Beautyインタビュー・対談

唯一無二の世界観でファンを魅了する「フエギア 1833」の創造を支えるものとは?

 ブエノスアイレス発のフレグランスブランド「フエギア 1833(FUEGUIA 1833)」(以下、フエギア)は、その唯一無二の世界観でファンを魅了している。世界中の植物に秘められた香りの力を、音楽や小説、絵画、記憶といった要素と結び付けて生み出されたフレグランスは芸術品のようなたたずまいで、つい”収集”したくなる。創業者のジュリアン・ベデル(Julian Bedel)氏に、フエギアを支えるものは何か、創作に込めた思いを聞いた。

「フエギア 1833」創業者 ジュリアン・ベデル氏 Image by FASHIONSNAP
「フエギア 1833」創業者 ジュリアン・ベデル氏
Image by: FASHIONSNAP
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フエギア 1833
2010年にブエノスアイリスでジュリアン・ベデルが創業。ブランド名は、博物学者チャールズ・ダーウィン、海洋探検家ロバート・フィッツ・ロイが、南米のティエラ・デ・フエゴで先住民のフエギア・バスケットと邂逅したことに賛辞を表した。希少な天然植物原料の研究から調香、製造に至るまで、自社ブティックで手掛け、原料調達や生産面で持続可能性を追求するフレグランスブランドのパイオニアでもある。

ージュリアンさんは芸術家一家で育ったそうですね。ご自身の「表現媒体」にフレグランスを選んだのはなぜですか?

 家族はアーティストばかりで、父は彫刻や絵画を制作していました。幼いころから何かを表現することは自分にとって自然なことで、フレグランスを作る前はバイオリンを制作していましたし、実は今でも弦楽器を作ったりします。それと同時に、植物ももの凄く興味があったんです。生薬のような、人の心身に働きかけるような植物の力に神秘的なものを感じました。調べていくうちに、植物の中には、人体のホルモンなどに働きかけて気持ちにまで作用することが期待できる成分が存在すると知りました。そこから、植物の力、香りの力を使って人に感覚的なインパクトを与えられるものを作るには、フレグランスが最適だと考えたのです。

ー初めからフレグランスに興味があったわけではないんですね。

 むしろそれまではフレグランスを集めたり、日常的に香りをまとう習慣はありませんでした。ただ、幼いころから南米の広大な農園であらゆる植物に触れて育ったので、咲き誇る花や、みずみずしい葉、土の香りなど、植物や大地の多様な香りが記憶に残っていて、そうした幼少期の植物との触れ合いが今のクリエイションに深く根付いていると思います。

ー香りを分子レベルで考えるブランドは珍しいですね。

 それは、私のクリエイションのスタートが植物の香りの力だからですね。嗅覚が香りを感知する時、鼻の中で香りの分子が嗅球を通じて情報化され、脳へと伝わります。その香りの分子がホルモンなどに働きかけ、人体や気持ちに影響を与えるという研究結果もあります。因みに、ジャスミンの中には300、ウードには800、コーヒーでは800くらいの香りの分子があり、どれか一つ欠けただけでも香りは変化してしまいますし、天然香料は科学的に構成された合成香料よりも、より一層繊細なんです。取り扱いは非常に難しいですが、だからこそ生まれる香りもあって、例えばフエギアで人気が高いフレグランスのひとつ、「ムスカラ フェロ ジェイ」は、”香りのない分子”を使うことで、つける人によって香りが異なるというユニークなフレグランスに仕上げることができました。

ー香りのノートを、音楽のコード進行になぞらえて「トニックノート/ドミナントノート/サブドミナントノート」と表現するのも独特です。

 一般的な香りのノートは、ピラミッド型でトップ、ミドル、ベースと表され、順番に香るイメージですよね。でも、脳が香りを感知するのはもっと立体的なんです。主役となる香りの核があり、その周りを雲のようにほかの香りの分子が浮遊しているようなイメージで、重たい分子や軽い分子が絡み合っています。それを、トニック(主音)を核に、ドミナント(下属和音)とサブドミナント(属和音)の香りの調和として表現しています。

ー100種類以上の香りがありますが、インスピレーション源はなんですか?

 私が育ったアルゼンチンの大自然や、訪れた場所、そこに住む人々、夢、絵画、音楽、そして私にとって欠かせない植物との触れ合いなど、多岐にわたります。同じ植物でも、生息する地域によって少しずつ香りのキャラクターが異なるんです。フエギアでは新しい香りを作るというより、香りでストーリーを表現したいといつも考えているので、日々の経験、細かい発見や記憶といったあらゆることがインスピレーションになりますね。

【フエギア 1833】2022年に発売した新作
ロサ デ ラ パタゴニア
マロン
プーロ
アルマ
アラビカ

ー世界中で採取される植物から香料を得ていますが、どうやって探すのでしょうか。

 コロナ前は年に2回、兄と植物探しの旅に出ていました。現地のガイドやコミュニティの方々に協力していただき、あまり知られていない植物を見に行って、香りの分子を解析するんです。あてがあって植物を探しに行く時もあれば、現地の大学機関やコミュニティの方々に「こんな植物を探している」とお伝えして、ローカルなものを教えてもらうこともあります。

香りの分子を解析する装置

ーコロナ禍で香り探しの旅はストップしましたか?

 それまでは世界各地を見て回りましたが、コロナで海外への渡航制限が出たことで、工場があるミラノをはじめ、ヨーロッパの大自然に改めて目を向けることができました。移動手段としてまずは車を購入して、それでローマやアルプスなどを巡りました。シチリア島の火山地域にも行って、地面の間から上がる蒸気に含まれるミネラルの香りも収集・分析しました。

ーアルコール溶剤を使わず香料原料をピュアな状態でまとえる「Pura Esencia」や、ヴィンテージコレクション「Le Cave Vintage」といったユニークなフレグランスも人気です。今後の新作はどんなアイデアがありますか?

 私は湯船に浸かってゆっくり休むバスタイムが好きなので、日本の入浴文化は素晴らしいと思っています。そこで今進めているのが、お湯に溶かして使う入浴剤のようなもの。パタゴニアで採れる海藻に、お湯に溶かすと色が変わる面白いものがあるんです。フォーミュラの開発は終わっているので、もう少しで商品化できるかと思います。

 それから、ホホバオイルを使った、体全体に使えてマッサージができるようなボディオイル。なめらかなテクスチャーで、香りが優しく広がって心地よくなるようなアイテムを考えています。

Pura Esencia
Pura Esencia

(聞き手:平原麻菜実、福崎明子)

■フエギア 1833:公式サイト

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