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ルイ・ヴィトンやシュプリームなどがクライアント、一つの肩書きやフィールドに捉われない謎の集団「ILL- STUDIO」とは?

トーマス・シュブレヴィルとレオナルド・ヴェルネ
Image by: FASHIONSNAP.COM

 「クリエイティブに関して"自由であること"が僕らのキーワード」。そう語るのは、「イル・ストゥディオ(ILL- STUDIO)」の共同創業者のトーマス・シュブレヴィル(Thomas Subreville)。彼らの活動はアート、デザイン、カルチャー、音楽と多岐に渡り、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「エルメス(HERMÈS)」、「シュプリーム(Supreme)」などトップブランドからの仕事のオファーが後を立たない。一つの肩書きやフィールドに捉われない謎の集団「ILL-STUDIO」とは何者なのか?

 「ILL-STUDIO」は、もう一人の共同創業者 レオナルド・ヴェルネ(Leonard Vernhe)と共に2007年に設立。もともとはスケート雑誌を作っていた仲間だった。2人共アートやファッションに関する特別な教育は受けておらず、クリエイティブに関してはほぼ独学だ。

 「よく『君たちは何をやっている人なの?』と聞かれるんだけど、説明するのが難しいんだ。フィルムやイメージ、音楽、空間デザイン、服のデザインなど色々手掛けているからね。ILL-STUDIOという大きな傘の下で実験を繰り返している感じかな。活動を始めて12年が経つけど、何か特定のことフィールドや肩書きを選ぶことはしたくなかった。常にオープンな気持ちで『自由であること』が僕らの活動において一番大事なキーワードなんだよ」。その言葉通り、ILL-STUDIOはアートディレクター、クリエイティブディレクター、キュレーター、デザイナー、コンサルタントと、その全てに当てはまるが、どれか一つに属することはない。

 ILL-STUDIOのクライアントを挙げると、「ナイキ(NIKE)」や「コンバース(CONVERSE)」「シュプリーム(Supreme)」など誰もが知るグローバルブランドから、「ルメール(Lemaire)」や「ピガール(PIGALLE)」などの気鋭のフレンチデザイナーブランド、「シャネル(CHANEL)」や「エルメス」などのラグジュアリーメゾンまで、いずれもトップブランドの面々が揃う。イメージビジュアルやムービー、キャンペーンなどの制作をはじめ、コレクションや「ピガール」とのプロジェクトではパリのデュペレ地区の一角にあるバスケットコートを手掛けるなど制作するコンテンツも多岐にわたる。

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」も彼らにラブコールを送るブランドの一つだ。現在はアーティスティックディレクターのヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が率いるメンズウェアチームのファッションコンサルティングにも携わっている。

 「主に服のクリエイティブのフォローアップといったところかな。ヴァージルと僕たちでアイデアを共有してたくさん話し合うんだ。彼とはもう10年くらいの付き合いになるけど、共通のカルチャーや言語でディスカッションできるから彼との仕事はスムーズだし、こういった形で一緒に仕事ができる機会が与えられて嬉しく思う」

 ヴァージルをはじめ、「ピガール」のステファン・アシュプール(Stephan Ashpool)、「ルメール」のクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)など一緒に仕事をするそのほとんどが彼らの友人か、知人からの紹介だという。

 印象に残っているプロジェクトについて聞くと、「どのプロジェクトにも思い入れがあるから1つに絞るのは難しい。1つのプロジェクトというよりは、全てのプロジェクトを僕たちの活動の全体図として捉えてほしいと思っていてそれが誇りでもあるからね。強いて挙げるなら、文化と密接しているという点でパリ国立オペラのプロジェクトはとても面白かった。動画を制作したんだけど、ブランドのシーズンコレクションやキャンペーンみたいな短期的な制作物と違って長い間作品として残るし、人々の記憶にも残るからね」。

 クライアントとの仕事は、商業的な要素とクリエイティブの要素のバランスが求められるが、その点に関しては「それが僕たちの仕事だからね」と話す。「クライアントももちろんだけど、『誰に伝えるのか』と考えた時に、ブランドの先にいる大勢の人に届けるためのコンテンツ作りになるから、ブランドから一歩離れた視点で物事を『分析する』ということが僕たちの仕事であり、必要とされているスキルなんだよ」。

 テクノグループのYMOやファッションブランドの「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」、建築家の丹下健三などが好きと話し、日本への訪問は毎回刺激を受けるというが、今回は国内で初の展覧会の開催という目的を伴っての来日となった。キュレーションを手掛けた展覧会のタイトルは「ポストポストモダニズム」。30代後半の彼らが育ってきた80〜90年代のポストモダニズムの時代の先、すなわち「今」を彼らの感覚で捉えている。

 「実はこのワードはずいぶん前から使っているんだ。インターネットの登場で、今の時代はヒラルキーがなく、ハイ&ロー、過去と未来、アンダーグラウンドとメインストリームなど相反する要素全てが一つのポットに入り混じっている時代。例えば、写真はインターネット世代の若手の写真家たちが撮影したものなんだけど、興味深いのはコーラや車、ビルの写真がハイカルチャーとして扱われていること。ポストモダニズムは大きな穴を残したわけではなく、形を変えて新たなフォームが形成されているんだ」。

 今後の日本でのプロジェクトに関しては未定というが、今回の展覧会を機に「日本のアーティストと何か一緒にできれば」と今後の活動にも意欲的だ。近いうちに日本でもまた彼らの名前を目にするかもしれない。

ILL-STUDIO

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