化粧品を選ぶ時、Z世代を中心に「配合成分」に注目する人が増えているそう。一方で、成分の効果や、正しい使い方については、あまり知られていないのも事実!? 誰もが知っている名前ではあるけど、でも実際はどこがすごいのかイマイチ理解できていない…。そこで美容成分の専門家の竹岡篤史氏に、素朴なギモンを聞いてみました。第1回は「ビタミンC」について。
国立研究所におけるペプチドを用いた経皮ワクチンの開発を経て、2002年よりスキンケア成分の開発に従事。2016年、ヨーロッパを代表する美容・コスメイベント「In-cosmetics」で、イノベーションアワード金賞を受賞。国内外の最先端の成分事情に詳しく、化粧品会社や製薬会社と共同研究・開発を手がけている。
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美白、ニキビからエイジングケアまで、ビタミンCの効果は多彩!
FASHIONSNAP
ビタミンCって、「美白」や「ニキビ」に効くイメージがありますが、実際はどうなんですか?
ビタミンCには私たちの体の、あらゆる組織の再生に欠かせない成分なんで、肌においてはターンオーバーの促進や、コラーゲンの生成をサポートする働きがあります。さらに、優れた抗酸化作用によって、活性酸素と戦う働きもあるんです。
またメラニンの生成抑制や還元作用があることに加え、皮脂の抑制作用もあると期待されており、美白やニキビ対策のスキンケアに配合されることが多いですね。でも、それだけではなく、ビタミンCの効果は多岐にわたるんです。
竹岡氏
ビタミンCの主な効果
・抗酸化効果(シミ、くすみ、ニキビ、たるみ、シワ)
・メラニンの生成抑制(シミ、くすみ)
・メラニンの還元(シミ、くすみ)
・抗炎症効果(シミ、ニキビ、たるみ、シワ)
・ターンオーバーの促進(ニキビ、シミ、くすみ、たるみ、シワ、毛穴)
・コラーゲンの合成促進(たるみ、シワ)
・毛穴の引きすめ(毛穴・ニキビ)
・皮脂分泌の抑制(ニキビ)
ビタミンCは濃度が高いほうが効く!?
FASHIONSNAP
たくさんの効果が期待できるビタミンCですが、やっぱり濃度が高いほうが効くのですか?
「ピュアビタミンCの肌への浸透」という観点でいうと、20%くらいまでは、濃度に比例して浸透量も増えていきます。それ以上になると「濃度が高いから肌に入る」とは、一概に言えません。
竹岡氏
FASHIONSNAP
じゃあ、20%くらいの美容液を使うのがベストってことですか?
ビタミンCの効果は「濃度」だけでは、決まらないんですね。今お話ししたのは「ピュアビタミンC」についてですが、化粧品成分の中には「誘導体」の形で存在するビタミンCもあります。浸透性に優れた「即効型ビタミンC誘導体」と、長時間肌に留まる「持続型ビタミンC誘導体」を組み合わせることで、「肌の中で長時間ビタミンCが働く処方」のスキンケアを選ぶのも1つの方法です。
竹岡氏
ビタミンC誘導体って何?
FASHIONSNAP
「ビタミンC誘導体」と「ピュアビタミンC」は違うんですね。
ピュアビタミンCは、化学名を「アスコルビン酸」といいます。シンプルなビタミンCそのもののことですね。さまざまな効果がある一方で、酸化しやすい不安定な成分でもあります。
そうならないために、アスコルビン酸に「リン酸」や「グルコシド」を結合させて、安定させたものが「ビタミンC誘導体」です。化粧品の中では安定した状態を保ち、肌に浸透したあとに結合が切れて、純粋なアスコルビン酸として働きます。
さらにいうと、ビタミンC誘導体は日本で登録されているもので約80種類、世界では112種類あります。(*2024年5月現在)
竹岡氏
FASHIONSNAP
そんなにあるんですね。 効果も違いますよね?
アスコルビン酸、つまりビタミンC自体の働きは同じですが、「何と結合させるか」によって、肌への作用が変わります。たとえば、保湿成分のグリセリンが結合しているものは、肌をしっとり保つ働きが期待できる。近年ではさまざまな機能を持つビタミンC誘導体が登場しています。
竹岡氏
【注目の高機能ビタミンC誘導体】
グリセリルアスコルビン酸(iVC):ビタミンCが持つ抗酸化機能に加え、グリセリンが持つ優れた保湿機能や整肌効果が期待できる。肌自らがうるおう力を高め、ハリや毛穴にもアプローチ。
サクシノイルペンタペプチド-12アスコルビルリン酸:コラーゲンを生み出す力に優れたペプチドと、コラーゲンの成熟に重要なビタミンCの相乗効果で、強力な皮膚再生力を導くことに成功したハイブリッドペプチド。
誘導体が、水に溶けやすいか、油に溶けやすいかも重要なポイントです。アスコルビン酸は、もともと「水溶性」の成分ですが、健康な肌には「油分のバリア」が存在するため、水だけだとなかなか入りにくい。そこで「油」に溶けやすくして肌へのなじみを向上させたのが、「脂溶性」のビタミンC誘導体です。
油に溶けやすいと、クリームや乳液にも配合しやすくなるんですよ。
さらに、水と油の両方に溶けやすくした「両親媒性」のビタミンC誘導体は、より肌に浸透しやすくなります。これらのビタミンC誘導体を、上手に組み合わせることで、肌への浸透感や、内部に留まる効果が変わってきます。
竹岡氏
FASHIONSNAP
なるほど。水と油は交わらないですもんね。いろんな剤型に配合できると好みに合わせて使用できて嬉しいですね。
代表的なビタミンC誘導体
そうですね。本来であれば「どんな肌悩みをケアしたいのか」「ライフスタイルに合わせて」賢くどのビタミンC誘導体を配合しているかチェックすると、効率の良いお手入れが叶います。
竹岡氏
ズバリ、ビタミンCは「飲む」のと「塗る」のではどちらが効く?
FASHIONSNAP
ビタミンCはサプリもありますが、「飲む」のと「塗る」のとではどっちが効果的ですか?ビタミンCは、飲んでも「尿として出てしまう」と聞いたことがありますが?
先ほどお話ししたように、ビタミンCは肌への作用(ケア)には欠かせない成分です。そのためにまずは内服で、体内濃度を維持することが大切だと考えています。実は内服でも、ビタミンCは皮膚に十分な量が届くことが分かっているんですよ。
そして使わなかった分は排出されますが、ビタミンCは「代謝が高い部位」に優先的に使われる性質がある。ですので、ターンオーバーを繰り返している肌には、一定の量が使われています。
竹岡氏
一方で「塗るケア」はというと、「表皮」で発生するシミやニキビなどには、外側からビタミンCを塗って、局所濃度を高めてあげると効率がいい。
抗酸化やハリ感の向上には内服のサポートも必要ですから、上手に組み合わせるのが理想的です。
竹岡氏
FASHIONSNAP
なるほど。どういう組み合わせであるか、そして「塗る」「飲む」もうまく使い分けて、ビタミンCを上手に取り入れたいと思います。
日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、WEBなどで美容記事を執筆している。担当分野はスキンケア、メイク、ヘアケア、フレグランス、美容医療など幅広く、丹念な取材をもとにしたわかりやすい記事に定評がある。温泉や銭湯をこよなく愛する入浴Lover。
(編集:福崎明子)
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