「無印良品」は1980年に「大量生産、大量消費社会へのアンチテーゼ」として生まれ、ESG*やサステナビリティといった言葉が世の中に定着する前から、土台として「少ない資源で生活をゆたかに」といった考え方を貫いている。工場の落ちワタを生かして生産した衣類や、不揃いな部分も廃棄せずに販売するバウムクーヘンなどはその象徴だ。こうした基本の考え方や取り組みを改めて説明する場として、良品計画は2025年からESG説明会を実施。今年の説明会では、スコープ3と呼ばれる商品の原料・素材生産および製造に関わる温室効果ガス排出量の削減目標を発表した。この記事では、今年のESG説明会で話されたそれ以外のトピック、「物流」「発電」「資源循環」について詳報する。
ADVERTISING
*「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の3つの要素を考慮した企業活動や投資活動
物流領域:輸送効率化と便数適正化によるCO2と走行距離の削減
物流部門を担当する古田善一 上席執行役員 流通推進部・宅配事業部管掌は、輸送効率化の仕組みづくりと、それによる温室効果ガス削減について説明した。同社はSPA(製造小売業)として、生産国の工場から販売国の店舗、さらには顧客宅までという幅広い物流範囲を持つ。国際輸送では、GTC*を活用して出荷品を1つのコンテナに集約することでコンテナ使用数を削減しているほか、化石燃料以外の代替燃料を使用する船会社の積極活用と計画的出荷によって航空便の使用を抑えている。
代替燃料の船便は化石燃料の船便と比較してコストが増加する場合があるという指摘もあるが、古田上席執行役員は「コンテナの輸送本数自体を削減できれば、輸送全体の総額コストは下がる。これは国内配送も同様で、トラックの稼働台数そのものを減らすことができれば、トータルコストは抑えられる。表面上の数字だけではなく、全体の数量をコントロールすることで、コスト管理をしながらESGの取り組みは推進可能だと考えている」と説明した。
*グローバルトランスファーセンター。複数の工場から出荷された商品を集約し、混載して出荷する世界規模の通過型物流拠点
国内では、DC*の集約と配送拠点の統合を推進した結果、年間約550本のコンテナ削減を実現した。また、従来は全店舗への週5回納品を基本としていたものを、店舗規模に応じて週3〜4回に変更するなどの適正化を進め、ルート便**の活用と組み合わせることで年間約2.8万台のトラック削減を達成し、トラック積載率は11.9%改善している。さらに、北海道向けでは100%、九州向けでは約50%をフェリーで輸送しているほか、遠隔地店舗には他社貨物と混載する路線便を活用しており、2026年8月末現在で57店舗に路線便を導入済みだ。
*ディストリビューションセンター。商品を保管し、注文や出荷指示に応じて仕分けや梱包、出荷を行う在庫型物流センター
**1台のトラックで複数店舗に配送する方式


鳩山DC
Image by: 良品計画
ECについては、店舗受け取り比率を2021年の11%から2025年には31%まで引き上げた。これにより年間約93トンのCO2削減と37.4万時間相当のドライバー労働時間削減に繋がっているという。海外でも中国大陸では南部エリアにDCとEC倉庫を統合した新拠点を設置し、欧州ではオランダの倉庫に機能を集約した。「配送個数・コンテナ本数・トラック台数・走行距離・廃棄物の5つを減らすことを柱に、物流由来の温室効果ガス(GHG)削減に取り組んでいく」と古田役員は述べた。



化粧水ボトルなどは段ボール内に詰める本数を増やすことで出荷数削減につなげている
Image by: 良品計画
エネルギー領域:地域環境に配慮した自社発電
ソーシャルグッド事業部管掌およびムジエナジー(MUJI ENERGY)社長を兼務する横濱潤 上席執行役員は、発電事業の概要を説明した。同社では、スコープ1、2と呼ばれる自社や店舗での温室効果ガス排出量を、2030年8月期までに2021年8月期対比で50%削減することを目指している。しかし、店舗数は2021年8月期から2025年8月期までの4年間で406店増えており、積極出店を続ける中で温室効果ガスを削減することの難しさがあるという。ロードサイドの独立店なら、使用電力を再生エネルギーに変えることが自社判断でできるが、全体の8割を占めるショッピングモール内の店舗では、使用電力を良品計画が決めることはできず、脱炭素の取り組みが進めにくい。
こうした状況に対応するため、同社はエネルギー企業 ジェラ(JERA)と共同で発電事業会社ムジエナジーを設立。発電した電力を市場で売却し、発電実績に基づくクレジットを良品計画が取得するというバーチャルPPA*スキームを活用する。
*PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)は、企業が発電事業者と長期契約を結んで再生可能エネルギーを直接調達する仕組みで、バーチャルPPAは実際の電力そのものは送らず環境価値と金銭精算のみをやり取りする形態

ムジエナジーの取り組み内容を説明する展示から
Image by: FASHIONSNAP
同社は太陽光発電事業に独自の基準を設けている。横濱上席執行役員は景観や地域環境への配慮を重視した「無印らしい」発電のあり方を模索していると強調。耕作放棄地などの遊休地を優先的に選定し、パネルによる反射光が周辺住宅に影響しないよう現地確認を徹底するほか、木の伐採や土壌への悪影響がないかをチェックしている。2026年8月末現在で太陽光発電を154か所で運転、CO2換算で約5900トンの削減貢献を実現しており、全店舗消費電力量の約1割強に相当するするという。



発電所設置予定地視察の様子
Image by: 良品計画
横濱上席執行役員は「発電事業は想定以上にコストがかかっているのが実情だ。パネルを設置するのに適した場所は非常に少ないうえ、森林破壊などが指摘されるメガソーラーを良品計画が手掛けていると誤解されるリスクも抱えており、SNS上で『なぜ無印がメガソーラーをやっているんだ』というお声を目にすることもある。それでも、『自分たちの店舗で使うエネルギーは、自分たちが責任を持てる方法で生み出す』という強い志を持ち、周りへの配慮を忘れない無印らしいやり方を模索しつつ、しっかりと経済性も担保しながら、この事業に取り組んでいきたい」と、抱負を述べた。
資源循環領域:「リムジ」の拡大戦略
松枝展弘 循環推進部・営業本部管掌 執行役員は、リユース・リサイクル事業について説明した。同社は2010年から衣料品・繊維商品の店頭回収を開始し、2015年に回収した衣料品を染め直して販売する「リムジ(ReMUJI)」を始動。2025年からはリユース・リサイクルに関する一連の取り組みをすべて、リムジとして統合した。現在の回収量は年間で繊維商品約141トン、プラスチック系約157トン、ヘルス&ビューティー関連ボトル類約14トンに達している。
回収した繊維商品のうち約38%がリユースとして再販され、60%強がリサイクルに回されている。回収量増加に向けた重要指標として参加者数を設定しており、現在は50万人が参加しているが、2030年には300万人への拡大を目標とする。リムジの売り上げとしては2026年度に9億3000万円を見込んでおり、2030年には国内だけで30億円を目指すとした。拡大にあたって海外店舗との連携も視野に入れている。
2025年3月にオープンした奈良・橿原市の大型店舗では、循環の取り組みを可視化したゾーンを約660平方メートル規模で設け、日本最大級の回収量を実現しているという。2026年5月にはタオルの回収も開始し、将来的にはバスマットなどへの再生を目指している。また体にフィットするソファの回収・再販、コーヒーの抽出カスを使った染め、日本・インドの古家具の活用など、対象商品と取り組みの幅を広げている。松枝執行役員は「衣料品の原料全てがリサイクル由来になる、という段階に至るまでは道のりは長いが、今後回収量を増やしていって、全店舗に常にリムジの商品がある状態は目指せると思っている」と、今後の見通しを述べた。
最終更新日:
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
















