Artインタビュー・対談

【インタビュー】作品は即日完売、現役藝大生の画家 友沢こたおとは何者か?

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ースライムがモチーフとなっている作風はいつ確立したんですか?

 大学に入ってからです。色の数だけ作品を描き続けることができるし、スライムの質感や透け感、かけ方を工夫すればまだまだ面白くすることができると思っています。

ースライムは既製品ですか?

 いいえ。自分で作っています。薬品の配合を変えるだけで全然違う質感になるんですよ。ちなみに私の作品に度々登場する赤ちゃん人形は「ルキちゃん」と言う名前で、我が子のように可愛がっています。

自作のスライムは自宅の冷蔵庫で保管しているとのこと。友沢「これは最高傑作品です」
自作のスライムは自宅の冷蔵庫で保管しているとのこと。友沢「これは最高傑作品です」
ルキちゃん Image by FASHIONSNAP.COM
ルキちゃん Image by FASHIONSNAP.COM

ー作品はルキちゃんの他に、スライムをかぶっている人間の顔が多く登場しますが、あれは誰ですか?

 多くは自画像です。モデルにスライムをかぶってもらったこともあったんですが、スライム越しに見る景色や、鼻に入ってきて息ができない感覚、口の中の入ってきたスライムの味などは神秘的な経験なんですよね。その体験は、やはり自分が経験して初めて意味があるなと。あとは「自分で自分を描く」という行為を面白がっている節もあります。もう1人の自分自身を作り出すということは、新たな生命を作り出している感覚があって楽しいんですよね。

友沢こたお Image by FASHIONSNAP.COM
友沢こたお Image by FASHIONSNAP.COM

ースライムをモチーフとして取り入れようと思ったきっかけは?

 ある日、無意識に自宅にあったスライムを顔からかぶった時があったんです。大学に入学したばかりの頃だったんですが、精神的にとても追い詰められていて……。スライムをかぶった時、生きている実感がしてとても気持ちがよかったんですよね。それが作品の原風景です。

ースライムを顔にかぶりたくなるほどの追い詰められ方ですか。

 他人が求めるあるべき姿や「綺麗なモノを綺麗なままで見たい」という人々の欲求に嫌気が差してしまったんですよね。

ースライムをかぶった日を作品としてアウトプットしようと思った理由は?

 大学1年性の頃、同級生に萎縮して絵が描けなかった時期があったんです。でも、藝祭(東京藝術大学文化祭の略称)での展示作品制作にあたって、改めて「リセットの気持ちを込めて描けるモノはなんだろう」と考えたのがアウトプットのきっかけになりました。考えた末「実際に起きたことが何よりも1番強い。描きたいモノから想起するより現実に起きたことを思い出して描こう」という結論が自分の中で出たんですよね。それで、自分に実際に起きたことで強烈な記憶だった「スライムをかぶった日」を作品にしました。

ー1番最初の作品はどのような絵だったんですか?

 その時描いた絵は、ピンク色のスライムをかぶっている自画像です。当時、自分自身にセクハラまがいの悲しい事件が起きたんですが、次の日なんでもない顔をして大学に登校する自分に対して「怒り」を覚えていたんです。

ー特徴的な作風なので、コンセプトなどを聞かれることも多いと思います。

 コンセプトはもちろんあります。やっぱり何かを「描く」時点でコンセプトはあるモノだし、そもそもこの世の中には「コンセプトがないモノ」は存在しないような気もします。しかし「これはこういうモノを表現しているんだよ」と何かを言い切ることには少し疑問を覚えます。

ーでは、こたおさんの考える「コンセプト」とは?

 「表現する人の長い歴史の中で積み重ねられてきた地層が端々に顕れていること」ですかね。そっちの方が自分的にはしっくり来ます。

ー「地層が端々に顕れる」とは具体的に?

 コンセプトや経緯を言語化すると、どうしても表現する人の歴史の一部分しか切り取り出すことができなくなります。しかし、人間には言語化することが出来ない深さや、広さがあるものだと思うんです。そんな、目視することも出来ないような深奥も含めて表現することが、作家にとっての作品なのではないかなと。目にすることができない深奥の部分がある以上、作品を端的に言い切れるような「確実なモノ」などない気がするんですよね。大いなる不確実性の中に生きている以上、何かに名前をつけたりカテゴライズすることは危険なことだと個人的には思っています。もっと根源的な話ができるように、私は「絵」という武器を持って世の中に戦いを挑んでいるのかもしれませんね。

Image by 友沢こたお Photo by:FASHIONSNAP.COM
Image by 友沢こたお Photo by:FASHIONSNAP.COM

ー今回の個展はフランス語で「隠された」という意味を持つ「カシェ(caché)」という名前が付けられています。

 端的に言い表せそうな物事でも、実は結構色々「隠されて」いるし、隠されている部分こそ本質ですよね、きっと。そんな想いを込めています。

メインヴィジュアル Image by 友沢こたお Photo by:FASHIONSNAP.COM
メインヴィジュアル Image by 友沢こたお Photo by:FASHIONSNAP.COM

(聞き手:古堅明日香)

■caché
会場:東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F タグボート
会期:2021年2月12日(金)〜2021年3月4日(木)
営業時間:11:00〜19:00 ※最終日は17時終了、館の営業時間に準ずる
入場無料

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