Fashion ふくびと

【連載ふくびと】第10話 N.ハリウッドと尾花大輔――老舗も決して不変ではない

Image by: FASHIONSNAP.COM

第9話からつづく――

 気が付けば、原宿の裏通りで自身の店「ミスターハリウッド(MISTER HOLLYWOOD)」を立ち上げてから20年。ゼロからスタートし、長い道のりを経て得たのは「安定ではなく信頼だった」と尾花は振り返る。2020年には新型コロナウイルスという生活様式を変えるほどの艱難が待ち受けていたが、「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」は早い段階で次シーズンのショーを取り止めるなど、方向転換することを決めた。――N.ハリの創業デザイナー尾花が半生を振り返る、連載「ふくびと」N.ハリウッドと尾花大輔・第10話(最終回)

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・「やり方を変えます」

 2020年2月末、まだ日本では感染者が少ない頃でした。でも何故か、今までに感じたこともない悪寒が走りました。ちょうど国内展示会の最中に、一斉にスタッフを集めて「やり方を変えます」と伝えたんです。つまり、次のショーを中止にするということ。決行しようと思ったらどうにかできるかもと考えられた時期でしたが。次回のコレクションは「方向性も変える」と皆に話しました。

 東京ではその後、ショーをやりたくてもできなかったブランドもあれば、無観客ショーに切り替えたブランドもありました。特に若手デザイナーだったら次はどうしようと不安になるし、誰もがネガティブになってしまうような状況。でも、従来通りのことを無理矢理やる必要はないし、やれることをやるだけだと思います。そもそも僕は、これだけ目まぐるしく変わる時代ですから、あまり決め事は作らないんです。動けない時には、新しい販売の仕方を考えたり面白い仕込みに充てて、いつでも動けるように準備しています。

 これまでの20年間も色々なことがありましたが、危機的状況になった時に瞬時に考えて対応できるかどうかだとつくづく思います。2011年の3.11を思い出しますが、その時ジョニオさん(アンダーカバー 高橋盾)など先輩方と、何かできないかと話し合いました。ただ、あの時はやらなきゃいけないことがある程度は明確でしたけど、今回は見えない敵との戦いが多いというか。色々と考えて、やっぱり僕らは本筋と違うことで救うのは難しい。生活に必要な衣服と、生活を潤わせるファッション、N.ハリはどちらも展開していてどちらも重要だと思っているので、自分たちなりに救っていけたら。これからは、そういったことに対峙して服作りをしていくつもりです。

 

・決して不変ではない

 ありがたいことに業界のプロやジャーナリストからも支持を頂き、「着ていて恥ずかしくないんだよね」と言われるのが僕にとっての褒め言葉。そうやって信頼してもらえると、自分がやってきたことは正しかったんだなと思えます。

 何よりも、チームが育っていくことが嬉しい。今では一人だと何もできません。僕は普段ほとんど椅子に座っていなくて、ずっと誰かとミーティングの連続。パソコンがいらないくらい喋りっぱなしで、自分の考えたことはすぐに共有して、概念を形にするために考えを出し合ってブラッシュアップしていく。きっと思考も行動も、一人からチームになったということなんだと実感します。

 これからは、チームだけではなくて外に対して貢献をしていけたらと考えることが多くなりました。例えば他の業界の人も含めて「ファッション界で長く続いているブランドってこういう形でできているんだ」と、独特なフローやプロセスを何かのヒントにしてもらっても良いと思う。少しでも役に立てることがあれば。このままだとファッション業界は衰退していってしまう、そんな危機感を覚えています。

 創業100年の老舗ブランドも、不変のようでいて長い歴史の中では大きく変わっています。自分も根底の部分は変わらないけど、この20年間で新陳代謝や変化を経験して、進む道を大きく方向転換するような決断もありました。あと5年経てば四半世紀なので、もっと抜本的に変わるべき瞬間がやってくるだろうと思います。それがもしかしたら、今かもしれない。明日はどうなるか、僕はどうしていくのか、自分でもわからない。でも、わからないから面白い。そしてそれが、楽しみなんです。

 

尾花大輔、神宮前にある自社のショールームにて。

 

(2020年3月下旬・談)

文:小湊千恵美
企画・制作:FASHIONSNAP.COM

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