ロエベ 2024年秋冬メンズコレクション
IMAGE by: LOEWE
ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が手掛ける「ロエベ(LOEWE)」が、パリで2024年秋冬メンズコレクションを発表した。ファッションとコンテンポラリーアートは密接な関係にあるが、今シーズンのロエベは、この関係を新たなレベルへと押し上げた。今回ジョナサンがピックアップしたアーティストは、米テキサス出身でLAを拠点にするアーティスト、リチャード・ホーキンス(Richard Hawkins)だ。
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彼はペインティングやスカルプチャー、映像まで、様々なミディアム(媒体)を駆使しながら、ローマの彫像やポップカルチャー、SNS、セレブリティ、セックス、ツーリズムなど、時代を超えたあらゆる現象と欲望をコラージュし、一つの作品に昇華する(リチャードの作品は、フラッグシップストア「カサロエベ表参道(CASA LOEWE Omotesando)」に飾られてもいる)。その超越性と平面性は、極めてインターネット的であり、このアイデアはショーの演出だけでなく、ジョナサンの服づくりにまで影響を与えたようだ。
ブランドのアンバサダーの姿が映像作品に
ショーの会場には、巨大な窓型のデジタルスクリーンがいくつも設置され、それぞれにはリチャードが特別に制作した12点の映像作品が流された。それらは、1945年から30年以上にわたってロエベの象徴的なウィンドウディスプレイを手掛けたホセ・ペレス・デ・ロサス(José Pérez de Rozas)を参照することでブランドの歴史に触れながら、無差別な情報のコラージュがちりばめられている。
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その上には、NCTのテヨン(Tae-yong)、ジョシュ・オコナー(Josh O'Connor)、ステファヌ・バク(Stéphane Bak)、ジェイミー・ドーナン(Jamie Dornan)、マヌ・リオス(Manu Ríos)、オマー・アポロ(Omar Apollo)など、ロエベのアンバサダーやキャンペーンに登場してきた人物たちの姿がある。官能的で魅力的な彼らは、映像の中から見る者を誘うが、実世界の客席に目を向けると、彼らが実際にショーへと出席していることに気付く。イメージと現実の境界を曖昧にする演出のひとつだ。
テヨン
ジョシュ・オコナー
ファーストルックは、グリーンの型押しレザーのハーフコート。パンツは穿かず、ラベンダー色のスケーターシューズをソックスなしで履いている。首元の大きなリボンは今季の特徴的なディテールで、ほかのアイテムでも反すうされていた。
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ほかにも、オーバーサイズのチェックシャツには極太のレザーパンツを合わせ、Iラインのレザーコートでは本来ウエストを絞るためのベルトがヒップラインまで下げられて付いている。
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リチャードの作品をコラージュした服
5番目のルックでは、ロエベのキャンペーンを手がけるフォトグラファー、デヴィッド・シムズ(David Sims)の息子、ネド・シムズ(Ned Sims)が、リチャードの作品を無数のビーズ刺しゅうで表現したパンツを揺らしながら歩いてくる。リチャードの作品は断片化され、プリントやジャカード、バッグやガラススタッズにまで使用され、ジュエリーや服の上でさらなるコラージュとして出現する。
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楽しくも奇妙な違和感がところどころに
意表をつくシンプルなダブルのスーツは、パンツの裾が無造作にソックスインされていた。慌てて家を出たときにやってしまうあれだが(これからはロエベから引用したスタイリングだと言い張れる)、実はシューズとソックスとパンツが一体化した、オールインワン的なアイテムなのだ。
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デニムパンツには、本来の用途を満たさない、半分だけのベルトが付けられている。フェアアイルニットをトラックパンツにインしたルックはなんともナードだが、そのニットをよく見ると、一着の中でゲージの大きさがグラデーションで変わっている凝った一着だ。ブランドのアイデンティティである“クラフト”を盛り込みながら、楽しくも奇妙な違和感を積みあげていく。肌の露出の多さも、リチャードの作品とリンクしてくる。
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ショーの音楽もコラージュとカオスを表現
フレデリック・サンチェス(Frederic Sanchez)によるショー音楽は、ザッピングを繰り返すラジオのようだった。ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)のインタビューから(ジャスティンはリチャードの作品に度々登場する)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)によるニルヴァーナ(Nirvana)の「世界を売った男(The Man Who Sold The World)」カバーや、ジョイ・ディヴィジョン(Joy Division)の「She's Lost Control」など(歌詞に共通する“Lost Control”というワードも、ショー内容に通ずる)など激しく展開し、聴覚的にもコラージュとカオスが表現された。
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アート作品、ゲスト、モデル、服、音楽——ショー会場のあらゆるものが、意識とイメージの混乱、分離、融合を促すために活用され、現実とファンタジーの境界線が溶けて、様々な世界がイメージの中で増幅しながらごちゃ混ぜになる。インターネットに依存した社会を分析し、現代を批評するアートエキシビションのようにランウェイを構成するジョナサン。スタジオジブリ(STUDIO GHIBLI)などとのキャッチーなコラボレーションを成功に導きながら、クラフト プライズを設立し手仕事への継続的なリスペクトとサポートを実施し、ここまでハイコンテクストなショーも成し遂げてしまう。ファッションブランドという器の解釈と可能性を広げ続ける、川久保玲に続く類まれなデザイナーであることを改めて実感した。
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