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“ニットアンダーウェア”で環境問題と向き合う「JUUKIFF」、ブランドと消費者との循環する関係性

designer’s dialogue 004

IMAGE by: JUUKIFF

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“ニットアンダーウェア”で環境問題と向き合う「JUUKIFF」、ブランドと消費者との循環する関係性

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 「designer’s dialogue」は、アップカミングなデザイナーの今ここ現在地から見えるもの、感じるもの、つくるものについて対話を重ねていくインタビュー連載。ファッションマガジン「apartment」の杉田聖司を聞き手に、これからのつくり手のあり方を探っていく対話の記録です。

 第4回は、「ジューキフ(JUUKIFF)」ディレクターのJOOMI HAとRUKA KAWAIとの鼎談。ジューキフは2021年にHAがアンダーウェアブランドとして立ち上げ、2022年にKAWAIが共同ディレクターとして加入。「ファッションと環境のバランスを追求する」という命題を掲げながら、ニットウェアブランドとして新たなスタートを切っています。今回は、英・セントラル・セント・マーチンズ(以下セントマ)のニット科出身でもある二人が、タッグを組んで2シーズン目となる2024年秋冬シーズンの展示会会場を尋ねました。

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下着の次に肌に近い、その人自身を隠さない服

杉田聖司(以下、杉田):まずはじめに2024年秋冬シーズン「MODERN LIBERTY(現代の自由)」について聞かせてください。ニットウェアでありながら洗練された素材感とカラーリング、繊細でフェティッシュなディティール、それをまとった一人の女性のシーズンヴィジュアル。そして「私たちは何から自由になりたいのか」という一文から始まるステートメントが印象的でした。

RUKA KAWAI(以下、KAWAI):今回のステートメントの一部はジョン・スチュアート・ミルの「自由論」から引用しています。その箇所を参考に、私たちは現代の都市における「自由」を様々な「抑圧」からはみ出るものだと定義づけました。例えば、整然と整理された街路樹の中からはみ出した一本の枝に心を動かされたり、それが現代における自由の感覚だなと思ったんです。

 「すべての言語と文学は、人生とは何か、人生においてどのように行動すべきかといった、人生に関する一般的な見解に満ちている。誰もが知っている見解であり、真理として受け止められているものであるが、ほとんどの人がその意味を初めて真に知るのは、一般につらい種類の経験が、それを現実のものとしたときである。」
引用:自由論(1859)by John Stuart Mill

杉田:抑圧の中にあるからこそ自由を感じることができる。ニットという素材の特性上、肌への密着感はありつつも、自分の身体に沿って服の形が自由に変化していくなと、私も実際に今シーズンのアイテムを着させていただくことで実感しました。

KAWAI:私たちの服は身体を隠すための服ではなく、誰にとってもその人なりの表現ができる服なのかなと思っています。

Imaged by JUUKIFF

Imaged by JUUKIFF

杉田:「隠してない」という印象は特に強かったです。例えばVネックのニットは170cm弱の僕が着てもお尻がすっぽり隠れるくらいの丈感。一般的にこの丈感はお尻のシルエットを隠す機能もあると思いますが、これは大胆なシースールで全然隠れないですね。

KAWAI:ニットだからこそ着ているその人にしかない形が表れますし、それが美しいと思っています。なのでモデルさんも私たちにとって親しみを感じられるシルエットの方にお願いしています。

JOOMI HA(以下、HA:ジューキフが作っているのは、下着の次に肌に近いアイテム。合わせる服次第でスタイルは様々に変化させることができます。「買わなくてもいい」という表現は変かもしれませんが、一アイテムでも十分楽しんでもらえると思います。

杉田すでにFASHIONSNAPで公開されている別記事でも「クローゼットの中身を減らすことにつながればそれもまたサステナブル」という表現がありました。消費を扇動しそれに呼応してきたこれまでの私たちを顧みた姿勢は現代的だなと感じています。

KAWAI:さらにサステナビリティの点で言うと、今シーズンはほとんどの商品の素材を100%ウールにしています。そうすることでリサイクルの効率は格段に上がる。さらにウールは匂いの原因を吸収して排出してくれます。実際に登山用の靴下やパンツなどのアンダーウェア、さらには手袋もウール100%のものが多いんです。

杉田:肌に直接触れるアイテムも多くありますね。アンダーウェアは機能性が優先される「日用品」的な印象で、「おしゃれアイテム」的なニットウェアとの距離を感じていたのですが、そもそもニットウェアは漁師のワークウェアとして重宝されていたという歴史を思い出しました。

KAWAI:そうなんです。それと同時に、今アンダーウェアに求められているのも機能性だけではありません。日常的にブラをトップスの上に重ねるスタイルを見かけたり、そういう風景が当たり前になってきていますよね。

オーバーサイズのシースループルオーバー

Imaged by JUUKIFF

「ニットアンダーウェア」ができるまで

杉田:ジュミさんがアンダーウェアブランドとしてジューキフを立ち上げたのにも、アンダーウェアに求められるものの変化を感じたという背景があるのでしょうか?

HA: そうですね。セントマのニット科を卒業して韓国に戻った時、自分が着たいアンダーウェアはどこにもありませんでした。それがジューキフを始めた理由のひとつです。

杉田:ブランド設立の翌年、2022年からKAWAIさんが共同ディレクターとして参画されました。お二人ともセントマのニット科卒ですが、KAWAIさんが加入された経緯は?

KAWAI:ジュミは私の2つ上の先輩でした。彼女の卒業制作を手伝っていたのが私の友達で、私もその近くのテーブルで他の先輩の卒業制作を手伝っていて、休憩時間に一緒にタバコを吸いに行く程度の仲。でも、卒業後すぐに大きなアパレル会社に就職したという共通点があり、境遇が近かったんです。

HA:そこから会う機会が増えたよね。例えば「何歳になったら結婚しなきゃいけない」とか、社会人になって初めて感じた抑圧について話が弾みました。その後、それぞれ近い時期に会社を辞めました。

杉田:近い時期というのは偶然ですか?

HA:偶然です。もちろん会社そのものが悪いのではなくて、私達にそのシステムがたまたま合っていなかっただけの話です。仕事も生活も、常に新しい要素を取り入れたい二人なので次の道を決めました。

KAWAI:私はその後、友人でもあった「タイガ タカハシ(TAIGA TAKAHASHI)」を手伝っていたんですが、そこを離れて1週間もしないうちにジュミから「ジューキフに入らない?」というメッセージが来たんです。独立したことは誰にも言っていなかったので、そのタイミングに運命的なものを感じました。

HA:それもたまたまでしたね。

KAWAI:そのときに話したのが「自分たちが一番得意なものに戻ろう」ということ。お互いに様々な経験を重ねてきたからこその原点回帰ということで、それまでのアンダーウェアブランドとしての要素も活かしつつ、ニットに改めて取り組むようになりました。

JOOMI HA(左)、RUKA KAWAI(右)

Imaged by JUUKIFF

環境問題に対する素直で切実な関心

KAWAI:ジュミから送られてきた「ジューキフに入らない?」に続くメッセージには、明確に環境に対する問題意識がありました。お互いに以前から関心はあったんですけど、ジュミから「ルカは今どんなことに興味がある?」と聞かれて、私も環境問題に関してさらにリサーチをして色々な情報を送り合うようになりました。

杉田:具体的にはどんなトピックについてだったんでしょう?

KAWAI:例えば「B corp(Benefit Corporation)*」について。その当時はまだ「シーエフシーエル(CFCL)」さんも認証を受けていなかったので「ファッションブランドで認証されることって可能なのかな?」とか「ファッション以外の企業だとどこが認証されてるんだろう?」とか、お互いにリサーチをして定期的に情報を交換していました。韓国と日本、それぞれの拠点でリサーチできる情報も違ったので新鮮でした。

*米国の非営利団体「B Lab」による国際認証制度。独自の厳格な評価のもと、環境や社会に配慮した公益性の高い企業にのみ認証する。2022年7月にCFCLが日本のアパレルブランドとして初めて認証を獲得した。

HA:そもそもセントマは環境問題への意識が強く、今ファッションコースのトップを務めるサラ・グレスティ(Sarah Gresty)をはじめとしたチューターも私たち学生もそういう意識を持っていました。廃材や余剰生地を素材として扱うプロジェクトもたくさんありましたしね。環境問題と向き合うことが当たり前というか、何かを作る時の前提条件の一つになっていました。

消費者≠Citezen(市民)

杉田:このインタビュー連載を通じても、多くのブランドが環境に対する責任を全うしようとされている姿勢を感じます。一方で、その責任をデザイナーだけが担うことは現実的ではないんじゃないかなとも感じています。

HA:ブランドの規模がさらに大きくなったら、専門家の手助けは必要になってくると思います。例えば、ジューキフにとってのベストなリサイクル方法を見つけたり、なければ開発もしたいけど、私たちだけの力ではまだできません。お客さまに「Citezen(市民)」としてこれからもジューキフと関わってもらうために、私たちのチームとしてのあり方も検討しています。

杉田:「Citizen」というと?

HA:少し大袈裟な表現かもしれませんが、街が政策や予算、成果を市民に報告するように、私たちは素材や縫製についての情報を毎回オープンにしています。一方で市民が街で暮らし、街の行政の進退を決定づけるように、ジューキフを買ってくださる方々もそれらの情報を参考に私たちとどう向き合うかの選択をしてほしい。そういった相互的なより良い関係を築いていきたいんです。

杉田:「ブランドがつくってお客さんが買う」という一方向の流れだけではなくて、お客さんからもブランドに対して何かしらのアクションが起こせる。そういうフラットな関係性を作っていくイメージなんでしょうか?

KAWAI:そうですね。「このブランドはこういう取り組みをやってるんだ。じゃあ大事に着よう」くらいでもいいんです。少しずつでもファッションとの向き合い方の選択肢を増やしていきたい。私がブランドに参加することが決まって半年ほどは、「何を作りたいか」ではなく「どんなブランドでありたいか」という価値観をちゃんと言語化して共有するために、お互いだけに向けた資料を作ってプレゼンしていました。

杉田:「Citizen」との関係はどのように築いていけると思いますか?

KAWAI:第一に、まずブランドに興味を持ってもらうことが必要です。でも、ただ「サステナビリティ」を謳っても興味は持ってもらえない。だからヴィジュアルメイキングに力を入れています。そこは韓国を拠点としている私たちの強みだとも思っていますしね。そこから関係を築いていくために、私たちの想いを発信し続ける。「なんでこんなに言ってるんだろう?」と思われるくらいに(笑)。

HA:具体的な取り組みでいうと、2024年春夏シーズンではシルクを使ったので、シルクが土に還る理論を研究した資料を公式サイトで公開しました。これからはもっとそういった、自分たちが学んだことをシェアできるコンテンツを増やしていきたいと考えています。

KAWAI:これからは自分たちのアイテムをリペアするワークショップもやりたいです。できるだけ長く楽しく着てもらえるような環境を整えたい。私たちの責任は納品してからも、その先にも必ずあるものなので。

杉田:今後やっていきたいことは?

HA:まずはリサイクル効率をより上げていきたいです。そう遠くない未来、着古された私たちの服がただのゴミではなく次のマテリアルになるようにしたいです。例えばウール100%のアイテムを増やして、もう一度再生できるようにしたり。あとはホールガーメントの割合を増やしたり。

KAWAI:私たちを支えてくれている工場さんたちや周りの人たちとも持続可能な関係性を保って、バランスの取れた生産ができるようにしたいです。多くの人に手に取ってもらえることはもちろん嬉しいですが、私たちがコミュニケーションできない範囲までその輪が広がっていくことは今は必要ないかなと思っています。自分の言葉が伝えられる範囲で綺麗に消費して、綺麗に循環していく状態が理想です。

 公式サイトで公開されている、シルクが土に還る理論を研究した資料一部

Imaged by 試験結果提供:長谷川商店

目の前のストレスに、正直に向き合う

杉田:話は変わりますが、お二人がコレクション製作中に1番テンションが上がる瞬間ってどんな時ですか?

KAWAI:例えば選択肢がいくつもある中から選ばなきゃいけないとき、ジュミと私は95%くらいの確率で同じのものを選ぶんです。普段は、それぞれ韓国と日本でリモートで作業をしていますがリサーチの画像も全く一緒だったり。その瞬間はテンションが上がりますね。一緒につくっていく上で安心できますし、同じ熱量で製作に取り組めます。

HA:今回はコレクションを発表するまでに5ヶ月しかなかったのでなかなか大変でした。でも色々な人に支えてもらって上がってきた撮影のデータを見た時は二人で、「良すぎて選びきれない!早くお披露目したい!」と盛り上がりました。すごく幸せな瞬間でした。

KAWAI:そうだね。私たちが選ぶ写真ってぶれていたり、モデルが目をつぶっていたり、一般的にはボツになる写真も多いんです。それでも、私たちはそこに美しさを感じる。今回はモデルさんに「日常生活の動きをしてください」とお願いして撮影しました。日常生活の動きってかっこいいものばかりじゃないけれど、その中の一瞬の美しさを切り取ってもらえたかなと思います。

Imaged by JUUKIFF

Imaged by JUUKIFF

杉田:つくりたい服をただつくるのではなく、つくり手としての責任を持ちながら、それでもお二人が「最高!」と思える世界観を表現されている、クリエイションにもヴィジョンの体現にも妥協のないバランス感覚が大きな強みのひとつだなと感じました。

KAWAI:私たちはファッションブランドなので、そこを蔑ろにすることはできないんです。

杉田:「しがらみは無視しちゃおう」という自分自身の感覚に正直なブランド立ち上げの背景や、自分自身の身体そのものを表現するようなものづくりの姿勢そのものにも、共感したり勇気づけられる人は多いと思います。

HA:私たち自身は、今シーズンの製作を通じて「自分を自由じゃなくさせているもの」というストレスと向き合うことで、その解決の糸口が少し見えたような気がします。ジューキフの服が、着てくださる方にとってもそうしたきっかけになったら嬉しいです。

Imaged by 杉田聖司

JUUKIFF 2024年秋冬

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JUUKIFF 2024年秋冬コレクション

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編集者/フォトグラファー/「apartment」主宰

杉田聖司

Seiji Sugita

1999年生まれ。ファッションを中心に企画、インタビュー、シューティングなどを行う。2019年よりファッションマガジン「apartment」を主宰し、個々人の装いを起点とした雑誌発行やイベント制作などを継続中。

(編集:橋本知佳子)

◾️JUUKIFF
公式サイト
問い合わせ:03-5774-4001(ザ・ウォール)

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