Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】デザビレ村長 鈴木淳「趣味でモノを作る人にデザイナーが負けてしまう時代が来る」


―中国の工賃が上がったことなど生産背景に変化があった10年。

 中国の工賃が上がり、日本に生産拠点を戻したいけれど戻しても工場側の人手が足りず作れないということが実際に起きてきています。中国では、繊維ファッションの仕事を選ばずにハイテク系の仕事のほうがカッコイイという人が増えているようで、もしかすると服づくりが世界中のどこでもできなくなる可能性があるかも知れません。さらに国内の工場に中国並みのコストでクオリティを維持して小ロットでお願いする、といったようなアパレル側の要求レベルも上がっていて、工賃以上の仕事を求めてくることも多々あるようです。それに対応しようと工場は自社の利益を削り仕事をこなしていくので、徐々に疲弊しているというのが現状ですね。

―工場の生きる道は?

 工場も創意工夫が必要で、その1つの例として海外出店を考えるべきだと思っています。例えば杉並にある縫製工場「ファッションしらいし」は、ニューヨークに支店を出しているのですが、そうすることでニューヨークコレクションの仕事を受注できるようになりました。ニューヨークではパタンナーや縫製にきちんとした工賃が支払われるというルールがしっかりあるそうで、フェアで非常に仕事がしやすいそうです。

 「アトリエいしくら」は、若いファッション好きの女の子に向けた縫製工場を渋谷で経営していて、更に縫製工場でありながらGULLAM(グラム)というセレクトショップも経営しています。代表の石倉崇之さんは本当にファッションが好きな方で、ディテールやニュアンスがわかるからこそデザイナーから重宝されるのでしょう。ファッションが好きな人が、服を作る仕組みを真剣に考えビジネスモデルを構築すると長く続く会社になれるのだと思います。

―ファッション業界の今後10年についての考えを教えてください。

 今ファッション業界は過渡期を迎えているではないかと思っています。「Etsy」とか「Creema」といった手作りのモノをCtoCで販売するサイトがありますが、アメリカだとこれがものすごい伸びていて、日本でも注目され始めています。「Etsy」「Creema」などの登場で何が起きてるかというと、いわゆるデザビレに居るような小規模のクリエイターの領域を手作り作家さんが侵食し始めているということです。

 手作り作家さんはパートナーが養ってくれるからこれで稼がなくてもいいという趣味志向の方が多いため、破格な値付けをしていて、商品を購入すると1点1点お手紙を書いてくれて、綺麗なパッケージに包んでくれてというサービスを提供する方もいます。気軽にC to Cで取引ができるということは画期的ではありますが、一方で若手クリエイターの商品を買う必然性はなくなってしまう。だからファストファッションのような大手が作る量産のものか、個人が作る気持ちのこもった1点ものという2極化が進んでいて、中間層の国内デザイナーの市場が減っているのではないでしょうか。今の若手デザイナーは経費削減をして、生活コストを下げて稼ぎが少なくても食べていけるような個人作家の方にシフトするのか、それとも事業規模を拡大して大手に近づくのかというどちらかを迫られる時期が来るのだと思います。

SONCHO-interview-2014-05-09-20140509_022.jpg

―デザイナー、クリエイターの必要性が問われるということでしょうか。

 消費者に、若手の小規模中規模のブランドの必要性をきちんと理解してもらうことは難しくなるでしょうね。日本のファッション業界は、作り手よりも消費者のレベルの方が圧倒的に高いと思っていて、コレクションに出てるデザイナーよりもストリートでコーディネートを楽しんでいる学生のほうがファッション感度が高いのではないかと思う事が多いです。

 安い服でもおしゃれにコーディネートできてしまうスキルが備わっていることで、デザイナーの役割が相対的に減っています。ものづくりを突き詰め深みを出すということが難しい時代になるかもしれないので、デザイナーで生活していくためにはある程度の規模感で商品を作っていくしかないのかなと感じています。もちろんマーケットのニーズを踏まえた上で、個性を突き詰めているブランドは生き残れると思いますが、そうでなければ趣味でモノを作る人たちにシェアを取られてしまう可能性が高い。加えて、今後アジアでの生産がもう少し小ロットになるようになれば、例えばイタリアのデザイナーがアジアで低コストで生産して、それを日本のマーケットで売るといったビジネスモデルも出てくるでしょう。そうなれば日本人が活躍する余地がますます減少するかもしれません。

―日本人はどうやって戦っていくべきか?

 必要になってくるのは語学力とITリテラシーだと思います。デザビレになぜIT系が入ってほしいかといえば、ITのリテラシーがあれば新しいビジネスを起こす可能性が出てくるからです。服を個人と個人で売ると1対1の付き合いですが、ネットを通じると1対多数のマーケットを作れます。個人メディアを作ってとか自分のブランドをメディア化してお客さんを増やしてという仕組みもできるので、発信力が強ければそれだけ売れる可能性も出てくる。それが低コストで出来るようになっているので、ITリテラシーは必須なんだろうなと。

―次の10年で挑戦したいことは?

 業界は確かに厳しい状況にありますが、山縣君のように才能のある若手は国内にたくさんいます。そういった人たちが、うまく世界に羽ばたいていけるように引き続き裏方として支えるような働きをしていきたいですね。今後は子どもができたり、会社を辞めたりで困っている人たちのための創業支援やインキュベーションもできればと考えています。


■鈴木淳
1966年10月31日生まれ。千葉大学工学部工業意匠科卒業。カネボウファッション研究所勤務を経て独立。ものづくり企業のマーケティングが専門。平成10年NPO法人ユニバーサルファッション協会を設立(現在副理事長)障害、高齢、体型などに関わりなくファッションを楽しめる社会づくりの啓蒙活動を行う。平成16年日本で唯一のファッション・モノづくり系デザイナーの創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」の村長(株ソーシャルデザイン研究所代表取締役)に。クリエイターや小さな企業の事業コンセプトやマーケティングの指導を行っている。

(聞き手:光山玲央奈、芳之内史也)

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング