(左から)志鎌英明、濱田博昭
(左から)志鎌英明、濱田博昭
Image by: FASHIONSNAP.COM

Fashion インタビュー・対談 Provided by: TOKYO新人デザイナーファッション大賞事務局

【対談】ニューレーベル×チルドレン オブ ザ ディスコーダンス、海外へ挑むブランドに求められる"強さ"とは?

(左から)志鎌英明、濱田博昭
(左から)志鎌英明、濱田博昭
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 2019年度の「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門 東京都知事賞を受賞した濱田博昭が手掛ける「ニューレーベル(NULABEL)」。今シーズン、ブランド名を「ポートヴェル(PORTVEL)」から改名し、本格的に海外展開へ舵を切った。初めてパリのショールームへ出展したことで見えてきた課題、そして海外で評価されるために必要な"強さ"とは?「ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Immagine Uomo)」の参加などを通して飛躍した「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス(Children of the discordance)」の志鎌英明に問う。

濱田博昭
2015年春夏シーズンに「ポートヴェル」を立ち上げ。2019年度「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門で最高得点を獲得し、東京都知事賞を受賞した。2020年秋冬シーズンからブランド名を「ニューレーベル」に改名。

志鎌英明
2005年より原宿でセレクトショップ「Acycle」をスタート。同時にストアブランドの企画生産を始めキャリアスタート。 ストアのディレクションとデザイナーを6年務める。2011年デザイナーの木戸・井ノ川とともにレーベルを立ち上げ、2013年より志鎌1人体制でブランドを継続しコレクションを発表。

他にはない服作りを目指す

F:お二人の出会いから教えてください。

志鎌:3年くらい前にあった合同展です。「ポートヴェル」については、以前から格好良いブランドがあると知り合いから聞き気になっていて、合同展に出ていたのでそこで初めて挨拶しましたね。

濱田:僕はそれ以前から志鎌さんを知っていましたね。ショールーム「sAagara SHOWROOM」も、チルドレン オブ ザ ディスコーダンスも同じメンズブランドとして注目していました。

F:それぞれのブランドに対してどんなイメージを持っていますか?

志鎌:自分が作らない服を作っていて、素直に好きなブランドですね。素材やグラフィックもそうだし、僕が作らないものを絶妙のバランスで作っているというか。グラフィックも自分でやっているよね?

濱田:はい。全部自分で作っていますね。

志鎌:うちも全部自分でやっているのでとても共感できます。クリエイションの全てを一人でやっているブランドって結構少なくて、それこそグラフィックのアイデアはあるけどスキルがないからといって外注しているブランドも多々あります。外注でも100%のものはできると思うけど、自分でやると200%のものができたりする。そこが大きく違うと思うんです。

濱田:自分でやったほうが好きなものが明確にグラフィックで表現できますよね。僕はチルドレン オブ ザ ディスコーダンスのことを、最もデザイナーのバックグラウンドをダイレクトに表現している日本ブランドだと思っていて。それこそ志鎌さんって「バランスウェアデザイン(balanceweardesign)」とか集めていたじゃないですか?

志鎌:うん。よく分かるね(笑)。

濱田:僕も通ってきた流れだから凄く共感できるんですよね。裏原だったりニューヨークのスケートカルチャーだったり。志鎌さんと年齢が違うのでルーツは違うのかもしれないですが。

志鎌:僕のルーツはびっくりするほどのミックスカルチャーなんだよ。横浜で育ったんですが、ギャングやヤクザ、ヤンキーがいて、でもお洒落なパンクスとかバイカー、スケーター、DJ、ラッパーもいるみたいな環境で過ごして。周りの友達だったり先輩もめちゃめちゃお洒落だったので、ファッションがとても身近だった。

濱田:僕は1984生まれですが、この世代にも不良の先輩が格好良いという風潮がありました。地元の先輩たちは「ヘクティク(HECTIC)」だったり、「シュプリーム(Supreme)」、「サイラス(SILAS)」にスニーカーといったスタイルだったんです。その流れを見たあとに僕はバランスウェアデザインを好きになって。ファブリックとかも独特で当時凄く斬新に見えましたね。

志鎌:やばかったよね。バランスウェアデザインは、それまでの「アンダーカバー(UNDERCOVER)」や「メゾン マルタン マルジェラ(Maison Martin Margiela)」とは違った服の作り方をしていて衝撃を受けた。

濱田:バランスウェアデザインは、ガンダムが好きという理由から「スペースコロニー」をテーマにして服を作っていたときがあるのですが、僕もガンダムが好きなのでそういう点にも凄く惹かれましたね。ニューレーベルでは最近、日本のアニメやSFを裏テーマにしてコレクションを創作したりするんですが、バランスウェアデザインのオマージュ的な意味を込めてガンダムをテーマにしたこともあります。アウトプットしたモノは全く違うんですけどね。

志鎌:そうなんだ。知らなかった。

濱田:表面的にはわかりにくいんですけど。ちなみに志鎌さんはガンダム好きですか?

志鎌:非現実的なものが苦手なので、ガンダムは全然わからない(笑)。でもデザインとしては見ている。ストーリーとか関係なく、あのシーンのあの顔が好きだから、この絵が良いみたいなことはあるかな。

F:それぞれデザインする上で意識していることは何ですか?

志鎌:他のブランドがやらないことに挑戦していきたいと常々思っていますね。うちはヴィンテージのマテリアルを使うことが多いので、その素材を使って世に出ていない形でベーシックに着られるものを作るとか、方法は様々ありますが。

濱田:僕もそこは意識します。ニューレーベルでは、アイデアベースでのオリジナリティの追求が多くなっていますが。今シーズンは「ニューロマンサー」(ウイリアム・ギブソン 1984年初版)という小説がテーマで、一応映画「ブレードランナー」などもありますが、サイバーパンクの概念を生み出したと言われていて。テクノロジーが過度に発達した退廃的でディストピアな雰囲気の近未来社会を描いているんですが、ニューロマンサーに影響されて漫画「AKIRA」など多くのサブカルチャー作品が生まれているんです。面白いのが、ブレードランナーのデザインを担当したシド・ミードがガンダムのメカニックデザインも担当していて。そういった系譜を探り、繋がりがあるものを意識してデザインすることが多いです。

NULABEL 2020-21秋冬コレクション

デザイナーのパーソナリティをさらけ出すことの重要性

F:今回ニューレーベルは、パリで初めて展示会を行いました。反応はどうでしたか?

濱田:今、ロンドンの「ブラウンズ(BROWNS)」での取り扱いがあるのですが、展示会にはロンドンやミラノの有力なお店複数に来てもらい、総じて反応は良かったです。自分がアプローチしたいお店にはちゃんと響いてるなと感じました。「アシックス(ASICS)」とのコラボレーションがあったことも話題となり、パリの老舗百貨店の方が来てくれたり、ミラノのショールームから連絡が来たりと好反応だったと思います。それと同時に初めてのパリで課題も多く見つかりました。

F:課題というのは?

濱田:インスタグラムなどSNSをより頑張らないといけないなと再認識しましたね。実際に、自分がアプローチしたい海外のお店からもインスタグラムでメッセージが来て、それで見に来てくれたので。世界に向けて自分たちで発信していける時代だからこそ、日本にいてもできることはたくさんあるなと気を引き締め直したというか。パリで発表したからといって売れる訳ではないので、SNSの発信で興味を持ってくれる人を増やして地盤を作り、オーダーに繋げていくことが今後は大事だと考えています。志鎌さんは海外に出展するようになってから意識するようになったことはありますか?

志鎌:うちは3年前くらいから日本のブランドだと考えないようにしていて。基本的には海外のストアで展開していくことにプライオリティーを置いています。わざとサンプルも2XLサイズで作っていますし、ランウェイとルックブックのモデルも大きいサイズを着られる海外の人を起用するようにしていて。これは海外の人が見たときに、リアリティがあるかどうかを大事にしているためで。実際サイズ感を変えたことで、海外からの反応は大きく変わりました。

濱田:2XLは一番大きいサイズですか?

志鎌:いや、真ん中のサイズかな。サイズ1がXLくらい。だからまた細い服が流行って、自分のムード的にもその流れになったときに、全部で6サイズくらい作らないといけなくなるなと。そうなったら本当に大変で......(笑)。

濱田:お客さんのことを考えるとそうなってしまいますよね(笑)。

志鎌:あとは濱田君が言ったみたいなことをすべてパーフェクトにできないとダメだと思っていて、アイテムが格好良くても、例えばSNSを放置していたり、濱田君自身のパーソナルな魅力が表に出ていなかったら買ってくれない。作業量が増えるので大変なんですけど、今の時代はデザイナー個人が全てを動かしているブランドがすごく"強い"と思う。誰が見てもこのデザイナーが作った服だよなってわかってもらえることが一番正解に近いのかなと。

F:どうしてそう考えるようになったんですか?

志鎌:バイイングやディレクションの仕事からスタートしたキャリアで、もともとデザイナーになるつもりもなかったので、俯瞰して自分を見た時どこか中途半端だなという感覚があったんです。そこで自分の人生をかけてブランドをやればどこまでできるのかなと思い、地元のカルチャーや生き様をさらけ出して服を作るようにしたんです。

濱田:チルドレン オブ ザ ディスコーダンスの服は志鎌さんのパーソナルな部分が出まくってますよね。

志鎌:そうしたところに気づいてくれる人が増えてきたことで、国内のストアも徐々に広がっていて。そういう点でもSNSの管理は大事で、バイヤーやスタイリスト、はたまたラッパーからもインスタグラムでダイレクトメッセージがきたりするんですが、それを1件1件ちゃんと自分で返信するかどうかで大きく変わる。嘘っぽくないというか、リアリティがあるかどうかがブランドを選ぶ判断基準の1つになっているからだと思うんだよね。

Children of the discordance 2020春夏コレクション

F:他にビジネス面で意識したことはありますか?

志鎌:さっきも言いましたが、自分たちにしかできない"強い"服を作るということに尽きるのかなと。

濱田:価格は関係ないですか?それでいくら高くなったとしても?

志鎌:関係ないと思う。例えば、10万円超えちゃうからこのテクニックを使うのやめようという考えじゃなくて、15万円になるけど唯一無二の濱田君だけのデザインやプロダクトになるんだったらそっちを選択する。うちは価格が上がることを恐れずに人がやっていない方向を選択するようにしていて。そうするとコレクションを重ねていくに連れて、ブランドが力強く骨太になっていくというか。

濱田:毎シーズンアップデートさせていく中で、次のシーズンが不安になったりしないですか?アイデアが枯渇するんじゃないかとか。

志鎌:最近「次のシーズンに向けてプレッシャーはありますか?」と聞かれることが増えたけど、やりたいことがまだまだありすぎるからプレッシャーを感じることはないんだよね。お金やスタッフが足りなくて諦めていたことが徐々にできるようになってはきているけれど、まだまだ未成熟だから。

濱田:なるほど。ちなみに僕はいつも不安です(笑)。自信はあるんですけど。

志鎌:でもメンタルはお互い弱めだよね(笑)。

濱田:弱いですね(笑)。興味があるものや普段目にしているものから派生させてコレクションを作るので、表現したいことやムードを服に落とし込んだときにブランドの世界観として本当に格好良いか、しっかり伝わるものが出来上がるかという不安が毎回あります。逆に他のブランドにはできないことをしているという自信もあったりするので、浮き沈みが激しいんですよね。

より世界観を伝えるために、ブランドが目指す先

F:ニューレーベルは2019年度の「Tokyo新人デザイナーファッション大賞」プロ部門を受賞しましたが、サポートを受けたことで活動に変化はありましたか?

濱田:パリのショールーム出展の支援など、海外に挑戦できるチャンスをいただきました。他にも縫製工場や機屋さんを紹介してもらえて。ファブリックの技術の高さが日本の良さでもあると思うので、背景を知れたり、素材がオリジナルで作れたりと得たものは多いです。それと些細な事でも真摯に相談にのってもらったり、色々な面でとても助けられています。

志鎌:賞を取ったことで、アップデートされたんだね。

濱田:形にしたいけどどうしたら良いかわからないこととか、お金や時間がかかって躊躇してたことに挑戦するきっかけを与えてもらえたので、ブランドに厚みが出た気がします。

F:発表形式についてはどう考えていますか?

志鎌:ショーがうちのブランドの一番良い発表方法でブランドに合っていると思うので、今後も続けていこうと思っています。ポジショニングとしても自分たちのようなブランドで東京でショーをしている他のブランドがないので、まだまだ戦っていけるのかなと。最初は無理やり始めた感じはありましたが、徐々に慣れてくると服がショーに馴染んできたというか、続けていくことで自分たちの成長にも繋がっていると考えるようになりました。メディアやバイヤーの方からの反応も良いですしね。

濱田:うちは何が合っているのか模索段階ではありますが、今回ロンドンで行ったヴィジュアル撮影が一つ契機になったと感じることができて。ロンドンのカメラマンやスタイリストの方たちと撮影したんですが、クリエイター同士のリスペクトがとても強いと感じました。お互いのために良い作品にするという気持ちが伝わってきて、その感じがとても楽しかったんです。お互いの感覚の違いが良い意味で刺激となって、新しいヴィジョンへと繋がり、それ自体に可能性を感じるなと。ショーはやりたい気持ちもあるんですが、今はまだという感じですね。

志鎌:濱田君は思い立って急にショーをやりそうだけどね(笑)。

F:ブランドの今後について。

志鎌:無理に広げず、身の丈にあった規模で展開していきたいですね。あとは、東京にお店を持ちたいなと最近思うようになりました。セレクトショップでは中々表現できないブランドの世界観を伝えるために、パーソナルな自分たちの魅力を出せる空間を持てたら良いなと思っています。

濱田:僕もお店を持ちたいという気持ちはあります。セレクトショップには編集することで物の価値を変えることができたりと良いところが沢山ありますが、ブランドを表現する場として自分たちのお店を出すということも考えていきたい。最初はECでも良いんですが、空間を含めてしっかりとブランドのイメージを伝えていきたいなという気持ちがあります。あとは志鎌さんと同じく身の丈にあったブランド展開ですね。今回のテーマの「ニューロマンサー」じゃないですが、ファッションって楽しいものだと思うので、自分たちが若かった頃のようにワクワクできて、新しい価値だったり新しいロマンを与えられるブランドになれたらなと思います。

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