Art 現代アートへの旅

【連載:現代アートへの旅】まず知っておくこと編―作品鑑賞を楽しむための4つのポイント

 みなさんは現代アートにどんなイメージを持っているだろうか?満場一致するようなイメージを持たないからこそ、現代アートを難しいと思う人もいるだろう。だが、押さえるべきポイントを押さえたら、一気に見方が分かってくるのが現代アートでもある。今回はその「見方」を紹介していこう。

— ADの後に記事が続きます —

【1】作品に参加する

 現代アートとそうではないアートを分ける最も大きな違いの一つが、作品を観る私たちの参加意識だ。例えば、これまで一般的に美術と呼ばれている作品を観る時、私たちはそこに「何が描かれているのか」を読み取ろうとする。しかし、現代アートを鑑賞するときは作家が「何を考えているのか」を読み解くことが必要となるのだ。

 例えば、オノ・ヨーコ《カット・ピース》(1964)という作品は、オノ・ヨーコが着ている服を観客がハサミで切り取っていく作品だ。観客が作品を観ることだけではなく、参加することで作品が完成する。ここで私たちは「なぜ、我々観客はこのようなことをさせられたのか」「作家は作品を通して何を伝えたいのか」ということを自らで考えなくてはならない。

【2】作家が抱える関心や社会問題を知る

 サラエボ(現ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)出身のアーティスト、マヤ・バイエヴィッチによる《働く女たち》(1999)という作品は、紛争により壊れた建物の修繕のために組まれた足場に、昼間の仕事が終わった後に難民女性たちが現れ、ネットに刺繍をしていく姿を映した映像作品だ。アーティストであるバイエヴィッチは、この作品を通じて自らのルーツが奪われていることや、女性の労働環境など様々な社会問題を作品の中に含める。このような複雑さを伴う作品に対しても一つずつ何が起こっているかを自分の頭で理解しなければならないのだ。

 鑑賞者が作品を観て考えたことに対するたった一つの答えは用意されていない。あらゆる視点から物事を見極めるという観察能力が現代アートの鑑賞には重要となる。端的に言ってしまえば、現代アートとは美しさを兼ね備えながらも、鑑賞者にアーティストが抱える関心や社会問題に目を向けさせるためにあえてわだかまりを残すようにする作品のつくり方と言えるだろう。

【3】新しい手法に触れる

 現代アートは絵画や彫刻といった一つの素材に捉われることがないというのも大きな一つの特徴だ。絵画や空間構成、映像、音などあらゆる素材の組み合わせの作品も現代アートには多い。

 例えば、マルセル・デュシャンの《泉》(1917)は男性用便器に架空の人物のサインが書かれただけの作品である。その時代、自らのサインで、自らの技量で一から作品をつくることが主流だった中で、すでにあるものを作品としてしまおう、という点がデュシャンが考えた新しさで、このような既製品を作品とする手法は「レディメイド」と呼ばれる。

【4】他ジャンルとの融合を楽しむ

 新しいテクノロジーやこれまでになかった方法で作品をつくることが、現代アートの主流であった。例えばE.A.T.というグループは、1960年代から活動を始めたアーティストと科学者やエンジニアから構成される。パソコンこそなかったがテレビはカラーになり、個人で映像や音楽を作ることが可能になってきた時代に、共同で作品をつくったり、アーティストが最先端のテクノロジーを使った作品をつくるときにエンジニアや科学者は手助けをしたり、逆にアーティストの作る作品にエンジニアや科学者が技術のあり方を再発見したりもした。

 これまでにできなかったことをする、新しい視点を提供する、そして新しいものを生み出すためにたくさんの技術が必要となり、その技術自体が鑑賞のポイントであることも現代アートのもう一つの大きな特徴である。

 

 このように現代アートにはたくさんの要素が複雑に絡まり合っている。では、現代アートを分かるためにはどういうことをすれば良いの?という声もあるだろう。そのためにまずは美術館に行き、たくさんのアートに触れること。そして、それだけでは物足りない人は、実際に作品が売られているギャラリーへ足を伸ばしてみることを勧める。アートを買う予定はないから......と尻込みすることはない。デパートに行く時と同じ気分で行くのが気持ち的には近いだろう。

 そのほかに必要なのは、音楽を聴いたり、本を読んだり、映画を観たり......アーティストは、決して他のアートだけにインスピレーションを得ているのではない。こういったものの中にも現代アートを知るヒントというのはたくさん詰まっている。

 最後に一番大切なことは、これまで世界で起こってきたことや世界が向き合ってきた問題、そして今、世界が直面している問題を知ることだ。アーティストが抱える関心や社会問題を知るには、そもそも何が彼らの周りで起こっているかを知る必要があるからだ。現代アートは世界とあなたをつなぐ窓といえる。ぜひ、その窓を覗き込んで広い世界に飛び込んでみてほしい。

■檜山真有(Instagram
同志社大学文学部美学芸術学科卒、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了。1960年代のコンセプチュアルアートを研究対象とする。現在は美術館に勤務する傍ら、キュレーターやライターとして活動中。

▼こちらの連載もチェック
きっと誰も好きじゃない - 出会い系アプリで知り合った男性とのおはなし
あがりの服と、あがる服 - 一流の「あがりの服」と筆者にとっての「あがる服」の魅力を語る
ポスト・コロナ - 新型コロナ収束後のファッション界を考える特別寄稿連載

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング