GUデジタルチーム×ナイロン編集長「インスタはもうかるか?」成功例から探るSNS収益化の仕組み

NYLON編集長 戸川貴詞、GUダイレクト事業部部長 小野圭史、モデル 野崎智子、ドレスイング代表 ナカヤマン。 Photo by: Fashionsnap.com

 ファーストリテイリンググループのブランド「GU(ジーユー)」とファッション誌「NYLON JAPAN(ナイロン ジャパン)」が実施したインスタグラム企画が、大きな反響を得ている。GUのインスタグラムキャンペーン「GU TimeLine(ジーユー タイムライン)」を通じて、ユーザーの投票によって表紙を決めるという初の取り組みで、合計で約2万5千票を集めた。雑誌の売上は好調、GUでは掲載商品が完売に近い状態だという。SNSの活用に苦戦しているブランドやメディアが多い中、今回の企画が成功したポイントを、GUの小野圭史ダイレクト事業担当とGU TimeLineの企画立案時からクリエイティブディレクターを務めるドレスイング代表ナカヤマン。、NYLON JAPANの戸川貴詞 編集長、そして表紙モデルを務めた野崎智子(moco)を交えた座談会で探った。

ーまずはじめに、GUとNYLON、それぞれ普段からどのようなデジタル施策を行っていますか?

GUダイレクト事業部 部長 小野圭史(以下、GU):デジタルの施策には、かなり力を入れています。モバイル会員といわれている、LINE、メルマガ、SNSを含めてつながっているお客様は今、約1,700万人。中でもデジタルコンテンツは重視していて、昨年4月に一般の方とつながるオンライン上の"売れるインスタカタログ"を目指して「GU TimeLine」を立ち上げました。今年は2期目で、コンテンツとしての認知も上がってきたところです。

NYLON JAPAN 編集長 戸川貴詞(以下、NYLON):雑誌とデジタルマガジン「NYLON.jp(ナイロン・ドット・ジェイピー)」を軸にやっていますが、雑誌をデジタルに落とし込んだらどうなるか、という考えではデジタルマガジンは一生儲からない。紙とデジタルでは、根本的にユーザーが求める役割りもコンテンツの作り方も全くの別物ですから、背景にあるマインド的なものは共有しつつも、ビジネスプランも制作スタッフも完全に別でやっています。当初は予算も掛けられないので、SNSは導入しやすいこともあって早期から積極的に取り組んでいて、「SNSナンバー1メディア」の目標を設定してから半年である程度達成できました。SNSでは、主にユーザー目線の"動く"情報を発信し、ユーザーとのコミュニケーションを大事にしています。

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■「話題だけでは売れない」SNSの収益化は難しい?

ー今回、GUとNYLONによる異業種企画が生まれた経緯を教えてください。

NYLON:「読者がカバーを決める」という企画を、実はずっとやりたかったんですよね。今回は野崎さんがカバーを飾るのが初めてということもあって、何かバズを起こせないかとGUさんに相談したんです。「GU TimeLine」のユーザーが、こういった企画にフィットすると思ったので。

GU:「GU TimeLine」の認知をさらに上げて一大コンテンツにしたいと考えていたので、NYLONさんの企画に賛同しました。

NYLON:表紙にGUのようなマスのブランドをもってくることは稀なんですが、もはや服に対してマスなのかエッジなのかという認識は存在しないと思っているんです。結局はコーディネートがスタイルの全てだと思うので。デジタル施策に積極的なGUと一緒に組むことができれば、面白いことになりそうだという予感がしていました。

モデル野崎智子(以下、moco):撮影の時も楽しかったですね。一誌で3つも表紙を撮るってあまりないことなので。

NYLON:今回、もうひとつやりたいことがあって、アメリカに住むニューエイジのイラストレーターを起用して、写真とグラフィックを掛けあわせたんです。こういうフレッシュなパワーとか、新しい試みが詰め込まれてる"今"の感じを出したかったんですよね。

nylon-interview-20150730_023.jpg3タイプの中から最も多くの票を集めた表紙がNYLON JAPAN 2015年9月号のカバーに

ー「GU TimeLine」上で実施したNYLONのカバーを決める投票は、結果として2万5千票を集めました。

NYLON初めての試みなのでビジネス的にハードルが高いとは思っていて、実際に「表紙を選ぶ」という企画がユーザーにどのくらいのインパクトがあるかまでは読めませんでした。なので、思った以上の反響に驚いています。

GU:そうですね。GUのデジタルマーケティングの基盤に、NYLONさんのコンテンツ、そして野崎さんのモデルとしての魅力が見事に融合したんだと思います。2万5千票の投票をしてくれたということは、見てくれている人は恐らく15万人はいるのではないでしょうか。そこまでいけたということが、ユーザーにとって面白い企画だったという証明だと思います。

ナカヤマン。:「GU TimeLine」ではこれまでインスタグラマーだけではなく、アイドルやタレントの起用、雑誌連動なども多くやってきたのですが、流入だけでなく売上が右肩上がりで伸びているという側面があります。仕掛けとしては今回の企画が一番の反応を集めたという印象で、店頭の売上にまで明確な影響が現れています。

ー表紙が決定し、雑誌が発売された後の反響はいかがですか?

NYLON:こういう企画って、企画する側のマスターベーションになりがちじゃないですか。話題だけでは売れないんです。でも、初日の売上が驚くほど良くて、その後も調子いいですよ。僕もだけど、野崎さん本人も初表紙で売れなかったらどうしようと気になっていたので、正直ホッとしました(笑)

moco:表紙が決まって発売されるまでドキドキで。自分が一番気に入っていた表紙に決まったので、とっても嬉しかったです。

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GU:ブランド側からすると、こういうプロモーションでいわゆるエンゲージメントだけで、売上がないと「何をやっているのかわからない」ということになってしまう。GU側では、雑誌の発売のタイミングと商品のボリューム、閲覧からの商品詳細への導線とか、しっかりと商品への落とし込みを用意していました。インスタ企画のすぐ裏に"売りの仕組み"を立てていたので、反応は顕著でしたね。例えば表紙に掲載されたハットは、雑誌の発売後に売上が伸び始めて、ほぼ完売見込みです。

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