
Image by: FASHIONSNAP
運動会のリレーや駅伝大会、持久走。日本で生まれ育った私たちにとって、走ることは最も身近なスポーツと言える。しかし、その中で「走ることが好き」な人はどれほどいるだろうか。陸上競技と地続きのランニングは、単純な速さを競うイメージから苦手意識を持つ人も少なくないが、そんな普遍的なスポーツに今、変化が訪れている。
ADVERTISING
皇居や代々木公園を訪れると、数十人単位で肩を並べて走るランナーたちに出会う。彼らは思い思いの服に身を包み、走りながら会話や景色を楽しむ。スピードよりもコミュニケーションを重視する彼らにとって、走ることはあくまでツールの一つだ。そうした新たなランニング需要に応えるのが、フランス・リヨン発のランニングコンセプトショップ「ディスタンス(DISTANCE)」だ。単に製品を販売するだけでなく、コミュニティやブランドとのタッグによるランニングイベントなどを通じて、走ることの楽しさやつながりを提案してきた。2018年の創業後、パリ、ケニア、コペンハーゲンへと出店を拡大し、今回アジア初進出の地に選んだのが東京・渋谷。3月26日にグランドオープンを果たし、今月末には大阪への出店も予定していることから、日本をアジア戦略の重要拠点と位置づけていることがうかがえる。
フランス・リヨンで生まれ育った創業者、ギョーム・ポンティエ(Guillaume Pontier)とザビエ・タハール(Xavier Tahar)は、趣味として親しんできたランニングをめぐる小売業界に「何かが足りない」と感じ、リヨンにショップをオープンしたところからキャリアをスタートさせた。「クールなデザインと顧客とのコミュニケーションを取り入れながら、2人なら新しいことができると考えた」。そう語る2人に、日本市場のポテンシャルと、一種の“ブーム”ともなりつつあるランニングシーンのこれからについて聞いた。

東京上陸に伴い来日したディスタンス創業者のギョーム・ポンティエ(右)とザビエ・タハール(左)
日本のセレクトショップ文化にマッチするキュレーション
──今回、アジア初進出の地として東京を選んだ理由は?
ザビエ・タハール(以下、ザビエ):日本には駅伝をはじめとした部活文化が深く浸透していて、若くエネルギッシュなランナーがたくさんいます。私たちがヨーロッパで育んできたランニングカルチャーとも通じる土壌があり、それを根づかせるのにふさわしい場所だと感じたことが大きな理由です。
ギョーム・ポンティエ(以下、ギョーム):ディスタンスのコンセプトは「キュレーション」です。日本にはセレクトショップの文化が定着していて、多くの選択肢を揃える量販店と同じくらい、厳選したものを提供する専門店も支持されていますよね。無数にあるランニングギアの中から、“ディスタンスらしい”トーンに沿ってセレクトしたものを提案するスタイルは、日本の顧客にも受け入れてもらえると考えたんです。
──店舗設計にあたり、欧州の店舗と共通する点や、あえて差別化した点があれば教えてください。
ギョーム:全店舗に共通している点として、ディスタンスのオリジナルアイテムを一つのエリアに集約し、店内をシューズ、アパレル、オリジナルアイテムの3つの構成で見せています。また、“ランニングらしさ”が感じられるように、ゼッケンやフラッグといった装飾を取り入れているのも共通しています。






ディスタンス 東京の内観
ギョーム:東京店ならではの試みとしては、古着文化が息づく原宿エリアということもあり、ランニングにまつわるヴィンテージTシャツの販売を始めました。「ゴールドウイン(Goldwin)」の取り扱いも東京限定です。

東京限定で販売しているヴィンテージTシャツ
──日本企業との合弁会社を設立して進出に至りましたが、その狙いは?
ザビエ:日本のカルチャーや市場の特性をきちんと理解したうえでビジネスを展開したかったからです。ヨーロッパと同じ感覚で進めるのではなく、日本ならではの消費習慣や店舗運営、財務への理解を深めるためにも、日本企業のサポートが必要でした。
──インバウンド客もターゲットにしているのでしょうか。
ギョーム:特定の年齢層や国籍に絞るのではなく、ディスタンスに興味を持ってくれるすべての人を対象にしています。東京に店を構えるからといって日本国内の顧客だけに向けているわけではなく、すでにディスタンスに親しみのある欧州からの旅行者も視野に入れています。


人と人がつながる“文化としてのランニング”を体現
──ファッションにはセレクトショップ文化がありますが、ランニングギアはスポーツ量販店で購入する人が大多数です。そうした市場の中で、ディスタンスはどのように存在感を示していきますか?
ザビエ:私たちが目指しているのは、より特別な体験を求めるランナーに向けた提案です。単に一般的なランニング用品を揃える場ではなく、ここでしか手に入らないオリジナルアイテムや、スタッフの知見を生かした栄養面のアドバイスなどを通じて、一人ひとりの関心やこだわりに応えられる場でありたいと考えています。

ギョーム:ディスタンスは、ランニングを愛する人たちが自然と集まれる場所でありたいと思っています。量販店と同じ役割を担うのではなく、ランニングへの情熱やカルチャーへの共感を軸に、人と人とがつながる場をつくっていきたい。その積み重ねによって、独自の価値観を生み出してきました。
──東京には、「タイクーンランニング(TYCOON running)」や「ダウンビートランニング(downbeat RUNNING)」といったランニングコンセプトショップがありますが、競合として意識していますか?
ザビエ:他のショップには敬意を持っていますが、競合として強く意識することはありません。私たちはランニングを単なるスポーツではなく、ファッションやコミュニティを含めたカルチャーとして捉えています。そうした姿勢は店舗づくりにも表れていて、ローカルのショップやカフェ、コミュニティとのつながりも大切にしています。
ギョーム:かつては競技性やパフォーマンスが中心だったランニングも、今では人とのつながりや、自分らしいスタイルを楽しむことまで含めた文化になりつつあります。ディスタンスは、そうした“文化としてのランニング”をけん引する存在でありたいと考えています。

ギョームのキャップは「ナイキ(NIKE)」のヴィンテージ物。ザビエはディスタンスのオリジナルキャップを着用。
“シュプリーム的アプローチ”で世界へ
──近年、ランニングはトレンドとなり、一種のブーム的な盛り上がりを見せています。
ザビエ:世界的な流れの中で、日本ではちょうどランニングが盛り上がり始めたタイミングで出店することができました。一時的なブームという側面はあるにせよ、ランニングは人類が長年にわたって楽しんできたスポーツです。今後もより広がっていくでしょうし、実際にレースやイベントも増えています。この流れは、まだ始まったばかりだと感じています。

──大阪への出店に加え、福岡や名古屋への展開も検討しているとのことですが、拡大を進める中で、ブランドの独自性や魅力をどのように保っていく考えですか。
ザビエ:今は日本国内だけでなく、ニューヨークやロンドン、ミラノなどの主要都市でのローンチも同時に進めていて、店舗拡大においては「シュプリーム(Supreme)」のアプローチを参考にしています。シュプリームは世界の主要都市に点在し、日本国内にも複数店舗を展開していますが、ブランド力を失っていませんよね。店舗数が増えてもディスタンスらしいユニークさは持ち続けたいと考えているので、各店舗で異なるアプローチを取ることは心がけています。
ギョーム:店舗数を増やすことは「同じ店を複製すること」とイコールではありません。私たちは新しい土地に店舗をオープンするとき、必ずその街ならではの独自性を取り入れるようにしています。同じ日本だとしても、渋谷と大阪では内装イメージを変えますし、常に新しい異なる経験ができるよう工夫するつもりです。渋谷店は木を基調とした内装になっていますが、大阪はもっと無機質なものになるかもしれない。各店で新しい体験をしていただけるように、コンセプトは毎回変えていきます。

──最後に、ディスタンスが最も大切にしていることを教えてください。
ギョーム:何よりも大切にしているのは、ランニングへの情熱を持ち続けることです。顧客にとって価値があり、意味のあるブランドであるためには、まず自分たち自身がそのカルチャーを心から愛している必要があると思っています。
ザビエ:私たちは、ランニングがトレンドになる前から走っていました。だからこそ、無理に何かを変えるのではなく、自分たちが本当に好きなものを、そのまま誠実に届けていきたい。これまでも何か特別なことをしてきたわけではありません。ただ「好き」という純粋な原動力が、ディスタンスというブランドの核を形作っています。

最終更新日:
■ディスタンス 東京
所在地:東京都渋⾕区神宮前6丁⽬18-12
営業時間:11:00〜20:00
電話番号:03-6419-7507
不定休
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【インタビュー・対談】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング

ダイソンが初のポータブルハンディファンを発売 最大風速25m/秒を実現
















