台東デザイナーズビレッジ 村長 鈴木淳
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Fashion インタビュー・対談

15年で100組のクリエイターを育てた"デザビレ"の村長が、今教えたいこと

台東デザイナーズビレッジ 村長 鈴木淳
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 「台東デザイナーズビレッジ」——廃校になった小学校の校舎を活用し、クリエイターのインキュベーション施設として立ち上がってから15年。通称"デザビレ"で創立以来、若い起業家たちを指導してきたのがインキュベーションマネージャーの鈴木淳氏です。「村長」と呼ばれ、これまで約100組のクリエイターを育成支援。その手腕と功績が評価され、2019年の毎日ファッション大賞で「鯨岡阿美子賞」を受賞したということで、早速話を聞きに行ってきました。ちなみに、FASHIONSNAP.COMもデザビレ卒業企業なんです。

鈴木淳:株式会社ソーシャルデザイン研究所代表取締役。1990年鐘紡に入社し、カネボウファッション研究所勤務。1999年に独立しユニバーサルファッション協会を設立。2004年より台東区立の創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」のインキュベーションマネージャー(村長)を受託。2011年に地域イベント「モノマチ」をスタート。2015年「イッサイガッサイ東東京モノづくりHUB」立ち上げ。2019年 毎日ファッション大賞「鯨岡阿美子賞」を受賞。著書に「自分を動かすスイッチの入れ方」がある。

FASHIONSNP.COM(以下、F):鈴木村長、「鯨岡阿美子賞」の受賞おめでとうございます!

鈴木淳(以下、鈴木):ありがとうございます(笑)。

F:ファッション業界に貢献した方を表彰する賞ですね。受賞された感想はどうですか?

鈴木:光栄ですね。私が続けてきた創業支援というのは目立たない仕事なので、賞なんて想像していなくて。こういう仕事に価値を認めてもらえた事が、とても嬉しいです。

【ほかの受賞者は?】第37回毎日ファッション大賞 受賞者決定

F:これまでデザビレで創業支援してきたクリエイターは、100組を超えているとか。

鈴木:気がつけばという感じですね。

F:これまで苦労した事とか大変だった事とか失敗した事とか......を今回は聞いてみたいのですが。

鈴木:ありすぎてどこから話していいのか分からないですけど(笑)。

台東デザイナーズビレッジの玄関。旧小島小学校の名残が残る。

【デザビレとは?10周年のインタビュー】デザビレ村長 鈴木淳「趣味でモノを作る人にデザイナーが負けてしまう時代が来る」

 

「売れない作家が集まる学校」と呼ばれて

F:著書も読みましたが、最初デザビレは「売れない作家が集まる学校」と呼ばれていたとか。

注:著書=鈴木村長は今年、自著「自分を動かすスイッチの入れ方」をエイ出版社から出版した。

鈴木:スタートした時は家賃が安いことを売りにして入居者を集めていたんです。なので成長したい人ばかりではなく、安くアトリエを持ちたいだけの人もいて。アドバイスは聞かないし、トラブルを起こすし......思うように運営がいかなくて、着任してすぐに辞めたいと思いましたね(笑)。

F:ええ......(苦笑)。でも辞めなかったんですよね。

鈴木:それでは無責任ですし、やるからには「売れない作家の学校」ではなく人気クリエイターが集まる日本一の施設にしたいと、色々な改善に着手していったんです。「成長したい人が活用する場」と定義を変えて、運営が軌道に乗ってきたのは4年目くらい。今では成長意欲があり自立したい人が集まるようになって、随分と変わりましたよ。

F:確かに、デザビレ出身で活躍する人が増えている気がします。

鈴木:そういう卒業生の活躍を見て、口コミで広がっていったんですよね。それで入居希望者も増えて、今では倍率が平均で6倍強、年によっては10倍を超えるまでになりました。

注:デザビレの入居条件は、創業予定もしくは創業5年以内。入居期間は基本的に3年以内で、1年毎に更新審査がある。入居者は毎年募集しており、何度か応募して2年目3年目で受かる人もいる。

廊下にある水道場。館内には様々な共有スペースがある。

 

入居審査、受かるのはどんな人?

F:どんな人が入居審査に受かるのか知りたいです。

鈴木:きちんと自立して稼ぎたい、成長したいという人。そして目標に向かって努力はしてきているけれどもう一歩のところでその先に進めない、という支援が必要な人ですかね。好きなものだけ作っていれば幸せ、ビジネスは考えないという人はご遠慮願っています。

F:これからどんな人に入居してもらいたい、とかはありますか?

鈴木:応募はものづくり系クリエイターが多いんですけど、個人的には「将来の可能性に賭けたい」と思わせる人かな。なので新しい領域でクリエイティブなビジネスをやろうとしているベンチャーにも入居してほしいですね。

F:なるほど。ファッションビジネスの形も色々と変化していますからね。

209号室に入居しているアクセサリーブランド「ユリ ミヤタ(YURI MIYATA)」のアトリエ
各部屋は小学校の教室をリノベーションしており、黒板が備え付けられている。

小売店やメディアに頼る時代は終わった

F:村長から見て、この15年で変わったことは?

鈴木:例えば初期に入居したクリエイターは、セレクトショップとか卸先を広げてビジネスを大きくすることで、成長の手応えを感じることができていたんです。ところが次の世代になると、ちょうど2011年の東日本大震災の前くらいからかな、小売や消費の状況が変わって卸先がどんどん減っていって、小売店への卸で稼ぐことが難しくなってしまったんです。

F:小売だけではなくて、産業全体がシュリンクしていますよね。

鈴木:でも最近になると、小売店には頼らずに自力でファンを育ててお客さんを掴もうという考え方の人も多くなっているんですよ。ブランドのコンセプトや、個々人の力量が試されるような時代になったんだと思います。以前とは違う形なんですけど、直接顧客と繋がれるようになったことで、またクリエイターが活躍できる状況になりつつある過渡期なのかなと。

F:それは希望が持てそうです。売買のプラットフォームや選択肢も増えていますし。

鈴木:小売店やメディアに頼るという時代は終わったのかも。その先の顧客を増やすこと、つまりファンを増やして育てることを第一に考えるべきなんです。

F:よく言っていますよね。「商品ではなくファンをつくる」と。

鈴木:このブランド、このクリエイターから買いたいというファンを増やせば、小売店でもECでも、またポップアップでも直接買ってもらうことができる。お店に頼るのではなくて、自分のファンを育てることで売り上げが伸びてくれるんです。

F:SNSというツールもあるし、ソーシャルコマースやD2C(Direct to Consumer)なども増えていますね。

鈴木:特に、小売のコミュニケーションの部分は見直されていくと感じています。人と人との関わりや、感情に訴えかけるとか。小売が交流拠点として機能するようになっていくと思います。

F:なるほど。例えば?

鈴木:ファッションデザイナーだったら、服を作るという価値だけではなくて、どんなメッセージを発信してコミュニティーを作るか。コミュニティーにいる人たちをどう楽しませるか、どうやってファン同士で繋がっていくかとか、新しい視点が必要になってきていると思いますね。

F:確かに最近のストリートブランドは、まさにコミュニティー形成といった感じがします。

鈴木:小売がコミュニティー拠点になれば、ブランドは自ずとメディア化するんです。その発信の質や量でファンを獲得したところがビジネス的に伸びていく。そういう時代に入っているのかなと。

102号室「タクター(tactor)」のアトリエ

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