのタイトなボトムに注目しており、アキコアオキが先駆けとなるのではと密かに予想している。

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抜け感のある服装に、インパクトのあるクラシカルなシルバージュエリーを合わせるのも絶妙なバランスの色気がある。今回スタイリングに用いたネックレスなどのジュエリーは全て、フィンランド発の老舗サステナブルジュエリーブランド「カレワラ(Kalevala)」の作品。具体的なモチーフを持たず、しっとりとした質感や有機的なものを表現するのが特徴のカレワラは、今回の完成しきらないプロセスに見出す美意識というテーマにマッチする。

「立体的なデザインや大胆で自由な表現がアキコアオキとカレワラの共通点、親和性を感じました」(カレワラ クリエイティブディレクター アイノ・アールネース)
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「東京クリエイティブサロン2024」のオープニングイベントとして開催された今回のショー会場となったのは、代々木第一体育館の倉庫。レースやサテンなど、しなやかで繊細な生地を着崩した女性たちが、冷たく無機質な剥き出しのコンクリート壁に囲まれて佇んでいるという違和感は、無防備でピュアな人間そのものの色香を際立たせていた。

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アキコアオキの本質を考えたとき、そのひとつは強さではなくおおらかな優しさで私たちに寄り添い前を向かせるたおやかさにあるのではないかと思う。これまでのユニフォーム的な要素、袖を通してみるとわかるコルセットのように背筋が伸びる仕立ては、特に「武装」だったように思うが、自由に布の赴くまま人間と服の関係を捉え直すアプローチは、新鮮ながらどこか懐かしさからくる安心感もあり、「武装としてのファッション」という概念をも解放するようだった。
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