ショーで受賞者決定へ 東京都主催のファッションコンクールの審査会に密着

若手の登竜門「NFDT」「SFDA」栄冠は誰の手に?

FASHIONPROMOTION

「Next Fashion Designer of Tokyo 2026」二次審査会の様子

Image by: FASHIONSNAP

「Next Fashion Designer of Tokyo 2026」二次審査会の様子

Image by: FASHIONSNAP

「Next Fashion Designer of Tokyo 2026」二次審査会の様子

Image by: FASHIONSNAP

 国内外で多くのアワードが開催される中、着実に存在感を高めているのが東京都主催によるファッションコンクール「Next Fashion Designer of Tokyo」と「Sustainable Fashion Design Award」だ。4回目を迎える今回は、約2000件の応募が寄せられた。二次審査を通過した計24組(各部門6組)と、一般投票で選ばれた12組(各部門3組)の計36組(延べ数)は、3月29日に開催される一般観覧可能なショー形式の最終審査に臨む。次世代を担うデザイナーたちは、どのような表現で評価を勝ち取ったのか。二次審査会の模様をレポートする。

若手の登竜門「NFDT」「SFDA」とは? 

最終審査は一般観覧可能なファッションショー形式で3月29日に虎ノ門ヒルズで開催。(写真は昨年度のショーの様子)

Image by: FASHIONSNAP

 2022年に東京都が設立した「Next Fashion Designer of Tokyo」(以下、NFDT)と「Sustainable Fashion Design Award」(以下、SFDA)。世界で活躍する若き才能の芽を育て上げていくことを目的とし、未来を担う若手デザイナーを発掘・育成するための実践的なプログラムが組まれている。

 同コンクールの最大の特徴は、一次審査、二次審査それぞれ終了後に、審査員のデザイナーをはじめファッション業界の最先端で活躍するプロフェッショナル達による講義や、応募者全員を対象としたワークショッププログラムが受けられること。審査員もファッションデザイナーだけではなく、メディアやバイヤーなど多角的な視点でのフィードバックが受けられるようなラインナップが揃う。また、二次審査通過者への支援として、上限付きの制作費補助のサポートや、MD(マーチャンダイザー)等との協働による商品化体験・プロモーション体験の機会を提供している。

特別選抜賞はショー来場者・オンライン視聴者による一般投票で決定(写真は昨年度のショーの様子)

Image by: FASHIONSNAP

 受賞者には、大賞、優秀賞、特別選抜賞としてそれぞれ賞金が与えられるほか、ブランドの立ち上げをサポート。都内商業施設等で巡回展示や、パリファッションウィーク期間中での作品発表などの支援も行う。コンクール終了後も応募者同士が情報交換し、デザイナーとしての視野を広げるとともに、刺激し合い切磋琢磨するため、コミュニティ「アルムナイ」を運営。トップデザイナー等による各種ワークショップの実施や体験企画などを共有するほか、過去の応募者のなかには審査員を務めるデザイナーのもとでインターンシップを経験するなど業界とのネットワーク形成のきっかけを獲得する者もいる。

 昨年11月中旬に行われた二次審査会では、デザイン性、機能性、新規性(伝統の継承と革新)、市場性、サステナビリティへの対応、将来性の6項目に基づき選出。計24組(各部門6組ずつ)の二次審査通過者は、3月29日に虎ノ門ヒルズで開催されるショー形式の最終審査へ進む。

審査員は何を見て、どう評価したのか?

SFDA 二次審査会の様子

 SFDAは、学生やキャリアを問わず「日本独自の着物などの文化、伝統を現代のファッションの力により新たな形で世界に発信していくこと」を審査要項に一般応募も可能。服を対象とした「ウェア部門」と、バッグや帽子などを対象とした「ファッショングッズ部門」のそれぞれ2部門で審査を行った。審査員には、前回から引き続き「マリオンヴィンテージ(MALION vintage)」デザイナーの石田栄莉子、「チルドレン・オブ・ザ・ディスコーダンス(Children of the discordance)」デザイナーの志鎌英明、ライフスタイリストの大田由香梨、「FASHIONSNAP」ファッションディレクターの小湊千恵美に加えて、新たに三越伊勢丹新宿紳士商品部バイヤーの椋田暁が参加した。

 初めて本コンクールの審査員を務めた、椋田は二次審査に進んだ応募者について「独自の視点から着物の生地を解釈し、試行錯誤を重ねながら、形にした過程が短い時間でも伝わる作品だった」とコメント。また、三度目の参加となる志鎌は今回の評価軸を「独自性がありファッションマーケットで戦える1着」とした上で、「デザイン、テキスタイル、コンセプトが高次元で完成されている作品が増えている」と年々上がる作品の精度を評価した。

SFDA 二次審査会の様子

 前回の応募者でもある、ウェア部門の西﨑有那(文化服装学院)は「販売できることをより意識して臨みました。同時に、二次審査に至るまでにいただいたアドバイスとして、コンセプトに付随した重みを表現するために曲線を描くことを実践しました」とクリエイティビティとマーケットのバランスに努めた。その想いは審査員にも伝わり、志鎌と椋田ともに「コンセプトからデザイン、そして細部に至るテキスタイルデザインまで質の高い作品」であることを評価した。

 ファッショングッズ部門では、オケージョンを考え抜いた作品が最終審査に残った。婦人靴メーカーに勤務している、東海林理見子は、ファッションコンテストへの参加が初めて。「衰退する産業を盛り上げたい」という想いで、職人たちと協業して作品を仕上げた。他の応募者との交流を通して「ファッションの観点から”いま”に落とし込むことを意識する視点が新鮮だった」と話す。同じく初参加の八木香菜子(多摩美術大学)は「甲冑」を特徴としたリュックを発表する一方で、「インパクトだけにならないように、リュック紐の部分も市場に流通しているものをリサーチした上で、このデザインに合うものを選んだ」と細部まで機能性とデザイン性を考え抜いた。

SFDA ウェア部門・ファッショングッズ部門 二次審査参加作品

1 / 29

女鹿 心優「Echoes of Obi」

 都内在住・在学の学生を応募対象者としたNFDTは、「フリー部門」と「インクルーシブデザイン部門」で構成される。フリー部門二次審査の審査員は、ファッションディレクター原由美子、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」デザイナーの森永邦彦、「シーエフシーエル(CFCL)」代表兼クリエイティブディレクターの高橋悠介、WWD JAPANサステナビリティディレクター向千鶴、三越伊勢丹伊勢丹新宿店リ・スタイルバイヤー橋本航平が参加。

 高橋は今年度の審査通過者について「毎年少しずつ、応募者全体のレベルが確実に向上していると感じる。最終審査に進む方の特徴は、表現したいことに冷静に向き合いながら、自分の強みとコンテストの傾向を的確に捉えて、スタイル提案からアイテム単位に至るまで具体的に落とし込めていること。少なくとも今回の二次審査においては、その精度に達している応募者が増えている印象を受けた。最終審査に残る作品は、そうした選考プロセスとアウトプットの整合性の高さゆえに、結果に対する納得感があるものばかりだった」。

1 / 11

NFDT 二次審査会の様子

Image by: FASHIONSNAP

 そして、橋本も同様に「審査員と応募者がしっかりとコミュニケーションを取れる環境を通して、生まれる完成度の高さを強く感じた。特にファッションに対する熱量やものづくりへの真摯な姿勢が印象的」と、同コンクールならではのプロセスから生まれるクオリティに感化されたという。

 森永も同じ感想を述べながらも、その裏付けとして自己探究があったからだと話す。「最終審査に残った方々は、それぞれが自身の内側にある世界と向き合い、自分にしか作れない服を考えているように感じた。自分が経験したこと、感じたこと、信じていることを起点にした服には強度と誠実さがある。学生のコンテストではありますが、今後ブランドとして成立することまで考えている作品が多く、世界に向けたファッションブランドとしての可能性を感じる審査だった」。

 二次審査通過者にも話を聞くと、以前に参加した経験を経て再度チャレンジを行った層も目立った。今野奏(文化服装学院)は、これまでの服作りで扱っていた、布帛から大胆にも今回初めてニットに挑戦。「自分の強みに向き合った時に、ニットがしっくりきました。前回参加して、世界的に活躍するデザイナーの方々と直にお話しできる機会の貴重性を感じました。 各審査員とお話しする時間をいただき、自分が描くイメージを共有しつつ、自身の長所を活かせるアドバイスを細かく伺えるので、最後まで自信を持ってブラッシュアップすることができました」。

 同じく、皆川空也(文化服装学院)も前回の応募経験を活かして自己探求を深めたという。「今回の応募に至るまで改めてファッションの知見を広めるためのリサーチを深めました。そのなかで、服以外の要素を取り入れながらも、服としての説得力を持つことが大切だと気がつけました。それは前回、他の通過者の方々との対話や審査員の方々から受けたフィードバックも大きくて。 多角的な視点が開けることで、0から1の発想が生まれるきっかけがたくさんあるコンクールだと思います」。

NFDT フリー部門 二次審査参加作品

1 / 15

今野 奏「Thread of Time -時を繋ぐ服-」

3月29日、一般投票可能な最終審査ショーで受賞者決定

 3月29日に開催するファッションショーに向けて、森永と高橋は、ともに「直感的に伝わる」ことを意識するように通過者にアドバイスしたという。その上で、森永は「ショーは非日常の場。日常の服の中にどれだけファッションの夢や自分自身の情熱を込め、それを伝えられるか。その一瞬の時間の中で、観る人の常識や日常を揺るがすようなインパクトを残してほしいと思う。ランウェイを歩いた時の空気感、服が身体とどのような距離感で存在するのかを意識することが大切」とコメント。

 高橋は、最終審査で主に問われる点を「3体としての統一感」や「1体目を起点としたアイデアの発展性」とし、過去の受賞作品の傾向や審査員の志向、時代性、社会性もリサーチすることを勧めた。それは実践の場でも必要なスキルでもある。「将来、企業でデザイナーとして勤めるにしても、自身でブランドを立ち上げるにしても、ニーズを分析しながら自分の強みと『適切』に掛け合わせていく力が求められる。最終審査は本当に一瞬。これまでと違い『いかに明快であるか』が重要になってくる。自身を客観的に見たとき、少しでも直感的にわかりづらいと感じる部分があるのであれば、それは他人には確実に伝わらない。最後の瞬間まで繰り返し作品と向き合い、直感的に伝わるかどうか丁寧に吟味してみてほしい」とプラクティカルなアドバイスを残した。また、最終審査後の懇親会も「審査員に率直に質問し、どこが足りなかったのかを確認することも、次の成長へ繋がる絶好の機会」であると、あくまでも参加者が見据えるべき視点が長期的であることを強く伝えた。

特別選抜賞はショー来場者・オンライン視聴者による一般投票で決定(写真は昨年度のショーの様子)

Image by: FASHIONSNAP

 虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウム(虎ノ門ヒルズ駅直結)で開催される、3月29日の最終審査は一般観覧可能なフィジカルーファッションショー形式となる。ショーの模様はYoutubeでもライブ配信を行う。NFDTの審査員長には東京藝術大学長の日比野克彦、SFDAの審査員長にはLVMHモエヘネシー・ ルイヴィトン・ジャパン合同会社 社長ノルベール・ルレ、副審査員長には篠原ともえを迎える。NFDT・SFDAともに当日は来場者・オンライン視聴者による投票で特別選抜賞が決まる一般投票も実施。各部門の受賞者は最終審査日当日に発表されるので、次年度の応募を検討している候補者はぜひ審査の場を体感してほしい。

最終更新日:

■最終審査 ファッションショー開催概要
日時:2026年3月29日(日)14:30開場、15:00スタート
会場:虎ノ門ヒルズ ステーションアトリウム(日比谷線 虎ノ門ヒルズ駅 直結)
※観覧自由・参加無料。途中入場も可能。
※特別選抜賞を決める来場者・オンライン視聴者による一般投票を実施。
NFDT / SFDA 公式YouTubeライブ配信ページ

■二次審査通過者
【NFDT フリー部門】
<東京都知事賞候補>
大西 洋太朗(エスモード・東京校)、小倉 拓海(文化服装学院)、今野 奏(文化服装学院)、髙橋 紅梅(杉野服飾大学)、皆川 空也(文化服装学院)、安田 航太朗(エスモード・東京校)
<特別選抜賞候補>
今野 奏(文化服装学院)、高橋 生樹(文化学園大学)、堀江 優花(文化服装学院)

【NFDT インクルーシブデザイン部門】
<東京都知事賞候補>
井上 楓陽(東京モード学園)、大石 如乃(エスモード・東京校)、古川 元太(目白ファッションアートカレッジ)、マックファーレン 七海(文化服装学院)、三井 心寧(国際ファッション専門職大学)、若林 唯(文化服装学院)
<特別選抜賞候補>
李 俊勇(東京モード学園)、皆川 空也(文化服装学院)、若林 唯(文化服装学院)

【SFDA ウェア部門】
<東京都知事賞候補>
梅宮 青(一般応募)、片柳 由菜(東京デザインプレックス研究所)、坂野 瀬奈(一般応募)、澤 優介(東京モード学園)、西﨑 有那(文化服装学院)、森田 果恋(国際ファッション専門職大学)
<特別選抜賞候補>
花野井 瑠美(一般応募)、Hong joongeom(文化学園大学)、女鹿 心優(国際ファッション専門職大学)

【SFDA ファッショングッズ部門】
<東京都知事賞候補>
岡田 耀穂(文化服装学院)、小野里 有紀(文化服装学院)、東海林 理見子(一般応募)、中田 南(慶應義塾大学)、長谷川 歩(東京モード学園)、八木 香菜子(多摩美術大学)
<特別選抜賞候補>
東海林 理見子(一般応募)、長谷川 歩(東京モード学園)、八木 香菜子(多摩美術大学)

text: Yoshiko Kurata(LESEN) | photography: Hikaru Nagumo, edit & project management: Shiori Nagaoka (FASHIONSNAP)