ラムダン・トゥアミ
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Image by: FASHIONSNAP.COM

Beauty エクスクルーシブ

スニーカー用香水、Netflix番組、シャワー付きトラック......「ビュリー」が次に仕掛けること

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 「オフィシーヌ ユニヴェルセル ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY、以下ビュリー)」のオーナー ラムダン・トゥアミ(Ramdane Touhami)は、映画のような人生を現在進行形で歩んでいる。20代の頃にリアリティ番組の司会を務め、ジェレミー・スコットらとコンセプトストア「L'Épicerie」をパリにオープン、さらには東京で「アンドエー(And A)」の復活にコンサルタントとして携わった。欧州最古のキャンドルブランド「シール・トゥルードン(Cire Trudon)」を復活させ、後に売却。ふくらはぎに深く刻まれた傷は、パリに移住してすぐ経験した約一年間のホームレス生活中に「見知らぬ人に突然刺された」ものだという。

 ビュリー創業のきっかけは、大ファンだというバルザックの小説。物語の主人公であるセレブパフューマーに興味を惹かれ調べていった結果、キャラクターのモデルとなった人物ジャン-ヴァンサン・ビュリー(Jean-Vincent Bully)に辿り着いた。名前のとおり、1803年創業の老舗薬局「ビュリー」の創業者だ。

 美容歴史の専門家の妻 ヴィクトワール・ドゥ・タイヤックと共に「ビュリー」をリブランドしたのは2014年。アートのようなデザインとクオリティを両立した商品がヒットし、ビューティーに限らずファッション分野でも成功を収める快進撃はLVMHの目に留まり、少数株主として出資の受け入れに至った。ラムダンにとって「これまでで最も重要な一年になる」という2020年。国内にオープン予定の新店舗から、次に仕掛けるアイテム、そして熱を入れるプロジェクトまで「ビュリー」とラムダンの今後について聞いた。

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代官山に続く路面店が青山・骨董通りに

― 「ビュリー」のアイデアは、ラムダンさんが読んでいた本から始まったそうですね。

 大好きな作家オノレ・ド・バルザック(Honoré de Balzac)の作品に「César Birotteau」という小説があるんですが、物語の主人公はジャン-ヴァンサン・ビュリーという実在した調香師がベースになっていることを知ったんです。ちょうどその頃は「シール・トゥルードン」を売却したばかりのタイミングで。「もっとこの人のことを知りたい!」とビュリー氏のアーカイブを辿っていくうちに、ビュリーのオーナーと縁が生まれ、出資することが決まったのです。私達がオーナーになってからは、昔のビュリーのスピリットを継承しつつ、アイテムのカテゴリーを広げています。

― 日本では2017年の上陸から約2年間で5店舗を出店と、ハイペースな印象です。

 さらに今年は3店舗をオープンする計画なんですよ。横浜、⻘山の骨董通り、秋には都内にもう1店舗を予定しています。青山店は路面店になります。

― 1号店の代官山に次いで、路面店は日本で2店舗目

 予定地は、骨董通りのとても良いロケ ーションです。代官山店はストアの左右で世界観がはっきりと別れていて、それぞれフランスと日本をイメージしたインテリアですが、青山の新店舗はお店の外と中で二つの異なる世界観が融合したデザインを予定しています。

代官山店の内観

― ユニークな空間になりそうです。それぞれのオープン時期は?

 青山の店舗が4月。その後、横浜(「ニュウマン横浜」内)が5月、そして9月頃に都内にもう一店舗と続く予定です。

― かなり忙しくなりますね。

 それはいつもどおり(笑)。近年だと日本に年10回は来ているんじゃないかな。でも、特に2020年はビュリーにとって最も重要な年になりそうです。会社の規模も、ほぼ倍になるので。

― ラムダンさんはパリの老舗カフェ「カフェ トルトーニ(CAFE TORTONI)」も復活させていて、ビュリーのパリ店に併設していますよね。日本に「カフェ トルトーニ」を出店する予定は?

 ありますよ!でも今年はシンガポールにビュリーと同時出店する予定があって、その後に大きい「カフェ トルトーニ」をパリに出店を......と計画がたくさんあるので、東京には来年オープンできたら良いなと思っています。

 

洗剤、スニーカー用の香水…今年発売予定の注目アイテム

― これまでで一番ヒットした商品は?

 ポマード・コンクレット(ハンドクリーム)は常に人気がありますね。

― 昨年だと「ルーヴル美術館」とコラボしたフレグランスは珍しい取り組みでした。どうやって実現したのでしょう。

 きっかけはルーヴルからの声掛けでした。当初はルーヴルの館内に空きスペースがあるから、そこにビュリーの店を出さないか?という出店の誘いだったんです。でもせっかくの機会だから「ルーヴルの名画にインスパイアされた香りを作りたい」と私から提案して。著名な作家ばかりなのでリーガル面を調整するのに一年ほどかかって、やっと発売したら反響がとにかくすごかったんですよ。アートの香りなんてこれまでなかったですから。

― 2019年末に発売した、イニシャルが入れられるボーム・デ・ミューズ(リップバーム)も注目されています。

 クリスマスの一週間前に発売して、すでにかなり売れていますね。これは2年間アイデアを温めて、やっと発売できたもの。ビュリーはこれまでプラスチックを使ってこなかったんですが、それでは製品化が難しくて。だからビュリーのラインナップの中で唯一、プラスチックを使った商品になっています。あとは、100%オーガニックのフォーミュラを作るのも難しかったし、レザーのように見える最適な紙を見つけるのも大変でした。

ボーム・デ・ミューズ(税別4,600円)

日本でビュリーが支持されている理由は何だと思いますか?

 製品としての美しさ、高品質、ヘリテージ、そして本物であること。

アート性がありひと目でビュリーだとわかるアイコニックなデザインは、全てラムダンさんがディレクションしているのでしょうか?

 ストアからプロダクトまで、トータルで私がデザインしています。だからこそ世界観が一貫していてロジカル。ビュリーが上手くいったのは、全てが一人に由来しているからだと思います。例えば、アーティスティックディレクションを複数のエージェンシーや人で共有しようとすると、方向性がブレてしまうでしょう。それに多くの会社においては、優秀なデザイナーがたくさんいてもクライアントの決定によって間違った方向に行ってしまうことがある。でもビュリーは、私がデザイナーと経営の両方を担当しているから、そういったことが起こらないんです。

― これから販売予定のプロダクトについて教えてください。

 オリンピックイヤーなので、例えばスニーカー用のパフューム。吹きかける度に買ったばかりの靴のように香ります。ラボで実際に新品のスニーカーの香りを分析して開発したもので、5〜6月頃に発売できそう。あとはビュリーのアイコニックな水性香水が、洗剤のコレクションになって夏に登場します。他にもたくさんの新作を用意していますよ。

― プロダクト以外では?

 洗剤のローンチに合わせてランドリーショップ兼カフェをパリにオープン予定です。そして一つ、今年の夏に向けて大切に進めているプロジェクトがあって、ホームレスのためのシャワー付きトラックを始めること。ビュリーで余ったプロダクトを備えて、シャワーを浴びることができるんです。

― それも他にはない取り組みですね。

 プロモーションとしてのプロジェクトではありません。お金儲けではなく「社会に与えられたものを社会に返す」ということ。私も25年前、ホームレスだった経験がありますからね。

ビュリーの創業時に描いていた目標はどのようなものでしたか?

 「一つの美しい店をパリに作る」。当初考えていたゴールは、もうずいぶんと前に通り越してしまいましたね。今では世界で37店舗にもなりました。私は元々ビジネスマンではないので、あまり前もって計画しないんです。

ビジネスとしての勢いを感じますが、買収話など持ちかけられたことは?

 ありますよ。ビジネスのパートナーは歓迎ですが、決定権は自分たちで保持したい。私にとって一番重要なのは「自由」ですか ら。

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