今年のお買い物を振り返る「2025年ベストバイ」。今年のトップバッターを飾るのは、2023年以来の2度目の登場となる、映像ディレクターでプロデューサー、作家の上出遼平さんです。上出さんと俳優の仲野太賀さん、写真家の阿部裕介さんとの3人の旅サークル「MIDNIGHT PIZZA CLUB」初の旅本「MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY」は、昨年12月の発売以降話題を集め続々重版。「書店員が選ぶノンフィクション大賞2025」にもノミネートされ、今年東京と山梨、京都で展示イベントも開催しました。このほか、藤原ヒロシさんとTaiTanさんと共にパーソナリティを務めるポッドキャスト番組「BAD PHARMACY」の配信や、自身のYouTubeチャンネル「健康チャンネル」をスタート。来年にはご友人たちと共にニューヨークにアウトドアショップをオープンします。ニューヨークに拠点を置きつつ世界中を飛び回り、「移動と登山」の日々を送る上出さんが2025年に買って良かったモノとは?
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目次
HYPERLITE MOUNTAIN GEAR「JUNCTION 55L(New Material)」
FASHIONSNAP(以下、F):2年ぶりのご登場、ありがとうございます。今回は前回以上に登山・アウトドアブランドが中心の構成ですね。
上出遼平(以下、上出):そもそも僕はあまりモノを買わないのと、今年はこれまで以上に山について考える時間が多かった1年だったので、特に山関連が多くなりました。あとは、年に10回以上日本とニューヨークを往復していたり、とにかく移動が多いので、移動用のモノも色々買い足した1年でした。
F:それでは早速、ご紹介をお願いします。1点目は「ハイパーライトマウンテンギア(HYPERLITE MOUNTAIN GEAR、以下ハイパーライト)」の55Lのバックパック。中でも「ジャンクション」というモデルです。今年ご出演いただいた登山特集では、パートナーの大橋未歩さんに同ブランドの「ポーター」というモデルをご紹介いただきましたね。

上出:その「ポーター」は8年くらい前に買ったものです。「ポーター」というモデルは、ポケットなどが何もついておらず、ハイパーライトの中でも最もシンプルな構造。ただの袋にハーネスが付いているだけなので頑丈だし、使い手の工夫次第で使いやすく色々とカスタマイズできます。でも、どうせカスタマイズするなら結局初めからポケットが付いている方が便利だし、総重量も軽くなるんですよね。そこで登場するのがこの「ジャンクション」です。似たようなモデルでポケットの素材が異なる「ウィンドライダー」と「サウスウエスト」もあります。
F:「ジャンクション」は中央のポケットにメッシュ、左右のポケットにファブリックが使用されていますね。
上出:山では色々な持ち物が濡れるので、濡れたものが乾くまでなんでも一旦入れておけるという点でメッシュは便利なんですが、枝などに引っかかりやすいのが欠点なので、サイドはメッシュじゃない方が使い勝手が良いです。ハイパーライトの大きいバックパックを買ったのは「ポーター」以来なんですが、クオリティが間違いないのはもう知っているし、8年使っても壊れていないし、正直買う必要はありませんでした。なのになぜ今年これを購入したかというと、まだどのブランドも使用していない最新の素材が採用されたからです。

「ダイニーマ(Dyneema®)」は鋼鉄の15倍の強度があるとされる“世界最強”の繊維。
上出:見た目では全くわからないと思うんですが、従来の「DCH(ハイブリッドキューベンファイバー)」は3層構造になっていて、外層にポリエステルの織地、中間にものすごく丈夫な「ダイニーマ」、内層に防水性のあるフィルムを貼り合わせていました。対してこの新素材「DWC(ダイニーマ ウーブン コンポジット)」は、中間層と外層の2層にダイニーマが使われていて、単純計算でもダイニーマの使用量が2倍になったことで強度と耐摩耗性が飛躍的に向上したんです。ダイニーマを製造しているアビエント社がこの新素材を最初に提供したのがハイパーライトなので、この生地を使ったプロダクトを使ってみたいならハイパーライトの新作を買うしかなくて。
F:使い心地はいかがですか?
上出:めっちゃ良いです。従来の素材よりもすごくしなやかでソフトな風合いで、使用中の衣擦れ音も軽減されました。これからもっと使い込んで劣化の仕方なども検証してみたいです。素材だけでなく細かなマイナーチェンジも重ねていて、新しくデイジーチェーンが付いたことで拡張性が広がっているし、何より背負い心地がすごく良くて驚きました。バックパックの背負い心地には色々な要素が関わっていますが、これは肩パッドがすごく薄くて、例えば「グレゴリー(GREGORY)」などのバックパックの約半分くらいの厚み。ですが十分背負えます。背面のパッドが最小限なので、荷物が全部背中に近づき、バッグの重心が身体に近づくので軽く感じます。全てのパーツがシンプルなのにすごく背負いやすい。この間これを背負ってアパラチアン・トレイル(アメリカ東部のジョージア州からメイン州にかけての14州にまたがる約3500kmの長距離自然歩道)の一部を歩いてきたんですが、すごく使いやすくて大変満足しました。

上出:ちなみに、背面にステーが入っているバックパックは背面長(第7頸骨から腰骨上までの長さ)のサイズに合わせて選ばないとほとんど機能が発揮されないのですが、僕はある時からアメリカ製のLサイズを選ぶと決めています。僕の背面長に対しては普通に考えたら大きすぎるんですが、これには理由があって。ヒップベルトとステーがあるバックパックに限りますが、背負うときにまずヒップベルトをキツく締めて固定します。そうすると背面長よりもバックパックが大きいのでショルダーハーネスを肩から浮かせることができて、肩に負荷がかからなくなるんですよ。腰が締まると歩きにくいという人もいますが、僕はこれが最適解。リュックを背負っていると肩を痛めやすくて悩んでいる人は、一度誰かの大きなバックパックを借りて試してみてください。

「僕はあまり肩が強くないので、肩に負荷がかかっていた頃は3日目くらいからアザになっていました。でも腰で締める背負い方ならどこまででも歩けます」(上出さん)
ULA「36L Patchless Ultra Dragonfly」

F:もうひとつバックパックをご紹介いただいていますね。
上出:「ULA(Ultralight Adventure Equipment)」というブランドの「パッチレスウルトラドラゴンフライ」というバックパックで、山用としてではなく移動時に使っています。ULA自体は、アメリカのロングトレイル用バックパックブランド代表選手のような存在で、そのULAが街歩きや旅用に作ったのがこのドラゴンフライ。ウルトラという生地にも色々な種類があるんですが、これは中でも特に分厚くて強い「ウルトラ 400TX」という生地を使用しています。
F:こちらも生地が決め手になったんでしょうか?
上出:結局、生地で選んじゃいますね。これを買ったときはまだ先ほどの「ジャンクション(新型)」が発売されていなかったんですが、このウルトラという生地が出てきたときも結構驚きました。ものすごくざっくり言うと、「ポーター」にも使われていたDCHの次に登場したのがこのウルトラで、防水性も強度も高いし、見た目もいい感じ。ウルトラが使われているものを色々買って試していた一環でこちらも購入しました。メイン素材がウルトラ400TXで、サイドポケットはダイニーマのストレッチ素材を採用しているのでよく伸びます。モノを入れていないときはスッキリとしているのに収納力が高い。機内持ち込みができるサイズでありながら36Lとある程度の容量があり、クラムシェル型でガバッと大きく開くので荷物のオーガナイズがしやすく、軽量なのも飛行機移動が多い人間にとっては嬉しいですね。PCスリーブが背面に独立しているので、パソコンを手荷物検査のときにすぐ取り出せて便利です。国をまたぐ移動のときは基本的にこれひとつで、大きな荷物を運ぶときはこれに加えてスーツケースも持ちます。

「ウルトラを使っているバックパックで街用の36Lのものを探そうと思うとかなり選択肢が限られます。この生地を扱える技術を持ったメーカーがそもそも少なくて、自然と登山ブランドを選ぶことになりがちです」(上出さん)
MIYAGEN 「Lumi Nana Sack 10L」

F:バッグ関連でもう一点。こちらは国内ブランドのものだそうですね。
上出:愛知県で創業90年を越える宮源酒店という店の4代目で、某山道具メーカーで技術者をやっていたミヤザキさんが立ち上げた「ミヤゲン(MIYAGEN)」というブランドの10Lのスタッフバッグです。ミヤザキさんは本気でロングトレイルをされていて、実際に山を歩きながら自分のプロダクトをテストして開発されています。工学分野で学んできた方なので、生地から自分で企画していたり、刷新的な構造を実現したり、すごく面白いんですよ。
このバッグもオリジナルの生地を使用しています。一般的なリップストップ生地(穴が開いても広がらないようにするために丈夫な糸が格子状に織られている生地)は、丈夫な糸だけ表面に飛び出していて摩擦が起き、摩耗しやすいという欠点があります。そこで彼は糸の太さを調整し、リップストップなのに表面が滑らかな生地を生地メーカーと共同で開発したそうです。

生地には加水分解により劣化しにくいという独自のコーティング技術を施している。ダイニーマも内層のフィルムが劣化しやすいという弱点があることから、ナイロン × 劣化しにくいコーティングという組み合わせを採用。ダイニーマを使用した製品より安価に提供が可能になったという。
上出:特に僕が気に入っているのは、この独自開発のマジックテープ。一般的なマジックテープは劣化しやすいし、袖に引っかかるのが嫌なんですが、このふわふわのマジックテープは誰も傷つけません。ファスナーは蓄光なので暗いところで光って便利です。他にも色々と、マスプロダクトの製造に関わっていた人ならではのアイデアが詰まっていて、惚れちゃいました。

F:どこで購入したんですか?
上出:最近代々木公園で開催していた「ギアループマーケット」という、いろいろな山道具屋さんが出店するマーケットイベントで、これだけでなく色々と買ってしまいました。来年2月にニューヨークにオープンする山道具屋でもMIYAGENさんの商品を取り扱わせてもらう予定です。
F:ニューヨークのお店ではどのようなブランドを展開するのでしょうか。
上出:「ナッシンスペシャル(Nothin' Special)」というストリートブランドを主宰するまっちゃんと、コーヒーショップ「PPL」のオーナーのともくんというニューヨークで出会った2人の仲間と立ち上げます。2人もクライミングをする人なので、2人がクライミングの道具を揃え、僕が日本のMIYAGENさんのような山道具ブランドをニューヨークに持っていきつつ、アメリカの山歩きの道具なども揃えます。本気のコーヒーショップでもあるので、ともくんのとんでもなく美味しいコーヒーも飲めるし、まっちゃんのナッシンスペシャルをはじめとするニューヨークローカルのブランドも販売する予定です。
Nothin' Special「NOrange - CRAG PANTS」

F:一緒にお店を立ち上げられるご友人のブランド ナッシンスペシャルのパンツもベストバイに選出いただいています。今穿いていらっしゃるものですね。
上出:はい。結局友達が作っている服が一番いいんですよ。友達の服だからといって必ずしも快適なわけではありませんが、これはめちゃくちゃ快適。クライミング用に作ったパンツで、分厚いダック地を使っていて、膝はダブルニー仕様になっています。クライマーって「カーハート(Carhartt)」のダブルニーをよく穿いていて、岩に擦れて膝に穴が開いているのがかっこいいんですよ。それを自分たち用にアップデートしているのがこのパンツ。シルエットはすごくシンプルなストレートで、着ていてとても楽です。毎日のように穿いていて、ちょっと色が落ちてきていますね。


500mlペットボトルが収まる大きなヒップポケット
上出:こういったコットン100%のパンツで山に行くなんて、乾かないし重いし、濡れたら寒いし、絶対ありえないと思っていたんですが、最近はこれで山登りもしちゃってます。このまま冬の雨に打たれたらまずいですが、状況を選べば足さばきも悪くないし、安心感がある。焚き火をしても穴が開かないですし、ある程度軽めな山なら行けます。ナッシンスペシャルのこのラインはブルックリンでまっちゃんが自分のミシンを使って縫っているので、その暖かさみたいなものも感じちゃいます。壊れたら直しながら穿いていきたい道具です。
Black diamond「Men's Technician Pro Approach Shoes」

F:続いて、「ブラックダイヤモンド(Black Diamond)」のアプローチシューズです。こちらも今履いていらっしゃるものですね。
上出:ブラックダイヤモンドは、「パタゴニア(Patagonia)」の創業者であるイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)らが作ったパタゴニアの兄弟のようなブランドです。クライミングに特化していて、とにかく「余計なことをしない」デザインがかっこいいんです。
アプローチシューズというのは、山も歩けるし岩も少しだけ登れる、“本格的なクライミングの一歩手前までアプローチするシューズ”です。後ろ側がランニングシューズのような構造になっていて、先端はクライミングシューズに近い作りです。ソールのラバーがアッパーを巻き込むような作りになっているので、クライミングシューズのように岩に爪先を乗せて力を入れても摩擦が効きます。アウトソールはグリップ力に優れた「ヴィブラム メガグリップ(Vibram MEGAGRIP)」。最近これを普段履きしています。僕は街を歩いている延長で突然山を登ることもあって、これを履いていたらとりあえずいつでもどこにでも行けるので便利です。
F:これまでもアプローチシューズを好んで履かれていたんですか?
上出:いや、昔は履いていたんですが、近年はゆったりした靴ばかり履いていました。でもそれだと日頃から何足か靴を持ち歩かないといけないので、試しにアプローチシューズを履いてみたら意外とストレスがなかったんです。最近気に入って履くようになりました。

UVEX 「uvex sportstyle 232 P」

F:続いてはドイツ発「ウベックス(UVEX)」のサングラスです。安全眼鏡が有名なブランドだそうですね。
上出:セーフティゴーグルや工事現場の手袋など、ホームセンターで売っているような商品が多いんですが、どれも気が利いたデザインでかっこいいんですよ。これはその中でも少しだけ値段が高いスポーツラインのアイテム。それでも数千円で買えます。ちゃんとCEマークも入っているのでクオリティも問題ないし、ノーズパッドも調整できて偏光レンズなので釣りでも山歩きでも使える。サングラスって高い割にすぐ壊れたり無くしたりするじゃないですか。1万円以下で良いサングラスを探すの、楽しいですよ。
F:お手頃なサングラスを探す中で譲れないポイントは?

上出:余計なことをしないかっこよさ。安いものってなぜか変なデザインが入っていることが多いんですよね。安いからこそ何か特徴をつけなくてはと思うのか、なぜか「足し算」を始める。そうしたことをしていないシンプルなものがいいですね。これも、面白みはないデザインですが、悪くない。ちょっとおもちゃっぽいところが、少年心をくすぐるというか。いい買い物をしたなと思っています。

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ブランド: ウベックス(Uvex)
メーカー: ウベックス(Uvex)
価格: ¥4,460(2025/12/05現在)
Big Agnes「Fly Creek HV2 Carbon」

F:こちらは「ビッグアグネス(Big Agnes)」のテント。すごくコンパクトですね。
上出:「Fly Creek HV2 Carbon」というモデルで、本来2人用のテントなんですが1人用として使っています。結構前に発売されたんですが、発売当初は値段が高すぎて買えませんでした。なぜ高価なのかというと、シンプルに素材が全てとんでもなく高額なものだから。メイン素材は「DCF(キューベンファイバー)」で、ポールはイーストン社のカーボンファイバーポール。全部最高級品で、そんな素材でテントを作ったら高くなるのは当然。案の定、定価だと10万円を超えます。きっと売れなかったんでしょうね、セールで安くなっていたので買いました。

袋まで全てDCFでできている
F:いい買い物でしたね。どうやって使うものなんですか?
上出:これはいわゆる「半自立式」と言われるようなテントで、付属のポールを組んでその骨組みに本体を吊るし、上にレインフライ(雨よけ)をかぶせるように組み立てます。ポールを持つと重量が増えるので、僕たちのようなウルトラライト(装備を軽量化することで、長距離を歩いたり快適性を高める登山スタイル)は、トレッキングポールをテントポールの代わりに使ってピラミッド型のテントを立てる方式が主流なんですが、このテントはポール込みで約650g。専用のポールが含まれるダブルウォール*のテントとしては異例の軽さです。
専用のポールが付く自立式モデルは、万が一歩いている途中でトレッキングポールが折れても困りませんし、ダブルウォールは安心感と快適性が高い。従来の自立式ダブルウォールのテントは「嵩張るけど快適で安全」が常識でしたが、それを覆した商品です。生地が薄すぎるので耐久性に難があったりと取り扱いが難しく、かなりピーキーなテントですが、とにかくデザインがかっこいい。

手前:上出さんのFly Creek、奥:同シリーズのTiger Wall
Image by: 上出遼平
*ダブルウォール:テントの幕の枚数が1枚のものがシングルウォール、2枚のものがダブルウォール。2枚の幕の間にできた空気の層が高い断熱性を持つためダブルウォールの方が暖かく、内側の結露を防ぐ効果がある。一般的な日本のドームテントはダブルウォール同様2層構造。一方でシングルウォールは軽さにメリットがある。
F:このほかにはどういったテントを使っているんですか?
上出:「アライテント(ARAI TENT)」という所沢のテントブランドのエアライズというテントは高校生のときに初めて買ったテントですが、まだ現役で使える最高のテントです。初心者の方々と一緒に登るときは僕が多めに荷物を持つ必要があるので、少しでも荷物を減らすために、トレッキングポールで立てるテントやビビィサックという「棺桶」みたいなシュラフカバーを使うこともあります。手軽で軽く、セットした状態でバックパックに入れるので設営する手間がありません。だけど怖いんですよね。夜に動物の声が聞こえると本当に棺桶に入った気分になります……。
NATION FCの「THE CLASSIC ROD」&GALVANのフライリール

F:最後はこちらの釣竿とリールです。釣りは元々お好きなんですか?
上出:釣りは元々餌釣りから始めて、その後いわゆるスピニングリールやベイトリールをしていたんですが、山に登るようになってからはテンカラ(竿、ライン、毛鉤のシンプルな仕掛けでヤマメやイワナなどの渓流魚を釣る日本の伝統釣法)という釣り方に変えました。多分世界で一番シンプルな釣り方で、道具が軽いので山に持っていくには最適です。ただ、テンカラではせいぜい3mの竿と3mのライン(釣り糸)の計6mしか毛鉤を飛ばすことができないので、アメリカの広大な川には太刀打ちできず、ついにフライフィッシングを始めることにして、道具を揃えました。ロッド(竿)が「ネーションフィッシングクラブ(NATION FC、以下 ネーション)」、リールが「ガルバン(GALVAN)」というブランドのもので、どちらも先日ニューヨークで知り合った方が作っているブランドです。フライフィッシングの道具ってかっこいいですよね。

「始めたばかりでまだまだ下手なので、ネーションの創業者にフライフィッシングを教えてもらおうと思っています」(上出さん)
F:ニューヨークのキャッツキルが「アメリカのフライフィッシング発祥の地」だと知って驚きました。ネーションもキャッツキルを拠点にしているブランドですね。
上出:ニューヨークって実はアウトドア天国なんですよ。クライミングも盛んだし、ニューヨークの金持ちには、釣りの聖地であるキャッツキルの周辺に別荘を持っている人も多いです。キャッツキルはニューヨークから車で2時間ほどなので、東京の都心から奥多摩に行くような感覚で釣りができます。昼から行ってロッククライミングをして、夕方前に釣りをして、テントを張って寝て、翌早朝にまた釣りをして帰ったり。
F:楽しそうです!
上出:釣りってハマると一生抜け出せない“最後”の趣味なんですよ。人間を相手にするのと違って、自然に向き合ったら人間は常に負けるので、一生勝負が終わらないんです。フライフィッシングはこだわり始めると毛鉤も自分で作るようになるので、ゴールがないんですよね。しかもクライミングや登山、ゴルフよりも体力が必要ないので何歳になってもできる。唯一、老眼が大敵なんですが、先日アメリカで、朝使ったら一日老眼がなくなるという“老眼が治る目薬”が認可されたので、それも今後解決するかもしれません。
F:(笑)

今年を振り返って
F:今年はどのような1年でしたか?
上出:ニューヨークが思っていた以上にアウトドア天国だったこともあり、ニューヨークに引っ越してから、これまで以上に山にまつわる時間を多く過ごすようになった気がします。フライフィッシングなど、新しいことを色々と始めたのも大きいかもしれません。あとは今年が新素材発表のラッシュイヤーだったのと、「山服会(上出さんが中高時代の同級生と一緒に手掛けている山道具ブランド『山岳制服振興会』)」でも素材にこだわったものづくりを本格的に始めたので、そのレファレンスになりそうなプロダクトを意識的に手に取りました。

F:山服会の進捗も教えてください。 2年前のベストバイ取材の際には、バムフラップ(お尻にぶら下げる座布団)のプロトタイプを見せていただきました。
上出:これまでにバムフラップと半袖フリース、手拭いを発売しました。開発中の最新作は、僕らが愛してやまないDCF(キューベンファイバー)にオリジナルでプリントを施した「御守」シリーズです。本当に山に持っていってほしい御守りで、中にはDCFの補修パッチと縫い針と縫い糸を入れていています。山で万が一持ち物に穴が開いたりしたら命取りなので、願掛けだけでなく、本当に“御守り”として穴を補修できるリペアキットです。さっきのような薄い生地のテントに穴が開いたときにも便利ですね。

F:大きい方には何が入っているんですか?
上出:こっちは何も入っていないんですが、文庫本が入ります。山で使うイメージはつかないけど、文庫本を入れてぶら下げている方もいますね。
F:素敵ですね。ロゴもかっこいいです。
上出:このロゴは有名な実印の職人さんにお願いして作っていただいたものです。無理を言って作っていただいた手彫りの三角形の印鑑を、僕たちが実際に捺してデータ化した“実印ロゴ”なんです。

三角形のマークが「山服会」の実印ロゴ
F:山服会のアイテムは、今後どこで手に入れることができますか?
上出:オンラインで売れるほどたくさんの在庫を作れないので、これからもイベントで直接お客さんとお話をしながら販売していきたいです。僕たちが時折現れる何かしらのイベントなどで売っていますのでぜひ遊びにきてください。
F:ご自身たちで手を動かしてモノづくりをするようになったことで、モノを買うときの基準は変わりましたか?
上出:変わりました。色々変化がありましたが、特に“値段とモノのバランス”をよく見るようになった気がします。「この値段でここまでやっているのか、これは買うべきだ」といった視点とか。そういう意味では、ファッションブランドの商品を買う機会が減ったかもしれません。一方で、作り手の気持ちを想像したり、「この人は金儲けのためじゃなくモノを作るのが好きでやってるんだろうな」と思えるモノに対して財布の紐が緩むことが増えたかなとも思います。あとは、構造の新しさや面白さ、アイデアにグッとくるかどうか、など。以前からそういう傾向はあったけれど、より一層作り手側の視点から見る意識が身についた気がします。

F:書籍やポッドキャスト、YouTubeなどをさまざまな表現手法を通して、引き続き新しいコンテンツを生み出していった1年でもありました。それぞれの表現方法はどのように「住み分け」ているんでしょうか。
上出:最もリアリティを優先したいものは「音」が良いかなと思うし、創作性が必要なときは「文章」が良い。「映像」はどっちの側面もあるんですけど、編集も大変だし、カメラは重いし、バッテリーの消費も激しいし、めんどくさいからあんまりやりたくないのが本音です(笑)。
F:なんと。では逆に今一番やりたいことは?
上出:今はポッドキャストと文章が一番フィットしていると思うので、そればかり作っています。一番金になりづらい2つです。
F:「文章」と「ポッドキャスト」、それぞれに惹かれている理由は?
上出:今、ありとあらゆる感覚が「シンプルさ」に寄っていて。シンプルなモノを摂取したいし、シンプルなモノを作りたいという感覚があります。そう考えたときに、映像って一番複雑でややこしいんですよ。一方で、文章はすごくシンプル。使える道具は言葉だけだからこそ、作り手の腕が最も試されるし、上手く使えば“無限”に表現ができます。例えば「ここは100年後の日本です」という設定を伝えたいと思ったとき、映像でそれを表現するには多くの金額と時間が必要になります。でも文章だったら、一言書き添えるだけで読み手の頭のリソースを使えるんですよ。文章には、受け手に想像させることができるという面白さがあって、受け手を信頼しながら一緒に物語を進めていく感覚がすごく面白い。ポッドキャストはラクで楽しいからやっています。
F:来年はお店のオープンなど、さらに変化の多い1年になりそうですね。
上出:お店の準備で当分は大忙しだと思います。次の本も出さないといけないし、YouTubeも始めちゃったし……。新しくこれを始めたいなと思う前に、気がついたらすでに始まってしまっているんですよね。
F:考える前に身体が動いている?
上出:そうです。1人もいいけど、友達と何かをする方が楽しいじゃないですか。自分で言い出したことを実行するのも好きなんですけど、流れに身を委ねることも好きなんです。何かをすればするほど新しい色々面白そうなことに誘ってもらえるし、いろんな波にいつの間にか巻き込まれているというか。
F:そうした求心力も上出さんの魅力のひとつだなと感じます。 来年も色々な良いニュースが聞けることを楽しみにしています!
■上出遼平
1989年東京都生まれ。2011年にテレビ東京に入社。代表作には、ドキュメンタリー番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」などが知られる。2022年6月にテレビ東京を退社し、フリーランスに転向した。著書に「ハイパーハードボイルドグルメリポート」「歩山録」「ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方」がある。
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