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ユナイテッドアローズ改めTABAYA HD、目指すは「唯一無二のライフスタイルグループ」

聞き手&文伊藤真帆平原麻菜実

Video by: FASHIONSNAP

 ユナイテッドアローズは2027年3月期にスタートした新中期経営計画で、成長余地の高い中高価格帯マーケットに経営資源を集中、M&Aを含むポートフォリオ拡充を視野に、ホールディングス体制に移行する。持株会社の名前は「TABAYA ホールディングス」。1989年の設立から37年を経て同社はどこへ向かうのか。新中計の全体像を松崎善則ユナイテッドアローズ社長執行役員CEOに聞いた。

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松崎善則ユナイテッドアローズ社長執行役員CEO

Image by: FASHIONSNAP

■松崎善則(まつざき よしのり)/ユナイテッドアローズ社長執行役員CEO
1974年2月22日生まれ。埼玉県出身。1998年4月にユナイテッドアローズに入社。ユナイテッドアローズ渋谷店からキャリアをスタートし、販売職や店長職、ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ本部長などを経て、2018年4月に上席執行役員に昇格し、同年6月に常務執行役員に着任。ユナイテッドアローズやビューティー&ユースなどの複数の主力事業の統括責任者としてグループの成長に貢献した。2020年11月に副社長執行役員に就任。2021年4月から現職。

前中計は次世代獲得に手応えも「総じて80点」

⎯⎯まず、前中期経営計画の手応えについてお聞かせください。松崎社長の中で採点するなら、100点満点中何点ですか

 難しいですね(笑)。実績としてはおおむね計画通りに進み、中期を終えましたので100点です。ただ、取り組みの中身としては、次世代をターゲットにした施策もスタートし手応えはあるものの、まだ大きな成果にはなっておらず課題を残しています。そういう点でいうと、総じて80点ぐらいかなと。これから本格的に着手する異業種・非アパレル領域に関しても、前中計ではM&Aについて織り込んでいなかったところもありますが、今中計の前にスタート前段としてもう少し準備をしておきたかったですね。とはいえ、ここは今後の伸びしろかなと思っています。

中期経営計画 2023-2025 定量目標
目標実績(2026年3月期)
連結売上高1600億~1700億円1646億円
連結営業利益90億~100億円91.2億円
連結営業利益率5.6~5.9%5.5%
連結ROE(自己資本当期純利益率)13.8~15.4%15.3%

⎯⎯次世代をターゲットにした施策では「アティセッション(ATTISESSION)」や「ナイスウェザー(NICE WEATHER)」「オソイ(OSOI)」といった新規ブランドを導入するなど積極姿勢だった印象ですが、どういった部分に課題感を感じているのでしょうか。

 実績として、20代のお客さまの獲得に一定部分でつながったところがあるので、その点は評価しています。しかし、当社の次世代を捉えきれたと言える状態ではありません。出店店舗数もそうですし、もっと存在感のある広告宣伝も必要なので、ここは継続して課題感を持ってやっていくことだと思っています。

ウィメンズヴィジュアル
店内イメージ
ヴィジュアル

四谷奈々可が手掛ける「アティセッション」

Image by: ユナイテッドアローズ

標榜したいのは「唯一無二」 LVMHのような高付加価値グループへ

■新中期経営計画 2026-2028の概要

 同社は前中期経営計画立案時からの内部環境および外部環境の変化を踏まえ、2023年5月に公表した「長期ヴィジョン2032」で掲げた売り上げ目標を、2026年5月に3000億円(前回発表から500億円増)、営業利益目標を300億円(同50億円増)に上方修正(営業利益率は10.0%で据え置き)。新中計はそのマイルストーンと位置付け、成長余地の高い中高価格帯マーケットに経営資源の集中を図るとともに、M&Aを含む非アパレル市場の取り込みを視野に、ホールディングス体制に移行する。

定量目標
新中計(2029年3月期)長期ヴィジョン(2033年3月期)
連結売上高1850億~1950億円3000億円
連結営業利益115億~125億円300億円
連結営業利益率6.1〜6.3%10.0%
連結ROE(自己資本当期純利益率)14.3~15.7%-

⎯⎯2029年3月期を最終年度とした新中期経営計画では、中高価格帯マーケットに経営資源の集中を図るほか、M&Aを含めた事業の多角化を計画しています。

 これからは「日本が誇る、世界に向けた高感度・高付加価値グループになる」を目指していきます。

⎯⎯それは、「脱セレクトショップ企業」を意図しているのでしょうか。

 その方がキャッチーに聞こえるとは思うのですが、「脱する」というよりは「足していく」方向です。セレクトショップのみならずライフスタイルグループになるんだと。

⎯⎯国内外の企業でベンチマークにされているようなところはありますか。

 標榜したいのは「唯一無二」です。とはいえ素晴らしい会社はたくさんあるわけで、最たる事例でいうとLVMH(LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン グループ)のポートフォリオはまさに高付加価値だなと思います。ただ、ラグジュアリー領域と我々の領域は、現時点で比較できるものではないので、「そこを目指します」ということではなく、あくまでもコングロマリット化の部分で意識しているところがあるということです。

⎯⎯今年10月に持株会社体制に移行します。いつ頃から検討を始められたのでしょうか。

 前中計が半分ほど進んだ頃ですね。従前から、会社名と事業店舗の名称が同じであることに対するジレンマが少しありました。前中計で掲げていた次世代の獲得も、これから着手する非アパレル領域の拡大も、会社として取り組むことが「ユナイテッドアローズ店舗」のイメージに直結するため、ユナイテッドアローズという単体屋号ではなかなか進めにくいという中で検討を始めました。

もっとくわしく:
 持株会社体制への移行に伴い、現ユナイテッドアローズの商号を10月1日付で「TABAYA ホールディングス」に変更。既存事業は今年4月に新設した分割準備会社「株式会社ユナイテッドアローズ」に承継させる。

 商号に使用する「TABAYA」は、「ひとつの目的に向かって直進する矢(ARROW)を束ねた(UNITED)」を意味するユナイテッドアローズの和名に由来。昨年4月にユナイテッドアローズ 原宿本店からリニューアルし、“史上最上級のユナイテッドアローズ”をコンセプトに掲げている新店舗「タバヤ ユナイテッドアローズ(TABAYA United Arrows)」にもTABAYAの文字を採用している。

⎯⎯持株会社の新しい商号は「TABAYA ホールディングス」。ユナイテッドアローズの名称に親しみがあっただけにさまざまな反響がありましたが、社内の反応はいかがでしたか。

 社外では「ユナイテッドアローズがなくなる」と思われた方もいたかもしれません。しかし、社内は「ユナイテッドアローズの社名がなくなるわけじゃない」と認識していましたので、目立ったネガティブな声はなかったかなと思います。もともと「束矢」というのは社内で使われていたワードで、社内研修機関に「束矢大學」という名称を使っていたりと馴染みはありましたから、社外の方が感じる違和感よりは非常に小さいと思います。

⎯⎯M&Aではこれまでに靴磨き店「ブリフトアッシュ」運営会社のブーツブラックジャパン(BOOT BLACK JAPAN)、中島輝道による「テルマ(TELMA)」を買収。そして7月末には春髙未欧が手掛けるジュエリーブランド「ビジュードエム(Bijou de M)」を取得します。これらの共通項は?

 いずれも日本の企業・ブランドというのがあります。ブリフトアッシュはシューシャインのエキスパートの会社ですが、日本人の技術や繊細さ、巧みな仕事にすごく共感しました。当社の優良顧客に対するサービス拡充というシナジーも期待できますし、海外に向けて日本の技術を提供していくという拡張性もあります。

 テルマは日本の技術に注目し、金箔や漆を使うなど、産地を大事にした日本製にこだわっています。日本発で世界に向かっていくにあたって素晴らしいクリエイションをされていることに共感しました。

 ビジュードエムも、日本語の「ひらがなシリーズ」に代表されるように日本ブランドとしてのプライドをお持ちですし、デザイナーの春髙さんは世界的にも著名な方です。もともとタバヤ ユナイテッドアローズ(旧原宿本店)やユナイテッドアローズ六本木ヒルズ店、麻布台ヒルズ ウィメンズストアといった、当社の中でも比較的高価格な店舗で取り扱っていましたが、グループとしてご一緒することでグローバル展開の可能性もありつつ、日本ブランドとしての拡張性を図れると考えました。

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ブーツ ブラック ジャパンが展開する靴磨き店「ブリフトアッシュ」

Image by: ユナイテッドアローズ

⎯⎯今後ポートフォリオを拡充する上で、「日本」が軸になってくるのでしょうか。

 今回、日本の企業やブランドのM&Aがたまたま3件続きましたが、日本であることだけにこだわるわけはありません。既存のお客さまとのシナジーや、当社がサポートすることでスケールアップが図れそうかといった考察が第一です。そういった観点で捉えると、日本ブランドに限らずさまざまな企業との取り組みもあると思います。

⎯⎯多角化をどんどん進められるということですが、ファッションだけではやはり限界なのでしょうか。

 アパレルが限界かというと、決してそんなことはないと思います。ただ、ファッションというカテゴリーはアパレルに限りません。食べることも、音楽を聴くことも、心地よく生活するための方法はすべてファッションだと捉えています。そこに関わるものへと自然と拡張していかないと、お客さまの満足はこれ以上高められないという考えに基づいています。

⎯⎯非アパレル領域で興味のある分野は?

 ライフスタイルグループになると言っている以上、「食・住・美」をカバーしていくことが顧客満足につながると考えています。食の領域は非常に可能性があり提供できる価値があると思っていますが、自前だと難しいところもあるので、資本提携など様々な方法で積極的に考察したいです。

⎯⎯ビューティ分野もM&Aを視野に入れていますが、自社ですでに「ユナイテッドアローズ ビューティー(UNITED ARROWS BEAUTY)」を開発しています。

 ユナイテッドアローズ ビューティーに関しては苦戦しており、見直さなくてはいけないなと思っています。“アパレル発のビューティ”となると、ファッションに振り切るべきか、それとも花王さんとのお取り組みのような消費財的な提案をするべきか、“ユナイテッドアローズではない形のビューティ”を目指すのか、今も模索しているところなので、方向性を整理して諦めずに取り組んでいきます。ビューティ・ヘルスゾーンはライフスタイルの中では欠かせない領域だと思っているので、機会を積極的にうかがっていきたいですね。

海外は売上高2.3倍の70億円が目標 成功の鍵は中国市場

⎯⎯海外市場の拡大も新中計の軸の一つに据えています。目標売上高は、2026年3月期から約2.3倍の70億円と、強気の設定ですね。そのうち4割強が中国の売り上げが占める見通しです。

 2013年に進出した台湾はある程度、規模拡大が図れてきましたが、伸びしろで言ったらやはり2025年1月に本格進出した中国本土が非常に大きいと思っています。現在は上海、深圳、杭州に出店していますが、上海以外の1級都市ではまだ認知されていないという課題が明確になりました。まずは上海での多店舗化を図り、そこから郊外や他の1級都市へ広めていく方向に修正しています。いまはユナイテッドアローズの屋号のみを出店していますが、今後は日本国内と同様にさまざまな事業の店舗を展開していく計画です。今上海に出している1号店も“あくまで1号店”なので、より大きな旗艦店を出したいと思っています。

新中計で掲げる各地域の出店店舗数と売上高
国・地域目標売上高出店予定店舗数2026年4月時点の店舗数
中国31億円約8店舗3店舗
台湾27億円約12店舗15店舗
その他地域(未展開の欧米を含む)12億円-タイ:2店舗
シンガポール:1店舗

※補足:2025年9月にグローバルECオープン

外観

2025年1月にオープンした中国大陸初の直営店「ユナイテッドアローズ 上海静安嘉里中心店」

Image by: FASHIONSNAP

⎯⎯どういった事業が出店候補に上がっているのでしょうか。

 「ビューティー&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」などですね。「ドゥロワー(DRAWER)」も単体出店の可能性がありそうです。

⎯⎯ドゥロワーとビューティー&ユースは現地でどの程度認知されているのでしょうか。

 ドゥロワーはまだこれからですが、「エイチ ビューティー&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」は認知度が高いですね。エイチの屋号を付けるのかは検討の途中です。

⎯⎯現地ではオリジナル商品が支持されていると聞いています。

 我々にとっては“オリジナル”ですが、中国の方にとっては“ブランド”なので、感覚の違いはありますね。セレクトをやらないわけではありませんが、現地に出店する店舗は基本的にはオリジナルがメインになってくると思います。

⎯⎯台湾市場の進捗を教えてください。

 「ユナイテッドアローズ グリーンレーベルリラクシング(UNITED ARROWS green label relaxing)」を中心とするミッド・トレンドマーケットを中心に拡大しています。台湾の気候は非常に暑いので、なかなかジャケットを着るような方が少なく、カジュアルにどうしても寄っているところがあります。ですが、(「ユナイテッドアローズ」「ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ」を中心とする)トレンドマーケットにまだ可能性がありそうだなと思っているので、現地のお客さまに合った表現をしていきたいと考えています。

⎯⎯台湾現地におけるユナイテッドアローズの強みは?

 服を買う際の「選択肢が少ない」というのが台湾の今のマーケット環境なので、そういう意味では我々のようなブランドは魅力的な提案に映るのではないかと思います。日本に頻繁に来られて買い物をされるファッション感度の高い方もいると聞いていますが、一方で、そうではない層に向けてどう訴求するかが今後の課題と感じています。

⎯⎯その他の地域は欧米を含めて12億円を目標に掲げています。

 今はタイに2店舗、シンガポールに1店舗を出店しているほか、香港でも卸やフランチャイズで展開しており、それなりの額になっています。卸は、欧米にも広げていきたいですね。

⎯⎯アメリカにはこれまでにさまざまな日本企業が進出していますが、成功例が少ないのが現状です。

 おっしゃる通り、アメリカはテイストや感度にフィットさせるのが課題かなと。まずは卸から拡大させていけたらと思っていますが、「アメリカに出店するのが夢」ということではなく、あくまでも世界にお客さまを広げたいという中の一つの市場として捉えています。

松崎社長

⎯⎯国内でも引き続き出店を強化する方針で、3年間で55店舗程度の新規出店を計画しています。

 出店もしますが、人口減少の中では既存店約40店舗の改装や格上げを行い、1店舗あたりのお客さま満足を高めることにも力を入れたいです。

⎯⎯新中計では人的資本への投資にも力を入れます。想定人的投資額850億円は過去最大規模ですか。

 3ヶ年の人件費としては過去最高額です。ベースアップも含め効率性は高まるので、人件費率自体は横ばいの設計です。

⎯⎯販売職からキャリアを重ねてきた松崎社長の視点で、ユナイテッドアローズの販売職の最大の強みとは何でしょう。

 願望になりますが、「接客力」が一番の強みでありたいと思っています。販売スタッフのみならず、社員みんなが「ユナイテッドアローズの強みは人なんだ、接客なんだ」と思って活動していることが、他社と違う強みかもしれません。

誰が見ても「美しい」活動を

⎯⎯長期ヴィジョン2032では「長期的にありたい姿」として、「美しい会社」を掲げています。どのように定義していますか。

 明確な答えや定義は用意していないんですが、誰しもが美しいものを見たときに「美しいな」と思うじゃないですか。その状態を目指したいですね。誰か特定の人にとってではなく、誰が見ても美しいと感じる活動や行動をみんなでやっていこうという意思表示です。

⎯⎯最後に、新体制のフェーズで社長CEOとして、今後3年間どのような気持ちを大切にしたいか改めて聞かせてください。

 会社なので永続性がないとダメで、絶対に右肩下がりにしてはいけません。ただ、マネーゲームや資本競争に入るのではなく、「正しい行い、正しい商い」を通じて世の中にどう貢献していくかが一番大事だと思っています。

 一方で、趣味の会社ではないので、お客さまを広げて拡張していく大きな転換期でもあります。プレッシャーはありますが、自分ひとりの活動ではなく社員みんなの活動の集合体です。皆が同じ方向に向かえるように整えるのが私の役割なので、その点についてのプレッシャーはあまりないですね。より高付加価値の方に向かって頑張っていこうと思います。

松崎社長

取材当日は自社ブランドのアイテムをメインに着用

最終更新日:

聞き手&文・伊藤真帆

Maho Ito

FASHIONSNAP 編集記者

東京都出身。高校時代に編集者を志し、デザインもわかる編集者を目指して美術系専門学校でグラフィックおよびウェブデザインを学ぶ。ウェブメディア「ORICON STYLE(現・ORICON NEWS)」で編集を経験後、カナダでのワーキングホリデーを経て、2014年にレコオーランドに入社。ライフスタイル領域をメインに担当後、現在はシニアエディターとしてデスク業務のほか、セレクトショップや百貨店・商業施設、ECといった小売関連企業を中心に取材。企業のトップに取材する連載「トップに聞く」を担当している。一児の母。趣味はボードゲームと謎解き。

てすとてすと

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