動物を殺していると勘違いしていないか?有名ブランドが頼るタンナーが語ったサステナブルなレザーの話
左からエルヴェ化成株式会社 代表取締役社長 石本晋也、株式会社アーバンリサーチ URBSブランドディレクター 村手謙介、 株式会社三昌 代表取締役社長 福本真也
左からエルヴェ化成株式会社 代表取締役社長 石本晋也、株式会社アーバンリサーチ URBSブランドディレクター 村手謙介、 株式会社三昌 代表取締役社長 福本真也
動物を殺していると勘違いしていないか?有名ブランドが頼るタンナーが語ったサステナブルなレザーの話
左からエルヴェ化成株式会社 代表取締役社長 石本晋也、株式会社アーバンリサーチ URBSブランドディレクター 村手謙介、 株式会社三昌 代表取締役社長 福本真也
国内の天然皮革(リアルレザー)関連産業にまつわる生産地を巡り、業界を牽引する産地から発信されるサステナブルアクションとクラフトマンシップに迫る連載の第2回。今回は、兵庫県姫路市とたつの市にフォーカス。
サステナブル、 エシカル、 SDGsといった言葉が世間に浸透してから数年が経ち、環境問題への意識が高まる中、数々のブランドや大手商社が「エコレザー」や「フェイクレザー」「ヴィーガンレザー」など、果物や野菜の皮を用いた“レザー”が市場に出回り始めた。一方で、リアルレザーと呼ばれている天然皮革は「動物を殺生している」「有害物質や大量の水を使用している」など、エコと対極にあるかのような言説を見かけることもしばしば。しかし、それはあまりに安直な解釈だ。少なくとも、国内の皮革産業を牽引する兵庫県姫路市とたつの市でなめされる皮は、食肉や乳製品の原料を得るために飼育された牛の副産物であり、天然皮革の材料を得るために殺生はしていない。生産水も淡水をうまく利用し、適切に排水している。
有名ブランドがその良質な天然皮革を求めて訪れる、エルヴェ化成の石本晋也と三昌の福本真也らのタンナーと、そして川下である「アーバンリサーチ(URBAN RESEARCH)」URBSブランドディレクター 村手謙介が、鼎談した。
目次
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なぜ、姫路市・たつの市はタンナーの地になったのか
ー原皮から革になめす作業は、国内ではいつから行われていたんでしょうか?
三昌・福本真也(以下、福本):諸説ありますが、発祥とされているのは弥生時代。元々は、中国大陸から皮をなめす技術が伝わってきたと聞いています。盛んになったのは明治時代。なぜなら、戦争による軍事用品の需要が高まったから。天然皮革の丈夫さは、靴や鞄などに広く用いられました。
エルヴェ化成・石本晋也(以下、石本):ドイツから日本に「クロムなめし」という手法が伝わったのもこの頃。現在、世界的にも主流となっているなめし方です。それまで広く用いられていた「タンニンなめし」や「油なめし」「白なめし」よりも生産効率がよかったことも、急激に天然皮革の需要が高まった要因といわれています。
ーでは何故、姫路市とたつの市は天然皮革の生産地として栄えたんでしょうか?
石本:関西地区には牛を育てるところが多かったこと、氾濫原であったこと、皮を乾かしやすい大きな石があったこと、川の水が皮革を作るのに適した水質だったこと、瀬戸内海が近く、皮をなめすために大量に使用する良い塩が取れることなど、様々な要因が積み重なってのことだったようです。
福本:ただ一説には、当時のタンナーは氾濫原に住まざるを得なかった状況があったとも聞いています。
タンナーが淘汰された時代、根深い宗教との関係
ー誰も住まないようなところに追いやられた歴史がある、と。
福本:その通りです。天然皮革の歴史を紐解く時に重要になってくるのは、日本が飛鳥時代から明治初期まで肉食を禁止していたことです。天武天皇が打ち出した「肉食禁止令」は、肉食をすることは仏教で禁じている殺生を犯す行為であり、血に汚れた忌み嫌うべき穢れた行為であるという考えが元になっています。つまり、肉食禁止=動物の皮をなめすタンナーも邪悪である、という差別的な考えが根強くあった。当時、書かれた史料にもタンナーに対する嫌悪感ははっきりと綴られています。
村手:天然皮革を作る時に生まれる「にかわ」※が無ければ、史料を書くために用いられた墨汁も作れないと考えると皮肉的ですらありますね。
※にかわ:天然皮革を作る時に生まれる副産物。「ニベ」(皮の裏側)にあるコラーゲン層。にかわは、仏像、バイオリン、墨汁、薬などにも用いられており、近代以降はゼラチンとして流通している。
石本:仏像にも、接着剤の役割としてにかわは用いられるんですよ。信仰の対象ですら、タンナーが作ったものを使っているということを当時どれほどの人が知っていたんでしょうね。
福本:今でこそタンナーに対する差別的な考えは無くなってはきましたが、それでも「汚い」「臭い」というイメージがまだまだあるように感じています。工場に足を運んだ人も、大抵「もっと臭くて汚いかと思っていました」と価値観が変わって帰っていくんですよね。
石本:天然皮革というものは、SDGsに反していないということも、その方向に向かって作っているということももっと訴えていきたいですよね。
天然皮革が一番サステナブルって気づいている?
ー姫路市やたつの市などの行政が、天然皮革産業のイメージ向上や環境改善に向けて取り組んでいることはありますか?
福本:一番わかりやすいのは、汚水前処理場が作られたことでしょうか。天然皮革工場の全ての水が集まって、一度荒濾しされてから浄水場へと運ばれます。
石本:天然皮革を作るためにはどうしても大量の淡水が必要です。具体的には原皮から革1kgを作るのにおよそ64~112kgの水が消費されます。排水には、水質汚濁法や都道府県条例などによって基準が定められており、全てのタンナーがクリアしています。使用する水の量も、各タンナーで工程改善や循環利用などで節水対策を行っているんです。
福本:私たちが使った排水は、汚水処理をされて海に流れていくんですが、最近はあまりにも排水が綺麗になりすぎて逆に魚や貝の収穫量が減った、という話も聞きます。
ータンナーとして取り組んでいる環境改善はなにかありますか?
村手:石本さんの「エルヴェ化成」は、DX化じゃないけど、公式サイトもすごくデザインが凝っているし、環境課題への取り組みも非常によくまとまっていますよね。「持続可能性やサステナブルというものを目標としている」というよりも「それらはすべて前提である」という信念を感じました。
石本:ありがとうございます。やっぱり「タンナーになってみようかな」と思ってもらうためには、労働環境の改善が必要不可欠です。そのためには「きつい」「汚い」「臭い」などのネガティブイメージを払拭する必要がある。そうすれば、会社やものづくりとしての存続価値はずっと維持できると思うんですよね。
ー石本さんは「タツノレザー」というNPO法人の代表も務めています。どのような活動をされているんですか?
石本:「天然皮革で利用される動物の多くは家畜の皮。食肉や乳製品の原料を得るために飼育された牛の副産物であり、天然皮革の材料を得るために殺生したりはしていない」ということを伝えるために、講演会を行ったりしています。
漠然としているので具体的な数字で説明しますね。国内で食肉として処理された牛は2019年で103万頭、 豚は1632万頭。もし、副産物として産出された皮を革にせずに全て破棄したら、その重量は東京スカイツリーの5倍にもなります。
村手:破棄するために焼却したとしても、大量にCO2が排出されてしまいますもんね。
ー食用の畜産牛の副産物である天然皮革ですが、条件を満たせずに破棄することはないんですか?
石本:ありますよ。例えば、原皮の毛を毟ってみたら傷だらけだったりする場合ですかね。そういったものは「レンダリング」と呼ばれている高熱で焼却する処理を行います。
福本:それが、家畜の飼料になるんですよ。それに「燃やす」というより「高熱で蒸す」という感じの処理なんです。
石本:天然皮革にするために刮ぎ落とす油分(コラーゲン)は、化粧品になったり、最近では医療用接着剤としても用いられています。
福本:今は、原皮の毛も「毟る」というよりは「溶かす」という感じなんですが、かつては毟った毛は綺麗に洗って乾かして、緩衝材として使われていました。
村手:本当に捨てるところが無いんですね。
石本:まさに僕が伝えたいのは「畜産牛は捨てるところがない」ということです。 地道な活動ですけど、子ども達にも知ってもらいたい。
土に埋めるとたった3ヶ月で土に還る天然皮革
ー福本さんは三昌で、「ゼオライトレザー」という土に埋めると3ヶ月で自然界に還る天然皮革を開発されたと聞きました。具体的にはどのようなものなのでしょうか?
福本:ゼオライトと呼ばれている、石灰岩から取られた鉱物を使ってなめした天然皮革です。タンニンや塩基性硫酸クロム鞣剤を使うよりも、バクテリアが食べやすくなるんです。だから、早く土に還る。
石本:今、一般的に使われている「クロムなめし」だったら、土に還るのは30年〜50年くらいかかる。「タンニンなめし」でも10年はかかる。
福本:ただ、難しいのはゼオライトだけでなめしたら、味が出づらいことで。なめしが若くて、固さが残るんですよ。ある程度、タンニンを入れた方が柔らかくはなるんですけど、タンニンを入れれば入れるほど成分分解は遅くなる。今後も、試験所に協力してもらって、タンニンなめしとできるだけ風合いを近づけるために研究をしないといけない。
ー何故、ゼオライトレザーを作ろうと思ったんですか?
福本:環境やサステナブルのことを理解するよりも前に「ヨーロッパではこういうことが流行っていて、こういう時代になってくるから、もっと積極的に取り組んでいきましょう」という話をちらほら聞いていたんです。正直にお答えすると、僕としてはもっと天然皮革を売りたい。「売れるためには何をすべきか」を考えたら、自然と取り組んでいました。すでに、SDGsやサステナブルな視点は企業にとって当たり前の話になっている。それをしないと、生きていかれへんような時代になってきたってだけ。ね、かっこいい理由ではないでしょ(笑)?
村手:天然皮革以外にも、溶けるミシン糸なども増えてきましたよね。天然皮革だけを買うことは稀で、やっぱり製品にはチャックや靴底、金具なども付いていることがほとんどです。だからこそ、様々な境界が環境に良いことを考え始めているのは良いことだな、と。
タンナーは合成皮革をどう捉えているか
ー実際にタンナー工場を巡ってみて「天然皮革はあくまで畜産の副産物であり、本来捨てるべきところを再利用している非常にエコな素材である」ということがわかりました。一方で「天然皮革=生き物を殺すからサステナブルではない」「ビニールやヴィーガンレザーなどの合成皮革=生き物を殺さないからサステナブルである」という安直な理解もしばしば見受けられます。
石本:合成皮革を手掛ける彼らには彼らなりの事情があるだろうし、企業努力もしているから否定はしないんですけど「レザー」という言葉を使われると、正直モヤっとはしてしまいますよね。今の時代、肉に変わるエネルギー源は少ないと思うから、ありがたい気持ちを持って動物の命をいただきたいし、その代わり「廃棄をしない」という形で環境や動物に優しくしていきたいと、僕は考えています。
福本:僕もほとんど石本さんと同じ気持ちです。「動物を殺してはいけない」という考えは一つの考え方だし、本当に動物なしで生活していくんだったらそれもありです。個人的には、人間を含める動物が生まれてから死ぬまでの間に、二酸化炭素を出したりと様々な面で環境に負荷を掛けます。天然皮革と合皮皮革を具体的な数値で比較していないからわからないけど、皮が革になる過程と、合成皮革では、かかっている環境負荷はそんなに変わらないと思うんです。
石本:少しおかしな例え話ですけど、僕にはどうしても、「果汁2%のオレンジジュースを100%濃縮オレンジジュースです」と言っているように見えてしまう。
ー合成皮革を謳っているのは比較的大企業が多いですよね。
石本:プロモーションの力もあると思うんですよ。やっぱり田舎のタンナーよりも大企業の方が訴求力はありますからね。世間が納得するようにお金もたくさん掛けられるけど、天然皮革産業にはそんな体力はない。
福本:僕らはタンナーなので、みかんやりんごの皮をどんなになめしても商品にならないことを知っているんです。合成皮革は、天然皮革を作るための工程を90%踏襲しているはずです。
村手:聞いた話ですけど、合成皮革に舵を切ったようにみえたラグジュアリーブランドも、近年はまた天然皮革を使っているところが多いそうです。ファッション業界だけではなく、自動車のシートや飛行機のエコノミークラスの座席も近年は天然皮革を用いている、と。理由は簡単で、長期的なコストが合成皮革よりも掛からないから。初期投資は天然皮革の方がかかりますが、なめしの技術が向上したこともあり、張り替える回数が少なく済むそうです。
福本:加工コストも、合成皮革の方がかかりますしね。
石本:皮からなめした革は、仮に売れなかったとしても在庫として長期間保管しておくことができるくらい劣化に強く、丈夫です。捨てずに保管できるというのも、合成皮革にはない魅力だと思います。そうは言っても、基本的には受注生産なので余ることは早々ないですけどね。
福本:天然皮革産業は、更に技術力を磨いて、環境に対する取り組みにも意識して「天然皮革の方が環境に良いんだよ」ということを具体的な数字を明記して実証すれば、もっと発展すると思うんですよね。
害獣だってサステナブル、傷モノが売れる時代になるために
ー現在「皮革」と聞いて思い浮かぶのは大きく4つのジャンルに分けることができると思います。まずはビニール性の「合皮」、きのこやフルーツの皮などを用いた「ヴィーガンレザー」、乳牛や豚などの「畜産」、そして「害獣」です。害獣を用いた天然皮革についてはどのように考えていますか?
福本:害獣も「動物を殺める」という意味では賛否両論があると思います。でも、人間が暮らす街を荒らしてしまう害獣を撃つ猟師がいて、彼らも殺めてしまった命は食用肉として解体します。解体後に余るのが原皮です。
村手:つまり畜産と同じく、いただいた命を余るところなく用いている。エコな素材であることには変わりがない、と。
石本:その通りです。ただ、害獣は野生の動物なので傷が多い。それが良さでもあるんですが、購買には繋がりづらいのも事実です。
福本:だからこそ、村手さんのような小売の方にお願いしたいことがあるんです。例えば、1年間で10万頭の牛が食肉として出荷され、 約9万頭分が天然皮革として製品化されます。
村手:約1万頭が、傷などの理由から商品価値が無いと判断され、飼料に充てられているんですね。
福本:でも、実は型押しをしたり、磨いたりして加工を加えれば使えるものばかりなんです。今の市場は、綺麗なものを売る方向にしか基本的にはできていない。傷モノを動物の味として「これはお肉としてみんなでいただいた皮でできています。僕たちは生きるためにこの動物を殺したんだから、これを最後まで大事に使っていこうよ。それこそがSDGsで物を余さずにいられることなんじゃないか」という販売をしたいんです。
村手:それに共感してくれるお客様もたくさんいると思います。傷モノは裏を返せば一点ものでもあります。今提案してくれたお話は、消費循環も良くなると思うし、無駄もない。その分、コストも下げることができますよね。一方で、たくさんのアイテムを販売するデパートや百貨店では難しいのも事実。だから、僕たちのようなセレクトショップや、顔が見える個人経営のお店など、接客で商品を売るような会社は取り組んでいいなと考えています。
ーなぜ百貨店では難しいんでしょうか。
石本:畜産牛のほうが傷が少ないのはもちろんですが、お肉としての出荷頭数も決まっているので、決まった量の原皮を仕入れやすいんです。タンナーにとっては、作りやすく、生産に乗せやすい。一方害獣は神出鬼没でいつ原皮が手に入るかはわからない。そうなると、一定の量が必要な百貨店では難しい。
村手:だから松山ケンイチ※さんみたいに、自分で撃って、革製品にして、売るという人も出てくるんですよね。
※2022年に獣皮のアップサイクルブランド「momiji」をローンチした。
福本:結局、SDGsは会社として継続できなかったからそれが1番ダメだと思うんです。継続するためにはどうすればいいかを考えることが、一番環境に良いことだったりするんですよね。
ー川下と川上が直接コミュニケーションを取れることが、足がかりになるように思いました。
村手:そうですね。冒頭にも少し話しましたが、僕らが川上に赴く理由はそこにあると思うんです。それが川下にいる僕らができるSDGsの一つの方向性だな、と。もっと言えば、世間に「サステナブル」という言葉が広がったことによって、お客様自身の意識も変わってきているんです。
ー川下や川上がSDGsを目的ではなく前提として始めたように、世の中にとっても当たり前のものになりつつある、と。
村手:浸透してきたかな、と。でも、それが実際に売れるものかと問われるとそうでは無い現状があります。「とても高品質なアイテムです」と伝えても、お客様が「別に高品質なものは欲しくない、もっとトレンドに沿った安いものが欲しい」と言われたら売れないのが実情です。ただ、僕らの仕事は「お客様が欲しいもの、アイデアをいかに出せるか」という結論に帰着します。アイデアやトレンドなどのエッセンスをどれだけ混ぜられるかにかかっているのかな、と。
福本:是非、「アーバンリサーチ」が取り組んでいる、JAPAN MADE PROJECT※で姫路市とたつの市をフィーチャーしてください。
※JAPAN MADE PROJECT:地域活性化を目的に、日本各地の企業やクリエイターによって創られるローカルコミュニティと共に、その土地の魅力を再考し発信するプロダクトを展開するプロジェクト。
村手:僕らの本社は大阪にあるので、とても親和性を感じています。それに、このプロジェクトの意義は、売れる/売れないではなく継続的に取り組んで、世の中にその考えを浸透させていくことにもあるので。とても時間が掛かることではあるんですけどね。
石本:僕がずっと思っていることがあって。それは、鞄や財布、ジャケット、ソファーなどの元来天然皮革が使われ続けているもの以外で、天然皮革が普及していかないかな、と。美術作品の素材や、お菓子のパッケージとかにも使われるようになったらいいですよね。
業界がサボった分、今、頑張らないと次の30年は持続しない
ー最後に、皮革産業が抱えている問題はありますか?
石本:たくさんあるなあ(笑)。
福本:一言で言えば、儲かっていない。なぜ、儲からないかは色々理由があるけど、一番は皮革業界が儲かっていた時に何も努力をしなかったから。
ー努力、というと?
福本:儲かっている時は人間、楽をしてしまうんです。努力をしなければもちろん利益も落ちます。そうしたら海外の安くて高品質なタンナーに太刀打ちできなくなってしまった。利益が下がれば、どんどん人材も流出する。30〜40年前はもっと皮革業界にも人材がいたんですよ。
村手:皮革産業というより、アパレル業界全体に言えることですね。
石本:儲からないから人材投資が余計に困難というのが一番の問題。数十億の規模だと組織が編成できないんですよね。タンナーや職人はやはり朴訥とした怖いイメージがあるだろうし、数年前までは「タンナーもファッション業界に従事している人なんだ」「有名ブランドに素材を提供しているなんて、かっこいい」と入社してくれる人も多かったんですけど、これからはそうじゃない。
村手:ファッション業界=かっこいいというイメージを持っている若者は減りましたよね。むしろ重労働で、立ち仕事だし、お給料がいいわけでも無い、と。でも僕は、エルヴェ化成と三昌に来て、一番驚いたことは想像よりも若い方が働いていたことでした。とりあえず作っておけば売れていた時代とはもう違います。売るためにはアイデアが必要で、そのアイデアは時代に即した人たちから生まれていくと思うんです。だから、希望を感じましたよ。
ー課題解決向けてなにかヴィジョンはありますか?
村手:受け身すぎるかもしれませんが、ここ数年は「機能素材」がファッション業界ではキーワードになって久しいです。その反動で、天然素材が見直される時が再び訪れるんじゃないかな、と。その時が、僕らの頑張る時なんだと思います。
石本:その時が訪れた時、天然皮革の魅力や、天然皮革を取るために動物を殺していないことを伝えられるように、体力と施策を今のうちに考えておきたいですよね。
福本:天然皮革製品に対する間違ったイメージを払拭することが、今の僕らにできること。
ー次の20年後のために今も頑張らないとですね。
福本:本当にそうやね。
石本:業界の継続のために、僕らが今、頑張らんとあかんね。
photographer:MURAMATSU MASAHIRO
text & edit:ASUKA FURUKATA (FASHIONSNAP)
■エルヴェ化成
1955年に創業したタンナー。大量のロットをシステマチックにこなしており、問屋を通して国内外多くのブランドへの革の提供を行っている。石本晋也代表取締役社長は、SDGsやサステナビリティが注目される以前から、汚水処理の重要性や副産物であることに着目。服飾専門学校や地元小学校などで公演を行っている。
公式サイト
■三昌
1971年に創業したタンナー。スペースシップをモチーフにした巨大なギャラリーも所有しており、誰でも天然皮革を購入する事ができる。「製品の製造・輸送・販売・再利用」までの一連のライフサイクルの中で、環境負荷を減らすことに配慮。環境面への影響が少ないと認められた天然皮革や、土に還るゼオライトレザーなどを積極的に手掛けており、サステナビリティへの意識も高い。
公式サイト
■ファッションワールド東京・国際サステナブルファッションEXPO秋展
日本の皮革や皮革製品を集めた16社の展示ブースを出展。
会期:2023年10⽉10⽇(⽕)〜10月12日(⽊)
会場:東京ビッグサイト 東展示棟
所在地:東京都江東区有明3-11-1 ブースNo. A21-6, A22-6
公式サイト
■PITTI IMMAGINE UOMO
海外販路拡大を目指す国内の靴のブランドが出展する。
会期:2024年1月9日(火)〜1月12日(金)
会場:Fortezza da Basso V.le Filippo Strozzi, 1, 50129 Firenze FI, ITALY
出展ブランド:REGAL Shoe&co、H.KATSUKAWA、brightway、NUMERO UNO
公式サイト
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