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10月15日から17日までの3日間開催された、日本のサステナブル製品が集まる国際見本市「ファッションワールド東京 国際サステナブルファッションEXPO」(以下、国際サステナブルファッションEXPO)。FASHIONSNAPでは、国内皮革産業の実態を探るため、俳優の長濱ねるさんとともに会場を訪問しました。今回は、国内外から集まった多数の出展企業の中から、ジャパンレザーショールームに出展した3社をピックアップ! 日本独自の発展を遂げてきた皮革産業の第一線で活躍する各企業の展示を通して、その魅力を紐解きます。
■国際サステナブルファッションEXPOとは?
SDGsやエシカル、脱炭素、リサイクル、アニマルフリーといったサステナビリティを考慮したファッション製品や素材が世界中から集結する、日本最大規模のサステナブル製品と素材の専門展。国内外のバイヤーやファッション業界関係者の交流の場として毎年開催されています。
目次
「革」「レザー」と呼べる製品は、動物由来に限定、JISの新規定をおさらい
出展企業を紹介する前に、まずはレザーにまつわる新知識をおさらい! 今年3月、日本産業規格(JIS)が発表した新規定では、動物由来の素材のみを「革」「レザー」と呼ぶよう定められました。この規定は、植物由来や石油由来の素材が「○○レザー」と表示されることで消費者が本革と誤認する事態を防ぐために制定されました。
新規定では、アップル、キノコ、サボテンといった植物由来の素材に「レザー」という表現を使うことがNGに。「フェイクレザー」といった表現も不適切とし、樹脂などを革の見た目に似せたものは「合成皮革」「人工皮革」と表記されるようになりました。
これを踏まえて、今回フォーカスする3社が日本産の高品質な「革」を用いて、どのようにサステナブルな取り組みを進めているのかを詳しくご紹介します。
次世代の職人とともに前進を続ける「デコルテ」
まず訪れたのが、浅草に拠点を置くシューメーカー「デコルテ」のブース。デコルテは、「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」などの大手セレクトショップのOEMを通して培った知見をもとに、2021年にオリジナルシューズブランド「ジュトメンヌ(Je t'emmène)」を立ち上げ。創業の地である浅草で、ファッション感度の高い若手の職人を育成しながら、“今までにない”靴づくりを行っています。今回の見本市では、ジュトメンヌの定番シューズを中心に展示しました。
デコルテ 田中佳李取締役(以下、田中取締役):ジュトメンヌのシューズは、シンプルな見た目ですが、中敷をアッパーに縫い付ける「ボロネーゼ製法」と呼ばれる特殊な製法を採用しています。この製法にすることで「中底」と呼ばれる固い板を入れる必要がなくなるので、足の返りが良く歩きやすくなります。
長濱ねる(以下、長濱):中敷が一体になっていると、靴の中で中敷がずれる心配もないですね。
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長濱:ちなみに、ブランド名にはどんな思いが込められているんですか?
田中取締役:ジュトメンヌは、フランス語で「連れて行ってあげる」という意味で「素敵な靴が、あなたを素敵なところに連れて行ってくれる」というフランスのことわざから命名しました。ブランド設立時はコロナ禍で思うように外出ができなかったので、「外出ができるようになったら、ジュトメンヌの靴を通して色々なところに連れて行ってあげたい」という意味を込めて名付けました。とにかく履き心地にこだわっているので、長濱さんも是非履いてみてください。
長濱:柔らかい!革じゃないみたい。靴擦れもしづらそうです。
田中取締役:つま先やかかとに硬い芯を入れていないので、靴擦れはしません。履き心地はもちろん、コンパクトに折りたためるので旅行にもおすすめです。
長濱:仕事で飛行機に乗る際、靴を一足スーツケースに入れていくかどうかいつも悩むんですよね。レザーシューズは型崩れがしやすくて諦めることが多いので、折りたためるのは嬉しいです!
田中取締役:型崩れの心配がなく、袋もついているので、飛行機移動に持ってこいですよ。撥水の革を使っているので、雨でも平気です。
長濱:機能性はもちろんですが、デザインもシンプルでかわいいです。デコルテには、若い世代の職人さんが多いんですよね。
田中取締役:はい。革靴業界では今、職人の高齢化が大きな課題なので、業界自体を次世代に残していくためにも、なるべく若い職人を積極的に採用しています。
長濱:業界全体のことまで考えて、技術を繋いでいるんですね。
田中取締役:私たちだけが生き残っても意味がないですし、業界全体のことを考えてやっていかないと、結果的に生き残れないと思うので、広い目で見るようにしています。また、あくまでもファッションの靴を作っているので、デザイン性を担保するためにも、若者の感覚を大事にしたいという思いもあります。
長濱:本当の意味で「サステナブル」な取り組みですね。
■デコルテ
デコルテは、1983年に東京・浅草で創業したシューメーカー。アイテムは全て、職人が自社工場で製作。設立当初から40年以上にわたって、さまざまなアパレルブランドやセレクトショップ、百貨店とのOEM、ODMによる紳士・婦人靴を展開し続けています。
2021年には、コロナ禍をきっかけにオリジナルブランド「ジュトメンヌ(Je t'emmène)」をスタート。独自の製法によって、足への負担の少ない柔らかい履き心地を実現しています。シューズはすべて完全受注生産のため、余剰在庫を作らないサステナブルなものづくりも魅力の一つ。
公式サイト
【PR】国内の天然皮革(リアルレザー)関連産業にまつわる生産地を巡り 〜東京都・浅草 編〜
長濱ねると訪ねる“革靴の名産地”浅草、これからはサステナブルな素材としてリアルレザーを選択してみよう
“害獣”のジビエレザーを通して環境問題にメスを入れる「オールマイティ」
続いて訪れたのは、兵庫県姫路市のタンナー「オールマイティ」の展示ブース。オールマイティの強みは、“害獣”とされる鹿やイノシシなどの革を活用したジビエレザー。さまざまな手法で染めや装飾を施した多種多様なレザーを揃えます。
長濱:ジビエレザーは、どういった点がサステナブルなのでしょうか?
オールマイティ 水瀬大輝代表(以下、水瀬代表):ジビエレザーとは、農家を荒らす害獣(鹿や猪)の増加が深刻化する中、駆除された害獣の革が産業廃棄物として燃やして廃棄されてしまうのは勿体無いという考えから、生産されるようになりました。燃やして廃棄するとCO2が出ますが、鞣しでは火を使わないので、CO2の排出量をぐっと抑えることができます。そういった観点からも、ゴミとして燃やして廃棄するよりも、革製品として価値があるものに再利用をすることで命を最後まで無駄にしないという考えから取り組んでいます。
長濱:なるほど。どれも、傷がそのままデザインに生かされているんですね。これは金継ぎですか?
水瀬代表:はい。ジビエレザーは傷やシミがあるのが特性で、それが野生動物として生きた証でもあるんですが、そのままでは商品として受け入れてもらえないこともあって。傷の部分に金継ぎを施したり、箔を重ねることで、デザインとして捉えられるように工夫しています。
長濱:絞り染めも取り入れているんですね。
水瀬代表:実はどんな動物の皮も、毛皮を剥ぐと全て真っ白なんです。そこから、お客様の要望の合わせて、色味や、柔らかさなどの質感を作っています。藍染を取り入れたレザーもありますよ。
長濱:傷を通してその動物の生きたストーリーに感化されて購入することで、より愛着が沸きそうですね。
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水瀬代表:ジビエレザーは、日本では年々盛んになりつつありますが、ヨーロッパでは、まだまだ受け入れられていないのが現状です。以前、フランスの展示会に出展した際にも、傷が受け入れられず、審査が通りませんでした。「もっと綺麗な革を出してほしい」と言われてしまって。
長濱:この傷や独特な風合いこそ、味があって素敵だと感じますが、国によって受け入れ方は異なるんですね。
水瀬代表:オールマイティとしては、世界のお客様に喜んでほしいという思いがあるので、文化的な溝を埋めていくことが課題ですね。そのためにも、デザイナーやクリエイターに革を直接目で見て触れていただいて、一緒にオリジナルのレザーを作り上げています。今後もジビエレザーの魅力を発信し、ゆくゆくは色々な国や地域で受け入れられるようになりたいです。
■オールマイティ
オールマイティは、1912年に姫路市で創業したタンナー。牛革や羊革に加え、ジビエ革などを取り扱っています。「革をもっと自由に」「世界のお客様に喜んでもらえる革作り」「常に新しい革を作る」という理念をもとに、デザイナーやクリエイターのイメージを形にするオーダーメイドの革作りを行っています。
公式サイト
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動物を殺していると勘違いしていないか?有名ブランドが頼るタンナーが語ったサステナブルなレザーの話
日本の伝統工芸・藍染の可能性を未来へと紡ぐ「絹や」
最後に訪れたのが、天然藍の染色技法を用いたものづくりを行う「絹や」。100年以上の歴史を持つ同社ならではの美しい藍染で染め上げたレザーは圧巻です。ブースでは、天然染色の藍色の小物やバッグ、マテリアルを展示しました。
長濱:天然染料の藍染でも、こんなに綺麗に染まるんですね。発色の美しさにびっくりです。
山田代表:レザーの染色をはじめた当初は、なかなか染まらなかったんですよ。タンナーさんと一緒にレシピを変えながら、染色方法を工夫したり、染まりやすい革を開発してもらったりと試行錯誤の末、この色味が実現できるようになりました。
長濱:絹やさんは元々、和装の藍染を中心に行っていたんですよね。レザーの染色をはじめたきっかけは何だったのでしょうか?
山田代表:12世紀に作られた日本の甲冑の飾りに、藍染が用いられているのを発見したのがきっかけです。その甲冑は、布だけではなく、革の部分も藍染で染められていたんです。そんな時代からレザーを天然の藍染で染められる技術があったことを知って、開発を始めました。
長濱:そもそも、藍染にはどのような歴史があるんですか?
山田代表:藍染の歴史は、江戸時代に遡ります。藍染の原料となる藍の日本最大級の産地である徳島県は台風が多く、洪水がよく起きていました。米の収穫が行われる9月には台風の影響で作物が水に流されてしまう災害が多発していたんです。そこで、台風などの前に収穫できる作物として藍が栽培されるようになり、そこから藍染が発展したという歴史があります。
長濱:自然に抗うことなく、地域に貢献していたんですね。藍染は全て手作業で染められているんですか?
山田代表:藍染は、藍の葉を発酵させてできた天然染料の蒅(すくも)に、水や石灰や小麦の皮などの天然物を入れて発酵させた染液で染色します。天然物による発酵技術を用いて、手で染め上げています。
長濱:全て天然ということは、廃棄物も自然に還るのでしょうか?
山田代表:染料は天然物で作られたものなので、廃棄による環境負荷がとても少ないのはもちろん、藍の栽培から染色の最終工程まで全て徳島で完結するので、輸送などによる炭素排出量が少ないのが特徴です。伝統的かつ、環境にやさしい染色方法なんです。
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山田代表:これは同じアイテムですが、経年変化によって藍色が冴えていきます。
長濱:かっこいい!使っていくうちに、自分のオリジナルのカラーになるんですね。バッグの色味も綺麗。歴史ある藍染を生かしながら、現代的なデザインに昇華しているのが素敵です。
■絹や
藍染において600年の歴史を持つ徳島県で、1921年創業。伝統的な天然藍の染色技法を用いたものづくりを行っています。
オリジナルブランド「Kinuya Indigo」では、職人が藍染天然染料を使って一枚一枚手で染めた革製品や、日本の絞りの技法で染めた革などの素材を展開。全て手作業で仕上げることで、藍色の個性である絶妙なグラデーションや滲み、ムラ感による独特の風合いを感じることができます。
公式サイト
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ランドセルは子ども心に感性をもたらすもの——国内の一大バッグ生産地を巡ってわかった「リアルレザーと鞄と教育」の関係性
各社の展示を振り返って
長濱:アイテムを手に取るだけではなく、皆さんのお話を通して、それぞれのサステナブルへの取り組みが身近に感じられましたし、浅草や姫路、徳島と各地で培われた技術が一堂に集まっていてとても感動しました。これからは、ファッションアイテムとしてはもちろん、サステナブルな選択肢として、レザーを取り入れたいと思います。
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