Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】
nendoがロンシャンの定番バッグを再解釈、丸 三角 四角の「ル プリアージュ」はどうやって生まれた?

Image by: FASHIONSNAP.COM

 1993年に誕生し、現在「ロンシャン(LONGCHAMP)」の代名詞となっているアイコンバッグ「ル プリアージュ®」。日本の折り紙からインスパイアされた同製品はアーティストやデザイナーとの協業にも積極的で、今回コラボレーション相手に選んだのは日本のデザインオフィス「ネンド(nendo)」。バッグコレクション「LONGCHAMP×nendo」として6月から展開している。シンプルながら遊びのあるデザインで定評があるnendoは「ル プリアージュ」をどう解釈したのか?ロンシャンのアーティスティック・ディレクター ソフィ・ドゥラフォンテーヌ(Sophie Delafontaine)とnendo代表の佐藤オオキにプロジェクトの裏側を聞いた。

—コラボレーションに至った経緯を教えてください。

ソフィ・ドゥラフォンテーヌ(以下、ソフィ):nendoについてはもちろん以前から知っていて、ずっとお会いしたいと思っていたんです。元コレットのサラ(サラ・アンデルマン)に紹介してもらい、昨年のミラノサローネで佐藤さんと直接お会いすることが叶いました。それで「ル プリアージュ」という白いキャンバスをお渡しし、佐藤さんに自由に表現してもらって。このバッグは元々、約30年前に私の父が日本を訪問した際に「折り紙」からインスピレーションを得てデザインされたもので、それがこうして日本人のデザイナーの新たな視点で解釈され、とても嬉しいです。

ー佐藤さんは「ル プリアージュ」に対してどんな印象を持っていましたか?

佐藤オオキ(以下、佐藤):誰もが一つは持っているんじゃないかと思わせるほどのバッグですよね。平面にして原型を留めない形にしたとしても「ル プリアージュ」ということがわかるというのは本当にすごい。"強い製品"というのは、どう料理しても認識されるだけのアイデンティティを持っているものですが、このバッグはまさしくそんなアイコニックな製品です。

 このバッグが日本の折り紙から着想を得たということで、日本的なエッセンスをもう一つ取り入れられたらいいな、と思ったのが最初のアイデアです。そこで「風呂敷」という平面的なモチーフを立体的に表現できないかと思って完成したのが「サークル」になります。

「サークル」は円形のナイロン地を風呂敷のように折り畳んでいくと、スクエア状に収めることができる。(S 税別8,000円、L 税別1万1,000円)

—nendoとの仕事を振り返っていかがですか?

ソフィ:佐藤さんの仕事への取り組み方にとても感銘を受けました。コラボレーションのプロジェクトを進める過程では、当初のビジョンを変更することがしばしばありますが、nendoの提案するビジョンは最初から明確だったので、助かりましたし、私たちがそれをどう実現させるのかが重要でした。

—プロジェクトを通してロンシャンが得たことはなんでしょう。

ソフィ:コラボレーションをする目的の一つは、相手のノウハウをブランドで表現できるということです。例えば、ディティールやクラフトマンシップなど技巧面においてブランドが学ぶこともありますし、従来のコレクションでやってこなかったデザイン手法もコラボレーションだからこそ実現できたりします。今回のプロジェクトを通して、これまでの「ル プリアージュ」の概念にとらわれないnendoのデザイン哲学には学ぶところが多くありましたし、ロンシャンの新たな側面を見せることができたと感じています。

—国・年齢・性別問わず受け入れられているユニバーサルなデザインですが、どう「ル プリアージュ」の本質を捉え、nendoのデザインを落とし込んでいったのでしょうか?

佐藤:「ル プリアージュ」は機能と意匠のバランスが絶妙で、本当に"理想的"で"究極"の形だなと。ソフィもとてもそのバランス感覚に長けている方だと思います。ブランドとして変えてはいけない部分はもちろんありましたが、自由に削るところは削らせてくれてくれたので今回のような製品ができたのだと思います。

 僕らはインテリアなど「骨組みがある」プロダクトデザインをすることが多いのですが、一方でロンシャンは骨組みのない皮膜のような素材の中に物を入れた時どういったシルエットになるか、というところを熟知している。お互いの持ち合わせていないノウハウを持ち寄った結果、これまでの「ル プリアージュ」にはない、デザインと機能が合わさった製品を作ることができたんじゃないかと思っています。

—以前、佐藤さんはデザイナーに求められていることは「新しい視点を見つけ出すこと」と発言されています。今回のプロジェクトにおいての「新しい視点」はなんだったのでしょうか?

佐藤:バッグとしてはもちろん、使われてない時は畳んで持ち運ぶことができる、という2つの側面に加えて「第3の用途」を意識して作りました。滞在先のホテルや家の中にいる時などバッグとしては使われていないけれど、インテリアとしての機能を持たせる、という新しい使い道を加えたんです。それをイメージしながらデザインしていく中で、丸や三角、四角といった幾何学的で積み木のような形にたどり着いたという感じです。

ヘキサゴンの形状のバッグから仕切りを入れるとキューブ状に変形する「キューブ」。(S 税別1万8,000円、M 税別2万1,000円、L 税別3万1,000円)

—「風呂敷」のアイデアもそうですが、日本独自の機能美や収納美という感覚に着目した。

佐藤:そうですね。日本のデザインはミニマルで引き算と思われがちですが、むしろ機能を足していった結果のデザインが多いと思うんです。1つのものが2つの機能を持つことで、余計なものを作らなくてよくなったから引き算に見えているだけであって。「兼ねる」「変化する」ことでミニマルに見せたり感じさせているところがあるのかな、と。見た目はミニマルかもしれませんが、多目的というところが日本の伝統的な価値観に基づく機能美や収納美なんだと思います。

ソフィ:ミニマルなデザインというのはデザイナーにとって最も難易度が高いですよね。シンプルでミニマムなデザインの中にどれだけ強い印象や存在感、意味を持たせられるか、というところが重要になってくるのですが、nendoはそれにとても長けていると思います。

「コーンシェイプ」は円錐型の形状を畳みハンドル部分に収納することできる。(S 税別1万5,000円、L 税別1万8,000円)

—一見「どうやって使うんだろう?」と、使い手の創造力を刺激するようなデザインが印象的です。お二人の楽しみ方のヒントを教えてください。

ソフィ:私は常にリアルなユーザーに向けてデザインをしています。女性の一日には仕事や家、ナイトライフなど色々な場面や側面があるように、様々なシーンに対応できて何よりも「自分らしく」ある姿が大切です。例えばボックスのバッグは、昼はひし形のように畳んで仕事に、夜のディナーにはキューブ型に変形させて、などその日の気分や用途に合った自分らしい使い方を見つけていってほしいです。

佐藤:キューブのバッグはそのまま収納ボックスのように使えますし、三角のバッグはクローゼットにかけてそのまま物を収納するのにちょうどいいな、と思ったり(笑)。これはあくまで私の楽しみ方ですが。ただ、これからのデザインというのは全て答えが用意されていたり、「こう使うべき!」とガイドブック通りに楽しむというよりも、ユーザーがクリエイティブに参加できるよう余白を残してあげることがさらに大事になってくるんじゃないかなと。よく「どう楽しんでほしいですか?」と聞かれるんですが、自分の答えが相手の答えと同じとは限りませんから。作り手やメディアが一方的に情報を流すだけではなく、ユーザーも発信できるというのが今の時代だと思いますし、それぞれで新しい使い方を発見してもらえれば嬉しいですね。

(聞き手:今井 祐衣)

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング