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競馬を着こなせ、ルメール騎手がブランドを立ち上げた理由とは

クリストフ・ルメール騎手の顔

クリストフ・ルメール騎手

Image by: FASHIONSNAP

クリストフ・ルメール騎手の顔

クリストフ・ルメール騎手

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競馬を着こなせ、ルメール騎手がブランドを立ち上げた理由とは

クリストフ・ルメール騎手の顔

クリストフ・ルメール騎手

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 クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)が、ファッションブランド「CL by C.ルメール」を立ち上げた。この名前を聞くと、ファッション好きなら「ルメール(LEMAIRE)」や「ユニクロユー(Uniqlo U)」を手掛けるデザイナーを思い浮かべるだろうが、そうではない。今回ブランドを設立したのは、2017年から2021年まで5年連続でJRA(日本中央競馬会)のリーディングジョッキー(最多勝利騎手)を獲得し、2018年には武豊騎手が持つ212勝の年間最多勝記録を215勝に更新したトップジョッキーのルメールだ。そんな同氏はなぜファッションブランドの立ち上げに至ったのか?

■クリストフ・ルメール

1979年生まれのフランス人騎手。京都在住で2015年からJRA通年免許を保持する。2020年末にはTRC Globalランキングで世界1位を、2017年から5年連続で全国リーディングジョッキーも獲得。現在、JRA年間最多記録保持者であり、3度のジャパンカップ制覇(アーモンドアイ・ウオッカ)を含むG1、40勝に達しているのは歴代でも武豊騎手とC.ルメールの2人のみ。海外のGIレースではフランス・ドバイ・オーストラリア・香港・アメリカとイギリスなど全世界で勝利を収めている。

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ファッションへの興味はいつ頃からあったんですか?

 幼少期の頃から好きでした。当時から自分で服を選んでいましたし、父のレースを見に競馬場へ行った時はお洒落な格好をしていました。フランスではお洒落をして競馬を見に行くという文化がありますから。

当時はどういった服装を好んでいたんですか?

 フォーマルな格好が多かったですね。ブレザーを着て、シャツをきて、パンツ、お洒落な靴。競馬場へ行く時はいつもよりお洒落していました。

黒のジャケットを着用したクリストフ・ルメール騎手

騎手になってからもずっとファッションが好きだった?

 はい。賞金を貰えるようになりましたから、高い物も買えるようになりました。それこそ良い靴とか格好良いスーツをたくさん。服が大好きなので支出の割合はファッションが高いですね。

これまでは着ることを楽しんでいた訳ですが、今回服を作る側になろうと思ったきっかけは?

 恩返しをしたいという想いからです。フランスで騎手としての自信を失くしていたんですが、日本で自分のバランスを取り戻すことができました。本当に日本のファンの方々には多くの恩恵を受けていますから、その恩返しとして騎手のシンボルや競馬の要素を落とし込むことで、競馬ファン、そしてファッション愛好家が楽しめるものを作りたいと考えました。

立ち上げの構想はいつからあったんですか?

 2年前くらいです。年間最多勝記録を更新したことと、コロナ禍で考える時間が増えたことが影響しているかもしれません。良いブランドを作りたいと思っていたので少し時間がかかってしまいました。

話すクリストフ・ルメール騎手

コンセプトは「競馬をきこなせ メイドインジャパン #ストリートジョッキー」。

 ジョッキーになって一緒に走っているような楽しい錯覚を着用者に感じて欲しいと思いこのコンセプトにしました。

ルメール騎手はサッカーファンと伺いました。ブランドで体現したいことはサッカーユニフォームを着てスタジアムに応援しに行く、といったイメージでしょうか?

 そうですね。私は毎年パリ・サンジェルマン(PARIS SAINT-GERMAIN)のユニフォームを買って応援しているんですが、同じようなことを競馬の世界で表現したいんです。ただ、このブランドではJRA年間重賞レース数とGIレース数に合わせて128枚か24枚限定で展開します。なので数万人が同じ服を着るといったことはありませんが、シーズンを重ねるごとに着用者が増えていく面白さも感じていただけるかもしれません。

販路は?

 オンラインストアとポップアップストアで展開していきます。まずは京都高島屋で4月13日から、そして伊勢丹サローネメンズで4月27日からポップアップを行います。展開枚数が少ないので、ポップアップは年4回を予定しており、シーズン毎に関西、関東で開催する予定です。

CL by C.ルメールのファーストアイテム
ポロシャツのジッパー
ポロシャツのボタン
パンツのジッパー

ファーストコレクション

ファーストコレクションは半袖ポロシャツ6種、長袖ポロシャツ2種、パンツ2種、Tシャツ5種、ハイエンドキャップ4種を展開。

 全て日本製で拘って作りました。ポロシャツは勝負服から着想を得ましたし、パンツは実際にレースでジョッキーが着用しているものと同じシルエットで、街でも着られるように素材や色を変えました。ボタンは騎手のヘルメット、ジッパーはジョッキーブーツの形で、競馬のシンボルを採用しています。ポロシャツとパンツがシグネチャーアイテムです。

Tシャツは全てVネックですが意図は?

 今の私のようにジャケットやベストの下に着てもらいたいので、クラシックなデザインを意識しました。

Tシャツの説明をするクリストフ・ルメール騎手
馬のグラフィックのTシャツ

MOYAのグラフィックを配したTシャツ

TシャツのグラフィックにアーティストのMOYAさんの作品を施しています。

 毎シーズン、日本のアーティストとコラボする予定です。ファーストなので、京都から発信という形を取りたくて私と同じ京都在住のMOYAさんにお願いしました。馬の蹄や、日本の国旗を思わせる色使い、フランスの「フルール・ド・リス」のような柄が使われています。「日本・フランス・馬」の要素が組み合わさっていて凄く気に入っています。

ブランドロゴのデザインは?

 私が騎乗する際の服に刺繍されているもので、昔から使っている愛着のあるマークなのでブランドの正式なロゴとして使用しました。

ポロシャツの首元に刺繍したCL by C.ルメールのロゴ

CL by C.ルメールのロゴ

—ブランド名「CL by C.ルメール」では、クリストフ・ルメールではなくC.ルメールという表記を使用しています。

 出馬表の騎手欄に「C.ルメール」と書かれているので、ファンの皆さんに馴染みがあるかなと。あと、クリストフ・ルメールという素敵なデザイナーが既にいますので(笑)。

「ユニクロ ユー」などを手掛けるデザイナー、クリストフ・ルメール氏のことは以前から知っていましたか?

 もちろんです。フランスでも有名ですし、「エルメス(HERMÈS)」や「ラコステ(LACOSTE)」を手掛けていましたから。今は「ユニクロ(UNIQLO)」のパリ R&D センターを率いていますよね。臨機応変に色々なデザインを作れることは素晴らしいことだと思います。

影響を受けたクリエイターはいますか?

 影響を受けたクリエイターはいませんが、ブランドとして「アルマーニ(ARMANI)」は好きです。あまりギラギラしたものは好きではなく、少し落ち着いたシックなデザインに惹かれます。

服を見ながら話すルメール騎手

初めての本格的な服作りだったと思いますが、苦労した点は?

 どうすれば勝負服をデイリーに着られるデザインにまで落とし込めるかという点に苦戦しました。ボタンやジッパーの大きさをどうするかなど、本当に細かいところまで見る必要があり、服を作るということがここまで大変だとは思っていませんでした。競馬は男性騎手も女性騎手も、牡馬も牝馬も一緒に競い合うスポーツなのでユニセックス展開でと考えたんですが、サイズ感にはとても頭を悩ませました。

製作にあたり、自身で工場を回ったと聞きました。

 和歌山の工場に行きましたね。行く前は機械が並んだ大きな工場を想像していたんですが、実際はおばさまたちが手作業で縫っていて、お互いの距離が近く家族のような素敵な雰囲気で良いサプライズになりました。

服作りを通じて、ジョッキーとしての考え方に変化はありましたか?

 レース中はこれまでと変わらず全力で取り組んでいます。ただ、勝負服の色だったり、お客さんの雰囲気など今まで気にしていなかったことに目が向くようになりましたね。

2シーズン目となる秋冬コレクションのアイテムの構想は?

 まだ未定ですが、リバーシブルジャケットを作ろうと考えています。片面は競馬のデザインを強く出し、もう片面はシンプルなデザインにする予定です。ポロシャツやパンツは少しデザインを変えて継続していく予定です。アイテム数は、少しずつ増やしていこうと思っています。

黒のジャケットを着たルメール騎手

今後のブランドの目標は?

 ファンの方と一緒に競馬の一部として楽しめるようになることが一番の目標です。あとは競馬というスポーツがもう少し大衆化することに役立ちたい。例えばバスケットボールのマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)のように、多くのスポーツにプレイヤーとしてもファッション的にもアイコンになるアイドルがいますが、競馬の世界にはまだいない。なので、私が発信する側になって、競馬へ興味を持ってもらえるきっかけを作っていきたいです。

JRAの総売上は10年連続で上昇していますし、競馬人気の更なる後押しになると良いですね。

 日本は競馬ファンの人数も多いですし、層も広い。フランスで20年くらい走って、日本でも10年くらい走ってきましたが、いくらフランスで勝ってもここまで多くの方に応援してもらえることはありませんでした。ファンの方の熱が全然違うので、日本の競馬文化はもっと大衆化できると思うんです。私の10年間のキャリアで得た発信力を、色々な形で競馬のために役立てられれば幸せです。

ルメール騎手の全身写真

(聞き手:林慎哉)

■CL by C.ルメール:公式サイト

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