
Image by: FUEGUIA 1833
フレグランスの魅力とは、単に“匂い”だけじゃない。どんな思いがどのような香料やボトルに託されているのか…そんな奥深さを解き明かすフレグランス連載。
今回は、創業15周年を迎えた「フエギア 1833(FUEGUIA 1833)」の創業者、ジュリアン・ベデル(Julian Bedel)にインタビュー。
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2025年3月、大丸心斎橋店本館4階にオープンした大阪ギャラリーは西日本初、日本国内4店舗目。従来の「家」に「外」の景色を加えた空間設計で、世界最大規模を誇る
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2025年に創業15周年、日本上陸10周年を迎えたアルゼンチン発フレグランスブランド、フエギア 1833。日本では東京・六本木のグランド ハイアット 東京からスタートしたため、当初は“知る人ぞ知る”的なブランドだったが、その独特な世界観がオピニオンリーダーの支持を得てじわじわと人気が高まり、サロン ド パルファン 2022ではトップセールスを記録。23年に麻布台ヒルズ、25年には大阪・大丸心斎橋店に大型店舗をオープンして驚かせた。

入り口に宮城県産の伊達冠石を積み、天井には1833年にティエラ・デル・フエゴの空に広がっていた星の配置を再現。奥には山口洋佑による墨のミューラルアートを施した木造空間を設置
Image by: FUEGUIA 1833
「創業から15年、好奇心に突き動かされ続けた旅といえるかな。自然は無限の世界だから常に前に進められる。毎日が学びの連続で絶えず成長し、拡張してきたと思う」とベデルは振り返る。
「植物の香りがヒトの体や脳、記憶、睡眠にもたらす本質的でパワフルな効果にはいいものも悪いものもあることがわかってきたし、機器が充実してきたラボでのさまざまなリサーチは、確実に新たなアイデアにつながっているね」

麻布台ギャラリーの「コンボジション ライブラリー」では、好きな香り2種の5mLサイズを自由に組み合わせて自分だけのコンポジションを楽しめる「ビタコラ・デ・コンポジション」(6820円〜)を展開
Image by: FUEGUIA 1833
ミラノにあるラボを訪れたことがあるが、調香はもちろん、フレグランスを収めるウッドケースに使う木版を自ら削り出し、ペイントし、手際よく組み立てていたのを見て驚いた記憶がある。
「僕の場合、植物原料のリサーチから蒸留、製品開発、ストーリー設計などすべてを自分でやっているから、製品化まで速いんだよね。マーケターもコンサルタントもいないし(笑)。カスタマーの声をダイレクトで聴くことができて、必要があればすぐに調整する。何をどう修正すればいいかは自分でわかるから。ブランドは極めてオーガニックに成長していると思う」

ジュリアン・ベデル(Julian Bedel):「フエギア 1833」創業者兼CEO。アルゼンチン出身。幼少期に楽器制作に興味を持ち専門の学校へ進んだが、自己表現手段として「植物の分子」を選択し、フレグランス創作者の道へ
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ベデルを単なるフレグランスブランドの創業者兼調香師と呼ぶには不十分だ。店舗デザインや設計、さらに店内にディスプレイされているギターもベデル自身が制作し販売している。実は彼の父は彫刻家・画家・写真家・建築家、祖父は作家・詩人・法律家・アートコレクター、曽祖父は小説家・医師、高祖父は昆虫学者・作家という華麗なる一族に生まれ育った希代のクリエイター。だから彼の悩みの種が常に「人材」であることはやむを得ないだろう。
「マネージメント業務は最もストレスフルで労力が要る。チームと話し合いながら進めているけれど、いろいろと学ぶところは多いね」

2025年11月、ロンドン・マウントストリート104番地にオープンしたロンドンギャラリー。時を超えて熟成し続けるヴィンテージ・パフュームを集約した「ヴィンテージ・カーヴ・コレクション(Vintage Cave Collection)」を備えた世界初のギャラリー
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11月には世界で14番目となる店舗をロンドン・マウントストリートにオープン、そして南カリフォルニア最大級の高級ショッピングモール「サウスコーストプラザ」にもまもなく出店予定、さらにメキシコ、中国と着実に拡大中だ。
ところでフエギア 1833では店舗を“ギャラリー”、ショップスタッフを“ギャラリスト”と呼んでいる。
「これは香りへの敬意を表しているんだ。いわゆる美術ギャラリーと同じで、香りを聞くことに集中してもらう空間。経験が第一義で購入は二の次。もちろん買ってもらったほうが嬉しいけど(笑)。だからショップスタッフも単にスペックを説明する人ではないからギャラリストと呼んでいるよ」

ヴィンテージ・カーヴ・コレクションは、5年以上の熟成を経て奥行きを深めた「ヴィンテージ・エディション(Vintage Edition)」と、アルコールを一切含まない純粋なエッセンスを⾧期熟成させた「エイジド・エッセンス(Aged Essence)」から成り、現在はロンドンギャラリーのみで展示
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「製品化まで速い」と認めるベデルのクリエイティビティが尽きることはなく、2026年も新作が続々と控えている。
「まずは『ドゥラズノ』。これはお茶のような香りがほしいという日本からのリクエストをヒントに生まれた香り。“ドゥラズノ”とはスペイン語の“桃”で、スペイン産の桃に葉の青々しさと日本産のスイカズラの花の香りを加えている。ピーチとスイカズラは分子構造が似ていて相性がいいんだ。ただフルーティなだけではない、お茶からピーチの香気が立ち上るような、透明感があって使いやすくて、でも深みのある繊細な香りに仕上がった自信作だよ」
「その次は『ロンロコ』。これはアルゼンチンの弦楽器の名前なんだけど、グスターポ・サンタオラヤ(Gustavo Santaolalla)というアルゼンチン出身のミュージシャンとのコラボレーションなんだ。彼は作曲家でもあって、彼が楽曲を提供した『ブロークバック・マウンテン』や『バベル』、プレイステーションの人気ゲーム『The Last of Us』で効果的に使われている楽器といえばわかるかな」
誰にも真似できないユニークなアプローチで香りの世界を探求するジュリアン・ベデル。香りの分子という言語を巧みに操り、ギターを爪弾くように繰り出す美しき香りの調べに心を委ねてみて。
最終更新日:
ビューティ・ジャーナリスト
大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。
◾️問い合わせ先
フエギア 1833:公式サイト
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