マリーン・セル
Image by: FASHIONSNAP

Fashion インタビュー・対談

三日月と共に世界へ、26歳の新星デザイナー「マリーン・セル」が考えるリアルな服作り

マリーン・セル
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 世界最高峰のファッションコンテスト「LVMHプライズ」のグランプリを受賞し彗星の如く現れたデザイナー、マリーン・セル(Marine Serre)。その名は一気に知れ渡り、現在26歳にしてパリで頭角を現しつつある。シンボルは、ボディースーツからアクセサリーまで随所に刻まれている三日月。「世界へのリアクション」だという服作りについて、来日したセルに聞いた。

 

初参加でグランプリ

ー初参加でLVMHプライズのグランプリを獲得しました。受賞して大きく変化したことは?

 ブランドが急速に成長したことで、生産規模を考えなければいけなくなったことでしょうか。現在では1シーズンで約3,000点を世界70店舗で販売しています。体制も2人から10人に増えました。若いブランドということもあって、メンバー全員が若くエネルギーに満ちています。

ー最初は自宅で作業していたそうですね。

 以前はリビングルームで仕事をしていましたね。今ではパリにスタジオを構えています。

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ー自身のブランドを始めるまでにはどういった経験を?

 ブリュッセルの学校を卒業してから2017年9月までの3年間、「メゾン マルタン マルジェラ(Maison Martin Margiela)」や「ディオール(Dior)」、「アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)」、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」でインターンシップを経験しました。LVMHプライズの受賞時には、まだバレンシアガに在籍していたんです。

 インターンは責任が伴わないので退屈だという人もいますが、若いデザイナーにとっては素晴らしいチャンスだと思っています。技術的なことだけではなく、生産や組織などブランド運営についても学べますから。実際に今の私は、デザイナーでありながら経営者で、人も雇わなければなりません。組織の一員として働くことで、ブランドとはどういったものなのか、身を持って体験できたので毎日が貴重な経験でした。

■初めてのパリコレで何を表現したのか

ー今年の2月には初めてパリのファッションウィークでコレクションを発表しました。

 全てが初めてでしたが、たくさんの人が集まってくれてエキサイティングな経験でした。場所の確保から招待客の管理まで、私たちのような小さなチームでショーを作り上げるのは大変な苦労でしたが、やらない理由はなかったんです。なので実現することができてよかった。終わった後は、お酒を飲んで速攻で寝てしまいましたね(笑)。

ー最新の2018年秋冬コレクションで発表された「futurewear」のプリントの意味は?

 スポーツやストリート、クチュールなど、既存のカテゴリーに当てはまらないということを意味しています。またこのコレクションではリサイクル素材を使用するなど、大量消費の時代を経た未来のファッションへのアンチテーゼでもあったので「未来の服」と表記したのです。


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ー蛍光ペンやペットボトルなどを収納できるジャケットも印象的でした。

 現代を生きる女性に何が必要かを考えて生まれた服です。私自身、できるだけバッグを持ち歩きたくないんですよね(笑)。携帯電話など必要なものがすべて服に収納できたら、という考えでデザインしました。その他も、私のコレクションの服には基本的にポケットを付けています。外から見えなくてもわざわざ取り付けているのです。女性の視点からの機能性を持たせることを、常に考えています。

ー今日お持ちのボールのようなもの。これはバッグなんですね。
 
 ジオメスティックボールです。スカーフで長さの調節もできますし、全体を包むこともできます。これは日本の風呂敷から着想したものなんです。取り外しも可能なので、自分の手持ちのスカーフと合わせていくらでも雰囲気を変えられます。

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ーショーでは顔を隠すスキンマスクのようなルックもありましたが、アノニマスでありながら女性の強さも感じました。

 自分を覆い隠すということにはさまざまな意味があると思います。「フェイスキニ」という中国で人気のスイムウェアの一種で、目と鼻と口だけを空けて、紫外線から肌を守るアイテムがあります。ほかにもバイクやF1レーサーも安全のために同じようなものを被りますし、宗教的に顔を覆い隠す女性の装いもありますよね。共通するのは、あらゆる外敵から自分の身を守るということ。そういった意味も持たせています。

■三日月が意味するもの

ーこれまでに発表したコレクションには「Radical call for love」「CORNERSTONES」「Manic Soul Machine」とタイトルがついていますね。

 コレクションを制作してからメッセージを込めたタイトルを付けるようにしています。全て、世界中で起きていることに対するリアクションです。例えば「Radical call for love」はパリとブリュッセルで起きたテロに対してのメッセージ。今、世界や自分の周りで起こっていることを観察し、感じたことをコレクションに反映させています。 

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ーモチーフとして使われている三日月のシンボルは何を表していますか?

 月にはさまざま意味合いがありますよね。例えば女性のシンボルでもあり、イスラム教のシンボルでもあります。月は世界中の人を意味しています。なので定義を一つに限定せずに、人によって解釈の違いがあっていいと思うのです。その国やその人が育ってきた環境によってその人だけの意味を持つ。日本人だったらセーラームーンでしょうか(笑)?そんな想いでアイコニックな三日月を選んだのです。また私の名前を見なくても、この三日月を見た時にブランドをイメージしてもらえたらいいなという思いも込めています。

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ー女性という言葉が何回か出ていますが、ブランドが考える女性像は?

 ミューズは定めていません。誰でもミューズになり得るのです。女性に限らず、Tシャツは男性でも着ることができますし、年齢や身長などは問題にならないと考えています。大切なのは、何を着たいかを知っていることだと思います。

(聞き手:今井 祐衣)

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