ジョニー・コカ
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Fashion インタビュー・対談

「マルベリー」ジョニー・コカのイットバッグを生み出す法則

 英ラグジュアリーブランド「マルベリー(Mulberry)」のクリエイティブディレクターに2015年に就任したジョニー・コカ(Johnny Coca)。ルイ・ヴィトンやセリーヌで証明したイットバッグを生み出す才能と、多様なバックグラウンドから培ったグローバルな視点を生かし、1971年の創業以来イギリスらしさを強みとしてきた同ブランドをフレッシュに刷新した。9月にソウルで開催された2018-19年秋冬コレクションのローンチイベントのため訪韓したコカにインタビュー。マルベリーについて「レリヴァントなブランドを目指す」と話す意味とは。

【ジョニー・コカ】
スペイン・セビリア生まれ。パリで建築やデザインを学んだ後、「ルイ・ヴィトン」や「セリーヌ」で経験を積む。「セリーヌ」ではフィービー・ファイロの下、レザーグッズやシューズ、アクセサリー、ジュエリー、サングラスのヘッドデザインディレクターを務めた。2015年7月に「マルベリー」のクリエイティブディレクターに就任。2016-17年秋冬コレクションでデビューした。

コカの手によってフレッシュに生まれ変わる「マルベリー」

「マルベリー」2018-19年秋冬コレクション

ー マルベリーに加入して3年。振り返ってみていかがでしょうか?

 クリエイティブディレクターに就任してまず最初に自分のミッションだと考えたのが、コンサバティブなイメージが強かったマルベリーに、モダンでファッション性の高いイメージをもたらすことでした。とはいえ、クラシカルな側面を一掃するのではなく、スタイルの幅を広げることに集中しました。例えば、レザーを使ったクラシックなバッグは、同じ形でグリッターや刺繍をあしらったデザインでも展開したり。あらゆる年代の方が自分にぴったりだと思うアイテムが見つかるラインナップになっていると思います。

ー レディトゥウェアも強化していますね。

 マルベリーはレザーグッズのイメージが強い一方で、レディトゥウェアの分野では未だ十分に知られていません。レザーグッズだけでなく、レディトゥウェア、シューズ、サングラス、ジュエリーなどあらゆるカテゴリーを充実させることで、 全てのカテゴリーを通してより一貫して強固なブランドアイデンティティが築けると考えています。

人気バッグを生み出す秘訣は?

クラシカルなブラックレザーバッグからグリッターデザインまで様々なスタイルのバッグが登場した「マルベリー」2018-19年秋冬コレクション

ー これまで「ルイ・ヴィトン」や「セリーヌ」でもレザーグッズなどアクセサリー類を主に担当し、ヒットアイテムを生み出してきました。イットバッグを生む法則は?

 建築を勉強した経験からか、ファッションデザインというよりはプロダクト的なアプローチ、建築的なアプローチでデザインしているかもしれません。スケッチを描いて完成ではなく、同じデザインを柔らかい革と硬い革の両方で作ってみたり、プロダクトとして試行を重ねます。素材や縫い目、金具が少し違うだけでも仕上がりに大きな影響を与えるので、全てのパーツがそのデザインに対して最良で最適であるかを見極めることに時間をかけます。実用性や設計、仕上げ、使い心地において、他のブランドが提案しているアイテムとは異なるものを持ち合わせているか意識していますね。

ー 近年はどのブランドでもミニバッグが人気を集めていましたね。

 ミニバッグは使い勝手が良いですもんね。服やバッグは女性の日常に密接しているものなので、機能性や使いやすさは非常に重要。そのためミニバッグが支持を集めたのも頷けます。とはいえ、働いている女性は荷物が多いので大きいバッグが必要だし、夜出かけるときにはクラッチを持ちたいかもしれない。そのためマルベリーではサイズのトレンドにとらわれるのではなく、一つのデザインに対してミニからビッグまで様々なサイズで用意するように心がけています。

英国外の顧客にとっても身近なブランドに

2018年春夏シーズンから、商品が店頭に並ぶタイミングでプレゼンテーションを開催する"see now buy now"形式へと移行。2月のロンドンに続き今回9月に行われたソウルでのイベントが2シーズン目ですね。

 よく「see now buy now」という言葉で表現されるのですが、実は私は少し違うように感じているんです。「see now buy now」は発売の時期に合わせてコレクションを初披露するものですが、マルベリーは他ブランドと同じくファッションウィーク期間中にコレクションを発表した半年後、実際に店頭に並ぶタイミングで改めてプレゼンテーションを行うような形をとっているからです。今回ソウルで見せた2018-19年秋冬コレクションも、半年前からオンラインで誰でもルックが見られる状態でしたしね。

ー ではロンドンやソウルでのイベントは、顧客向けのトランクショーのようなイメージでしょうか。

 そうですね。就任当時マルベリーにモダンな要素をもってくることに加えてもう一つ私のミッションだと考えたのが、英国ブランドとしてのイメージが強いマルベリーをよりインターナショナルな存在にすることでした。今回のソウルでのイベントは、ショーをはじめパーティー、ポップアップストアを通して、アジアの顧客とコミュニケーションをとり、マルベリーは彼らが共感できる、彼らにとって身近なブランドであるということをアピールするものでした。英国外の国で、顧客の方がブランドについて話す機会をつくることは非常に重要だと改めて感じました。全てのブランドにそれぞれ適した露出の仕方があると思いますが、マルベリーには現状この形があっていると考えています。

ー マルベリーにとって韓国はイギリスに次いで大きなマーケット。人気の理由は何だと思いますか?

 最初は「英国発」というところに魅力を感じマルベリーを知り、そこを入り口にして、プレイフルで楽しいデザインも気に入ってくださる方が多いように感じます。クラシックなものも好きですが、エキセントリックだったりデザイン性の高いものに魅力を感じる方が多い印象です。

ソウルでのイベントには「ブラックピンク」のメンバーも来場。

ー クリエイティブディレクター就任前には予想していなかった驚きはありましたか?

 忙しさでしょうか(笑)。今回のソウルのイベントが終わったら、来週はロンドンに新しいコンセプトストアをオープンしたり、常に忙しいですね。その一方で、デザインから店舗作りまで全方位のディレクションを担当できることにやりがいを感じています。ブランドのディレクションやメッセージに一貫性が生まれますから。

ー マルベリーでの今後の目標は?

 顧客と近い距離でコミュニケーションをとっていくことです。そのため韓国で今回行ったようなカスタマーイベントを、来シーズン別の国でも開催する予定です。時間はかかると思いますが、マルベリーの持つ世界観やメッセージを着実に届けていくことで、顧客が身近に感じるブランドにしていきたいですね。

(聞き手:谷 桃子)

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