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高橋悠介の新ブランド「CFCL」が投げかける現代。生活に投じるニットの可能性とは?

高橋悠介

IMAGE by: CFCL

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高橋悠介の新ブランド「CFCL」が投げかける現代。生活に投じるニットの可能性とは?

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ーデビューコレクションは、ジャケット、トップス、ボトムス、ドレスなど、全てニットで22型。デザイン面で意識したことは?

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 ニットで出来る最大限の表現に取り組みました。まずジェンダーフリーではあるんですが、男女の区別が無いユニセックスとは違う。身体から離れたシルエットが基本で男女が着ることができるアウターやシャツ、パンツなどの構成に、女性にとって美しいシルエットのスカートとドレスが加わったイメージです。無縫製のコンピュータープログラミングニットはダーツや縫代が無く柔らかさを保ちながら立体的に作れるので、着心地を損ねません。フィット&フレアのドレスについては、僕がこの世界に入るきっかけになった装苑賞を取った時の作品と構造の考え方は同じなんですよ。リブとガーターを組み合わせてスカート部分にボリュームが出るシルエットを作っています。

ー柄などを極力排除しているように見えます。

 色や柄には気分を高揚させたり良い点はもちろんありますが、僕自身は普段あまり柄物を着ないんです。CFCLは長く着られる服を前提としていて着る人にフォーカスしたいので、服が主役にならないよう削ぎ落としたデザインにしています。背中心には2.5cmのリブをアイコンとして施していて、左右対象で背筋が伸びるような服を作るという意志の現れでもあります。

ー生産地は?

 糸は国産で、ニットに強い東北地方で組み立てています。布帛だと縫製や加工など複数の工場を跨ぎますが、糸から製品までを一つの工場で完結することができるのが利点。輸送も含めて多くのエネルギーを使わないことで、価格にも反映されますから。

ー高橋さんがCEO兼クリエイティブディレクター、他のメンバー構成は?

 クリエイションについては僕が全て担当しています。CFCLのボードメンバーとしては、主に国内外のマーケティング戦略を担当するCMO(Chief Marketing Officer)の中村聖哉、法務を見るCLO(Chief Legal Officer)として小松隼也、サステナビリティとストラテジーを見るCSO(Chief Sustainability & Strategy Officer)の岡田康介。そのほかに、ブランドロゴをはじめグラフィックデザインはアーティストでアートディレクターの磯谷博史さん。スタイリングやヴィジュアルディレクションにはライフスタイリストの大田由香梨さんが参画しています。

ーCSOを置く意図は?

 SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)に徹底的に向き合うことを掲げているので、CSOが必要でした。サステナビリティという言葉は環境に配慮という意味が先行しがちですが、物づくりから働き方まで全て状況を把握して責任を持つことが大事。なので国連が掲げたSDGsの指標において、サプライチェーンのパートナーを含めあらゆるステークホルダーと共に目標を掲げてチャレンジしていくのがCSOの役割となります。世界的な認証制度の「Bコーポレーション(※)」を目指し、まず起業して1年未満の企業が対象になる「ペンディング Bコーポレーション」を取得しました。SDGsにいかにアクションしていくべきか、マイルストーンになりうるのがBコーポレーションの評価軸です。

※Bコーポレーションとは?
米国ペンシルバニア州の非営利団体B Labが運営している民間認証制度。「B」は「Benefit(ベネフィット、利益)」を意味し、社会や環境に配慮した事業活動を行い基準を満たす企業に与えられる。

ー具体的なアクションは?

 例えば、環境に配慮されている糸を積極的に選択していこうと考えました。ファーストシーズンでは、グローバル・リサイクルド・スタンダード(GRS)(※)を取得したペットボトルからできた再生ポリエステルと、再生コットンであるキュプラを使用しています。今はまだ、全ての商品を100%再生繊維にする事は選択肢が少なくて難しいのが現状。そういったことを品質表示や下げ札に記載して「見える化」しているのは、近い将来100%にしたいという決意でもあります。再生素材だけではなくて、天然パルプ由来のアセテートやトリアセテート、とうもろこしやサトウキビ由来のポリ乳酸とか、これからも循環型のエコ素材が生まれてくると思うので積極的に取り入れていきたいと思っています。

※グローバル・リサイクルド・スタンダード(GRS)とは?
リサイクル材の加工流通過程管理、社会および環境慣行、そして化学規制の第三者認証の要件を設定する国際的な基準。

ーブランド立ち上げの準備は、ちょうどコロナのピーク時と重なったんじゃないでしょうか。

 緊急事態宣言が出た4月頃は、まさにサンプルを作っている時でした。でもコロナによる生活の変化の中で、みんながどういう服が必要なのかを考えるタイミングで作ることができたのは良かったかもしれないと思っています。例えば部屋で仕事してそのまま出かけられるものや、自宅で洗濯できるものの価値がぐっと高まったり。元々考えていたコンセプトをより深めるきっかけになりました。

ースケジュールなどに影響は?

 全体的に少し後ろ倒しにはなりました。本来は6月にパリで展示会をする予定だったんですが無くなってしまったり。ただ、自分が作ろうとしているものはマーケットに存在しないので、スケジュール変更での大きい不安はなかったですね。

ー生活様式の見直しと同時にサステナビリティの意識も高まっています。

 サステナブルにしっかり取り組んでいるブランドって、まだまだスポーツやアウトドアのブランドが多い気がしていて。コレクションブランドとして一つの責任を果たすということを、これからは当たり前に取り組むべきだと思っています。新しい表現や生活様式を服を通して創造しながら、どの工程が環境負荷を掛けているのかを把握する。それらを100%配慮されたものに変えていくことが、次の世代に対する我々の責任です。今、それを無視してものづくりはできません。

ーファッション界ではコロナによって様々な問題が浮き彫りになっています。

 そうですね。ファッションカレンダーの見直しを提案した「rewiringfashion(※)」には6月に署名しました。CFCLは常に新しい素材に向き合い、日々変化する現代生活に提案するために、年2回の発表は必要だと感じているので続けていきます。でも、テーマによってフォルムや素材を変えず、良いものは継続して売っていく。将来的にはシーズンの枠を取り払いたいという意味を込めて、ファーストシーズンを「Vol.1」と表記しました。ブラッシュアップしながら、少しでも長く着られる服を長く売っていきたいと考えています。

ー今年は特にブランドによって発表方法も変わってきていますが、CFCLの考えは?

 デビューコレクションは先に展示会を開催して、ヴィジュアルとムービーは後日発表する予定です。ファッションショーという形式って、もう何十年も変わっていませんよね。でもやっぱりSNSの誕生は影響が大きかった。BtoBだったコレクション発表が、BtoCとして誰でもすぐに見れるようになったり。なので先のrewiringfashionが提案しているように販売時期の直前に見せるというやり方もありますが、重要なのはデザイン哲学であって、発表形式にはこだわりません。ただ、会社を運営しているとコストに対する効果をより考えるようになったので、例えばショーを開催する予算を映像制作に回せば今の時代に合った面白い事ができることのでは?と思ったりもしていますね。

ーコロナ以外で苦労したことは?

 コンセプトを立てて服を作るのは前職でやってきたこと。でも起業するのは初めてで、ファイナンスもそうですし交渉や契約書を作ったりとか事務的なことも含めて、知らないことが多かったので苦労することもありましたね。発注書をまとめるのもしんどかったり(笑)。クリエイションの仕事は全体の5%ぐらいなんじゃないかな?というくらい。でも、人や物を多く動かさなくてもブランドは始められることがわかったし、色々と含めて勉強になっています。

ー展示会を終えて、卸先などはどのくらい決まりましたか?

 国内・海外含めてドア数で40です。主な店舗は、国内だと伊勢丹、ユナイテッドアローズ、トゥモローランドなど。海外だと、オンラインセレクトショップのSSENSE、北京のSKP、上海のGaleries Lafayetteなどです。自社ECも展開予定で、2月頭の立ち上がりを予定しています。

ー国内アパレルや小売が落ち込んでいる状況はどのように見ていますか?

 これを作る、これを着る、という明確な理由がないと淘汰されると感じました。時代と共にアップデートして変化に順応すること。よりメッセージを明確にしないと売れない時代になりました。今回ニットに絞った理由の一つは、アイテムを絞ってより強いメッセージを作るためです。自分の意思とは異なるものを作らないといけなくなるほど、ビジネスを拡大する必要はないとも思っています。

ーCFCLはこれからどのように育てていきますか?

 理念に共感してくれる人を増やしたいですね。従来の指標は売り上げだと思いますが、CFCLはブランドの目標や成長を売り上げでは計りません。シーズンを重ねる毎に共感してくれる人が増えれば、数字は結果としてついてくるという考えです。文化として日本のものづくりは絶やしてはいけないという考えはもちろんありますが、継続的に提案するためには日本の原料を使って日本で作ることが必要です。間にコンバーターやOEMを挟まずに、ローカルと直接自分が繋がる。それがCFCLの発展性に繋がると思っています。

聞き手:小湊千恵美

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高橋悠介
文化ファッション大学院大学修了後、2010年に株式会社三宅デザイン事務所入社。
2013年にISSEY MIYAKE MENのデザイナーに就任し、6年に渡りチームを率いる。
2020年、株式会社CFCL設立。
CFCL公式サイト

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