Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】「メットガラ」の仕掛け人が語るアナ・ウィンターとの仕事、川久保玲の偉大さ

展覧会について話し合うアンドリュー・ボルトンとアナ・ウィンター
展覧会について話し合うアンドリュー・ボルトンとアナ・ウィンター
Image by: ©2016 MB Productions, LLC

 毎年5月最初の月曜日、多くのセレブリティが豪華絢爛な衣装でニューヨークのメトロポリタン美術館(以下、メット)に集結する。ファッション界最大とも称されているそのイベントの名は「メットガラ」。コスチューム・インスティチュートが企画する特別展のオープニングを祝うため、その年のテーマに合わせた装いがレッドカーペットを彩る。美術館の理事で「メットガラ」のホストを務めるのは、泣く子も黙る米VOGUE編集長のアナ・ウィンター。中でも2015年の展覧会「China: Through the Looking Glass:鏡越しの中国」では歌手のリアーナが黄色の巨大ドレスで来場し話題を集めたことも記憶に新しい。

 


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 そのファッション界の一大イベント「メットガラ」開幕までの8カ月間に密着した映画「メットガラ ドレスをまとった美術館」(原題「The First Monday in May」)が日本で4月15日に公開される。1時間半にわたる本編には同展のキュレーターを務め、2011年に故アレキサンダー・マックイーンの回顧展を手掛けたことでも知られるアンドリュー・ボルトンを中心に、アナ・ウィンターや映画監督のウォン・カーウァイ、バズ・ラーマン、そして展覧会に作品を提供したジャン=ポール・ゴルチエ、ジョン・ガリアーノなどのデザイナーらが出演。アンドリュー・ボルトンが政治などセンシティブな問題を内包する展覧会を、周りの理解や協力、助っ人2人やパートナーであるデザイナーのトム・ブラウンのサポートを得てオープニングまで奔走する様子や、ゲストの管理、夕食会の席順といったガラの準備に追われるチームをアナ・ウィンターが統率する姿など、まさにメットガラの裏側がリアルに描かれている。

 同展キュレーション後の2016年1月にコスチューム・インスティチュートの首席キュレーターに就任したアンドリュー・ボルトンに、今回、映画が日本公開を迎えるにあたり、展覧会を振り返るとともに、開催まで1カ月を切った特別展「川久保玲 /コム デ ギャルソン」について聞いた。

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ー開館以来最多となる80万人以上が来場した「鏡越しの中国」が開催されたのが2年前。カメラが入った当時はどんな様子でしたか?

 自分たちの仕事が一般の公衆にどう見られるか、私を含めチームの皆がカメラの前に晒されるということに関して最初は少しナーバスでした。展覧会を作り上げていく作業には「繊細さ」が求められるので。しかし出来上がった映画を見て、我々が毎日直面している問題や美術館の内部、そして外部の人間の仕事を忠実に捉えていることに驚きました。自分を含めチームの皆がどれだけ仕事に力を注いでいるかが映し出され、自分たちの仕事を振り返り、どれだけ素晴らしくて誇らしいことをやってのけたかを改めて気付くことができたのです。

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ー劇中でプレッシャーを感じていることを吐露していましたね。



 メットの展覧会はとてもチャレンジングで、毎年ハードルが高くなっていくのを感じます。毎回違うアイデアを紡ぎ出し、そのテーマにどう向かっていくのかを、視覚的な演出はもちろんですが、展覧会としてコンセプチュアルでかつ想像を掻き立てる内容を構成しオーディエンスに見せなくてはいけないのです。自分が手がけた過去の展覧会を超えていくという、自身との戦いでもあります。

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ーウォン・カーウァイとアナ・ウィンター、強力な助っ人2人とのやりとりが印象的でした。

 2人とも全く違うタイプの人間ですね(笑)。ウォン・カーウァイは私が尊敬する映画監督の一人で、彼の作品から溢れる美的感覚は独特で素晴らしいものがあります。とても詩的な人で、この展覧会にもストーリーを吹き込んでくれました。彼は直接的に何かを助言したり、目に見える形でアイデアを提示するタイプではありません。常に彼が言っていることを自分の中で解釈しなくてはいけないのです。思考のプロセスこそ違いますが、そこが今回のプロジェクトでは上手くはまったのではないでしょうか。

 

 一方アナは、エディターの視点で物事を捉えています。キュレーターの私とはまた違う角度で展覧会を見ているのです。彼女と私は数年来の友人であり、お互いにリスペクトし合える関係です。意見が対立することもありますが、彼女は私の美術館での仕事に最大限の敬意を払ってくれています。彼女と仕事ができることは、とても幸運なことだと感じています。

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ー今年のテーマ、コム デ ギャルソンの川久保玲展の開催が迫って来ました。

彼女をテーマに選んだ理由を聞かせてください。

 川久保玲はキャリアの初期からずっとフォローし続けているデザイナーで、現代のファッションの世界において最も重要で影響力を持つデザイナーの一人です。彼女の生み出す作品はファッションの領域を超え、アートや建築、演劇などのすべての芸術にも影響力をもたらす素養を持っています。従来の美や肉体の観念に対して常に問いかけ、向き合い、ある時は客観的に、またある時は主観的にというように、異なるアプローチでファッションを捉え表現しています。

 彼女の仕事は何もない「無」の状態からクリエーションを提示している点が他のデザイナーとは大きく異なります。毎シーズン新しいものを作り出し、見るものの視点を毎回変えてくれることができるとても稀なデザイナーであり、メットのようなアートの文脈に重きを置く美術館においても単独で展覧会を開催できるストーリーを持った数少ないデザイナーの一人なのです。現代のファッションにおける影響力を考えると、彼女をテーマにすることはとても自然な流れだったと言えますね。



画像:©2016 MB Productions, LLC

■「メットガラ ドレスをまとった美術館」
原題:「The First Monday in May」
公開日:4月15日(土)
Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開
監督:アンドリュー・ロッシ
出演:アナ・ウィンター、アンドリュー・ボルトン、ウォン・カーウァイ、ジョン・ガリアーノ、 ジャン=ポール・ゴルチエ、カール・ラガーフェルド、リアーナ、ほかセレブリティ多数
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト

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