(左から)高橋 侃、杉田 和希、岡本 大陸
Image by: FASHIONSNAP

Fashion インタビュー・対談

服貴族-新世代が語り合うこれからのファッションシーン-

(左から)高橋 侃、杉田 和希、岡本 大陸
(左から)高橋 侃、杉田 和希、岡本 大陸
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 今日もどこかで服好きがビール片手に語り合っているかもしれない。ディープでざっくばらんな酒席の場を覗き見るリアルトーク企画「服貴族」では今回、20代前半のファッション業界で活躍する3人に集まってもらいました。美容師の高橋侃、バイヤーの杉田和希、デザイナーの岡本大陸。それぞれが考える今のファッションとこれからのファッションとは?

高橋 侃:1995年生まれ。学生時代に開始したモデル活動を続けながら、2016年にヘアサロン「シマ(SHIMA)」に入社。2018年秋冬シーズンには「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」や「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」のランウェイモデルを務めた。
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杉田 和希:1993年生まれ。19歳からショップの運用やバイイングを経験。2016年にバイヤーとディレクターを務めるコンセプトショップ「コンテナストア(CONTENASTORE)」を大阪と広島にオープン。2018年5月には東京店の出店を予定している。
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岡本 大陸:1994年生まれ。VANTANデザイン研究所ファッションデザイン学科の在籍中に自身のブランド「ダイリク(DAIRIKU)」を立ち上げ。2016年にはAsia Fashion Collectionのグランプリを受賞し、2017年秋冬コレクションをニューヨークのファッションウィークで発表。ブランドコンセプトは「ルーツやストーリーが感じられる服であること」。
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左:高橋 侃、右奥:杉田 和希、右手前:岡本 大陸

ー今日は"服好き"という名目で同年代の3人に集まってもらいました。みなさん職種が異なりますが、いつ頃からの知り合いですか?

杉田和希(以下、杉田):僕と大陸は17歳くらいからですね。自分の店で「ダイリク(DAIRIKU)」を取り扱っていて、実は昨日も一緒に飲んでたんです。侃くんはインスタグラムなどでは見ていたけど、会って話すのは初めてかな。

高橋侃(以下、高橋):ですね。でも何度かコンテナストアのオンラインショップで買い物をしていたから、もちろん杉田さんのことは知ってました。

岡本大陸(以下、岡本):侃くんは、僕が学生のときに2017年秋冬コレクションをニューヨークのファッションウィークで発表したんですけど、その審査の一つになるショーでモデルをしてもらったんです。

高橋:それからはどこかで偶然会ったりとか、でもちゃんと話すのはショーのとき以来ですね。

ーでは早速、本題に入ります。2018年秋冬コレクションの発表が一通り終わりましたが、特に良かったと思うブランドを教えてください。

岡本:僕はメンズの「ジル・サンダー(JIL SANDER)」と「カルバン クライン(Calvin Klein)、ウィメンズでは「アンダーカバー(UNDERCOVER)」ですね。もともとインポートブランドを好きになったきっかけは、ジル・サンダーや「ラフ・シモンズ(Raf Simons)」、「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」の影響で、1990年代後半から2000年代前半のミニマルなファッションが好きなんです。今回のジル・サンダーはその空気感を残しながらのメンズの提案がすごく良くて。

杉田:僕もジル・サンダーはいいと思った。

岡本:例えばコート類のシルエットやボタンの付け方だったり、無骨に見えやすいミリタリーのディテールをミニマルに提案していて。マフラーやバッグとかまで、全部のアイテムにジル・サンダーらしさがあったし、純粋に着たいなと思いました。

杉田:ジル・サンダーは「オーエーエムシー(OAMC)」のルーク・メイヤー(Luke Meier)の夫妻にクリエイティブディレクターが変わってから、すごく良くなって好きですね。最近はデザイナーの交代も多いけど、ちゃんとジル・サンダーの良さも残しつつ新しくなっていて。あと僕が良かったと思うのは、クルド人の兄妹がやっている「ナマチェコ(NAMACHEKO)」と「ワイ・プロジェクト(Y/PROJECT)」。ナマチェコは、鮮やかな色を使った高級感のある雰囲気が良かった。メンズであの雰囲気を作れるブランドはあまり多くないと思いますね。ワイ・プロジェクトについては、見た目でまず凄いなと思いました(笑)。ルックをパーっと見て、その時にインパクトがあったというか、印象に残った。

高橋:僕は「プラダ(PRADA)」と「ブルックスブラザーズ(Brooks Brothers)」、「アワ レガシー(OUR LEGACY)」が良かったなと思います。プラダには流行りとはちょっと違うニュアンスの"カッコ良さ"があると思っていて。今まで一度も期待を裏切られたことがないけど、今回は特に良かった印象でした。

杉田:たしかに、プラダは今回のミラノコレクションで抜群に良かった気がする。プラダってたしか、自分たちの過去の要素を分解して、組み合わせたりもしてるんですよね。そういう使い方とかも斬新でした。

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高橋:あとブルックスブラザーズは、僕ら世代だと好きなブランドとしてあまり上がってこないけど、上品で綺麗な格好をしたいなっていう今の自分のムードにぴったりで、スタイリングもツボにはまったんです。アワ レガシーは、抜け感具合が良くて直感でいいなと。

杉田:今回のシーズンのメンズは、特にいいコレクションが多かったと思う。ナマチェコもそうだけど若手デザイナーが伸びていて、「Feng Chen Wang」や「ザンダー ゾウ(XANDER ZHOU)」とかアジアのデザイナーも活躍しているし、勢いを感じる。

高橋:デザイナーでいうと、僕はやっぱり川久保玲、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の3人が天才だと思っています。服作りだけじゃなくて、時代の読み方が本当に上手いんだろうなと驚かされます。

岡本:僕は、デザイナーだとラフ・シモンズかな。

杉田:侃くんが言ったようにジョナサンやデムナは、今すごく才能のあるデザイナーだと思う。ただ個人的に、僕もラフ・シモンズは昔からファンで、単純な心理で良いと受け入れてしまう。

岡本:ラフは1997年に自分のコレクションを立ち上げて、ジル・サンダーを経て「ディオール(Dior)」でオートクチュールもやって、そして今「カルバン クライン(Calvin Klein)」を手掛けてるから、全てのデザインをやってきたように感じるんですよね。ブランドが違っても細かい部分でどれもラフっぽさを感じる。今回のカルバン クラインのショーだと、服やモデル、会場から空気感まで自分で作ってる感じが、映画監督のようだなと。今だと「ゴーシャ・ラブチンスキー(GOSHA RUBCHINSKIY)」とかもストリートでモデルを選んでいるけど、それも昔からラフがやっていたことだったり。結局メンズブランドのデザインを辿ったらラフがいる。僕もメンズブランドのデザイナーとしてやってるんですけど、1番尊敬しているデザイナーです。いつ見てもラフ・シモンズは色褪せないなと思うんですよね。

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ー2018年秋冬シーズンで気になったトレンドはありますか?

高橋:僕が気になったのは「エロさ」ですかね。トレンドというより僕自身が欲しいからなんですけど(笑)。前はチープな服にハマったり、リアルクローズとか街中で着てイケているものが良かったんだけど、今は上品でエレガントでエロい感じの服を着たいなと思っていて。

杉田:僕はパンクの雰囲気を感じるブランドが久しぶりに増えた気がした。「ランドロード ニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」もそうだし、「パーム・エンジェルス(Palm Angels)」とかも。パンクなディテールも気になったな。

高橋:良いもの多くて興奮しましたね。

杉田:少し前までは「ヴェトモン(VETEMENTS)」の存在が大きくて、ヴェトモンぽいとか、逆に反発するような影響もあったりしたけど、でも今回のメンズはそういうのが無かったと思う。それぞれのブランドが自分たちの良いと思うものを提案をしているように感じて、面白いシーズンだった。

岡本:最近だと一回見てわかりやすい服が多かったけど、今回はテクニック推しのコレクションが印象深いですね。画像で見るだけじゃなくて、実際にお店に行って手にとってみたいと思うブランドが多かったというか。ミニマルな空気感にだんだん向かっているんじゃないかなと思っていて、だから今ヘルムート ラングの1990年代や2000年代のコレクションに注目しています。そういう空気感が感じられました。

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杉田:ヴェトモンに戻すと、コラボの考え方に共感している。「アルファ インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)」にそれまで作っていたボンバージャケットを持っていったら、すぐに10ヶ所以上作り方が違うと指摘されたそうなんですよね。だったら専門の所に作ってもらって、ヴェトモンのデザインを足すほうが良いよねという考えらしくて。だから「ドクターマーチン(Dr. Martens)」のような靴を作るんじゃなくてマーチンとコラボするし、デニムだったら「リーバイス(Levis®)」とコラボする。コラボって本来そういうものだなと。

高橋:「カーハート WIP(Carhartt WIP)」とかも。機能性の高いアイテムを通してデザインできるって間違いないですね。

杉田:立ち上げ10年くらいの若いブランドが、100年以上かけて培ってきた技術を借りれるわけだからね。だからランニングシューズをキコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)が頑張って作るより、「アシックス(ASICS)」と作った方が良くなるだろうし。

ー良かったと思うブランドのコレクションと自身が着たいと思う服は同じですか?

杉田:僕は少し違いますね。でも、挙げた中で選ぶとすると毎日でも着られそうなナマチェコですかね。昔はあまりわからなかったけど、毎日着られるような変わらない良さに気づいてからは、好んで選ぶようになりましたね。そういう気分なのかも。

岡本:僕は自分の服を着たりもしますけど、基本的には古着がメイン。前はブランドの服をめっちゃ買ってたんですが、今は着なくなっちゃって。

高橋:買うという視点だと僕は、今は様子を見てる感じかもしれないです。今のテンションで次の秋冬コレクションを見て「買いたい」と思っても、いざそのシーズンが近づくと気分が変わっていたりもするし。だから目をつけているのは、今意味がわからないものとか。「なんだこれ」っていうものが、シーズンが近づいてくると意外と良かったりするんですよね。

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ー高橋さんは、ミラノのメンズファッションウィークで「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のランウェイを歩きましたが、ミラノの雰囲気はどうでしたか?

高橋:時間の流れがゆっくり過ぎて僕には少し合わない感じもあったりしたんですが、東京のほうがイケてるなとも思いました。あと、ミラノもパリもロンドンもニューヨークも変わらないなと。活躍できる人はどの国でも活躍するし、場所は関係ないなと感じたんです。そう考えると、改めて東京が好きかもって思えた、いいきっかけでしたね。

ーミラノでは「グッチ(Gucci)」の2018年秋冬コレクションが話題になりましたね。モデルが生首やドラゴンを持っていたり。

高橋:タイムラインには流れてきたけど、僕は正直、あまり感じることはなかったです。でも、クリエイティブディレクターがアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)に変わった最初のシーズンの服はよく着てました。

岡本:ミケーレの服って癖みたいなものがあるよね。人間像と言うのかな。裾をちぎったり、あえてプレスを外したり、畳んでいて開いた瞬間のシワを再現してずっとクローゼットにしまってあった服みたいだったり。コレクションや服1着に全部ストーリー性があって、しかもシーズンごとに続編になっているらしくて。ミケーレ自身がストーリーや映画が好きなんだと思うけど、SFっぽいプロモーションとかちょっと気持ち悪い演出とかも含めて、フランス映画を見ているような気分になるんですよね。だから今回の生首やドラゴンも見た目だけで判断しちゃう人も多いと思うけど、服からストーリーまで想像してみると見え方が変わるんじゃないかなと。ストーリーまで作れるデザイナーってあまりいないと思うから。

杉田:前シーズンだけど、ダイエットプラダ(=類似デザインを指摘する匿名のインスタグラムアカウント @diet_prada)を招待して、インスタグラムをジャックさせてたのは面白かったな。アンチが多い中で、逆に招待しちゃうとか。

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ーSNSの捉え方も変わってきましたね。

高橋:僕は最近、インスタグラムに私服を投稿する気が無くなってきたんです。すぐに「これ流行るんだろうな」って広がっちゃうと形だけの真似が多くなったりするので。今日の話にも出てきたヘルムート ラングとかラフ・シモンズとか、自分で調べたり背景とかを全然知らないで、ただ真似だけする人が増えるのはどうなのかなとも思っていて。

岡本:インスタとかSNSはスピードが早すぎるのが怖いよね。僕のブランドは2シーズン目の駆け出しで影響力は全然ないけど、何かのきっかけですぐに跳ねる可能性もあると思う。でも一気に有名になっても今の僕の力では対応できないし、ブランドとしては徐々にステップアップしていきたいと思っているから、そのスピードを調整する難しさは感じる。

杉田:昔ならパリとか現地に行ってしか得られなかった情報が、今はブランドもインフルエンサーも発信するからガバガバになってる感じ。ショップでも、前はこんなブランドを置いているからすごいみたいなのがあったと思うけど、今は珍しいブランドの情報もすぐにキャッチできるから、そういう価値観は無くなっている。だからこれからはお店の提案だったり、コンテンツに中身がしっかり備わっているかとか、インスタで見える情報の向こう側にあるような軸を大事にしていきたいと思ってる。

高橋:僕はモデルとしても活動してるけど、あくまでも美容師として常に東京に残っていたいんです。だから、例えばテレビに出たりとか露出が一線を超えてしまうと、一時の価値になってダサくなっちゃうと思うんですよね。なのでモデルの仕事でもその線を越えないように意識してます。中身が備わっていないようなインスタグラマーは終わる。残っていくには、例えば自分だったら美容師としての能力だったり、中身が備わっているかが大事になるというのは、僕もそう思います。でも自分がどういう人たちと遊んでいるか、どういう場所に行っているかとか、少しは上げようかな。あげなさすぎると忘れられてしまうので、バランスが取れるようにと思っています。

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3人が選んだお気に入りの一品:よだれどり

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鳥貴族
全品298円均一と低価格で、親しみやすく気軽に利用できるとファッション業界人からも支持されている大手居酒屋チェーン。

今回の場所:鳥貴族 渋谷宇田川町店
住所:東京都渋谷区宇田川町32−12
営業時間:17:00〜5:00
問い合わせ:03-6416-4944

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